10mgへの処方変更を急ぐと、腎機能障害患者に過量投与となりクレームが起きます。

ロスバスタチン錠10mg(一般名:ロスバスタチンカルシウム)は、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)に属し、LDLコレステロールの低下効果が特に強い「ストロングスタチン」の代表的な薬剤です。先発品はアストラゼネカのクレストール®であり、後発品(ジェネリック)として東和薬品、高田製薬、ニプロ、日医工岐阜工場(NIG)など多くのメーカーが製造・販売してきました。
しかし、2024年〜2025年にかけて、複数のメーカーが10mg規格について相次いで販売中止を発表しています。直接のきっかけとなっているのは「安定的な製品供給を考慮した品目集約」という理由で、東和薬品は「2.5mg・5mgへの集約」を方針として打ち出しました。これは後発医薬品業界全体に共通する「少量多品目生産」の問題と深く関わっています。
少量多品目体制ということです。後発品メーカーの多くは、複数規格・複数剤形を同じ製造ラインで少量ずつ生産してきました。しかし、製造コストや原材料調達の観点から、採算が取りにくい規格を集約・廃止する流れが業界全体で加速しています。厚生労働省も「後発品の安定供給等の実現に向けた産業構造の検討」を進めており、メーカー側はその方針に沿って品目整理を行っているという背景があります。
主な販売中止メーカーと時期は以下のとおりです。
| 製品名 | メーカー | 在庫終了予定 | 経過措置期限 |
|---|---|---|---|
| ロスバスタチン錠10mg「トーワ」 | 東和薬品 | 2026年5月 | 2027年3月31日 |
| ロスバスタチンOD錠10mg「トーワ」 | 東和薬品 | 2026年5月 | 2027年3月31日 |
| ロスバスタチン錠10mg「タカタ」 | 高田製薬 | 終了済み | 2025年3月31日(終了済み) |
| ロスバスタチン錠10mg「ニプロ」関連 | ニプロ | 随時終了 | 2027年3月末(延長申請) |
高田製薬の経過措置はすでに終了済みです。2025年4月1日以降は保険請求が不可となっているため、もし在庫が残っていても「タカタ」の10mg規格を処方・調剤している場合には、すでに保険請求できない状態になっている点に注意が必要です。これは見落としやすいポイントです。
参考:東和薬品 ロスバスタチン錠10mg「トーワ」販売中止のお知らせ(2025年10月21日付)
東和薬品 ロスバスタチン錠10mg「トーワ」 販売中止のお知らせ(PDF)
経過措置とは、販売中止が決まった医薬品について、一定期間は保険請求を認める猶予期間のことです。この期間内であれば、在庫が残っていれば引き続き調剤・処方・保険請求が可能です。ただし、この期間を過ぎると即日で保険請求が不可となるため、現場での管理は非常に重要になります。
東和薬品の「ロスバスタチン錠10mg「トーワ」」については、2026年3月5日付の厚生労働省告示第68号により経過措置品目へ正式に移行しました。経過措置期限は2027年3月31日(予定)とされており、翌日の2027年4月1日から保険請求が一切できなくなります。
期限は「目安」です。東和薬品の案内文書には「保険請求に関しましては上記の経過措置期限は目安となります」という注記があります。これは、国の告示によって期限が変更される場合があるためです。最終的な経過措置期限については、社会保険診療報酬支払基金や厚生局の正式な通知を必ず確認するようにしてください。
また、高田製薬の「ロスバスタチン錠10mg「タカタ」」については、経過措置期限がすでに2025年3月31日で終了しています。同社の経過措置移行品一覧にも明記されており、現時点でこの製品を保険請求することはできません。もし調剤録や在庫管理の中で旧在庫が残っている施設は、速やかに廃棄または返品処理を行う必要があります。
現場での確認ポイントは以下の3点です。
保険請求が通らないと、その月の調剤報酬全体に影響する場合があります。つまり経過措置の管理ミスは収益にも直結します。薬局・病院の薬剤部では、医薬品マスターの経過措置年月日の管理を定期的に見直すことが原則です。
参考:東和薬品 製造販売中止に伴う経過措置移行のお知らせ(2026年3月6日付)
東和薬品 製造販売中止に伴う経過措置移行のお知らせ(PDF)
ロスバスタチン錠10mgが販売中止になっても、同一成分薬への切替えは可能です。代替候補は主にロスバスタチン錠2.5mgまたは5mgへの変更となります。東和薬品の案内でも、代替候補品としてロスバスタチン錠2.5mg「トーワ」(薬価10.40円/錠)とロスバスタチン錠5mg「トーワ」(薬価18.40円/錠)が明示されています。
ここが重要なポイントです。「10mgの代わりに5mgを2錠」と単純に考えてしまうと、特定の患者に対して過量投与となるリスクがあります。
ロスバスタチンは、添付文書上で腎機能に応じた明確な用量制限が規定されている唯一のスタチン系薬剤です。クレアチニンクリアランス(Ccr)30mL/min/1.73m²未満の重度腎機能障害患者に対しては、2.5mgから投与を開始し、1日最大投与量は5mgとされています。つまりこの患者層では、10mgの代替として5mg×2錠(計10mg)への変更は禁忌となります。
処方変更時の判断フローとして、以下の流れで確認することを推奨します。
また、ロスバスタチンはCYPによる代謝の影響を受けにくい水溶性スタチンであるため、CYP3A4阻害薬を併用している患者でも比較的安全に使用できます。ただし、シクロスポリンとの併用は禁忌であり、移植後の患者などでは処方変更の際に特に注意が必要です。それが原則です。
なお、先発品のクレストール®(アストラゼネカ)は現時点でも2.5mgおよび5mgの規格のみが販売されており、10mg規格は先発品でも存在しません。したがって、「先発品で10mgに戻す」という対応は取れない点も覚えておく必要があります。
参考:スタチン系薬剤の使い分けと腎機能による用量制限(m3.com 薬剤師向け解説)
【薬剤比較表付】脂質異常症スタチン系薬剤の使い分けと服薬指導の要点解説(m3.com)
処方変更においては、薬効や安全性だけでなく薬価(コスト)の変化も把握しておくと、患者説明や処方設計に役立ちます。
東和薬品の資料をもとに整理すると、薬価は以下のとおりです。
| 製品名 | 規格 | 薬価(1錠あたり) | 10mg相当1日薬価 |
|---|---|---|---|
| ロスバスタチン錠10mg「トーワ」(旧) | 10mg | 16.00円 | |
| ロスバスタチン錠5mg「トーワ」(代替) | 5mg×2錠 | 18.40円×2 | 36.80円 |
| ロスバスタチン錠2.5mg「トーワ」 | 2.5mg×4錠 | 10.40円×4 | 41.60円 |
10mgを1錠で服用していた患者が5mgを2錠に変更する場合、1日あたりの薬価は16.00円から36.80円へと、約2.3倍に増加します。薬価は上がります。これは患者の自己負担増にもつながります。3割負担の患者であれば1日あたりの負担差は約6.2円(月換算で約186円)となります。月単位で見ると目に見えた影響ではありませんが、長期服用を前提としている脂質異常症治療薬のため、年間では約2,230円の自己負担増となる計算です。
患者への説明時はこの点も触れておくと、「薬が変わったのになぜ薬代が増えたのか」というクレームや疑問を防ぐことができます。これは使えそうです。変更の理由とともに、負担額の変化についても一言添えることが丁寧な対応につながります。
また、院内採用品の切替えに際して、購買担当部門や事務部門との連携も重要です。DPC病院では薬剤費管理の観点からも品目変更の影響を事前に試算しておくことを推奨します。
なお、ロスバスタチンを含む配合剤(ロスーゼット®、エゼロス®)については、現時点では販売中止の情報はなく、エゼチミブとの併用が必要な患者ではこれらへの切替えを医師と相談する選択肢もあります。
今回のロスバスタチン錠10mgの販売中止は、単なる「品切れ対応」に留まらず、処方設計の全体を見直す好機と捉えることができます。あまり議論されない視点ですが、後発品10mgの消滅は「スタチンの最大用量に依存しない治療設計」を促すサインともいえます。
ロスバスタチンの1日通常用量は2.5mgまたは5mgであり、10mgは「さらに増量が必要な場合」、20mgは「10mgを投与してもLDLコレステロールの低下が十分でない家族性高コレステロール血症患者などの重症患者に限る」とされています。つまり10mg以上の用量はそもそも特殊な症例向けであり、多くの脂質異常症患者において最大用量が必要かどうかを再評価する機会になります。
実際、ロスバスタチン5mgでのLDL低下率は約40〜45%、10mgでは約50〜55%とされており、目標LDL値の設定によっては5mgで十分にコントロールできているケースも少なくありません。今回の販売中止を機に、現在10mgを処方している患者のLDL値を確認し、5mgへのデエスカレーション(減量)が可能かどうかを医師・薬剤師が協働して評価することは、適正使用の観点からも有益です。
また、LDL管理がスタチン単剤では不十分な場合は、ロスバスタチンの増量ではなく、エゼチミブ(コレステロール吸収阻害薬)との併用に切り替えるアプローチも有効です。エゼチミブとの配合剤であるロスーゼット®やエゼロス®は、現在も安定供給されており、かつ「スタチン中等量+エゼチミブ」の組み合わせはLDL低下効果と副作用リスクのバランスが良いとされています。これは使えそうです。
処方変更の際に確認したいチェックポイントは以下のとおりです。
今回の販売中止を「在庫切れによる緊急対応」で終わらせず、患者ごとの治療目標を再確認するきっかけにすることが、医療の質を高める実践的なアプローチです。結論はこの再評価の機会を活かすことです。
参考:脂質異常症とロスバスタチン用量・適応の詳細解説
脂質異常症とロスバスタチン完全ガイド|作用・効果・副作用・飲み方(yakkle.jp)

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