外用薬として算定していると、そのままレセプトが査定されることがあります。

ライゾデグ配合注フレックスタッチ300単位は、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社が製造販売するインスリン配合製剤です。一般名は「インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/インスリン アスパルト(遺伝子組換え)」で、薬効分類番号は2492(溶解インスリンアナログ注射液)に分類されます。
最大の特徴は、超速効型インスリンであるインスリン アスパルト(ノボラピッドの有効成分)と、持効型溶解インスリンであるインスリン デグルデク(トレシーバの有効成分)を3:7のモル比で1本のペン型デバイスに配合した点にあります。世界で初めて「溶解した状態で」2種類のインスリンアナログを安定配合することに成功した製剤です。
つまり、1回の注射で食後血糖と基礎血糖の両方を同時にカバーできる設計です。
インスリン アスパルトは投与後10〜20分で作用が発現し、食後1〜3時間をカバーします。一方、インスリン デグルデクは作用発現まで約1〜2時間かかるものの、作用持続時間が40時間以上と非常に長く、かつ血糖降下プロファイルが平坦で安定しているのが特徴です。デグルデクの半減期は約25時間であり、注射時刻が多少ずれても血糖値への影響が比較的小さいというメリットがあります。これは強化インスリン療法における患者のQOLに直結する重要な特徴といえます。
1キット(300単位/3mL)の薬価は1,670円です。YJコードは2492500G1025で、劇薬・処方箋医薬品に指定されています。
KEGG MEDICUSデータベース:ライゾデグ配合注フレックスタッチの添付文書情報(用法・用量・相互作用・副作用等の詳細)
用法・用量の基本は、初期1回4〜20単位を1日1〜2回、皮下注射です。維持量は通常1日4〜80単位ですが、患者の状態によってはこれを超える場合もあります。
1日1回投与の場合は、朝食・昼食・夕食の中で「主たる食事」の直前に投与し、その食事時間を毎日一定に保つことが求められます。1日2回投与の場合は朝食直前と夕食直前に投与します。いずれの場合も、食事の直前という点は原則です。
本剤は作用発現が速いため、食事の準備が整っていない状況での投与には注意が必要です。
1型糖尿病患者に対しては、他のインスリン製剤と併用したうえで、本剤は必ず1日1回投与にとどめることが規定されています。本剤のみで対応することはできません。糖尿病性昏睡・急性感染症・手術などの緊急時には、本剤だけでは対処が不十分であり、速効型インスリン製剤の使用が推奨されます。
他のインスリン製剤から本剤に切り替える際の目安として、「前治療のインスリン1日投与量と同単位で開始する」とされています。ただし、これはあくまで目安です。切り替え初期の数週間は血糖モニタリングを十分に行い、必要に応じて他の糖尿病用薬の投与量・スケジュールも調整することが重要です。
注射部位は腹部・大腿・上腕への皮下注射が基本で、同一部位に繰り返し投与すると皮膚アミロイドーシスやリポジストロフィーが生じることがあります。少なくとも前回の注射箇所から2〜3cm離すよう患者に指導する必要があります。これは「はがきの幅(約10cm)の5分の1程度」と説明するとイメージしやすいでしょう。
くすりのしおり(患者向け情報):ライゾデグ配合注フレックスタッチの用法・保管方法・注意事項(患者指導の参考資料として活用可)
保管方法は使用前と使用後で大きく異なります。この違いを患者に正確に伝えることが指導の要です。
未使用品は2〜8℃の冷蔵庫で保管します。ただし凍結は絶対に避けなければなりません。凍結した製剤はタンパク質が変性し、薬効が著しく低下するリスクがあります。保管場所は冷却風が直接当たりにくいドアポケットが適しています。製造後の使用期限は30ヶ月です。
使用開始後は室温(30℃以下)で保管し、4週間以内に使用します。キャップや外箱で遮光することも必要です。冷蔵庫での保管も可能ですが、使用の都度常温に戻す手間が増え、温度変化による結露でデバイス故障のリスクも生じるため、実務上は開封後の室温保管が推奨されます。4週間を超えた残量は廃棄が必要です。
4週間というのは「月に1度の診察サイクル」と同じ長さです。
空打ち(エアショット)については、毎回注射前に2単位の空打ちを行い、針先からインスリンが出ることを確認する手順が重要です。空打ちをしないと、針の内腔に残ったインスリン分だけ実際の投与量が指示量より少なくなります。1単位は約0.01mLという微量ですが、血糖コントロールには影響します。
また、本製剤は他の薬剤との混合が禁忌です。他のインスリン製剤と取り違えないよう、ラベルを毎回確認するよう患者に徹底して指導することが求められます。フレックスタッチのボディカラーはライゾデグが「黄緑色」系統となっており、他のノボ製品と外観が異なりますが、複数インスリンを併用している患者では特に混同リスクに注意が必要です。
医事算定において、ライゾデグ配合注フレックスタッチを「外用薬」として算定しているケースが一部の施設で見られますが、これは誤りです。本剤は注射薬として算定するのが正しい区分です。
厚生労働省の通知(平成27年11月25日付事務連絡)では、以下の2点が明記されています。
これが原則です。
「査定されていないから問題ない」と考えていると、後日まとめて返戻・査定される可能性があります。しろぼんねっとのQ&Aでも、外用薬で算定している施設からの問い合わせが2025年2月時点で確認されており、複数の医療機関で同様の誤算定が潜在していることが示唆されます。今すぐ自院の算定区分を確認しましょう。
さらに、院外処方で調剤薬局が注射薬として算定している場合、医療機関側が外用薬として算定していると、レセプトの整合性が取れなくなりトラブルの原因になります。薬局との確認体制の構築も実務上重要な対策です。
厚生労働省:使用薬剤の薬価基準の一部改正等について(ライゾデグの算定区分・注入器加算不可の根拠通知)
2025年10月、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は海外製造拠点における出荷スケジュールの遅延を理由に、ライゾデグ配合注フレックスタッチの限定出荷(10月20日より)および11月初旬以降の出荷停止を発表しました。これは自社都合による供給制限で、在庫消尽後は供給停止となる状況が生じました。
同社は医療関係者に対し、以下の対応を要請しました。
同成分を用いた代替療法として、①超速効型製剤「ノボラピッド注フレックスペン」と②持効型製剤「トレシーバ注フレックスタッチ」を別々に処方する強化インスリン療法への切替が提示されました。また、配合比が類似する混合製剤として「ノボラピッド30ミックス注フレックスペン」も選択肢として案内されています。
その後、2025年11月13日に限定出荷を再開し、2026年1月23日には限定出荷解除が案内されています。
切替時の注意点は、既存患者の血糖コントロールへの影響です。切替後の数週間はより丁寧なモニタリングが必要です。1本での投与から2本管理への変更は患者の注射手技や療養管理の負担増加にもつながるため、十分な患者説明と支援が求められます。このような供給リスクは今後も繰り返し発生しうるため、日常的に代替製品の選択肢を把握しておくことが実務上の備えになります。
日本糖尿病学会:ライゾデグ配合注フレックスタッチの出荷調整・停止についてのご案内(2025年10月掲載)
医薬品供給情報(DSJP):ライゾデグ配合注フレックスタッチの出荷調整・停止の詳細情報(包装形態・統一商品コード・備考含む)