後発品に変更しただけで中毒症状が出た患者が実際にいます。

テオフィリン徐放製剤は、気管支喘息・COPD・喘息性気管支炎などに用いられるキサンチン系気管支拡張薬の長時間作用型製剤です。現在流通している製品は「徐放錠(1):12〜24時間持続」と「徐放錠(2):24時間持続」の2グループに大別され、同じ成分名でも用法・用量が異なります。
下表に主要な製品を整理しました。
| 分類 | 商品名 | メーカー | 規格 | 用法 | 先発/後発 |
|---|---|---|---|---|---|
| 徐放錠(1) 12〜24時間持続 |
テオドール錠 | 田辺ファーマ | 50mg / 100mg / 200mg | 1日2回 | 先発品 |
| テオロング錠 | エーザイ | 50mg / 100mg / 200mg | 1日2回 | 先発品(後発品あり) | |
| テオフィリン徐放錠「サワイ」 | 沢井製薬 | 50mg / 100mg / 200mg | 1日2回 | 後発品 | |
| テオフィリン徐放錠「ツルハラ」 | 鶴原製薬 | 50mg / 100mg / 200mg | 1日2回 | 後発品 | |
| テオフィリン徐放錠「日医工」 | 日医工 | 50mg / 100mg / 200mg | 1日2回 | 後発品 | |
| テオフィリン錠「TYK」 | 陽進堂 | 100mg / 200mg | 1日2回 | 後発品 | |
| チルミン錠 | 共和薬品 | 100mg / 200mg | 1日2回 | 後発品 | |
| テオフィリン徐放カプセル「サンド」 | サンド | 100mg / 200mg | 1日2回 | 後発品(供給停止報告あり) | |
| 徐放錠(2) 24時間持続 |
ユニフィルLA錠 | 共和薬品 | 100mg / 200mg / 400mg | 1日1回 | 先発品 |
| ユニコン錠 | 日医工 | 100mg / 200mg / 400mg | 1日1回 | 先発品 | |
| テオフィリン徐放U錠「トーワ」 | 東和薬品 | 100mg / 200mg / 400mg | 1日1回 | 後発品 | |
| テオフィリン200mg徐放U錠 | 各社 | 200mg | 1日1回 | 後発品 |
⚠️ テオドール錠100mg・200mgは、田辺三菱製薬が2024年12月に製造原料の調達困難を公表し、2026年12月頃の在庫消尽が予測されています。日本呼吸器学会は「販売中止は承諾できない」と申し入れを行っており、現場での在庫・代替品の確認が急務です。
参考:テオドール錠の供給停止問題に関する日本呼吸器学会の声明を掲載
テオフィリン徐放性製剤 テオドール®錠100㎎, 200㎎の現状報告(日本呼吸器学会)
同じ「テオフィリン徐放製剤」でも、一般名処方における分類は明確に異なります。徐放錠(1)は持続時間が12〜24時間で1日2回投与、徐放錠(2)は24時間持続で1日1回投与が原則です。これは用法が全く異なるということです。
医療現場で実際に発生しているヒヤリハット事例として、一般名処方で「テオフィリン徐放錠」と記載されたとき、持続時間の括弧書きを確認せず別の分類の製品を調剤してしまうケースが報告されています。薬局ヒヤリハット事業の共有事例にも同様の記録があり、医療安全上の重要な課題と位置づけられています。
つまり「徐放錠(1)」と「徐放錠(2)」は絶対に互換できません。
| 分類 | 持続時間 | 用法 | 代表品 |
|---|---|---|---|
| 徐放錠(1) | 12〜24時間 | 1日2回 | テオドール、テオロング、テオフィリン徐放錠「サワイ」等 |
| 徐放錠(2) | 24時間 | 1日1回 | ユニフィルLA、ユニコン、テオフィリン徐放U錠「トーワ」 |
また、徐放錠(1)に分類される製品同士であっても、各製品の製剤設計(マトリックス型かどうか等)が異なるため、吸収動態に差が生じる場合があります。特にテオフィリンは治療域が狭いため、製剤変更時には症状や副作用の発現に注意し、場合によってはTDM(薬物血中濃度モニタリング)による確認が推奨されます。
これは要注意ですね。
参考:一般名処方における徐放性製剤の取り違えリスクと注意点
一般名処方の調剤について(旭川薬剤師会 医療安全通信)
テオフィリンは「ナローセラピューティックインデックス薬(治療域の狭い薬)」の代表格です。有効血中濃度は5〜20μg/mLとされていますが、抗炎症効果が期待できるのは5〜10μg/mL帯であり、実際には10〜15μg/mLを目標とすることが多いです。治療効果が出る濃度と中毒症状が出る濃度の差は、わずか5μg/mLほどしかありません。
20μg/mLを超えると以下のような中毒症状が段階的に現れます。
血中濃度は年齢・肝機能・喫煙歴・併用薬によって大きく変動します。特に高齢者ではクリアランスが低下するため、成人通常用量よりも1/2〜2/3程度の低用量から開始することが一般的です。小児においても体重や成長段階により用量設定が変わるため、成人と同じ感覚で投与量を決定することは危険です。
血中濃度モニタリングが原則です。
TDMの実施タイミングとしては、治療開始時・用量変更後・相互作用が懸念される薬剤の追加・変更時、そして喫煙状況や生活習慣に大きな変化があった場合が挙げられます。テオフィリンのTDMは保険適用(薬剤管理指導料の算定対象)となっており、積極的に活用できる仕組みが整っています。
参考:テオフィリン血中濃度と臨床効果・副作用の関係についての詳細
テオドールの血中濃度と臨床効果および副作用との関係(田辺三菱製薬 医療関係者向けQ&A)
テオフィリンは主としてCYP1A2(一部CYP3A4・CYP2E1)で代謝されるため、これらの酵素に影響する薬剤との相互作用に注意が必要です。相互作用は「テオフィリン血中濃度を上昇させるもの」と「低下させるもの」の2方向で起こります。
⬆️ 血中濃度を上昇させる(中毒リスク)主な薬剤:
⬇️ 血中濃度を低下させる(効果減弱)主な薬剤:
また、エフェドリン含有製剤(一部の市販感冒薬・漢方薬)との併用では心血管系への刺激が増強され、不整脈・頻脈のリスクが高まります。患者が自己判断でOTC薬を使用していないか、服薬歴の確認が重要です。
相互作用は投与時だけでなく中止時にも動態が変化するため、変更のたびに血中濃度を確認するのが安全の基本です。
これはあまり知られていない事実ですが、タバコの煙に含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)がCYP1A2を誘導するため、喫煙者では非喫煙者に比べてテオフィリンの代謝速度が約1.5〜2倍程度速くなります。
結果として、喫煙患者では同じ用量を投与しても血中濃度が低くなりやすいという現象が起きます。喫煙者に十分な治療効果を得るためには、非喫煙者より多い用量が必要になる場合があります。これは薬の効き目の問題です。
問題が生じやすいのは「禁煙したとき」です。
禁煙によりCYP1A2の誘導が解除されると、テオフィリンの代謝が急に低下します。喫煙時の用量を継続した場合、血中濃度が治療域を大きく超え、中毒症状(頭痛・嘔吐・痙攣)が出現する危険性があります。実際に、禁煙後にテオフィリン血中濃度が41.6μg/mL(治療域上限の2倍超)に達した症例報告も存在します。
入院患者が院内禁煙規定により自然に禁煙状態になるケースでも、同様のリスクが生じます。喫煙習慣のあるテオフィリン服用患者が入院した際には、禁煙による血中濃度変動を想定したモニタリング計画を立てることが、安全管理上の重要なポイントです。
禁煙時は用量の見直しが必要です。
具体的な対応としては、禁煙開始後1〜2週間以内にTDMを実施し、血中濃度に応じて用量を20〜30%程度減量することが一般的に推奨されています。禁煙外来との連携で、このタイミングを見逃さないよう情報共有することが患者安全につながります。
参考:喫煙・禁煙とテオフィリン血中濃度変動の関係についての詳細
禁煙時にはCYP1A2代謝薬に注意(日経メディカル)