ウレパールクリームを「塗るだけ」で保湿は十分と思っていると、乾燥性皮膚炎の再発リスクが3倍以上になることがあります。
ウレパールクリームは、尿素を10%含有する外用保湿剤として長年にわたり皮膚科・内科・在宅医療の現場で広く使われてきた製品です。乾皮症、老人性乾皮症、魚鱗癬、手足のひび割れ・あかぎれといった疾患に対して、保険適用で処方できる利便性が高く、特に高齢者患者を抱える施設や在宅医療の現場では欠かせない選択肢のひとつでした。
しかし、製造販売元の事業整理により、ウレパールクリームは販売中止となりました。供給終了の判断が下された後も一部の流通在庫は残っていたため、しばらくは処方できる施設もありましたが、現在は在庫の枯渇が進んでいます。突然の販売中止です。
医療現場への影響は決して小さくありません。長年同じ薬剤を使い続けてきた慢性疾患の患者にとって、突然の変更は心理的負担にもなります。特に皮膚のバリア機能が低下した高齢者では、代替薬への切り替えが不適切だと症状悪化につながるリスクがあります。これは見過ごせない問題です。
薬局や病院の薬剤師・医師は、患者ごとに適切な代替薬を選定し、丁寧な説明を行う必要があります。在庫確認と代替薬の処方切り替えを、できる限り早急に進めることが求められています。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA):医薬品の安全性情報・販売中止に関する情報
ウレパールクリームの主成分は尿素(ウレア)10%です。尿素は角質の保水・軟化作用を持ち、硬くなった皮膚を柔らかくしながら水分を保持する働きがあります。これが基本です。
尿素は、皮膚の角質層に存在する天然保湿因子(NMF)の主要成分のひとつです。外部から補充することで、乾燥した角質を正常な状態に近づける効果が期待できます。特に冬季や低湿度環境でのスキンケアに有効で、老人性乾皮症や透析患者の皮膚乾燥症状の管理に使われてきた実績があります。
注意点もあります。尿素製剤は傷口や炎症部位への塗布で刺激感・疼痛が生じることがあるため、びらんや潰瘍のある部位には使えません。また、10%濃度は比較的マイルドですが、20%製剤と比べると軟化・角質溶解作用はやや弱めになります。意外ですね。
ウレパールクリームは基剤にワセリンを含む親油性クリーム(油中水型)のため、べたつき感がある一方で保湿持続性が高い特徴があります。患者のライフスタイルや皮膚の状態によって、この基剤の特性が合う・合わないが分かれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | 尿素 10% |
| 剤形 | クリーム(油中水型) |
| 主な適応 | 乾皮症、老人性乾皮症、魚鱗癬、ひびわれ、あかぎれ |
| 禁忌部位 | びらん・潰瘍・炎症部位 |
| 特徴 | 保湿持続性高い、べたつき感あり |
ウレパールクリームの代替として最初に検討される候補が、同じ尿素系外用薬です。代替薬は複数あります。それぞれの製品について、成分・濃度・剤形・メーカーを整理しておくことが、スムーズな処方切り替えの第一歩になります。
主な尿素系外用薬の比較
| 製品名 | 尿素濃度 | 剤形 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| パスタロンクリーム10% | 10% | クリーム | 佐藤製薬 | ウレパールに最も近い処方に近い |
| パスタロンクリーム20% | 20% | クリーム | 佐藤製薬 | 角質軟化・溶解作用が強い |
| パスタロンソフト軟膏20% | 20% | 軟膏 | 佐藤製薬 | 軟膏基剤でべたつきやや強め |
| ケラチナミンコーワクリーム20% | 20% | クリーム | 興和 | 高濃度、皮膚科での使用実績多 |
| ウリモックスクリーム10% | 10% | クリーム | 日本点眼薬研究所 | 10%製剤として代替候補 |
| ユベラNソフトカプセル(内服) | — | 内服 | エーザイ | 皮膚症状への補助的アプローチ |
ウレパールクリームが10%製剤であったことを踏まえると、同濃度での代替としてはパスタロンクリーム10%が最も近い選択肢になります。20%製剤への切り替えは角質溶解作用が強くなるため、高齢者や薄い皮膚の患者では刺激感が増す可能性がある点に注意が必要です。つまり濃度管理が条件です。
剤形についても確認が必要です。ウレパールクリームはクリーム剤だったため、軟膏剤への変更では使用感が大きく変わることがあります。患者が「べたつく」「使いにくい」と感じ、塗布をやめてしまうケースが現場でも報告されています。
処方切り替えで最も避けるべきなのは、患者への説明不足です。薬剤が変わったことを告げず、または簡単な一言だけで済ませてしまうと、患者が「効き目が違う」「使い方が分からない」と感じ、自己中断するリスクが高まります。これは防げます。
確認事項①:使用部位と皮膚状態の再評価
代替薬への切り替えのタイミングは、患者の皮膚状態を再評価する良い機会でもあります。今まで何となく継続していた処方を見直し、乾燥の程度・部位・炎症の有無を改めて確認することで、より適切な選択ができます。特に下肢・足底などの角質が厚い部位では20%製剤が適切な場合もありますが、前腕内側など皮膚が薄い部位では10%が安全です。
確認事項②:濃度変更時の用法・用量調整
10%から20%に切り替える際は、塗布量を意識的に減らすよう指導することが重要です。患者は「同じクリームだから同じように塗ればいい」と考えることが多く、これが刺激感や皮膚炎の原因になります。意外と盲点です。1日1〜2回の塗布頻度と、薄く均一に広げることを具体的に説明します。
確認事項③:患者の受け入れ状況の確認
特に高齢者や在宅患者では、薬の変更に対する不安や抵抗感が強いことがあります。「前の薬の方が良かった」という訴えを否定せず、変更の理由を丁寧に説明することが信頼関係の維持につながります。薬局での服薬指導の際に、変更理由を一言書いた文書を渡すと患者の安心感が高まることも知られています。
日本薬剤師会:薬局での患者対応・処方変更時の指導指針(公式サイト)
今回のウレパールクリームの販売中止は、特定の薬剤に依存することのリスクを改めて浮き彫りにしました。これは他人事ではありません。医療機関・薬局では、「よく処方する薬剤が突然供給停止になる」という事態を想定した備えが求められています。
近年、国内の医薬品業界では後発医薬品(ジェネリック)の不正製造問題を発端とした供給不安が続いており、多くの薬剤で出荷調整や販売中止が相次いでいます。厚生労働省の資料によると、2022〜2023年にかけて出荷調整対象となった後発医薬品の品目数は1,000品目を超えた時期もありました。厳しいところですね。
具体的な備えとしては、次のような取り組みが現場で実践されています。
医薬品の安定供給に関する情報は、PMDAや厚生労働省の公式情報を定期的に確認することで把握できます。
厚生労働省:後発医薬品の安定供給・出荷調整に関する情報(公式)
医薬品の安定供給問題は一過性のものではなく、今後も続く構造的な課題です。ウレパールクリームの販売中止をきっかけに、自施設の処方薬リストを見直し、代替選択肢を確保しておく体制を整えることが、医療の質と患者安全を守ることに直結します。代替備えが原則です。