スキリージ(リサンキズマブ)の初回投与後、600mgを1回投与すれば維持期は150mgに切り替わるが、実は適応疾患によって維持用量が異なるため、同じ患者に同じプロトコルで管理すると過少投与になるケースがある。

スキリージ(一般名:リサンキズマブ)は、インターロイキン-23(IL-23)のp19サブユニットを選択的に阻害するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。AbbVieが開発し、日本では2019年に乾癬に対して初めて承認されました。その後、適応が拡大され、現在の添付文書には複数の疾患が収載されています。
現在承認されている主な適応は以下の通りです。
添付文書の「効能又は効果」欄には、これらが明記されています。つまり乾癬です、という一言で済む薬ではありません。
特に注意が必要なのは、クローン病・潰瘍性大腸炎については導入療法に静注製剤(スキリージ点滴静注600mg)を用いてから皮下注製剤に切り替えるという手順が規定されている点です。皮下注製剤だけで導入を行うことは添付文書上、承認された用法ではありません。これは実臨床で見落とされやすいポイントの一つです。
添付文書のバージョンアップは随時行われるため、PMDAの公式サイトで最新版を確認する習慣をつけることが重要です。
PMDA医薬品医療機器情報提供ホームページ:スキリージ皮下注の最新添付文書PDF(承認情報・改訂情報を含む)
用法・用量は添付文書の中でも特に誤りやすいセクションです。スキリージ皮下注の用量は適応ごとに明確に異なります。ここが原則です。
乾癬(尋常性乾癬・関節症性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症)の場合:
乾癬では150mgが基本です。導入期と維持期で用量の変更はなく、シンプルなレジメンです。
クローン病・潰瘍性大腸炎の場合(維持療法):
乾癬と比較すると、投与量が360mgと2倍以上になり、投与間隔も8週に短縮されます。これは大きな違いです。
乾癬の患者管理に慣れた医療従事者が、クローン病患者に対して誤って150mgを処方してしまうリスクは決してゼロではありません。実際、IBD(炎症性腸疾患)外来と皮膚科外来では担当科が異なることが多く、院内での情報共有不足から来る投与量間違いが懸念されます。電子カルテの処方テンプレートを適応別に分けて設定しておくなど、ダブルチェック体制を整えることが重要な安全対策になります。
また、スキリージ皮下注150mgシリンジとスキリージ皮下注360mgシリンジは製剤の規格自体が異なるため、調剤段階でのエラー防止にも添付文書の用法・用量の確認は欠かせません。
添付文書の「禁忌」欄は、すべての医療従事者が投与前に必ず確認すべき項目です。スキリージ皮下注の禁忌は明確に規定されています。
禁忌事項(添付文書より):
活動性結核は絶対禁忌です。これは必須の確認項目です。
投与前スクリーニングとして特に重要なのは結核の評価です。添付文書の「重要な基本的注意」には、「本剤投与前に結核に関する十分な問診及び胸部X線検査を行い、適宜ツベルクリン反応検査、インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)等の検査を行うこと」と記載されています。
潜在性結核感染症(LTBI)の患者には、リスクとベネフィットを慎重に評価した上で、抗結核薬による予防投与を行ってから本剤を開始することが推奨されています。これは慎重投与の代表的な場面です。
慎重投与が必要な主な状態:
IL-23阻害薬であるリサンキズマブは、他の生物学的製剤(TNF阻害薬など)と比較すると結核再活性化のリスクは低いとされていますが、だからといってスクリーニングを省略してよいわけではありません。添付文書上の規定は変わらないためです。
PMDA:スキリージの審査報告書(安全性・有効性の審査根拠が詳しく記載されており、禁忌・慎重投与設定の背景理解に有用)
副作用の情報は添付文書の中でも特にボリュームが大きいセクションです。医療従事者として、どの副作用に注意を払うべきかを優先度をつけて理解しておくことが実践的です。
重大な副作用(添付文書に記載):
これらは発現頻度は高くないものの、見逃すと生命にかかわります。重篤度が高い副作用です。
一方、臨床試験で比較的高い頻度で報告された副作用としては、上気道感染(約15〜20%)、注射部位反応(発赤、疼痛など、約10%前後)、頭痛などが挙げられます。注射部位反応は皮下注製剤特有の問題であり、患者への事前説明が自己注射継続率に影響します。注射手技の確認は重要です。
副作用モニタリングの実践ポイント:
また、添付文書には「その他の副作用」として皮膚・皮膚付属器(乾癬の悪化、皮膚真菌感染)、消化器(悪心、腹痛)、神経系(疲労感)なども記載されています。乾癬の悪化というのは意外ですね。これは治療対象疾患と同じ症状が副作用として現れうることを意味しており、効果判定と副作用評価を混同しないよう注意が必要です。
患者が「皮膚が悪くなった」と訴えた際に、それが疾患の悪化なのか薬剤性の反応なのかを鑑別する視点を持つことが、添付文書を熟知した医療従事者としての実力です。
スキリージ皮下注は医療機関での投与だけでなく、患者自身による自己注射が認められています。この点は添付文書の「用法及び用量に関連する注意」および「適用上の注意」に関連する重要な運用情報です。
自己注射を開始するにあたっては、医師が「自己注射が可能と判断した患者」に限定される点が原則です。添付文書には、患者またはその介護者への十分な教育・訓練を行ったうえで実施することが求められています。
自己注射指導で添付文書から確認すべき主要な項目:
特に見落とされやすいのは保存条件です。患者が旅行などで持ち歩く際に直射日光下や高温環境に置いてしまうケースがあります。「冷蔵庫に入れておけばいい」という認識だけでは不十分です。
添付文書の「貯法・有効期間」欄には「遮光、冷所保存」と記載されており、冷蔵保存(2〜8℃)かつ遮光が求められています。旅行や外出時のクールバッグ使用を指導に含めることで、薬剤の品質劣化による効果減弱を防ぐことができます。これは使えそうです。
また、使用済みのシリンジ・オートインジェクターは廃棄方法についても患者指導が必要です。自治体の規定に従った廃棄容器(耐貫通性容器)の用意を促すことは、安全な医療廃棄物管理の観点からも重要な指導内容です。
添付文書はあくまで最低限の基準を示したものです。実際の患者指導では、患者の生活習慣・住環境・旅行頻度などに応じた個別化が求められます。指導の根拠として添付文書を活用しながら、それを超えた実践的なアドバイスを加えることが医療従事者の専門性の発揮どころといえるでしょう。
AbbVie日本法人:スキリージ製品情報ページ(医療従事者向けの適正使用情報、患者指導資材の入手先として有用)
日本皮膚科学会雑誌(JSTAGE掲載):乾癬・IL-23阻害薬に関する最新の臨床論文・ガイドライン関連情報の確認に有用)