「散1%」が処方されているのに麻薬加算を算定すると、不正請求扱いで返戻リスクがあります。

コデインリン酸塩散は「同じ有効成分なのに、規格によって麻薬になったりならなかったりする」という、医療現場で混乱が生じやすい薬剤のひとつです。その区分の根拠は、「麻薬及び向精神薬取締法」と、これに紐付く政令(平成二年政令第二百三十八号)にあります。
法律の定義によると、コデインおよびその塩類は原則として麻薬に該当します。しかし、耽溺性が比較的低いことを考慮して、「重量比で1,000分の10以下(1%以下)を含有し、かつこれら以外の麻薬を含有しない」製剤については、「家庭麻薬」として法律上の麻薬から除外されています。
つまり散1%が基準です。
具体的に整理すると、以下のような区分になります。
| 製剤名(例) | 濃度 | 麻薬・非麻薬 |
|---|---|---|
| コデインリン酸塩散1%(各社) | 1% | 非麻薬(家庭麻薬) |
| コデインリン酸塩錠5mg(各社) | 1%相当 | 非麻薬(家庭麻薬) |
| コデインリン酸塩散10%(タケダ・第一三共) | 10% | 麻薬 ⚠️ |
| コデインリン酸塩錠20mg(タケダ・第一三共) | 13〜33%相当 | 麻薬 ⚠️ |
| コデインリン酸塩水和物原末(各社) | 100% | 麻薬 ⚠️ |
「散1%は非麻薬」という事実は現場でも意外と見落とされがちで、誤って麻薬加算を算定してしまうヒヤリハット事例が複数報告されています。非麻薬に麻薬加算を算定した場合、保険請求上の誤りとして返戻・査定の対象になります。これは直接的な収益ロスにつながるため、規格の確認は処方受付時の最優先チェック事項と言えます。
参考:麻薬と非麻薬があるコデインリン酸塩の注意点(リクナビ薬剤師・澤田教授監修)
https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/074/
麻薬(10%散・錠20mgなど)を処方する場合、通常の処方箋の記載事項に加えて、麻薬及び向精神薬取締法第27条に基づく以下の項目が必須となります。
中でも「患者住所」と「麻薬施用者免許証番号」の2つは、通常の処方箋には存在しない記載事項であるため、特に見落としが起きやすい箇所です。
実際の現場で起きたヒヤリハット事例を見てみましょう。ある薬局で、コデインリン酸塩錠20mg「タケダ」が処方された際、処方箋に麻薬施用者免許証番号と患者住所の記載がありませんでした。薬剤師が疑義照会を行ったところ、医師は「散1%を処方するつもりだったが、誤って錠20mgを処方してしまった」と説明し、散1%に処方変更となりました。
結論は「疑義照会で防げた」です。
この事例が示すように、医師自身がコデインリン酸塩の規格と麻薬区分を正確に把握していないケースも少なくありません。薬剤師による処方箋チェックが最後の砦として機能する場面であり、処方箋を受け付けた段階で規格と必要記載事項を必ず突き合わせる習慣が重要です。
なお、「家庭麻薬(散1%)」は法律上の麻薬ではないため、処方箋には通常の記載事項のみで問題ありません。散1%なら記載不備の心配はありません。
参考:コデインリン酸塩の規格には麻薬と非麻薬があるので注意!(福岡市薬剤師会)
https://fukuokashi-yakkyoku.info/wp-content/uploads/2014/10/20110614.pdf
コデインリン酸塩散10%や錠20mgなど、法律上の麻薬に該当する製剤は、保管・管理・廃棄のすべてのフェーズで厳格なルールが課せられます。これを怠ると法令違反となるため、実務上の知識として正確に押さえておく必要があります。
保管については、薬局(調剤室)内に設置した麻薬専用の固定式金庫に鍵をかけて保管することが義務付けられています。麻薬専用金庫ということが条件です。他の薬剤との混在保管は不可であり、金庫の鍵の管理も記録が必要です。
廃棄については、「麻薬の回収が困難な方法」でなければなりません。具体的には焼却・放流・酸・アルカリによる分解・希釈・他薬剤との混合などが認められており、廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を都道府県知事に提出する義務があります。廃棄後30日が期限です。
また、記録管理も重要なポイントです。麻薬の受払帳簿には品名・数量・年月日を記載し、最終記載の日から2年間保存することが求められています。単なる記録ミスであっても、行政の実地検査で指摘された場合には業務改善勧告の対象となり得ます。
厳しいところですね。
なお、コデインリン酸塩散1%(非麻薬・家庭麻薬)については、これらの麻薬管理規定は原則として適用されません。ただし、10%散を1%散に希釈して予製した場合(いわゆる「10倍散の予製」)は、元の10%散が麻薬であるため、予製品についても麻薬に準じた取り扱いが必要と都道府県によって指導されているケースがあります。予製した散は麻薬に準じる扱いが必要なことがあります。この点は各都道府県の薬務主管課への確認が推奨されます。
参考:薬局における麻薬管理マニュアル(愛知県)
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/570549.pdf
コデインリン酸塩は体内でモルヒネに代謝されます。これがこの薬剤の鎮咳・鎮痛効果の源であると同時に、依存性や副作用のリスクの根拠でもあります。成人においてモルヒネへの変換率はおよそ5〜10%程度とされており、コデイン自体も延髄の咳中枢を直接抑制することで鎮咳効果を発揮します。
問題となるのは、このモルヒネへの代謝速度が遺伝的に大きく異なる点です。CYP2D6という薬物代謝酵素の遺伝子多型により、いわゆる「超高速代謝者(ultra-rapid metabolizer)」ではコデインが急速にモルヒネへ変換されるため、通常量の投与でも重篤な呼吸抑制や死亡事故が報告されています。
これが12歳未満禁忌の核心です。
こうした背景から、2019年7月9日付の厚生労働省通知により、コデイン類を含むすべての医療用医薬品において「12歳未満の小児への投与禁忌」が正式に施行されました。それ以前は「小児への使用を避けること」という注意喚起に留まっていましたが、この改訂により添付文書の「禁忌」欄に明記されています。
具体的な禁忌の内容は以下のとおりです。
長期連用による薬物依存性も重要な懸念事項です。散1%(非麻薬)であっても長期投与の繰り返しにより依存が形成される可能性があるため、慎重な投与判断が求められます。なお、散1%は医療用麻薬の処方日数制限(麻薬は原則30日上限)の対象外ですが、それは「何日でも投与してよい」という意味ではありません。依存性リスクへの配慮は非麻薬でも必要です。
参考:コデインリン酸塩等の12歳未満の小児における使用の禁忌化について(PMDA)
https://www.pmda.go.jp/files/000230395.pdf
コデインリン酸塩散に関する保険請求上の注意点は、現場でのミスが起きやすい領域のひとつです。特に「麻薬加算の算定可否」と「処方日数上限の適用有無」については、規格によって扱いが180度変わります。
まず麻薬加算については、調剤薬局で処方中に麻薬が含まれる場合に算定できる加算であり、1調剤につき70点(令和6年度改定後)が算定可能です。しかし、コデインリン酸塩散1%は法律上の麻薬ではないため、麻薬加算は算定できません。
次に処方日数制限について。麻薬扱いとなるコデインリン酸塩(原末・10%散・20mg錠)は、保険診療上の投与日数の上限が1回30日分に制限されています。一方、散1%・錠5mgは医療用麻薬の処方日数制限には該当しないため、日数制限の枠外となります。
30日が麻薬の上限です。
ただし、日数制限がない散1%であっても、上述のとおり依存性リスクがある薬剤であることには変わりません。長期処方が続いている患者に対しては、服薬状況や依存傾向を定期的に確認する視点が求められます。特に疼痛目的での長期投与は、患者の行動変化(頻繁な早期受診・残薬の申告なし等)をチェックする機会として活用できます。
また、在宅患者への麻薬(10%散など)調剤では、廃棄時の記録義務や廃棄届の提出が伴うため、在宅医療に関わる薬剤師は事前に都道府県のガイドラインを確認しておくと安心です。
参考:処方日数制限のある医薬品一覧・令和6年度最新版(nana pharmacist)
https://nanapharmacist.com/touyakunissuu/
参考:麻薬等加算の算定要件・改定内容(m3.com 薬剤師)
https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/6474

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