ミケラン錠の後発品への切り替えは、処方箋の「変更不可」がなければ医師への疑義照会なしで可能です。

大塚製薬は2025年9月9日付で、βブロッカー「ミケラン錠5mg」および徐放性高血圧治療剤「ミケランLAカプセル15mg」の販売中止を正式に告知しました。出荷停止の予定時期は2027年3月とされており、経過措置期間の満了日も2027年3月末日が予定されています。
販売中止となる品目と具体的なスケジュールは以下のとおりです。
| 品目名 | 包装 | 薬価(1錠) | 出荷停止予定 | 経過措置期限(予定) |
|---|---|---|---|---|
| ミケラン錠5mg(PTP100錠) | 100錠(PTP) | 9.30円 | 2027年3月 | 2027年3月末 |
| ミケランLAカプセル15mg | 徐放性カプセル | — | 2027年3月 | 2027年3月末 |
つまり、約1年半の移行期間が設けられています。
なお、ミケラン細粒1%はこれより先に経過措置品目へ移行しており、2024年11月20日付で経過措置品目に移行し、2025年3月末日に薬価削除が完了しました。経口製剤のラインナップは順次縮小されており、今回の告知でミケラン錠5mgおよびミケランLAカプセル15mgも最終的な終売となります。
医療機関・薬局が今すぐ確認すべきことは、院内・薬局内でのミケラン錠5mgおよびミケランLAカプセル15mgの在庫状況と、処方患者に対する後発品への切り替え準備です。2027年3月が迫る前に、計画的に対応を進めることが重要です。
参考情報:大塚製薬が発出した販売中止のご案内(DSJP医療用医薬品供給状況データベース掲載)
DSJP|ミケラン錠5mg 供給状況データベース
ミケラン錠の有効成分はカルテオロール塩酸塩です。1980年12月に大塚製薬が発売を開始し、40年以上にわたって臨床現場で使われてきた歴史ある薬剤です。
カルテオロールの最大の薬理学的特徴は、ISA(内因性交感神経刺激作用:Intrinsic Sympathomimetic Activity)を持つ点です。βブロッカーでありながら、β受容体をわずかに刺激する性質も兼ね備えています。これは意外な特性です。
ISA陽性(ISA+)であることの臨床的意義を以下に整理します。
これが原則です。
ISA+であるため、高齢者や徐脈傾向のある患者への使用に適しているとされており、ISA−のビソプロロール(メインテート)やアテノロール(テノーミン)とは異なる患者層に選択されてきました。また、水溶性という特性上、腎排泄型であり、肝機能障害患者でも比較的使いやすいという側面があります。
適応症は狭心症・心臓神経症・不整脈(洞性頻脈、頻脈型不整脈、上室性・心室性期外収縮)・本態性高血圧症(軽症〜中等症)と多岐にわたっており、ミケランLAカプセルは高血圧症に特化した徐放製剤でした。いずれも後発品への切り替えにあたっては、この薬理的特性を踏まえた対応が必要です。
参考:ISAとβブロッカーの特性比較
Pharmacista|β遮断薬のISA(内因性交感神経刺激作用)+−の意味と使い分け
ミケラン錠5mgの後発品(カルテオロール塩酸塩錠5mg)は複数のメーカーから供給されています。生物学的同等性試験も確認済みで、有効成分の量・吸収に差はありません。
現時点で確認されている主な後発品は以下のとおりです。
| 販売名 | 製造販売元 | 薬価(1錠) | 備考 |
|---|---|---|---|
| カルテオロール塩酸塩錠5mg「サワイ」 | 沢井製薬 | 6.10円 | 後発品(加算対象) |
| カルテオロール塩酸塩錠5mg「トーワ」 | 東和薬品 | 6.10円 | 後発品(加算対象) |
| カルテオロール塩酸塩錠5mg「ツルハラ」 | 鶴原製薬 | 6.10円 | 後発品(加算対象) |
先発品のミケラン錠5mgの薬価が9.30円/錠であるのに対し、後発品は6.10円/錠です。薬価差は1錠あたり約3.2円です。これは小さな数字に見えますが、長期処方患者が多いβブロッカーの特性上、医療機関・患者双方にとって無視できないコスト削減につながります。仮に1日2錠・365日処方の場合、1年間の差額は約2,336円(患者自己負担の3割なら約700円の差)です。
後発品への切り替えを検討するにあたって重要なのは、添加物の差異です。有効成分の量は同一ですが、添加物(賦形剤)は製品ごとに異なります。
これは使えそうです。
後発品への変更調剤については、処方箋に「変更不可」の記載がない場合、患者への説明と同意を得たうえで薬剤師の判断で変更が可能です(薬機法および療担規則に基づく)。ただし一般名処方でなく銘柄名処方の場合は、患者への十分な説明が特に求められます。
販売中止に伴う切り替え対応で、最も重大なリスクはβブロッカーの急な中止です。厳しいところですね。
ミケラン錠5mgの添付文書には以下の旨が明記されています。
「β遮断剤を急に中止したとき、症状が悪化した症例が報告されているので、休薬を要する場合には徐々に減量し、観察を十分に行うこと。急に投与を中止すると、症状を悪化させることがある。また、頻脈等の中毒症状をマスクすることがある。」
この問題は、販売中止に際してとりわけ注意が必要な状況を生み出します。以下のシナリオが特に危険です。
βブロッカーの急中止によるリバウンド現象は、受容体のアップレギュレーション(β受容体数の増加)によって引き起こされます。カテコラミン感受性が過剰に高まった状態で薬を止めると、頻脈・高血圧・狭心症発作が生じる可能性があります。これが「急な中止禁忌」の根拠です。
具体的な対応として薬剤師が取れる行動は1つです。
処方医に対して「在庫確認と後発品への切り替え依頼」を早めに行い、患者へのアドホックな投与中断を予防することです。
これだけ覚えておけばOKです。
ミケランLAカプセル15mgは、カルテオロールの徐放性製剤として高血圧治療に特化した剤形でした。1日1回の服用で24時間にわたる血圧コントロールが可能な点が最大のメリットでした。
ここで重要なのは、ミケランLAカプセル15mgには現在後発品が存在しない点です。ミケラン錠5mg(速放性)には後発品がありますが、LAカプセル(徐放性)の後発品はリストに存在しません。これは問題ありません、という状況ではありません。
つまり、ミケランLAカプセルから切り替える場合は、単純な後発品への変更ではなく、以下のような対応が必要です。
服薬アドヒアランスの観点から考えると、1日1回から複数回服用への変更は患者負担を増大させます。長年ミケランLAカプセルを服用してきた高齢患者では、服用回数の増加が飲み忘れリスクに直結します。処方変更の際には、患者とのコミュニケーションが特に重要です。
また、カルテオロールはISA+かつβ1非選択性という特性を持つため、代替薬を選ぶ際には以下の点を比較検討することが望ましいです。
| 薬剤名(一般名) | ISA | β選択性 | 水/脂溶性 | 主な適応 |
|---|---|---|---|---|
| カルテオロール(ミケラン) | + | 非選択 | 水溶性 | 高血圧・狭心症・不整脈 |
| セリプロロール(セレクトール) | + | β1選択 | 水溶性 | 高血圧 |
| ビソプロロール(メインテート) | − | β1選択 | 両親媒性 | 高血圧・心不全・狭心症 |
| アテノロール(テノーミン) | − | β1選択 | 水溶性 | 高血圧・狭心症・不整脈 |
いいことですね、代替薬の選択肢は豊富にあります。ただし、ISA+から ISA−への変更では、安静時心拍数の低下・手足の冷えなどの副作用が新たに現れることがあります。患者の状態を観察しながら、少量から切り替えることが原則です。
KEGG MEDICUS|ミケラン錠5mg(カルテオロール塩酸塩)医薬品情報