ARBに変更するだけで、EDが自然と改善する患者が実際にいます。

テルミサルタンはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)に分類される降圧薬であり、体内で血圧を上昇させるアンジオテンシンIIが受容体に結合するのをブロックすることで血圧を低下させます。この作用機序そのものは、EDに直接関与するものではありません。
よく混同されるのが、「降圧薬を飲んでいるからED になった」という思い込みです。確かに一部の降圧薬はEDのリスクを高めますが、テルミサルタンをはじめとするARB系薬剤は、EDを誘発しにくいグループに属します。むしろ、ARBがEDを改善したという報告も複数あります。これは重要な点です。
| 降圧薬の種類 | EDリスク | 代表的な薬剤 |
|---|---|---|
| 利尿薬 | ⬆️ 高い(亜鉛排泄増加→テストステロン低下) | フルイトラン、ラシックス |
| β遮断薬(一部) | ⬆️ 高い(神経伝達の阻害) | インデラル |
| ARB | ➡️ 低い~改善効果の報告あり | テルミサルタン(ミカルディス) |
| カルシウム拮抗薬 | ➡️ 比較的低い | アムロジピン |
| ACE阻害薬 | ➡️ 比較的低い | エナラプリル |
テルミサルタンは半減期が約36時間と他のARBに比べて特に長く、24時間を超えた安定した降圧効果を持ちます。これが、血圧変動を抑えて陰茎への血流を安定させる一因になるとも考えられています。つまり「ARBは性機能に優しい」が基本です。
ただし、テルミサルタン錠の添付文書や国内外の副作用報告データには「勃起障害(頻度不明)」という記載があることも事実です。頻度不明とは、発生頻度の定量的データが揃っていないことを意味しており、稀ではあるが報告例が存在することを示しています。患者からED の訴えがあった場合、テルミサルタン自体の影響をゼロとは言い切れません。
テルミサルタンを服用中の患者からED の訴えを受けた際、原因を単純に「テルミサルタンの副作用」と断定するのは早計です。実際には複数の要因が絡み合っているケースがほとんどです。
まず見落としてはならないのが、高血圧そのものがEDを引き起こすという事実です。陰茎の血管は直径約1mmと非常に細く、高血圧に伴う動脈硬化の影響を最も早く受けやすい部位の一つです。海外の研究では、ED患者の41.2%が高血圧を合併しているという報告があります(日本性機能学会/日本泌尿器科学会・EDガイドライン)。
次に問題となりうるのが、過降圧(血圧を下げすぎること)です。動脈硬化が進行した血管を血液が通過するためにはある程度の圧力が必要であり、テルミサルタンで血圧を適正以下に下げると、陰茎への血流がかえって減少することがあります。テルミサルタンはARBの中でも強力な降圧効果を持つため、用量や患者背景によっては過降圧に注意が必要です。
ギリシャの研究(対象:31〜65歳男性)では、降圧薬の内服者と非内服者のED罹患率を比較したデータがあります。
- 降圧薬を1種類内服している患者のED罹患率:36.3%
- 降圧薬を2種類以上内服している患者のED罹患率:46.7%
- 降圧薬を内服していない高血圧患者のED罹患率:19.8%
2種類以上の服用で罹患率が46.7%にまで上がるという点は、医療従事者として現場で意識しておく必要があります。これは薬剤の種類の問題だけでなく、過降圧が重なることで陰茎血流が低下しやすくなるためとも推測されています。
さらに見逃しがちなのが、心因性のEDです。高血圧治療中の男性は、自分の体に対する不安やパートナーとの関係性に悩んでいることも多く、心因性要因がEDの背景にあるケースも少なくありません。薬だけに注目した評価では、本質的な対処ができないことがあります。
テルミサルタンを含む降圧薬を服用中の高血圧患者が、EDを改善したいとしてED治療薬(PDE5阻害薬)の使用を希望する場合があります。医療従事者として正確な判断をするために、以下の情報を整理しておくことが重要です。
ED治療薬との基本的な考え方
テルミサルタン(ARB)で血圧がコントロールされている患者は、バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)などのPDE5阻害薬を服用可能です。ただし、PDE5阻害薬自体にも降圧作用があるため、降圧薬との「併用注意」扱いとなっています。
| ED治療薬 | 服用不可となる血圧の目安 |
|---|---|
| バイアグラ・レビトラ | 収縮期血圧 >170mmHg または拡張期血圧 >100mmHg |
| シアリス | 安静時血圧 >170/100mmHg(コントロール不良) |
| 全PDE5阻害薬 | 血圧 <90/50mmHg(低血圧)の場合も禁忌 |
ARBで適切に血圧を管理できていれば、ED治療薬との併用は基本的に可能です。ただし、血圧が低めに推移している患者では、PDE5阻害薬追加によるさらなる血圧低下でめまいや立ちくらみが起きる可能性があります。定期的な血圧確認のうえで判断することが原則です。
また、絶対禁忌として覚えておくべきなのが硝酸薬との併用です。テルミサルタンとPDE5阻害薬の組み合わせは許容されますが、ニトログリセリンなどの硝酸薬を使用している患者にはED治療薬は絶対に使用できません。狭心症の合併がある患者では必ず確認してください。これは禁忌です。
あまり知られていない事実として、利尿薬やβ遮断薬からARBへ降圧薬を変更するだけで、患者のEDが改善したという臨床報告があります。実際に、ARBであるロサルタンを高血圧患者82人に12週間投与した研究では、性的活動の改善が確認されています(Fogari Rら, Eur J Clin Pharmacol, 2002)。テルミサルタンは同じARBに属し、さらに長い半減期と強い降圧持続効果を持つため、同等以上の保護作用が期待されます。
これは臨床現場で非常に重要な意味を持ちます。EDが主訴で来院または相談があった場合、まず現在服用している降圧薬の種類を確認することが最初のステップになります。利尿薬やβ遮断薬が処方されていれば、ARBへの変更が症状改善のカギになる可能性があります。
ARBがEDに保護的に働くと考えられる理由には、複数の作用が挙げられています。
- 🔵 アンジオテンシンIIの血管収縮作用を抑えることで、陰茎海綿体への血流を維持しやすくする
- 🔵 NO(一酸化窒素)の産生を促進し、陰茎血管の弛緩を助ける可能性がある
- 🔵 亜鉛の排泄を増やす利尿薬と異なり、テストステロン産生の阻害がない
- 🔵 過度な交感神経抑制がないため、勃起に関わる神経伝達を妨げにくい
ただし、ARBへ変更してもEDが改善しない場合は、高血圧そのものによる動脈硬化の進行や心因性要因が主因である可能性を再検討する必要があります。変更後は数週間から数ヵ月の経過観察が必要です。
EDに関する症状を患者が医師に話しにくいと感じているケースは多く、積極的にこちらからヒアリングすることが重要になります。「性生活に気になることはありますか」という問いかけ一つが、患者の服薬継続を支え、降圧治療の成果を長期的に維持する上でも大きな意義を持ちます。
【医師執筆】高血圧と勃起不全(ED)について(神戸三宮バッファローEDクリニック院長 栗本浩行医師)— ARBのED改善効果、降圧薬の種類による影響の違いを詳しく解説
テルミサルタンを処方する際、またはその服用患者を継続フォローする際には、EDを含む性機能関連の副作用について一定の意識を持つことが医療従事者としての役割です。患者が「薬のせいで勃たなくなった」と自己判断して服薬を中断すると、血圧コントロールが崩れ、かえって動脈硬化を進行させてEDを悪化させる、という悪循環に陥る危険があります。
服薬中断によって脳卒中や心筋梗塞のリスクが上昇することを患者に説明しながら、同時に性機能への不安に寄り添う指導が求められます。「EDが心配なら薬を変えるという選択肢がある」ということを事前に伝えておくだけで、患者の安心感と服薬アドヒアランスは大きく変わります。
テルミサルタン服用患者へのモニタリングポイント
| 確認項目 | 頻度・タイミング | 注意点 |
|---|---|---|
| 血圧値(過降圧の有無) | 毎回の来院時 | 収縮期血圧が100mmHg未満になっていないか |
| 血清カリウム値 | 処方開始後1〜2週間、その後定期的に | 高カリウム血症は心臓リスクにつながる |
| 腎機能(eGFR、Cr) | 定期的な血液検査 | ARBは腎保護的だが、急性腎障害の報告あり |
| 性機能に関する問診 | 初回処方時・定期フォロー時 | 患者から自発的に言い出しにくい訴え |
| 併用薬の確認 | 処方変更時・毎回 | 硝酸薬・他のARB・ACE阻害薬との重複に注意 |
モニタリングの中で特に重要なのが血清カリウムです。ARBはアルドステロンの産生を抑えるため、カリウムが体内に貯留しやすくなります。特に腎機能が低下している患者や、カリウム製剤を服用している患者では高カリウム血症のリスクが上昇し、不整脈につながる可能性があるため要注意です。
また、テルミサルタンは肝臓で代謝されるため、肝機能障害のある患者には慎重に投与する必要があります。肝障害があると薬の血中濃度が上昇し、過降圧を引き起こすリスクが高まります。その結果として、陰茎への血流が低下し、EDが生じるシナリオも考えられます。これは見落とされやすい点です。
患者から「EDになったかもしれない」という訴えがあった際の基本的な対応フローを整理しておくと現場で役立ちます。
1. 🔵 現在の血圧値を確認し、過降圧がないかチェックする
2. 🔵 テルミサルタン以外の併用薬(特に利尿薬・β遮断薬)を確認する
3. 🔵 高血圧の罹病期間と動脈硬化リスクを評価する
4. 🔵 心因性ED(ストレス・不安・パートナーとの関係)の可能性を問診する
5. 🔵 ARBへの変更、または過降圧の是正を検討する
6. 🔵 必要に応じてED治療薬の処方またはED専門クリニックへの紹介を検討する
ED治療薬(PDE5阻害薬)の服用を希望する患者には、血圧値が適切にコントロールされているか(収縮期血圧170mmHg未満かつ拡張期血圧100mmHg未満)を確認し、硝酸薬の非使用を必ず確認してから処方する流れが原則です。この確認を怠ると、急激な血圧低下による重篤な有害事象につながることがあります。
日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン(第3版)」— ED診断基準・治療アルゴリズム・高血圧患者へのED治療に関する推奨が掲載
KEGG医薬品情報「医療用医薬品:テルミサルタン」— 重大な副作用の一覧、禁忌・慎重投与患者、相互作用の詳細を確認できる

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