スタチンを服用中の患者にマヴィレットを開始すると、横紋筋融解症リスクが急上昇します。
マヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル)は、アッヴィ合同会社が製造販売する抗ウイルス化学療法剤です。2017年11月に日本で発売が開始され、C型慢性肝炎およびC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善を効能効果としています。添付文書は2024年9月に改訂(第2版)されており、最新版をPMDA公式サイトから確認することが強く推奨されます。
本剤の最大の特徴は、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤(グレカプレビル)とNS5A阻害剤(ピブレンタスビル)という作用機序の異なる2成分を配合した「パンジェノタイプ対応のDAA製剤」である点です。つまり、ジェノタイプ1〜6すべてに対応できます。
1錠中にグレカプレビル水和物(無水物として)100mgとピブレンタスビル40mgが含まれており、通常成人には1回3錠(グレカプレビルとして300mg、ピブレンタスビルとして120mg)を1日1回食後に経口投与します。識別コードは「NXT」、桃色の楕円形フィルムコーティング錠で、長径18.8mm・短径10.0mmと比較的大きめのサイズです。薬価は1錠17,422.8円という高額な薬剤であることも、医療従事者として把握しておく必要があります。
投与期間はジェノタイプ・病態・前治療歴によって異なります。
| 病態 | セログループ | 投与期間 |
|---|---|---|
| C型慢性肝炎(前治療なし) | 1または2 | 8週間 |
| C型慢性肝炎(前治療あり) | 1または2 | 12週間 |
| C型代償性肝硬変 | 1または2 | 12週間 |
| C型慢性肝炎または肝硬変 | 1・2以外(GT3〜6等) | 12週間 |
投与期間の選択を誤ると治療失敗につながるため、前治療歴の確認は必須です。前治療歴が原則です。
参考:PMDA公式 マヴィレット配合錠 電子添付文書(2024年9月改訂第2版)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/02/6250113F1021?user=1
添付文書における禁忌は、投与前に必ず確認すべき最重要事項です。マヴィレット配合錠の禁忌は以下の3項目に整理されています。
① 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
グレカプレビル水和物またはピブレンタスビルに対するアレルギー歴がある患者への投与は禁止されています。過去の使用歴がない初回投与患者であっても、問診で他DAA製剤に対する過敏症歴を把握しておくことが望ましいです。
② 重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害のある患者
Child-Pugh分類Cに該当する非代償性肝硬変患者には投与できません。これは薬物動態上の根拠があります。重度肝機能障害患者ではグレカプレビルのAUCが肝機能正常者と比較して約11倍に増加することが確認されており、重篤な副作用のリスクが著しく高まります。一方、軽度(Child-Pugh分類A)であればAUCは約1.33倍増加にとどまります。中等度(Child-Pugh分類B)は添付文書上の禁忌には該当しませんが、慎重な判断が必要です。
③ アタザナビル硫酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物・リファンピシンを投与中の患者
これが医療現場で見落とされやすい禁忌です。HIVの治療に使われるアタザナビル(レイアタッツ)、脂質異常症治療薬のアトルバスタチン(リピトール)、結核・非結核性抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)の3剤は、マヴィレットとの同時投与が禁忌となっています。
なかでも注目すべきは「アトルバスタチン」が禁忌である点です。脂質異常症を合併するC型肝炎患者は決して珍しくなく、すでにアトルバスタチンを服用中の患者へのマヴィレット開始には十分な注意が必要です。アトルバスタチンのみが禁忌であり、ロスバスタチンやシンバスタチン等は禁忌ではなく併用注意に分類されています。禁忌か否かの差を正確に把握しておくことが重要です。
参考:製品FAQ|マヴィレット|アッヴィ A-CONNECT(禁忌・相互作用の詳細)
https://a-connect.abbvie.co.jp/products/maviret/faq.html
マヴィレット配合錠の相互作用を理解するうえで鍵となるのは、薬物動態メカニズムです。グレカプレビルはP-gp・BCRP・OATP1B1/1B3の基質かつ阻害剤であり、ピブレンタスビルはP-gpの基質かつP-gp・BCRP・OATP1B1の阻害剤です。これが多数の薬剤との相互作用を引き起こす根本原因です。
スタチン系薬との相互作用が最重要
臨床現場で特に見落とされやすいのがスタチン系薬との関係です。アトルバスタチン(リピトール)は前述の通り禁忌ですが、それ以外のスタチン系薬も多くが「併用注意」に指定されています。
| スタチン薬 | 区分 | 主な機序 |
|---|---|---|
| アトルバスタチン(リピトール) | ⛔ 併用禁忌 | OATP1B・BCRP阻害 |
| ロスバスタチン(クレストール) | ⚠️ 併用注意 | OATP1B・BCRP阻害 |
| シンバスタチン(リポバス) | ⚠️ 併用注意 | OATP1B・BCRP阻害 |
| プラバスタチン(メバロチン) | ⚠️ 併用注意 | OATP1B阻害 |
| フルバスタチン(ローコール) | ⚠️ 併用注意 | OATP1B阻害 |
| ピタバスタチン(リバロ) | ⚠️ 併用注意 | OATP1B阻害 |
スタチン系薬は安全なものと思い込みがちですね。マヴィレット投与中はOATP1B阻害によりスタチンの血中濃度が上昇し、筋肉痛・横紋筋融解症のリスクが高まります。脂質異常症を合併する患者は非常に多いため、投与前の処方歴確認と患者への説明は欠かせません。
ワルファリン・タクロリムスへの影響
添付文書の重要な基本的注意(8.3)には、マヴィレット投与後にワルファリンの増量やタクロリムスの増量が必要になった症例が報告されている旨が記載されています。これはC型肝炎ウイルスが排除されることで肝機能が改善し、薬物代謝が変化するためと考えられています。ワルファリン使用患者への投与開始時はPT-INRの頻回モニタリングが必須です。
また、インスリン等の糖尿病治療薬が減量必要となった症例(低血糖)も報告されており、糖尿病合併患者への投与では血糖値の注意深いモニタリングが求められます。
P-gp誘導薬による効果減弱リスク
カルバマゼピン・フェニトイン・フェノバルビタール・エファビレンツといったP-gp誘導薬は、マヴィレットの血中濃度を低下させ治療効果を損なうおそれがあります。
また、サプリメントとしてよく使われるセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)も同様のP-gp誘導作用を持つため、患者への服薬指導でサプリメント・健康食品の確認も必要です。これは盲点になりやすいですね。
参考:マヴィレット配合錠 飲み合わせの注意事項|アッヴィ マヴィレット.jp
https://maviret.jp/cms/maviret/8week/about/combination.html
マヴィレット配合錠の副作用プロファイルは、インターフェロン時代と比べて格段に管理しやすくなっています。それでも添付文書には重大な副作用と、頻度は低いながら見逃せない事象が明記されています。
重大な副作用:肝機能障害・黄疸(頻度不明)
添付文書11.1項に記載されている重大な副作用は「肝機能障害・黄疸」の1項目のみです。AST・ALT・ビリルビンの上昇を伴う肝機能障害と黄疸があらわれることがあります。頻度は「不明」とされていますが、定期的な肝機能検査の実施が明記されています(8.2項)。投与開始後は定期検査が原則です。
その他の副作用(5%未満)
- 消化器:悪心、腹痛、腹部膨満(嘔吐・上腹部痛は頻度不明)
- 代謝・栄養:食欲減退
- 精神神経:頭痛、傾眠
- 皮膚:そう痒、発疹、薬疹、血管炎性皮疹(血管性浮腫は頻度不明)
- 泌尿器:蛋白尿
- 全身症状:倦怠感、疲労、悪寒、活動性低下(無力症は頻度不明)
- 臨床検査値:血中ビリルビン増加、ALT増加、尿中結晶陽性
治療前・治療中・治療後のモニタリング項目として、以下の検査が推奨されます。
| タイミング | 主なモニタリング項目 |
|---|---|
| 投与前 | HCV RNA・HBs抗原・HBc抗体・HBs抗体・肝機能(AST/ALT/ビリルビン)・PT-INR(ワルファリン使用患者) |
| 投与中(定期) | 肝機能検査・HBV DNAマーカー(既往感染者)・PT-INR(ワルファリン使用患者)・血糖値(糖尿病患者) |
| 投与終了後12週 | HCV RNA(SVR12の確認)・肝機能 |
SVR12(治療終了後12週時点でのHCV RNA陰性化)が「治癒」の指標となります。痛いですね——見逃すと患者の信頼を失うリスクがあります。
臨床検査値の変動は投与開始後早期から起こりうるため、特に最初の4週間は丁寧な問診と検査確認を心がけましょう。
参考:KEGG マヴィレット 添付文書情報(副作用・用法用量の詳細)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067158
マヴィレット配合錠の大きな強みのひとつが、腎機能に応じた用量調節が不要な点です。これは重要な特徴です。
腎機能障害患者への投与
本剤の排泄経路は主に胆汁・糞排泄(グレカプレビルで約92%、ピブレンタスビルで約97%が糞中排泄)であり、腎排泄の寄与は極めて小さいです。添付文書の薬物動態データによれば、末期腎不全(eGFR<15 mL/min/1.73m²)の患者でも、グレカプレビルのAUCは腎機能正常者と比べ約1.56倍、ピブレンタスビルのAUCは約1.46倍の増加にとどまっています。
この薬動態上の特性から、透析を要する末期腎不全患者を含めたすべての腎機能障害患者において用量調節は不要とされています。他のDAA製剤の中にはeGFR低下時に使用制限があるものもありますが、マヴィレットはその点で優れた使いやすさを持ちます。透析中の患者に対する用量調節は不要なら問題ありません。
なお、血液透析による除去についても添付文書に明記があり、「グレカプレビル及びピブレンタスビルは血液透析ではほとんど除去されない」と記載されています(13.1項)。これは過量投与時の対応としても知っておくべき情報です。
肝機能障害患者への投与
腎機能障害とは対照的に、肝機能障害は投与の可否を左右します。Child-Pugh分類による判断が基本原則です。
- Child-Pugh A(軽度):投与可。ただし、グレカプレビルAUCが正常の約1.33倍に増加するため、経過観察が必要。
- Child-Pugh B(中等度):添付文書上の禁忌には含まれませんが、グレカプレビルAUCが正常の約2倍に増加するため慎重な判断を要します。
- Child-Pugh C(重度):禁忌。グレカプレビルAUCが正常の約11倍に増加し、重篤な有害事象のリスクが高い。
肝硬変患者に対して本剤を使用する際には、Child-Pugh分類を事前に評価することが基本条件です。なお、代償性肝硬変(Child-Pugh AまたはB)は効能効果の対象ですが、非代償性肝硬変は適応外です。投与前に「代償性」であることを肝予備能・臨床症状で確認することが5.効能効果に関連する注意として明記されています。
参考:アッヴィ A-CONNECT マヴィレット適正使用ガイド(腎・肝機能障害患者の投与)
https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/maviret/pdf_1806_MAVIRET_useguide.pdf
医療現場で意外に見落とされやすいのが、B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化への対応です。C型肝炎の治療薬なのに、なぜHBV?と感じる方もいるかもしれません。
なぜHBV再活性化が起きるのか
C型肝炎直接型抗ウイルス薬(DAA)を投与すると、HCVの複製が急速に抑制されます。しかしこの過程で、これまでHCVとの競合関係の中で抑えられていたHBVが再び活性化するケースがあります。いわば「免疫バランスの再調整」によるものです。
添付文書8.1項および9.1.1項には、「B型肝炎ウイルス感染の患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体またはHBs抗体陽性)において、C型肝炎直接型抗ウイルス薬を投与開始後、C型肝炎ウイルス量が低下する一方でB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている」と明記されています。
日本肝臓学会のB型肝炎治療ガイドラインでも、マヴィレット配合錠はHBV再活性化について注意喚起が必要な薬剤の一つとして掲載されています。
投与前に必ずスクリーニングすべき項目
- HBs抗原(現在の活動性感染の確認)
- HBc抗体(過去の感染歴の確認)
- HBs抗体(既往感染または免疫獲得の確認)
HBs抗原が陽性の場合はもちろん、HBs抗原が陰性でもHBc抗体またはHBs抗体が陽性の「既往感染者」においても、投与後のHBV DNAモニタリングが必要です。これが基本です。
配合錠と配合顆粒小児用の互換使用は不可
見落とされがちなもう一つの注意点として、「マヴィレット配合錠」と「マヴィレット配合顆粒小児用」の互換使用禁止があります(用法用量に関連する注意7.2項)。両製剤間の生物学的同等性は示されていないため、剤形を変更する際には医師への確認が必要です。意外ですね。
C型肝炎治療においてDAAは非常に有効ですが、マヴィレットは複数のトランスポーターや代謝経路に影響を及ぼす薬剤であることを念頭に置き、投与前・投与中・投与後を通じた系統的なモニタリングと患者教育が重要です。
参考:日本肝臓学会 B型肝炎治療ガイドライン(第4版)HBV再活性化注意薬一覧
https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/B_v4.pdf

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