セファゾリン注、牛の適応・用量・休薬期間の完全ガイド

セファゾリン注を牛に使用する際の適応症・用法用量・使用禁止期間を正しく理解できていますか?乳汁36時間・食肉3日の使用禁止期間を守らないと法的リスクにも直結します。獣医師向けに要点を解説します。

セファゾリン注、牛への適応・用量・使用禁止期間を正しく理解する

乳汁の使用禁止期間を36時間と守っても、罹患牛では残留基準値超えが起こることがあります。


この記事の3ポイント要約
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セファゾリン注の牛への適応症

細菌性肺炎・細菌性下痢症・乳房炎・産褥熱の4疾患が適応。体重1kg当たり5mg(力価)を1日1回、静脈内または筋肉内に注射する。

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使用禁止期間を必ず厳守

食肉はと殺前3日間、乳汁は搾乳前36時間が使用禁止期間。乳房炎罹患牛では残留時間が延長するケースがあり、単純に36時間で判断するだけでは不十分な場合がある。

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要指示医薬品・AMR対策の遵守

本剤は要指示医薬品かつ「使用基準が定められた医薬品」。獣医師の処方箋・指示なしでの使用は法的違反となり、薬剤耐性(AMR)対策の観点からも適正使用が求められる。


セファゾリン注の牛における適応症と有効菌種の基礎知識


セファゾリン(CEZ)は、第一世代セファロスポリン系抗生物質の代表格です。牛に対しては注射剤として承認されており、適応症は「細菌性肺炎」「細菌性下痢症」「乳房炎」「産褥熱」の4つに限定されています。これが原則です。


有効菌種として確認されているのは、ブドウ球菌・レンサ球菌・パスツレラ・大腸菌・サルモネラ・クレブシエラの6菌種です。グラム陽性菌に対する抗菌力が特に強く、第一世代の中でもグラム陰性菌へのカバー域が比較的広いという特徴があります。意外ですね。


同じセファロスポリン系でも、第三・第四世代になるほどグラム陰性菌へのスペクトルは拡大しますが、グラム陽性菌への効果は逆に弱まります。セファゾリンはグラム陽性菌中心の感染症に強みを持つ剤です。これだけ覚えておけばOKです。


一方で、シュードモナス属・セラチア属・エンテロバクター属・ヘモフィルス属などには無効であり、β-ラクタマーゼによって分解されやすい点も知っておく必要があります。投与前には担当する症例の起因菌と感受性を確認することが条件です。


また、乳房炎治療で注意すべき点として、急性・甚急性の乳房炎で全身症状が伴う場合は、乳房注入剤だけでなく注射剤などの全身療法を適切に併用する必要があります。局所投与のみで完結しようとすると治療成績が下がるリスクがあります。


参考:動物用医薬品等データベースに掲載されたセファゾリン注「KS」の製品情報(効能効果・有効菌種)。


セファゾリン注「KS」 - 農林水産省動物用医薬品等データベース


セファゾリン注の牛への用法・用量と正しい溶解手順

用法・用量は明確に定められています。牛への投与量は1日1回、体重1kg当たりセファゾリンとして5mg(力価)を静脈内または筋肉内に注射します。体重500kgの成牛であれば1回投与量は2,500mg(2.5g)相当になります。


溶解方法にも定めがあります。用時に注射用水または生理食塩水で溶解し、1mL当たりセファゾリンとして約100mg(力価)になるよう調製します。つまり、2.5gのバイアルなら25mLの溶媒で溶解するのが基本です。


溶解後は速やかに使用することが必須です。製品によっては溶解後48時間以内の使用を指定しているものもありますが、動物用製剤においては添付文書の指示を厳守し、調製後は原則すぐ使用してください。これが原則です。


注射器具は滅菌されたものを使用し、溶解後の液に濁りや異物がないことを確認してから投与してください。また「用時溶解」という点も重要で、事前に大量調製しておいての在庫管理は認められていません。


投与経路について一点補足すると、静脈内投与と筋肉内投与が選択できますが、ショック症状などのリスクを最小化するために投与後は観察を十分に行う必要があります。まれにショック症状が発現する可能性があるため、いざというときの対応を準備しておくことが大切です。


参考:共立製薬株式会社が公表しているセファゾリン注「KS」添付文書(用法・用量・注意事項)。


セファゾリン注「KS」添付文書PDF - 共立製薬株式会社


セファゾリン注を使った牛の乳房炎治療での注意点と限界

乳房炎はセファゾリン注の主要な適応症のひとつです。ただし、乳房炎の治療成績は病型や罹患時期・起因菌によって大きく異なります。注射剤として全身投与するセファゾリン注は、泌乳期の急性型乳房炎における全身療法の選択肢として位置づけられています。


乳房炎の起因菌でセファゾリンに対して感受性が高いのは、ブドウ球菌・レンサ球菌・コリネバクテリウム・大腸菌・クレブシエラです。しかし、腸球菌やグラム陰性桿菌の中にはセファゾリンへの感受性が50%以下のものもあり、すべての乳房炎症例に有効とは限りません。厳しいところですね。


また、分娩前の乳房炎に対してセファゾリンの乳房内1回注入が有効だったとする研究(福岡県農林業総合試験場)もあります。治癒率は50%以上という結果でしたが、グラム陰性桿菌への感受性が低い菌種については治療成功率が下がる傾向にありました。


注意したいのは、乳房炎治療では起因菌の感受性試験に基づいた抗菌薬選択が理想であるという点です。感受性が確認されていない段階でのセファゾリン使用は、耐性菌温存リスクにつながる可能性があります。確認してから使用することが推奨されます。


さらに、好中球内に透過しにくいセファロスポリン系薬の特性上、食菌されたブドウ球菌が乳房内に残存し再発の原因になりうるとの見解も研究論文では示されています。治療後の再発がある場合は、その可能性を念頭に置いた追加対策を検討してください。


参考:福岡県農林業総合試験場の研究成果「乳牛の分娩前乳房炎はセファゾリン1回の乳房内注入が有効」。


乳牛の分娩前乳房炎はセファゾリン1回の乳房内注入が有効 - 福岡県農林業総合試験場


セファゾリン注の牛における使用禁止期間と食品安全リスク

使用禁止期間は、食品の安全を守るうえで絶対に守らなければならない数字です。セファゾリン注「KS」を牛に使用した場合、食肉(と畜)はと殺前3日間、乳汁は搾乳前36時間が使用禁止期間として設定されています。


「休薬期間」と「使用禁止期間」は名称が似ていますが意味が異なります。休薬期間は科学的根拠に基づいたガイドラインの推奨値であるのに対し、使用禁止期間は法令上の規制であり、これを守らなかった場合は医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく罰則の対象となります。これが条件です。


ここで重要な落とし穴があります。乳房炎などの疾患に罹患した牛では、健康牛に比べて乳汁中のセファゾリン残留時間が長くなるケースが確認されています。岩手県獣医師会の調査によると、供試牛のうち一部では72時間(休薬期間相当)を超えても残留基準値(0.05μg/g)以下になるまでの時間が延長したことが報告されています。痛いですね。


牛乳の残留基準値は食品衛生法で0.05ppm(0.05μg/g)と定められており、この値を超えると当該乳は廃棄・出荷停止となります。1頭の乳牛の1日産乳量は平均25〜30L程度であり、東京ドームの外野スタンド約1段分の牛乳が一度に廃棄になるリスクをイメージすると、経済的損失の大きさがわかります。


乳房炎罹患牛に使用した場合は、より慎重に出荷判断を行う必要があります。不安がある場合はCowsideで実施できる残留抗生物質簡易検査(スナップテスト等)を活用し、陰性確認後に出荷するのが最善策です。


参考:乳房炎罹患牛における乳汁残留時間に関する報告が記載されている岩手県獣医師会雑誌の論文。


セファゾリン軟膏を投与した泌乳期乳房炎罹患牛における乳中の残留 - 岩手県獣医師会


セファゾリン注と牛のAMR対策:適正使用が求められる背景

セファゾリンは第一世代セファロスポリン系抗生物質であり、WHO(世界保健機関)の人医療における重要抗菌剤リストでは「高度に重要」に分類されています。食品安全委員会の重要度ランク付けでも「ランクⅢ(重要)」とされており、第三・第四世代に比べると人医療でのリスクは低いとされていますが、適正使用の重要性に変わりはありません。


日本の家畜分野では、第三世代セファロスポリンに対する耐性率は牛・豚において低率に維持されています(JVARMデータ、2011〜2015年)。しかし、ブロイラーではセフチオフルの孵卵場での適応外使用により2002年以降に耐性率が急増した歴史があります。つまり適応外使用が耐性化を引き起こすということですね。


農林水産省は「牛呼吸器病(BRDC)における抗菌剤治療ガイドブック」を作成・改訂し、抗菌剤の使用に際しては「治療上必要な最小限の期間」「週余にわたる連続投与の禁止」を明記しています。セファゾリン注の添付文書にも同様の記載がある通り、長期連投は厳禁です。


本剤は「要指示医薬品」かつ「使用基準が定められた医薬品」「指定医薬品」に分類されています。すなわち、獣医師の処方箋または指示なく使用することは法律上許されません。農場スタッフが独断で投与するケースは違反となります。これは必須の認識です。


農林水産省のAMR対策アクションプラン(2023〜2027年)では、2027年までに動物用抗菌薬の使用量をさらに削減する数値目標が掲げられています。治療が必要な場合でも、狭スペクトルの薬剤を第一選択とし、広スペクトル薬の濫用を避けるという原則は、獣医師として確認しておくべき姿勢です。


セファゾリン注を使用する際は、感受性試験で起因菌が確認された場合に限り投与し、投与記録を適切に管理することで、AMR対策と食品安全の両立を図ることができます。これは使えそうです。


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 第一世代セファロスポリン系 |
| 対象動物 | 牛のみ(注射剤として) |
| 投与量(牛) | 体重1kg当たり5mg(力価)、1日1回 |
| 投与経路 | 静脈内または筋肉内 |
| 使用禁止期間(食肉) | と殺前3日間 |
| 使用禁止期間(乳汁) | 搾乳前36時間 |
| 規制区分 | 要指示医薬品・指定医薬品・使用基準が定められた医薬品 |
| AMR重要度(食品安全委員会) | ランクⅢ(重要) |


参考:農林水産省の畜産分野におけるAMR対策の取組内容と動物用抗菌剤の適正使用に関するガイドブック。


牛呼吸器病(BRDC)における抗菌剤治療ガイドブック改訂第2版 - 農林水産省




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