カデックス軟膏の効果と正しい使い分けで褥瘡治療を最適化する

カデックス軟膏の効果や作用機序、褥瘡の病期に応じた正しい使い分けを医療従事者向けに解説。甲状腺・腎機能への注意点や他剤との違いも知っていますか?

カデックス軟膏の効果と褥瘡治療への活用法

カデックス軟膏を「感染創なら何でも使えばいい」と思って使い続けると、創が逆に乾燥して治癒が遅れるリスクがあります。


この記事の3ポイント
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カデキソマー+ヨウ素の二重メカニズム

カデックス軟膏はカデキソマーポリマーが滲出液を吸収しながら、ヨウ素を徐放することで持続的な殺菌と創面清浄化を同時に実現します。

⚠️
使う時期を間違えると逆効果

滲出液が少ない赤色期以降に使用すると創面が乾燥し、治癒が遅延するおそれがあります。黒色期〜黄色期が主な適応です。

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甲状腺・腎機能への全身影響を見落とさない

ヨウ素の全身吸収により甲状腺機能変動や腎機能障害患者での血清ヨウ素濃度上昇が起こるリスクがあり、長期・広範囲使用は特に注意が必要です。


カデックス軟膏の作用機序と有効成分の基本


カデックス軟膏0.9%は、スミス・アンド・ネフュー株式会社が製造販売する褥瘡・皮膚潰瘍治療剤です。有効成分は1g中ヨウ素9mg(0.9%)であり、基剤にはカデキソマー150(デキストリンポリマー製の吸水性ポリマービーズ)とマクロゴール400・マクロゴール4000が使用されています。


この剤のポイントは、「吸水」と「殺菌」という2つの作用が連動している点にあります。カデキソマーのビーズが創面の滲出液・膿・細菌・起炎物質を吸収し、その引き換えにヨウ素が徐放されます。結果として、創面は清浄化されながら持続的に低濃度のヨウ素による殺菌作用を受け続けることになります。


つまり、単なる消毒薬とは根本的に異なる仕組みです。
























作用 担う成分 効果の内容
滲出液吸収・創面清浄化 カデキソマー(ポリマービーズ) 膿・細菌・起炎物質を吸収し創面を清浄に保つ
持続的殺菌 ヨウ素(I₂) 徐放により低濃度で長時間、黄色ブドウ球菌・緑膿菌に作用
壊死組織除去 カデキソマー 吸水により壊死組織を軟化・除去しやすくする


国内第Ⅲ相試験では各種皮膚潰瘍患者227例を対象に試験が実施され、褥瘡での有効率は65.6%(157例中103例)、熱傷潰瘍では93.9%(33例中31例)が有効以上と評価されました。また、細菌感染が認められた79例中50例(63.3%)で菌の消失・減少が確認されています。これが基本です。


ヨウ素の徐放速度についても重要な特徴があります。添付文書によれば、カデックス軟膏はユーパスタ(精製白糖・ポビドンヨード)に比べてヨウ素放出が緩徐であり、創面に3〜6時間以上にわたって低濃度ヨウ素を持続的に放出し続けることが可能です。これが「低濃度・長時間接触」というコンセプトにつながり、創傷治癒に必要な白血球や線維芽細胞へのダメージを最小限に抑えながら、細菌に有効な殺菌作用を維持できる理由です。


参考:カデックス軟膏添付文書(JAPIC・スミス・アンド・ネフュー)に基づく作用機序の詳細
カデックス軟膏0.9% 添付文書(JAPIC)


カデックス軟膏の効果が最大化される褥瘡の病期と適切な使い分け

褥瘡の局所療法では、創の状態を正確に評価したうえで外用薬を選択することが不可欠です。一般的に深い褥瘡は「黒色期→黄色期→赤色期→白色期」という順で治癒に向かっていきます。カデックス軟膏が最も力を発揮するのは、滲出液が多く感染が活発な黒色期〜黄色期の段階です。


黒色期は硬い壊死組織が創面を覆った状態で、黒色痂皮が形成されています。外科的デブリードマンが基本になりますが、薄く柔らかい壊死組織であれば化学的デブリードマンとしてカデックス軟膏を使用します。黄色期は壊死組織が残存しつつも滲出液が増加した炎症活発期であり、カデックス軟膏の適応としてはこの時期が中心となります。


これが原則です。


一方、滲出液が減少して創面が乾燥傾向に転じた時期にカデックス軟膏を継続使用すると、吸水性基剤が創から水分を過剰に引き出してしまい、乾燥による治癒遅延を招くリスクがあります。創面が乾燥し始めたと判断した時点で、速やかにイソジンシュガー軟膏(ポビドンヨード・シュガー)やゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)への変更を検討することが実践上の鍵です。


































褥瘡の病期 創の状態 推奨外用薬(例) カデックス軟膏の適否
黒色期 硬い黒色壊死組織 ゲーベンクリーム、ブロメライン軟膏 △(軟らかい壊死組織であれば考慮可)
黄色期(感染極期) 滲出液多量・感染活発 カデックス軟膏、ユーパスタ ✅ 最も適した時期
黄色期→赤色期(移行期) 滲出液減少傾向 イソジンシュガー軟膏 ⚠️ 乾燥傾向なら変更を検討
赤色期〜白色期 肉芽形成・上皮化 アクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏、アズノール軟膏 ❌ 使用中止が原則


なお、感染徴候が消失した時点では、滲出液の量にかかわらずカデックス軟膏の使用を中止し、細胞障害作用のない局所療法に移行することが勧められています。感染が制御された後もヨウ素系薬剤を漫然と使い続けることは、肉芽形成に不要なダメージを与えます。意外ですね。


参考:褥瘡外用薬の病期別選択と使い分けに関する解説
外用薬(軟膏など)が褥瘡に効くメカニズムを知って効果的に使用する|アルメディアWEB


カデックス軟膏の正しい使い方と交換タイミングの見極め方

カデックス軟膏の用法の基本は、潰瘍面を生理食塩液などで清拭・洗浄した後、患部に約3mmの厚さで塗布することです。目安は「直径4cmあたり3g」とされており、10円玉2枚を重ねたような厚みが一つの基準になります。通常は1日1回ですが、滲出液の量が多い場合は1日2回塗布することが認められています。


洗浄時には、交換のたびに生理食塩液等でカデキソマービーズをしっかり洗い流すことが必須です。創内にビーズが残存すると感染や炎症の原因になります。これは必須です。


実践上、交換タイミングの判断に重要なサインが「軟膏の色変化」です。カデックス軟膏は褐色(ヨウ素の色)を呈していますが、ヨウ素が創面の細菌やタンパク質と結合し消費されると、白色や淡黄色に変色します。白くなっていた場合は、ヨウ素がすでに使い果たされたサインであり、殺菌効果はほぼ消失しています。交換時にほとんど白くなっている場合は、1日2回への変更を検討する必要があります。


また、健常な周囲皮膚にカデックス軟膏が付着すると、皮膚が褐色・黄色に着色することがあります。これはヨウ素による着色であり副作用ではありませんが、患者・家族への事前説明が望ましいです。いいことですね、説明しておけば無用な不安を防げます。



  • ✅ 潰瘍面を生理食塩液等で十分に洗浄・清拭してから塗布する(前処置は必須)

  • ✅ 厚さ約3mm(10円玉2枚分)を目安に均一に塗布する

  • ✅ 交換時は創内にビーズが残らないよう生理食塩液でしっかり洗い流す

  • ✅ 軟膏の色が白く変色したら交換時期のサイン(1日2回への変更を検討)

  • ✅ 感染徴候が消失したら漫然継続せず使用を終了する

  • ⚠️ 塗布時に容器の先端が創面に触れないよう注意(汚染防止)

  • ⚠️ 健常皮膚へのはみ出しは着色の原因となるため最小限に抑える


閉鎖性ドレッシング法(薬剤塗布後にフィルムドレッシング材で密閉)との組み合わせも有効とされています。フィルムで密閉することで軟膏が創面にとどまり、徐放されたヨウ素が流出せずに有効濃度を維持できます。ガーゼのみで覆った場合、せっかく徐放されたヨウ素の大部分がガーゼに吸収されてしまい、創面への効果が著しく低下するという報告もあります。


参考:感染した褥瘡の局所療法と各薬剤の使い分けについて詳しい解説
第09回 感染した褥創の局所療法|高岡駅南クリニック


カデックス軟膏使用時の注意すべき副作用と禁忌・全身影響

カデックス軟膏を褥瘡治療に用いる際、局所の効果だけに目を向けていると見落としがちなのが全身への影響です。有効成分のヨウ素は、創面から吸収されて血中に移行することが確認されており、特定の患者群では重大なリスクにつながります。


まず禁忌として、ヨウ素過敏症の患者への使用は絶対禁忌です。


次に、甲状腺機能に異常のある患者への使用は慎重に行う必要があります。添付文書では「創面から吸収されたヨウ素により症状が悪化するおそれがある」と明記されています。また、長期・広範囲使用では甲状腺機能の変動(亢進・低下いずれも)に注意するよう記載されています。低T3症候群を呈する患者10例に2週間投与した試験では有意な変動は認められなかったとの報告もありますが、臨床では個々の患者背景を確認したうえで判断することが重要です。


腎機能障害患者では、血清中ヨウ素濃度が著しく上昇するおそれがあります。腎排泄が低下することでヨウ素が蓄積しやすくなるためであり、腎機能が低下した患者への長期使用は特に注意が必要です。


重症熱傷の患者では、広範囲への使用によりアシドーシスを起こすおそれがあります。これは基剤のマクロゴールが広範囲の創面から吸収されることに関連する可能性があります。


妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとし、長期・広範囲の使用は避けることとされています。授乳婦についても同様の注意が必要で、授乳の継続または中止を検討することが求められます。



  • 🚫 絶対禁忌:ヨウ素過敏症の患者

  • ⚠️ 慎重投与:甲状腺機能異常のある患者(ヨウ素吸収で症状悪化のリスク)

  • ⚠️ 慎重投与:腎機能障害患者(血清ヨウ素濃度が著しく上昇するおそれ)

  • ⚠️ 慎重投与:重症熱傷患者(広範囲使用でアシドーシスのリスク)

  • ⚠️ 慎重投与:妊婦・授乳婦(有益性が上回る場合のみ、長期・広範囲は避ける)

  • ⚠️ 慎重投与:小児・新生児(ヨウ素系製剤で甲状腺機能低下症の報告あり)


また、添付文書にある通り「約2ヶ月間投与しても症状の改善が認められない場合には、外科的療法等を考慮すること」とされています。保存的治療の限界を超えた場合の判断が、ケアの質を左右します。これは覚えておきたいところです。


参考:薬剤の禁忌・副作用・注意事項についての総合情報
カデックス軟膏0.9%|今日の臨床サポート


カデックス軟膏とユーパスタ・ゲーベンクリームの実践的な使い分けポイント

臨床現場で医療従事者が迷いやすいのが、同じ感染創・黄色期褥瘡に対してカデックス軟膏・ユーパスタ・ゲーベンクリームをどう使い分けるか、という判断です。それぞれの薬剤特性を整理しておくことが、適切な薬剤選択の第一歩です。


カデックス軟膏の最大の特徴は、「非常に高い吸水力」と「ヨウ素の緩徐な徐放」の組み合わせにあります。感染が極期で滲出液が最も多い状況でも、3〜6時間以上にわたって低濃度ヨウ素を創面に放出し続けられます。これが使えそうです。


ユーパスタ(精製白糖・ポビドンヨード配合)は、吸水性に優れる点はカデックスと同様ですが、ポビドンヨードによる殺菌と白糖による肉芽形成促進という二重の効果を持ちます。ただし吸水速度が速いため、滲出液が減少した状態ではカデックス同様に乾燥を招くリスクがあります。データとして「吸水力が最も高いのはユーパスタ」という製剤特性の比較研究も報告されており、滲出液が極めて多い時期にはユーパスタが適している場合もあります。


ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)は水分を多く含むO/W型乳剤性基剤であり、乾燥した硬い壊死組織に水分を与えて軟化させる補水作用が特徴です。滲出液が多い創への使用は禁物で、水分過多になり悪化するリスクがあります。ゲーベンクリームは「乾燥傾向の創や硬い壊死組織」に向いています。


































薬剤名 基剤の特性 主な適応時期 滲出液への対応
カデックス軟膏 水溶性(吸水) 黄色期(感染極期) 多量〜中程度に適す
ユーパスタ 水溶性(吸水・最強) 黄色期(滲出最多期) 極めて多量に適す
イソジンシュガー軟膏 水溶性(中程度吸水) 黄色期〜赤色期移行期 中程度に適す
ゲーベンクリーム 乳剤性(補水) 黒色期(硬い壊死組織) 滲出が少ない創に適す


臨床での実践的な流れとしては、感染極期(滲出液最多・感染活発)ではカデックス軟膏またはユーパスタ→滲出液が減少し始めたらイソジンシュガー軟膏→さらに乾燥傾向になればゲーベンクリームへ変更、感染徴候が消えたらヨウ素系薬剤をすべて中止して肉芽形成促進薬(アクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏など)に切り替える、というステップが基本です。


創の状態に応じた薬剤のバトンリレーが治癒のカギです。


参考:褥瘡外用薬の病期別一覧と各薬剤の特徴についての詳しい解説
褥瘡治療薬一覧〜黒色期・黄色期〜|ファーマシスタ




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