サレドカプセル管理のTERMS手順と薬剤師の実務対応

サレドカプセルの管理にはTERMSという厳格な安全管理手順が必須です。遵守状況確認票のFAX送信から薬剤の返却・廃棄まで、現場で起きやすい不遵守パターンを把握していますか?

サレドカプセル管理に必要なTERMS手順と実務のポイント

遵守状況確認票のFAX送信を翌日に回すと、それだけでTERMS不遵守になります。


サレドカプセル管理の3つの核心
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遵守状況確認票は調剤当日中にFAX送信

TERMSでは薬剤交付後、遵守状況確認票を「遅くとも当日中」にTERMS管理センターへ送信することが義務付けられています。翌日送信は不遵守となります。

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未服用薬は廃棄禁止・必ず返却が原則

患者・医療機関ともに不要薬を自己廃棄することはTERMS違反です。調剤元の医療機関に返却し、所定の手続きを経て廃棄処理を行う必要があります。

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服用中止後も4週間は禁止事項が継続

献血・精子精液提供の禁止は服用開始時から服用中止4週間後まで継続します。服用をやめた後も管理義務は終わっていません。


サレドカプセル管理の前提:TERMS®とは何か



サレドカプセル(一般名:サリドマイド)は、かつて深刻な薬害事件を引き起こした成分であることは多くの医療従事者がご存じでしょう。1950年代後半、催眠鎮静薬として欧州で開発・販売されたサリドマイドは、妊婦が服用することで胎児に重大な四肢奇形や死産を引き起こすことが判明し、世界的な薬害事件に発展しました。日本でも約千人(死産を含む)の胎児が被害を受けたと推定されています。


その後も多発性骨髄腫に対する有効性が認められたことから、2008年10月に「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の治療薬として日本で再承認されました。2012年5月には「らい性結節性紅斑」、2021年2月には「クロウ・深瀬(POEMS)症候群」と、適応が追加されています。


過去の薬害の歴史を繰り返さないために生まれたのが、TERMS®(Thalidomide Education and Risk Management System)です。藤本製薬株式会社が設計したこの安全管理手順は、「情報提供及び教育」「登録」「中央一元管理」「評価」を4つの柱とし、サリドマイド製剤の胎児への曝露を徹底的に防止することを目的としています。


重要なのは、TERMS®は任意のガイドラインではないという点です。TERMS®に登録された処方医師と責任薬剤師のみが、この薬剤を処方・調剤することができます。医療機関は「緊急時に十分対応できる設備を有する」こと、かつ「院内にて調剤することが可能である」ことが要件として定められており、院外処方箋による調剤薬局での調剤は行えません。これが基本です。


参考:TERMS®(サリドマイド製剤等安全管理手順)藤本製薬株式会社


TERMS® 第6版 サリドマイド製剤安全管理手順(藤本製薬株式会社)


サレドカプセル管理の登録要件と年1回の定期情報提供

TERMS®では、関わるすべての関係者が登録申請前に情報提供と教育を受けることを義務付けています。対象者は処方医師・責任薬剤師にとどまらず、患者・家族・薬剤管理者・パートナー・特約店責任薬剤師・産科婦人科医師・看護師・特約店従業員・MRと多岐にわたります。


処方医師の登録要件として、TERMS®に定める情報提供を受けて理解・同意していること、患者への適正な情報提供・教育・指導が可能であることが求められます。責任薬剤師も同様に、TERMS®の同意書を提出し登録されていなければ調剤を行うことができません。


見落とされやすいのが、定期的な情報提供の義務です。TERMS®の規定では「情報提供等は関わる前に行い、その後は定期的(年1回を目処)に実施する」と明記されています。つまり、一度登録すれば終わりではなく、年に1回はMRからの定期情報提供を受ける必要があります。多忙な現場では後回しになりがちな手続きですが、これも遵守対象です。


また、処方医師・責任薬剤師が交代した場合や休暇で不在の場合に重要な注意点があります。2021年の不遵守事例報告では「サレドの調剤が初めてで、あまり引継ぎを受けていないまま作業をした」ことによる不遵守が複数件報告されています。担当者の不在・交代時のバックアップ体制と引継ぎ手順を事前に整えておくことが、現場での不遵守を防ぐ最も効果的な対策と言えます。


| 登録対象者 | 情報提供の実施者 | 実施時期 |
|---|---|---|
| 処方医師 | MR | 登録申請前および定期的(年1回目処) |
| 責任薬剤師 | MR | 登録申請前および定期的(年1回目処) |
| 患者・薬剤管理者 | 処方医師 | 登録申請前および必要に応じて |
| 特約店責任薬剤師 | MR | 登録申請前および定期的(年1回目処) |


サレドカプセル管理の核心:遵守状況確認票の運用と当日FAX送信

TERMS®における日常業務の中核を占めるのが、遵守状況確認票の運用です。調剤のたびに処方医師と責任薬剤師が遵守状況確認票を用いて患者と相互確認を行い、その結果を当日中にTERMS管理センターへ送信することが求められます。


実務の流れを整理すると次のようになります。


- 処方医師:遵守状況確認票に患者登録番号・処方数量等を記入してタブレット入力またはFAXで薬剤部へ送信
- 責任薬剤師等:遵守状況確認票の内容を確認し、疑義があれば処方医師へ照会。疑義がなければ調剤して患者に交付し、遵守状況確認票を速やかにTERMS管理センターへ送信(遅くとも当日中)
- TERMS管理センター:調剤可否の判定結果を医療機関へ返信


「遅くとも当日中」という規定は非常に厳格に運用されています。公開されているTERM不遵守事例報告(2021年・2024年)を見ると、不遵守の大半がこのFAX送信の失念です。「多忙で後回しにした」「担当者が休みで引き継ぎ不足だった」「FAX機器の不具合があった」など、理由はさまざまです。しかしいずれも「翌日に送信した」だけで不遵守事例として記録されます。


痛いところですね。これを防ぐには、薬剤交付と遵守状況確認票のFAX送信をセットで完結させるオペレーションを徹底することが条件です。特に責任薬剤師の休暇日・バックアップ体制・FAX機の不具合時の連絡フローを、事前にルール化しておくことが求められます。


なお、初回調剤時と入院患者については、患者との相互確認(定期確認票・遵守状況確認票を用いた確認)が不要とされています。ただし、FAX送信自体は省略できません。ここを「入院患者だから確認も送信も不要」と誤解するケースが実際に報告されており、注意が必要です。


2021年TERMS不遵守事例報告(藤本製薬株式会社・TERMS管理センター公開資料)


サレドカプセルの薬剤管理:保管・数量管理・カプセルシートの厳格運用

処方・調剤だけでなく、薬剤そのものの管理もTERMS®の重要な要素です。保管・数量管理・返却・廃棄・紛失対応のすべてに手順が定められています。


保管場所の管理については、他の薬剤と区別した専用の場所に保管することが求められます。サレドカプセルは流通の各段階で厳重な薬剤管理が義務付けられており、関わる人間を必要最小限に絞ることで、盗難・紛失・誤交付のリスクを最小化する設計になっています。


数量管理はさらに細かく分類されています。医療機関・特約店、患者、入院中、未服用薬とカテゴリごとに管理方法が異なります。患者には「お薬管理シート(兼カプセルシート収納袋)」が提供され、日付と個数を記入して数量管理に活用するよう指導します。


カプセルシートの使用は必須です。責任薬剤師等は専用のカプセルシートを使用して調剤しなければならず、カプセルシートを使わずに調剤した事例が不遵守として記録されています。これは他の剤型と同じ感覚で扱ってしまうことによるミスです。


| 管理項目 | 要点 |
|---|---|
| 保管場所 | 他の薬剤と区別した専用保管 |
| 数量管理 | 医療機関・患者・入院患者・未服用薬の4区分 |
| カプセルシート | 専用シート使用が必須(未使用は不遵守) |
| 薬剤の返却 | 不要薬は調剤元医療機関へ必ず返却 |
| 薬剤の廃棄 | 所定手続きを経て廃棄(自己廃棄禁止) |
| 紛失時の対応 | 医療機関・患者それぞれに対応フローあり |


薬剤の返却と廃棄について、現場でよく発生する不遵守が「不要薬の自己廃棄」です。患者が不要になった薬を病院に戻さず自宅で処分してしまうケースが毎年報告されています。患者への指導だけでなく、次回診察時に持参を確認するフローの定着が重要です。不要薬を医療機関で廃棄する場合も、藤本製薬の控えをMRに渡すといった所定の手続きが必要で、単純にゴミ箱に捨てることはできません。


薬剤紛失時にも対応手順が定められています。医療機関または特約店で紛失した場合、患者が紛失した場合でそれぞれ異なる対応フローがあります。紛失が発生した際はTERMS管理センターへ速やかに連絡することが求められます。


サレドカプセル管理の盲点:禁止事項は服用中止後も4週間続く

TERMS®において、医療従事者が患者への指導で見落としやすいポイントの一つが、禁止事項の期間です。多くの担当者は「服用期間中の管理」に注意を向けますが、禁止事項の一部は服用を中止した後も継続します。これが盲点です。


TERMS®で定められた主な禁止事項とその期間をまとめます。


- 🚫 献血の禁止:服用開始時から服用中止4週間後まで(すべての患者)
- 🚫 精子・精液の提供禁止:服用開始時から服用中止4週間後まで(男性患者)
- 🚫 妊婦との性交渉の禁止:服用開始時から服用中止4週間後まで(男性患者)
- 🚫 妊娠の禁止・妊娠検査の継続:女性患者C(妊娠の可能性がある女性患者)は、服用中止後も4週間後に妊娠検査が必要


妊娠検査についても、単に「服用中は4週間ごとに実施」と覚えているだけでは不十分です。4週間を超える処方・調剤を行う場合は、処方のタイミングに限らず「診察の機会をとらえ、間隔が4週間を超えないよう実施する」とされています。つまり処方日が変わっても検査間隔は常に4週間以内が条件です。


服用中止後の確認として、処方医師は中止4週間後に「中止後確認調査票」を用いて患者の禁止項目の遵守状況を確認し、責任薬剤師等はその結果を藤本製薬へ送信することが義務付けられています。「薬を飲んでいない期間だから患者任せでいい」ということにはなりません。


患者への退院時指導や治療終了時の説明では、服用中止後の義務事項(禁止事項の継続・妊娠検査の実施)を明確に伝えることが、医療従事者としての重要な役割です。


TERMS® 責任薬剤師のみなさまへ(PMDA掲載版)


現場の薬剤師が見落としやすい:入院患者へのサレドカプセル管理の特殊対応

外来患者のサレドカプセル管理に慣れている薬剤師ほど、入院患者への対応で思わぬ落とし穴にはまることがあります。この視点は既存の解説記事ではあまり取り上げられていません。


実際の不遵守事例報告を分析すると、入院患者に関連する不遵守パターンが一定数見られます。代表的なものをまとめると以下のとおりです。


- 「入院患者は遵守状況確認票が不要」と処方医師・薬剤師双方が誤解していたケース(初回調剤時の相互確認は不要ですが、遵守状況確認票の作成とFAX送信は必要です)
- 入院処方では処方医師のタブレットが外来に設置されており、病棟からの操作が困難だったために失念が多発したケース
- 緊急入院でサレドを持参していなかった患者への緊急処方時に、バタバタした状況でFAX送信を失念したケース
- 残薬確認が困難な入院状況でFAX送信が翌日にずれ込んだケース


これらを踏まえると、入院患者向けの運用においては次の対策が有効です。


入院病棟にタブレット端末を設置することは、処方医師側の失念防止に直接つながります。2024年の不遵守事例でも、タブレットを外来に設置していたために入院処方のたびに繰り返し不遵守が発生した事例が複数記録されており、タブレットを病棟に移動設置したことで解決した事例が報告されています。


また、緊急入院や週末・休日の入院処方は特にリスクが高い場面です。「サレドを服用している患者が入院する可能性」を想定した院内ルールの整備、たとえば緊急時の責任薬剤師連絡フローや週末の担当者明確化が、現場での不遵守防止に直結します。


入院中の数量管理においては、患者が自己管理することなく、医療機関が在庫を一元管理する形になります。外来患者のように「患者がシートを持ち帰る」運用とは異なるため、数量の記録・保管体制の切り替えが必要です。入院から退院へ移行する際も、カプセルシートや残薬の取り扱いについて退院時指導チェックリストを活用した引き継ぎが推奨されています。


退院時指導チェックリスト(TERMS®公式資材・藤本製薬株式会社)






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