ソルデム輸液の効果と種類・使い分けの完全ガイド

ソルデム輸液の効果や種類(1号液〜3AG)の違い、維持液としての正しい使い分けを医療従事者向けに解説。低ナトリウム血症リスクや投与本数の目安など、現場で役立つ知識を知っていますか?

ソルデム輸液の効果と種類・正しい使い分けを徹底解説

この記事の3つのポイント
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ソルデム輸液には7種類ある

1号液から3PG・6号液まで、電解質・糖濃度の組成が異なり、病態や目的に応じた使い分けが求められます。

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維持液は「維持できない」場面がある

ソルデム3AのNa濃度は血液の約1/4(35mEq/L)。漫然と投与し続けると、医原性の低ナトリウム血症を招くリスクがあります。

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絶飲食時はビタミンB1混注が必須

ソルデム系輸液にはビタミンB1が含まれていません。絶飲食が1週間続くとビタミンB1が枯渇し、Wernicke脳症のリスクが生じます。


ソルデム輸液の効果と基本的な役割:なぜ点滴が必要か



ソルデム輸液は「維持できる輸液」と思われているが、実はNa濃度が血液の約1/4しかない。


成人の体重のおよそ60%は水分で構成されており、体内では水分だけでなくナトリウム(Na⁺)・カリウム(K⁺)・クロール(Cl⁻)などの電解質が細胞の機能維持に不可欠な役割を担っています。経口摂取が困難な状況、たとえば嘔吐や意識障害、手術前後、あるいは高度の脱水状態では、口から補えない水分と電解質を静脈路から直接補給する必要があります。その際に用いられるのが電解質輸液であり、ソルデム輸液はその代表的な製剤です。


ソルデム輸液(テルモ株式会社の登録商標)は「低張電解質輸液」に分類されます。電解質のうち塩化ナトリウム(NaCl)の濃度が生理食塩液よりも低く設定されており、その分をブドウ糖で補って浸透圧を等張に近い水準に調整しています。これにより細胞外液のみならず、細胞内へも水分を届けることができます。これが基本です。


熱中症による脱水、食中毒の下痢・嘔吐、外傷による失血、手術後の体液バランス崩壊など、ソルデム輸液が登場する臨床場面は非常に幅広いです。ただ「とりあえず点滴」の代名詞のように使われがちな剤だからこそ、正確な知識が現場判断の質を左右します。


輸液を決める際は「水分量・ナトリウム・カリウム・栄養」の4つを意識することが原則です。この4点が抜け落ちると、輸液そのものが電解質異常・せん妄・心不全を引き起こす医原性の問題につながります。つまり輸液は「入れればよい」ものではありません。


【参考】第10回 一歩進んだ輸液の考え方(金芳堂)|水分量・Na・K・栄養の4点から輸液の選び方を解説した医師向け実践記事


ソルデム輸液の種類と効果の違い:1号液から3AGまでを比較

ソルデム3Aを「万能な維持液」と思って使い続けると、低ナトリウム血症を自ら作り出します。


ソルデム輸液には現在7種類のラインナップが存在し、それぞれ電解質組成と糖濃度が異なります。この違いを把握せずに漫然と投与を続けることは、患者に不利益をもたらすリスクがあります。各製剤の特徴を以下の表で整理します。




















































製剤名 分類 主な特徴 カリウム含有
ソルデム1輸液 1号液(開始液) 病態不明時・緊急時の初期補給、手術前後 なし✗
ソルデム2輸液 2号液(脱水補給液) Na欠乏型(低張性)脱水に使用 あり✓
ソルデム3輸液 3号液(維持液) 高張性脱水(水欠乏型)の補正・維持 あり✓
ソルデム3A輸液 3号液(維持液) ソルデム3より糖濃度高め・Na低め あり✓
ソルデム3AG輸液 3号液(維持液) ブドウ糖追加、エネルギー補給も可能(500mL=150kcal) あり✓
ソルデム3PG輸液 3号液(維持液) リン酸+ブドウ糖追加(500mL=200kcal) あり✓
ソルデム6輸液 4号液(術後回復液) 手術後・腎障害・高カリウム血症にも対応 なし✗


特に重要なのが、ソルデム1輸液(1号液)は緊急時の「ファーストチョイス」であり、カリウムを含まない点が大きな特徴です。そのため尿量が確認できていない患者や、腎機能障害が疑われる患者にも安心して使用できます。尿量が1日500mL未満、または1時間あたり17mL未満の場合は特に注意が必要です。


ソルデム3A輸液は現場でもっとも頻用される維持液です。500mLあたりカリウムを10mEq含有しており、成人の1日必要量(40mEq)を補うためには1日最低2,000mL、つまり500mLを4本投与することが必要です。これが条件です。


ところが高齢者ではこの2,000mLが過剰になりやすい実態があります。心不全がある小柄な高齢者であれば、1日1本(500mL)で十分な場合もあります。一方、発熱のある若年者では不感蒸泄も増えるため、より多くの本数が必要です。


ソルデム輸液の効果を引き出す投与量の考え方:「水分10の法則」

ソルデム3Aを1日4本入れれば安心と思うと、高齢者の心不全を引き起こす場合があります。


適切な輸液量を算出するための実践的なフレームワークとして、「水分10の法則」が臨床で参考にされています。これは以下の4つの要素を足し合わせることで、1日の必要水分量を概算するものです。



  • 不感蒸泄:10mL/kg/日(皮膚・粘膜・呼気から失われる水分)

  • 最低尿量:10mL/kg/日(腎機能を維持するための最低限の尿量)

  • 余裕分:10mL/kg/日(生理的な余裕をみた追加分)

  • 発熱・活動時の追加:10mL/kg/日(体温が高いほど蒸散が増える)


たとえば体重60kgの患者が発熱のない状態であれば、最低でも1日1,800mL(30mL/kg)の水分補給が必要です。発熱(38℃以上)があれば2,400mL以上が目安となります。これは東京ドームの観客席でいえば、スタジアム1杯分の水量の差が生じるイメージです。意外ですね。


食事量と輸液量の関係も、臨床上の重要な判断基準です。経口摂取が安定しているにもかかわらず維持液を継続することは、過剰輸液となり心不全やせん妄のリスクになります。以下を目安にするとよいでしょう。



  • 食事を7〜10割摂取できている → 維持液は原則不要

  • 食事を3〜6割摂取 → 維持液を1本追加

  • 食事を1〜2割摂取 → 維持液を2本追加

  • 全く食べられない → 維持液を3本追加(発熱・体重を加味)


輸液を「とりあえず」続けることのデメリットは見落とされがちです。末梢静脈カテーテル感染、夜間の点滴による不眠・せん妄悪化、転倒リスクの増加など、輸液そのものが合併症の原因になり得ます。漫然投与はご法度です。


また、抗菌薬を生理食塩水100mLで溶解して1日4回投与するだけで400mLの水分が入ります。この量を考慮せずにソルデム3Aをフル量投与すると、トータル水分量は大幅に超過します。複数の輸液経路を「トータルで」管理するという視点が必須です。


ソルデム3A輸液の「維持液なのに維持できない」Na濃度の落とし穴

ソルデム3Aを数日投与し続けると、患者の血液がどんどん薄まっていきます。


ソルデム3Aのナトリウム濃度は35mEq/Lです。これに対して、正常な血液中のナトリウム濃度は約140mEq/Lです。つまり、ソルデム3Aのナトリウム濃度は血液の約1/4しかありません。これは使えそうです。


「維持液だからナトリウム濃度も維持できる」と思っている医療従事者は少なくありません。しかし実際には、ソルデム3Aは「高ナトリウム血症を是正するための希釈液」として機能する場面があります。料理に例えれば、ソルデム3Aは「非常に薄い塩水」です。塩辛い料理(高Naの血液)に薄い塩水を注ぎ続ければ、当然味は薄まります。


医原性の低ナトリウム血症は、維持液を漫然と投与した場合の代表的な合併症です。血清Na値が130mEq/L以下まで低下すると、けいれんや意識障害、重症例では呼吸停止に至ることもあります。PMDAが実施した調査でも、維持液投与と低Na血症発症の関連が指摘されています。低ナトリウム血症には注意が必要です。


この落とし穴を避けるためには、定期的な電解質モニタリングが不可欠です。維持液を3日以上継続する場合は、血清Na・K・Cl値を定期的に確認し、異常があれば輸液の種類・量を調整する判断が求められます。採血による「味見」を忘れないことが原則です。


なお、Na濃度が正常〜低め傾向の患者にはソルデム3Aではなく、Na濃度がより高いラクテック(Na: 130mEq/L)にカリウムを混注する選択が適切な場合もあります。一方、高ナトリウム血症の補正には5%ブドウ糖液やソルデム3Aが選択されます。患者の電解質の状態を「料理の味つけ」のように調整していくイメージです。


【参考】維持液投与後の低Na血症発生に関する遡及的調査(PMDA)|ソルデム3Aを含む維持液と低ナトリウム血症発症リスクに関する調査報告


ソルデム輸液の効果を損なうビタミンB1欠乏:絶飲食時に見落とされるリスク

ソルデム3Aを1週間点滴し続けるだけで、Wernicke脳症のリスクが生じます。


これは多くの現場で見落とされがちな盲点です。ソルデム輸液にはビタミンB1(チアミン)が含まれていません。ビタミンB1は、体内でブドウ糖をエネルギーに変換する際に不可欠な補酵素です。ビタミンB1が不足した状態でブドウ糖を多量に投与し続けると、乳酸アシドーシスやWernicke脳症を引き起こすリスクがあります。


Wernicke脳症は、意識障害・眼球運動障害・運動失調の3徴を特徴とする緊急疾患です。発見が遅れると不可逆的な記憶障害(Korsakoff症候群)に移行することもあります。もともと食事量が低下していた患者、アルコール依存症患者、低栄養状態の高齢者では、絶飲食から1週間もしないうちにビタミンB1が枯渇します。厳しいところですね。


予防のためには、絶飲食で維持輸液を開始する際にビタミンB1製剤(アリナミンF®など)を点滴に混注することが推奨されます。ビーフリード®のようなアミノ酸・ビタミン配合輸液を選択すれば、ビタミンB1混注が不要になります。ビタミンB1混注が必須であることを忘れずに。


また、ソルデム3Aのエネルギー量は500mL1本あたりわずか80〜86kcalです。仮に1日3本投与しても240〜258kcalにしかなりません。成人の1日の食事から摂取するエネルギーが約1,400kcalであることを考えると、維持液だけで「エネルギーを維持する」ことは不可能です。ソルデム3Aだけでは低栄養が進行します。


より多くのエネルギーを補いたい場合は、ソルデム3AG(500mL=150kcal)やビーフリード®(500mL=210kcal)への変更を検討する場面があります。ただし、アミノ酸含有製剤のビーフリード®は末梢静脈炎のリスクや菌血症(Bacillus cereus)のリスクもあるため、経口摂取が安定次第、早期離脱を目指すことが原則です。



  • ⚡ ビタミンB1欠乏リスクが高い患者:アルコール依存症者・術後絶飲食が長引く患者・術前から食事量が低下していた患者

  • ✅ 対策:絶飲食開始時にアリナミンF®を輸液に混注、またはビーフリード®に変更

  • 📋 モニタリング:絶飲食が5日以上続く場合はビタミンB1血中濃度の測定を考慮


ソルデム輸液の効果と副作用:過量・急速投与がもたらすリスク

ソルデム1Aを安全な輸液と思っているなら、大量投与で起きる肺水腫を知らない可能性があります。


ソルデム輸液は「安全な輸液」として認識されることが多いですが、過量投与・急速投与では重篤な副作用が生じます。共通のリスクとして、大量または急速な投与によって脳浮腫・肺水腫・末梢浮腫が起こる可能性があります。これは輸液が血管外へ漏出し、組織に水分が貯留することで生じます。脳浮腫は脳内の圧力が上昇し、意識障害や呼吸停止の原因となる危険な状態です。


副作用リスクをまとめると以下のとおりです。


































製剤 注意すべき副作用 特記事項
ソルデム1 脳浮腫・肺水腫・末梢浮腫 高乳酸血症患者には使用不可
ソルデム2 脳浮腫・肺水腫・高カリウム血症・アルカローシス 1歳未満に100mL/h以上使用→高K血症リスク
ソルデム3・3A・3AG 脳浮腫・肺水腫・水中毒・高カリウム血症 高乳酸血症・高カリウム血症患者には使用不可
ソルデム3PG 血管痛・血栓静脈炎・脳浮腫・水中毒・高カリウム血症 高リン血症・低カルシウム血症も禁忌
ソルデム6 脳浮腫・肺水腫・水中毒 カリウムフリー・術後腎機能低下にも対応


また、糖尿病患者へのソルデム3Aの投与は、ブドウ糖が含まれているため血糖値を上昇させる可能性があります。処方時に血糖管理状況を必ず確認することが重要です。


投与速度については、通常成人に対して300〜500mL/時間が目安です。小児では50〜100mL/時間と大きく異なります。体重・年齢・心肺機能を必ず考慮した上で、輸液ポンプや点滴速度の確認を徹底することが現場でのリスク管理の基本です。投与速度の管理は必須です。


高齢者や心不全患者では過剰投与が心負荷を増大させ、新たな心不全を引き起こすリスクがあります。「輸液は少なくても問題、多すぎると命取り」という意識で管理することが、合併症を防ぐ重要なポイントです。


【参考】ソルデム3A輸液の基本情報(日経メディカル処方薬事典)|禁忌・副作用・用法用量など添付文書に基づく詳細情報






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