テネリア錠40mg販売中止と代替薬・切り替えの注意点

テネリア錠40mgの「販売中止」をめぐる正確な情報と、第一三共との販売提携終了の背景を解説。代替薬への切り替え基準や腎機能別の選択ポイントを医療従事者向けに詳しく解説。あなたの患者対応は本当に正しいですか?

テネリア錠40mg販売中止の真相と代替薬・切り替え対応

テネリア錠40mgが「販売中止になった」という情報は、実は半分だけ正しい情報です。


この記事の3つのポイント
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「販売中止」は正確には「販売提携終了」

2024年9月2日に第一三共との販売提携が契約満了で終了。テネリア錠40mg自体は田辺ファーマ(旧・田辺三菱製薬)が単独で販売継続中。在庫切れや処方継続に問題はない。

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代替薬・切り替えが必要なケースとは?

テネリア錠40mgは現在も先発品として処方可能。ただし今後のジェネリック参入、後発品への切り替え推進、薬価改定による患者負担変化を踏まえた対応の知識が医療従事者には不可欠。

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DPP-4阻害薬の副作用・注意点も再確認を

水疱性類天疱瘡、「テネリア」と「テルネリン」の取り違えリスク、腎機能別の用量調節の要否など、処方・調剤の現場で見落とされがちなポイントを整理する。


テネリア錠40mgの「販売中止」は本当か?販売提携終了の正確な経緯



「テネリア錠40mgが販売中止になった」という情報を耳にした医療従事者も多いかもしれません。しかしこれは、事実を正確に伝えていない表現です。


2024年3月4日、田辺三菱製(現:田辺ファーマ)と第一三共は、DPP-4阻害薬のテネリア錠・OD錠と、SGLT2阻害薬のカナグル錠について、契約満了に伴い2024年9月2日をもって販売提携を終了すると発表しました。これは「テネリア錠40mgの製造販売承認が取り消された」とも「薬自体の販売が終了した」とも異なります。


つまり、正確には「販売中止」ではありません。


2024年9月3日以降は、製造販売元である田辺ファーマが単独で「テネリア錠・OD錠(20mg・40mg)」と「カナグル錠」の販売・流通・情報提供活動を行っています。テネリア錠40mgは現在も先発品として処方可能な状態で、薬価基準への収載も継続されています(2026年3月31日まで:147.3円/錠)。


これが医療現場で混乱を生んだ背景には、第一三共のMRが担当から外れたことで「テネリア錠が入手できなくなった」と誤解した医療機関が一定数存在したためと考えられます。


なお同時に、テネリア錠とカナグル錠の配合剤である「カナリア配合錠」については、引き続き第一三共が販売・流通を行い、田辺ファーマと共同で情報提供活動を実施しています。カナリア配合錠の処方・在庫には変化がない点も覚えておきましょう。


販売提携終了に伴いコード情報が変更されている点には注意が必要です。テネリア錠・OD錠は販売移管に伴い、統一商品コード・GS1コード(調剤包装単位・販売包装単位・元梱包装単位)・HOT番号が変更されました。電子薬歴システムや調剤システムへの反映漏れがあると、レセプト上のコードエラーにつながる可能性があります。確認が必須です。


【参考】販売提携終了のご案内(コード情報変更詳細)|第一三共メディカルコミュニティ(PDF)


テネリア錠40mgの薬理的特徴と腎機能低下患者への優位性

テネリア錠40mg(一般名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物)は、選択的DPP-4阻害薬に分類される2型糖尿病治療剤です。作用機序として、食後に小腸から分泌されるインクレチン(GLP-1・GIP)を分解するDPP-4を阻害することで、インクレチン濃度を維持します。これにより血糖値に応じたインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制が起こります。


用法・用量は「通常の成人には20mgを1日1回経口投与し、効果不十分な場合には40mgへ増量可能」です。つまり40mg製剤は増量時の選択肢として位置付けられており、2018年11月28日に薬価収載されました。


テネリグリプチンの最大の薬学的特徴は腎機能低下患者での用量調節が不要な点です。これは同じDPP-4阻害薬の中でも重要な選択基準になります。


| DPP-4阻害薬 | 腎機能での用量調節 | 排泄経路 |
|---|---|---|
| テネリグリプチン(テネリア) | 不要 | 肝臓・腎臓の二方向 |
| リナグリプチン(トラゼンタ) | 不要 | 胆汁排泄が主 |
| シタグリプチン(ジャヌビア) | 必要 | 腎臓が主(79〜88%) |
| アログリプチン(ネシーナ) | 必要 | 腎臓が主 |
| ビルダグリプチン(エクア) | 必要 | 腎臓が主 |


腎機能低下患者には用量調節が不要です。このことは、慢性腎臓病(CKD)を合併した2型糖尿病患者の多い現場では、特に処方選択上の優位点になります。


テネリア錠40mgの血漿中半減期は約20.8時間と比較的長く、1日1回投与の利便性も高い薬剤です。また、食前・食後を問わず服用タイミングが自由であるため、患者のライフスタイルに合わせた服薬指導が可能です。服薬アドヒアランスの改善にもつながるポイントです。


テネリア錠40mg販売中止(提携終了)後の代替薬・切り替えの実際

テネリア錠40mgは現在も処方可能ですが、今後ジェネリック(後発品)の参入が見込まれる中で、医療現場での対応選択肢を整理しておくことは重要です。特に「フォーミュラリー採用薬の変更」や「薬価改定に伴う患者負担への影響」を考える際に役立ちます。


DPP-4阻害薬間での切り替えを検討する場合、以下の主要な候補薬の特徴を整理します。


  • 🔵 リナグリプチン(トラゼンタ錠5mg:テネリグリプチンと同様に腎機能で用量調節不要。胆汁排泄が主経路で、腎機能が悪化した患者にも安心して使用できる。腎機能低下例でのテネリア代替として最も選ばれやすい薬剤の一つ。
  • 🔵 シタグリプチン(ジャヌビア・グラクティブ):国内で最も処方実績が豊富なDPP-4阻害薬。ただし腎機能に応じた用量調節(50mg→25mg→12.5mg)が必要。後発品が発売されており薬価面でのメリットがある。
  • 🔵 アログリプチン(ネシーナ錠:1日1回25mgで効果不十分時の増量対応はなし。腎機能に応じた用量調節が必要。後発品も複数販売中。
  • 🔵 ビルダグリプチン(エクア錠:1日2回投与が必要なため、服薬アドヒアランス面で選択が絞られる。2024年12月より後発品が発売されており薬価は先発品の約半分以下に。


テネリア錠40mgからほかのDPP-4阻害薬へ切り替える際は、同クラス内での等価換算に明確なエビデンスがないため、切り替え後の血糖モニタリングを強化することが基本です。切り替え後1〜2か月でのHbA1c・空腹時血糖の確認が原則です。


なお、テネリアとカナグル(SGLT2阻害薬)を別々に処方していた患者を「カナリア配合錠」に集約する選択肢もあります。カナリア配合錠はテネリグリプチン20mg+カナグリフロジン100mgの配合剤であり、テネリア20mg服用中の患者との組み合わせへの切り替えは添付文書に記載があります。ただし、テネリア40mg服用中の患者からカナリア配合錠へ切り替えることはテネリグリプチンの用量が下がるため注意が必要です。


【参考】テネリア40mg使用患者へのカナリア配合錠への切り替えに関するQ&A|田辺ファーマ Medical View Point


テネリア錠に関するインシデントリスク:テルネリンとの取り違え問題

テネリア錠40mgが「ハイリスク薬」に位置付けられている理由を、改めて確認しておく必要があります。


2021年4月、田辺三菱製薬・第一三共・サンファーマの3社は、糖尿病治療薬「テネリア錠20mg」と筋弛緩薬「テルネリン錠1mg」の販売名類似による取り違えについて、医療機関・薬局への注意喚起を共同で実施しました。


実際に複数の取り違え事例が報告されています。


  • ⚠️ 処方箋発行時の薬剤選択で「テネリア20mg」を「テルネリン1mg」で誤入力し、調剤・鑑査・投薬のすべての段階で発見されなかった事例
  • ⚠️ 薬局の処方入力時に「テネリア20mg 1錠 1日1回」を「テルネリン1mg 1錠 1日1回」で入力し、そのまま交付された事例


テネリア錠は糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬)であり、ハイリスク薬です。一方のテルネリン錠はチザニジン塩酸塩を有効成分とする筋弛緩薬です。テルネリンを誤投与された糖尿病患者には、低血圧・傾眠・筋力低下などのリスクがあります。逆もまた問題です。


PMDAもこの取り違えについて複数回の注意喚起を発出しています。取り違えを防ぐための対策として、以下が有効です。


  • ✅ 電子カルテ・薬歴システムの候補表示で「テネリア」と「テルネリン」が連続して表示されないよう設定を見直す
  • ✅ 調剤時の鑑査で薬剤名の最初の4文字だけに頼らず、製剤番号・識別コード(識別印字:「40 テネリア」など)で最終確認を行う
  • ✅ 薬袋・薬情への「糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬)」の明記により、患者自身も間違いに気づきやすくする


テネリア錠40mgには識別コード「40 テネリア」が錠面に印字されています。確認は1秒です。


【参考】テネリアとテルネリンの販売名類似による取り違え注意のお願い(PMDA)PDF


DPP-4阻害薬テネリグリプチンの副作用:水疱性類天疱瘡への対応

テネリア錠(テネリグリプチン)を含むDPP-4阻害薬全般の重要な副作用として、近年特に注目されているのが水疱性類天疱瘡(BP:Bullous Pemphigoid)です。


水疱性類天疱瘡とは、皮膚に緊満性の水疱・びらんが生じる自己免疫疾患です。DPP-4阻害薬開始後、半年〜1〜2年後に発症することが多く、高齢者に多い傾向があります。日本人では紅斑を伴わない「非炎症型」が多く、発見が遅れやすいとされています。


2025年10月に発表されたCareNet.comの学術情報では、テネリグリプチンが水疱性類天疱瘡の発症リスクと関連する可能性が示唆されています。ただし、DPP-4阻害薬クラス全体としてのリスクとして報告されており、テネリグリプチン単剤固有の問題ではない点も確認されています。


処方中に患者から「皮膚にかゆみや水ぶくれが出た」という訴えがあった場合の対応フローは以下です。


  • 🔴 Step 1:速やかに皮膚科医と連携する
  • 🔴 Step 2:水疱性類天疱瘡の疑いがある場合は、DPP-4阻害薬の投与を中止するか減量する
  • 🔴 Step 3:血糖管理の継続のため、代替薬(SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)への切り替えを検討する
  • 🔴 Step 4:因果関係が疑われる場合は、MedWatchへの副作用報告を行う


なお、DPP-4阻害薬の投与中止後も皮疹が完全に消失するまでに数か月を要することがあるため、投与中止後も経過観察が必要です。注意が必要ですね。


テネリア錠40mgを服用中の患者全員について、定期的な皮膚症状の確認を問診に組み込んでおくことが、発症の早期発見につながります。添付文書の第20版(2025年12月)改訂でも水疱性類天疱瘡に関する注意喚起が継続して記載されており、情報のアップデートが求められます。


【参考】インクレチン関連薬の安全な使用に関するRecommendation 第2版(日本糖尿病学会)PDF


テネリア錠40mgに関する「販売中止」情報の正しい患者説明と今後の展望

「テネリア錠40mgが販売中止になると聞いた。薬が変わるのか?」と患者から問い合わせを受けたとき、適切な説明ができるかどうかが医療従事者の信頼につながります。


まず確認しておく事実は次のとおりです。


  • 📌 テネリア錠40mgは現在も先発品として処方・調剤が可能(田辺ファーマが単独販売中)
  • 📌 2024年9月以前は第一三共もMRとして販売活動に関与していたが、2024年9月3日以降は田辺ファーマ単独体制に移行済み
  • 📌 薬価は2026年4月1日以降の改定値も公開されており、供給は維持されている
  • 📌 ジェネリック(後発品)は2026年3月時点で未発売(先発品のみ)


患者への説明はシンプルにまとめられます。「薬の名前も中身も変わっていません。ただ、担当の製薬会社が変わったため、一時的に情報が混乱した面があります。引き続き同じ薬を処方・服用いただけます」という説明で多くの患者は安心します。


今後の展望として、テネリグリプチンの特許期間の終了とともに後発品(ジェネリック)の参入が見込まれます。後発品が薬価収載されると、「後発品への変更調剤」が薬局段階で進む可能性があります。2024年からの厚生労働省の方針として、後発品から先発品への変更調剤も処方医の確認なしに一定条件のもとで認められる方向性が示されており、服薬指導での対応幅が広がっています。


医療従事者としては「販売中止」「製薬会社の変更」「後発品参入予定」という3つの情報が混在しやすいため、情報ソースを田辺ファーマの公式Medical View Pointや添付文書改訂情報(DSU)で随時確認する習慣をつけることが重要です。


【参考】テネリア錠20mg・40mg・OD錠 最新添付文書・製品情報|田辺ファーマ Medical View Point






【第2類医薬品】クラリチンEX 42錠