リン酸コデイン散と麻薬の区分・管理・調剤の必須知識

リン酸コデイン散は「1%散=非麻薬」「10%散=麻薬」と濃度だけで法的区分が大きく異なります。処方箋記載要件・保管廃棄義務・麻薬加算の算定可否・12歳未満禁忌など、医療従事者が現場で必ず押さえるべき知識を網羅的に解説しました。正しく理解できていますか?

リン酸コデイン散の麻薬区分・管理・調剤の注意点を徹底解説

同じコデイン成分の散剤でも、1%散は非麻薬のため麻薬加算70点が算定できず、誤って算定すると不正請求になります。


この記事の3ポイント要約
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濃度で180度変わる麻薬区分

リン酸コデイン散は「1%以下」なら家庭麻薬(非麻薬)、「10%以上」なら法定麻薬。同じ有効成分でも濃度だけで法的義務がまったく異なる。

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麻薬処方箋の必須記載事項

10%散の処方箋には「麻薬施用者免許証番号」と「患者住所」の記載が必須。記載漏れは調剤拒否・疑義照会の対象となる。

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12歳未満への投与は全面禁忌

2019年7月以降、コデイン類含有製剤は濃度・規格を問わず12歳未満への投与が禁忌。非麻薬の1%散も例外なく対象。


リン酸コデイン散における麻薬と非麻薬の濃度区分とは



リン酸コデイン散を扱う医療従事者がまず確実に押さえるべきなのが、「濃度によって法的区分が180度変わる」という事実です。


コデインおよびその塩類は、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)において原則として麻薬に指定されています。しかし依存性(耽溺性)が比較的低いという理由から、重量比で1,000分の10以下、すなわち1%以下の濃度で配合されており、かつ他の麻薬成分を含有しない場合に限り、「家庭麻薬」として法律上の麻薬規制の対象から外されています。


つまり区分は以下の通りです。リン酸コデイン散1%(日本薬局方収載品)は非麻薬、リン酸コデイン散10%は麻薬、原末(100%)も当然ながら麻薬です。錠剤でも同様で、コデインリン酸塩錠5mgは非麻薬、20mg錠は麻薬扱いとなります。濃度が区分の基準です。


この区分を整理すると、以下のようになります。


製品名 濃度 麻薬区分
リン酸コデイン散1%(各社品) 1% 非麻薬(家庭麻薬)
コデインリン酸塩錠5mg(各社品) 約1% 非麻薬(家庭麻薬)
リン酸コデイン散10%(各社品) 10% ✅ 麻薬
コデインリン酸塩錠20mg(各社品) 約13〜33% ✅ 麻薬
コデインリン酸塩水和物原末 100% ✅ 麻薬


現場でヒヤリハットが多発しやすいのがこのポイントです。医師がコデインリン酸塩散1%を処方しようとして、同一有効成分のコデインリン酸塩錠20mgを誤って処方してしまったという事例が実際に報告されています(東京大学・澤田教授監修、リクナビ薬剤師報告事例)。この場合、薬局薬剤師が処方箋を受け付けた時点で麻薬施用者の免許証番号と患者住所の記載がないことに気づき、疑義照会するプロセスが必要になります。気づかずにそのまま調剤してしまうと法令違反になりかねません。これは見落とせないリスクですね。


また「家庭麻薬」という言葉から「薬局で自由に扱える麻薬のような成分」と誤解するケースもありますが、正確には「法律上の麻薬ではない(麻薬規制の対象外)」という意味であり、依存リスクがゼロになるわけではありません。臨床での運用においては、濃度区分を常に意識することが原則です。


参考:麻薬と非麻薬があるコデインリン酸塩の注意点(リクナビ薬剤師・澤田教授監修)
https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/074/


リン酸コデイン散(麻薬)の処方箋記載要件と調剤時の確認事項

リン酸コデイン散10%など麻薬扱いの製剤が処方された場合、薬局・病院薬剤師には通常とは異なる処方箋チェックが求められます。


麻薬及び向精神薬取締法第27条第6項の規定により、麻薬を処方できるのは都道府県知事の免許を受けた「麻薬施用者」のみです。通常の処方箋に記載する内容(患者氏名・年齢・薬名・分量・用法用量・発行日・医師名等)に加えて、以下の2項目が必須記載事項となります。


  • 麻薬施用者の免許証番号(処方医が保有する都道府県発行の免許番号)
  • 患者の住所(入院患者・院内処方の場合は省略可)


これらの記載が欠けている処方箋は、法律上の麻薬処方箋として成立しません。薬局薬剤師は受付の時点でこの2点を確認し、不備があれば疑義照会を行う義務があります。「先に調剤しておいて後から確認する」という運用は絶対に避けなければなりません。麻薬処方箋の確認が最初の関門です。


さらに麻薬処方箋には有効期間があります。一般の処方箋の有効期間が発行日を含め4日以内(休日を含む)であるのに対し、麻薬処方箋は原則として発行日を含め6日以内に調剤されなければなりません。この点は現場でも混同されやすいため注意が必要です。


調剤後は麻薬帳簿への記録も義務づけられています。帳簿の最終記載日から2年間の保存が法律で定められており、この記録義務は年次更新の管理体制の整備が不可欠です。また、麻薬の調剤は麻薬小売業者(都道府県知事の免許を受けた薬局)でなければ行えません。一般薬局でも麻薬小売業者免許を取得していない場合は調剤できないことを覚えておく必要があります。


なお、ファクシミリによる麻薬処方箋の取り扱いも可能とされており、患者・家族の負担軽減のため、FAXで送信された処方箋内容に基づいて調剤を開始することができます。ただし、実際に処方箋原本を受領した際に記載内容を再確認したうえで麻薬を交付することが必須です。FAXだけで完結させてはなりません。


参考:医療用麻薬 適正使用ガイダンス(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/iryo_tekisei_guide2017_04.pdf


リン酸コデイン散(麻薬)の保管・廃棄に関する法的義務

麻薬であるリン酸コデイン散10%を取り扱う医療機関・薬局には、保管と廃棄に関して非常に厳格な規定が設けられています。「鍵付きの棚に入れておけばよい」という曖昧な認識は法令違反につながります。


保管は「麻薬専用の固定した金庫、または容易に移動できない重量金庫で、施錠設備のあるもの」に限られます。手提げ金庫・スチール製ロッカー・事務机の引き出しは法令上の「堅固な設備」には該当しません。また麻薬保管庫内には一般医薬品・現金・書類との混在が禁止されており、麻薬専用スペースの確保が条件です。


廃棄に関してはさらに厳密な手続きが求められます。廃棄前に都道府県知事への届け出が必要で、品名・数量・廃棄方法を事前に報告します。廃棄方法は酸・アルカリによる分解、希釈、他薬との混合、焼却など「麻薬の回収が困難な方法」でなければなりません。廃棄後も帳簿に品名・数量・日付・立会者の署名を記録します。


在宅患者が使用しなかった麻薬を医療機関・薬局に返却してきた場合も、受け取り後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を提出しなければなりません。これは意外と見落とされやすいケースです。期限は30日以内が条件です。


2名以上の麻薬施用者が在籍する診療施設では、都道府県知事の免許を取得した「麻薬管理者」1名を置くことが義務づけられています。1名の診療所であれば麻薬施用者が管理者を兼任することができますが、兼任であっても管理義務は同様に課されます。


これらの規定に違反した場合、麻薬及び向精神薬取締法に基づき、施設責任者が行政処分(免許取消し・業務停止等)や刑事罰の対象となり得ます。厳しいところですね。法的リスクを回避するために、麻薬取り扱い手順書の整備と定期的な内部確認を施設ごとに行うことが重要です。


参考:麻薬取扱いの手引(東京都保健医療局)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/iyaku/sonota/toriatsukai/tebiki/phmayaku.files/R0507_mayaku_kourigyou.pdf


リン酸コデイン散と麻薬加算の算定可否を正しく理解する

調剤報酬において、リン酸コデイン散の「麻薬加算(1調剤につき70点)」の算定可否を正確に理解することは、日常業務の請求ミスを防ぐ上で非常に重要です。


麻薬等加算の対象となるのは、麻薬及び向精神薬取締法で「麻薬」として規制されている薬剤を調剤した場合に限られます。そのため、家庭麻薬である1%散(非麻薬)は麻薬加算の算定対象外となります。算定できるのは10%散・20mg錠・原末など、麻薬扱いの規格に限られます。1%散への麻薬加算は算定不可が原則です。


製品名・規格 麻薬区分 麻薬加算(70点)
リン酸コデイン散1% 非麻薬(家庭麻薬) ❌ 算定不可
リン酸コデイン散10% 麻薬 ✅ 算定可
コデインリン酸塩錠20mg 麻薬 ✅ 算定可
コデインリン酸塩水和物原末 麻薬 ✅ 算定可


実際のヒヤリハット事例として、「コデインリン酸塩散に麻薬加算を入力した」「薬局の内規でコデインリン酸塩散は咳止めとして処方されているとき麻薬加算は算定しないことになっていたが、担当者が算定してしまった」という事例が公益財団法人日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリハット事例集に掲載されています。規格の確認が最初のステップです。


なお、麻薬加算(70点)のほかに「麻薬管理指導加算」という別の加算もあります。これは麻薬が処方されている患者またはその家族に対して、麻薬の使用に関する必要な薬学的管理指導を行った場合に加算できるもので、麻薬加算との併算定が可能です。ただし同一月に在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算との同時算定はできません。加算の種類と要件を整理して理解しておくことが、適切な算定管理につながります。


参考:麻薬等加算の算定要件(m3.com薬剤師向け記事、2025年6月改定版)
https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/6474


リン酸コデイン散と12歳未満への投与禁忌・改訂の背景

リン酸コデイン散に関するルールで、現場で特に見落とされやすいのが「12歳未満への投与禁忌」です。これは麻薬扱いの10%散だけでなく、非麻薬である1%散を含む全コデイン類含有製剤が対象となっています。


発端は2017年4月の米国FDA(食品医薬品局)勧告です。FDAはコデイン類含有製剤について、12歳未満の小児への鎮咳・鎮痛目的での使用を禁忌とするよう勧告しました。その理由は、コデインが体内でモルヒネへ代謝される際、遺伝的なCYP2D6酵素の代謝能力が高い「超高速代謝者」の小児で過剰なモルヒネが急速に生成され、重篤な呼吸抑制や死亡事例が複数報告されたためです。


これを受けて日本でも厚生労働省が2017年6月に対応方針を決定し、経過措置期間を経て、2019年7月9日付けの通知により全コデイン含有製剤での12歳未満への投与が全面禁忌となりました。改訂は遅れて適用されています。


「小児には処方しないから関係ない」という認識は危険です。OTC(市販薬)として販売されているコデイン含有かぜ薬・咳止め薬についても同様の改訂が行われているため、薬局での相談対応の際に保護者への説明が必要です。また18歳未満であっても、扁桃摘除術後またはアデノイド切除術後の鎮痛目的でのコデイン投与は禁忌とされています。


  • 12歳未満の小児:コデイン類含有製剤(濃度・規格を問わず)すべて禁忌
  • 18歳未満の扁桃摘除術後・アデノイド切除術後:鎮痛目的での使用が禁忌
  • 18歳未満で肥満・閉塞性睡眠時無呼吸症候群・重篤な肺疾患を有する患者:投与禁忌


年齢と術後の両軸で確認が必要ですね。術後鎮痛薬の選択時には特にこの点を意識した処方・調剤チェックが求められます。


参考:コデインリン酸塩等の12歳未満の小児等への使用制限について(PMDA)
https://www.pmda.go.jp/files/000230395.pdf


参考:使用上の注意の改訂について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000542419.pdf


リン酸コデイン散の乱用・依存リスクと医療従事者が果たすべき役割

コデインの依存リスクは、患者への服薬指導においても、自施設の処方管理においても、医療従事者が意識し続けるべき課題です。


コデインはオピオイド系成分であり、体内でモルヒネに約10%が変換されます。モルヒネと比較した場合、鎮痛効果は約1/6、眠気は約1/4程度とされますが、高用量での使用によって多幸感が生じ、依存・乱用へ発展するリスクを持っています。麻薬である10%散よりも、むしろ入手しやすい1%散や市販薬のほうが乱用の温床になっているという逆説的な現状があります。意外ですね。


市販薬オーバードーズ(OD)の原因薬剤として、コデイン・ジヒドロコデイン含有製剤が一定の割合を占めており、若年層を中心に「コデイン系OTC」を複数の薬局やドラッグストアを巡って購入する「はしご買い」が社会問題化しています。この行動パターンは依存症の典型的な特徴の一つです。


厚生労働省は現在、コデインを「濫用等のおそれのある医薬品」に指定しています。2023年4月以降はOTC規制がさらに強化され、コデイン含有製剤の複数個販売制限や購入者への年齢確認が法令上義務づけられるようになりました。これは薬局業務に直結する対応事項です。


医療従事者としての具体的な対応ポイントをまとめます。


  • 🔍 処方時の確認:コデイン含有薬の長期・反復処方の場合、依存形成リスクがないか患者の状態を評価する
  • 💬 服薬指導での説明:「咳止めだから安全」という誤認識を解消し、用法用量の厳守を伝える
  • 🏪 OTC購入歴の確認:来局時に市販薬の購入状況を聞き取り、コデイン含有製品の重複使用を確認する
  • 🏥 依存が疑われる場合:精神科・依存症外来への連携・紹介を検討する


特に薬局窓口では、複数回来局する若い患者がコデイン含有OTC薬のみを繰り返し購入しているケースに気づいたとき、声かけをするかどうかの判断が求められます。形式的に販売数を制限するだけでなく、患者本人への丁寧な確認が依存防止の第一歩です。これは使えそうな視点です。


また、医療用のリン酸コデイン散10%(麻薬)については、処方枚数・調剤記録が厳格に管理されているため、乱用の早期発見は比較的容易です。しかし、非麻薬の1%散については法的管理が緩い分、処方量の変化や患者の言動に対して薬剤師側が自発的に気づく「気づきのアンテナ」が重要になります。麻薬区分だけで管理レベルを判断しないことが大切です。


参考:濫用等のおそれのある医薬品の適正使用について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000542417.pdf







【指定第2類医薬品】イブA錠 90錠