空腹時投与を避けると、実は骨髄抑制の発現タイミングが変わり投与スケジュールを組み直す羽目になります。

テモダールカプセル(一般名:テモゾロミド)は、アルキル化作用を持つ抗悪性腫瘍剤です。日本では2006年に承認され、現在の添付文書上の効能・効果は「悪性神経膠腫」とされています。具体的には、多形性膠芽腫(GBM)および退形成性星細胞腫が主な対象となります。
承認のベースとなったのは、放射線療法との同時併用療法を検証したStudue(Stupp試験)です。この試験では、放射線単独療法と比較して中央生存期間が12.1ヶ月から14.6ヶ月に延長し、2年生存率が10.4%から26.5%へ改善したことが示されました。数字で見ると、2年後に生存している患者さんが約2.5倍になるという結果です。
つまり、テモダールは脳腫瘍領域で初めて生存延長を示した標準治療薬ということです。
日本での適応は当初「再発・難治性」に限定されていましたが、その後の適応拡大により、現在は初発の多形性膠芽腫における放射線との同時併用療法および維持療法にも使用されています。添付文書改訂の歴史を把握しておくことで、過去の文献や症例報告を読む際の解釈ズレを防げます。
薬価は1カプセル(250mg)あたり約13,000円前後(2024年時点)で、1サイクルあたりの薬剤費は相当な額になります。高額療養費制度の適用可否を含め、患者説明の準備が実務上も重要です。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)公式サイト:テモダールカプセル250mg 添付文書PDF(最新版)
添付文書に定められた用法・用量は、用途によって大きく2つに分かれます。まず「放射線療法との同時併用療法」では、テモゾロミドとして75mg/m²を1日1回、放射線照射期間中(通常42日間)連日経口投与します。次に「維持療法」では、第1サイクルは150mg/m²を1日1回、5日間連続投与・23日間休薬(28日1サイクル)で行います。
第2サイクル以降は、血液毒性がなければ200mg/m²に増量します。これが基本です。
投与タイミングについて、添付文書は「就寝前」かつ「食事の少なくとも1時間前または食後2時間以上経過後(空腹時)」を指定しています。食事と同時に服用した場合、Cmaxが約33%低下し、AUCも約9%低下するとの薬物動態データが添付文書中に記載されています。この差が臨床的に有意かどうかは議論がありますが、添付文書の指示を逸脱しないことが原則です。
「就寝前」投与が推奨されているのは、嘔気・嘔吐の副作用を睡眠中に通過させる目的もあります。これは使えそうです。
投与量の算出には体表面積(BSA)が必要で、DuBois式またはMosteller式が一般的に用いられます。カプセル規格は5mg・20mg・100mg・140mg・180mg・250mgの6種類があり、合計量が規格通りにならない場合は近似値で対応します。添付文書では「各規格カプセルを組み合わせて投与量の近似値となるようにする」とされており、端数処理に迷いやすい点です。
実務上のポイントとして、カプセルは開封・粉砕・噛み砕かずにそのまま嚥下します。カプセル内容物がアルキル化剤であるため、破損した場合は皮膚・眼への曝露を避け、適切な防護を行う必要があります。これは安全管理上の必須事項です。
テモダールの副作用で最も注意が必要なのは骨髄抑制です。添付文書では、投与後21〜28日目にナディア(最低値)が来ることが多いと記載されています。28日サイクルで運用する場合、次サイクル開始前の血液検査タイミングと重なるため、見落とすリスクが低い設計になっています。
投与継続・中止の基準は明確に決まっています。好中球数500/mm³未満、または血小板数10,000/mm³未満となった場合は投与を中止し、好中球数1,500/mm³以上かつ血小板数100,000/mm³以上に回復するまで次のサイクルを開始しないことが原則です。
好中球数の「1,500」という数字は、CD4陽性T細胞300/mm³以下になるリスクとも関連します。PCP(ニューモシスチス肺炎)予防のためのST合剤投与判断とリンクさせて管理すると、投与管理の精度が上がります。
非血液毒性として頻度が高いのは、悪心(約50〜70%)、疲労感(約40〜50%)、便秘(約30%)です。悪心への対応として、5-HT₃受容体拮抗薬の予防投与が多くの施設で採用されています。制吐薬選択は各施設プロトコルに従いますが、添付文書自体には制吐薬の種類指定はありません。
肝機能障害にも注意が必要です。AST・ALTが正常上限の3倍を超えた場合は投与中止を考慮するとされています。ベースラインと比較しながら定期的に確認することが条件です。
なお、テモゾロミドは催奇形性が動物実験で確認されています。妊娠可能な患者への投与時は避妊指導が必要であり、男性患者においても精子形成への影響から避妊を指示することが添付文書に明記されています。これは見落とせない点ですね。
日本脳腫瘍学会 機関誌「Neuro-oncology and Therapeutics」:テモゾロミドの臨床データや副作用管理に関する最新論文を参照できます。
添付文書が定める禁忌は3項目です。①本剤の成分またはダカルバジンに対して過敏症の既往歴のある患者、②骨髄機能が高度に抑制されている患者、③妊婦または妊娠している可能性のある患者。この3点は絶対禁忌です。
ダカルバジンとの交差過敏性が存在する理由は、両者が同じMTIC(5-(3-メチルトリアゼン-1-イル)イミダゾール-4-カルボキシアミド)に代謝されるためです。過去にダカルバジンでアレルギー反応を起こした患者へのテモダール投与は禁忌となりますが、この関連性が見落とされるケースがあるため、問診時に必ず確認が必要です。
慎重投与の筆頭は感染症合併患者です。骨髄抑制で免疫機能がさらに低下するため、感染症の重篤化リスクが高まります。また、肝・腎機能障害患者についても、添付文書では中等度以上の場合は慎重に投与するよう記載されています。
薬物相互作用として注意すべきは、バルプロ酸との併用です。バルプロ酸はテモゾロミドのクリアランスを約5%低下させるとされており、微小ではありますが、長期投与では蓄積影響の可能性があります。てんかん合併の脳腫瘍患者では頻繁に遭遇する組み合わせです。
また、ワルファリンとの併用でPT-INRが上昇したとの報告があります。これは添付文書の「相互作用」欄に記載されており、抗凝固療法を受けている患者では凝固能のモニタリング強化が必要です。厳しいところですね。
免疫抑制薬との併用はさらに骨髄抑制を増強する可能性があるため、レジメン設計時に必ず確認します。他施設からの転院患者では持参薬の内容を詳細に確認することが実務上の鉄則です。
添付文書には直接的な「MGMT検査を必須とする」記載はありません。しかし、現行の脳腫瘍診療ガイドラインおよび臨床現場では、MGMT(O⁶-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ)プロモーターのメチル化状態がテモゾロミドの治療反応性を予測する重要なバイオマーカーとして確立されています。
MGMTはテモゾロミドが付加したDNAのO⁶位メチル化を修復する酵素です。MGMTが高発現している腫瘍では、テモゾロミドによるDNA損傷が修復されてしまい、薬効が低減します。逆に、MGMTプロモーターがメチル化されて発現抑制されている腫瘍では、修復機能が低下し、テモゾロミドの細胞毒性が発揮されやすくなります。これが基本の仕組みです。
Stupp試験のサブ解析では、MGMTメチル化陽性の患者でテモゾロミド+放射線療法の2年生存率が46%であったのに対し、放射線単独では23%でした。一方、MGMTメチル化陰性では両群の差が縮小し、14%対2%という結果でした。
この数字が意味することは大きいです。MGMTメチル化陰性患者においてもテモゾロミドを投与するかどうかは、現在も議論が続いています。添付文書上は適応を制限していませんが、患者・家族への十分なインフォームドコンセントが求められます。
加えて、2021年以降はIDH変異状態やテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)プロモーター変異との組み合わせも、予後予測や治療戦略に組み込まれるようになっています。WHO 2021年版脳腫瘍分類の改訂により、病理診断と分子診断の統合が標準化されました。添付文書の効能・効果の記載は「悪性神経膠腫」という大きなくくりですが、実際の治療決定は分子情報を組み合わせて行うのが現在の標準です。
添付文書の情報だけで治療を完結させようとすると、最新エビデンスとのギャップが生じます。日本脳腫瘍学会や日本脳神経外科学会が発行する診療ガイドラインと添付文書を並行して参照する姿勢が、現場での実務精度を高めます。
日本脳神経外科学会公式サイト:脳腫瘍診療ガイドラインや学術情報の参照に有用です。MGMT検査や分子診断に関する最新情報も掲載されています。
添付文書の「取扱い上の注意」には、保管条件として「室温保存(1〜30℃)」が指定されています。冷蔵保存は不要ですが、直射日光・高温多湿を避けることが必要です。
服薬指導の現場で注意が必要なのは、カプセルを分割・粉砕できないという点です。嚥下困難な患者への対応として「水に溶かして投与」することも禁止されています。アルキル化剤であるため、カプセルが破損した場合は皮膚や粘膜への曝露を防ぐ手袋着用が必須です。これは安全管理の基本です。
調剤室での取り扱いでは、抗がん剤専用の安全キャビネットや手袋・ガウン・マスクを使用した曝露対策が求められます。日本病院薬剤師会のガイドラインでは、経口抗がん剤においても封じ込め対策を講じるよう推奨されており、テモダールカプセルもその対象です。
払い出し後の残薬管理も重要です。開封済みボトルの有効期限管理、患者から返却された残薬の廃棄手順など、各施設の規定に基づいて対応します。外来がん化学療法での持参薬として使用される場面では、患者宅での保管指導も薬剤師の役割に含まれます。
患者が「飲み忘れた」と申し出た場合、当日中であれば服用を勧め、翌日以降であれば飛ばして次の予定通りの服用に戻ることが一般的な対応です。しかし、添付文書には飲み忘れ時の明示的な記載がないため、処方医への確認フローを施設内で標準化しておくことをお勧めします。これは実務上の盲点になりやすい点です。
また、テモダールカプセルは薬価が高いため、外来化学療法加算や保険請求上の管理コードの確認も怠れません。処方せんの用法記載が「1日1回就寝前空腹時」と正確に記入されているかを確認することで、保険審査上のトラブルを防げます。
日本病院薬剤師会公式サイト:経口抗がん剤を含む危険薬の取り扱いガイドラインや調剤安全管理に関する情報が掲載されています。

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