ミダゾラム注10mgサンドの用法・禁忌と販売中止の対応

ミダゾラム注10mg「サンド」の効能・用法用量・禁忌・副作用・向精神薬としての管理義務を詳しく解説。2025年販売中止に伴う代替品の選び方と現場での切り替えポイントを知っていますか?

ミダゾラム注10mg「サンド」の基本から販売中止対応まで

鎮静薬のなかでも扱い慣れているミダゾラムは、高用量より低用量のほうが逆説反応を起こしやすい場合がある。


この記事の3つのポイント
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効能・用法用量

麻酔前投薬から歯科鎮静まで4つの適応ごとに投与量が細かく異なる。特に高齢者・小児は成人と別基準での管理が必要。

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安全管理と法的規制

第三種向精神薬に分類され、記録義務こそ任意だが保管・廃棄・事故届は法律で規定されている。10アンプル以上の紛失は都道府県知事への届出が必要。

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2025年販売中止と代替品

2025年9月1日をもって販売中止。経過措置期間は2027年3月まで延長されたが、早期のドルミカム®またはミダゾラム注射液10mg「NIG」への切り替えが推奨される。


ミダゾラム注10mg「サンド」の成分・規制区分と薬価



ミダゾラム注10mg「サンド」(サンド株式会社)は、有効成分ミダゾラム10mgを2mLに溶解した注射剤です。薬効分類番号1124の催眠鎮静剤に属し、規制区分としては「向精神薬(第三種向精神薬)」「習慣性医薬品」「処方箋医薬品」の3つの規定が同時に適用されます。


薬価は1管92円で、先発品のドルミカム注射液10mg(丸石製薬、115円)と比べると1管あたり23円の差があります。日常的に大量使用する集中治療室(ICU)や手術室では、この差が月間コストに積み重なるため、採用薬を検討する際の根拠の一つになっていました。


ミダゾラムはベンゾジアゼピン系薬剤に分類されます。脳内のベンゾジアゼピン受容体に結合してGABA(γ-アミノ酪酸)の作用を増強し、神経細胞の興奮を抑えることで鎮静・催眠効果を発揮します。水溶性が高くアンプル内では安定して溶解しているため、静脈内投与および筋肉内投与の両方に対応できる点が臨床上の大きな利点です。


意外なのは、同じミダゾラムでも製品によって薬価が異なる点です。ミダゾラム注射液10mg「NIG」(日医工岐阜工場)は115円と先発品と同額で、「サンド」品が最も低薬価のポジションを占めていました。つまり薬価だけで「後発品=安い」と一概には言えません。


参考リンク:ミダゾラムの薬価・成分・商品一覧(KEGG)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=D00550


ミダゾラム注10mg「サンド」の効能・用法用量の詳細

添付文書(2025年11月改訂・第2版)に定められた効能は4つです。「麻酔前投薬」「全身麻酔の導入および維持」「集中治療における人工呼吸中の鎮静」「歯科・口腔外科領域における手術及び処置時の鎮静」が承認されています。


用法用量はそれぞれの効能で大きく異なります。麻酔前投薬では成人に0.08〜0.10mg/kgを術前30分〜1時間に筋肉内注射します。体重60kgの患者であれば4.8〜6.0mg、すなわち1アンプル(10mg)の半量前後という計算です。


全身麻酔の導入では、成人への標準投与量は0.15〜0.30mg/kgを静脈内に注射し、必要に応じて初回量の半量〜同量を追加します。体重60kgなら9〜18mgとなり、1〜2アンプルの範囲です。静脈内注射の場合は太い静脈を選び、1分間以上かけてゆっくり投与することが原則です。


集中治療における鎮静導入では、成人で初回0.03mg/kg(確実な鎮静が必要な場合0.06mg/kgまで)を1分以上かけて静注し、追加は0.03mg/kgを5分以上の間隔で行います。総量は0.30mg/kgまで。鎮静維持の標準速度は0.03〜0.06mg/kg/hで開始し、0.03〜0.18mg/kg/hの範囲で調整します。二重盲検比較試験では、0.06mg/kgの単回投与で10分後に27%の患者がRamsayスケール6(刺激に反応なし)に達したというデータもあります。過度の鎮静は呼吸抑制に直結するため、この数字は重要な根拠です。


歯科・口腔外科処置時の鎮静では成人への初回1〜2mgを1〜2mg/分で静注し、追加は0.5〜1mgを2分以上の間隔で行います。初回目標鎮静レベルに至るまでの総量は5mgまでとされており、他の効能と比べて用量が格段に少ない点が特徴です。鎮静目標は「呼びかけに応答できる程度」と明確に定められています。つまり歯科処置での使い方は全身麻酔とは根本的に異なります。


小児については修正在胎45週以上から使用が認められていますが、6ヶ月未満では気道閉塞・低換気が起きやすく、段階的漸増が必須です。幼児は成人より高用量が必要になる場合があり、逆説反応も成人より起こりやすいとされています。


参考リンク:ミダゾラム注10mg「サンド」電子添付文書(KEGG経由JAPIC掲載)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051825


ミダゾラム注10mg「サンド」の警告・禁忌と重要な副作用

警告欄には2項目が設けられています。1点目は「呼吸及び循環動態の連続的な観察が可能な施設においてのみ使用すること」という施設要件で、速やかな処置が行われなかったために死亡または低酸素脳症に至った症例が複数報告されています。2点目は「低出生体重児・新生児への急速静脈内投与禁止」で、重度の低血圧と痙攣発作が報告されています。これは施設・スタッフ要件と患者要件の両方に関わる警告です。


禁忌は5項目です。①本剤成分に過敏症歴のある患者、②急性閉塞隅角緑内障、③重症筋無力症、④HIVプロテアーゼ阻害剤・コビシスタット含有薬・ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッドパック)・ロナファルニブ投与中の患者、⑤ショック・昏睡・急性アルコール中毒でバイタルサイン抑制がみられる患者です。


④の禁忌については実務上の注意が必要です。特にパキロビッドパック(新型コロナウイルス感染症治療薬)は2022年以降に広く使われるようになったため、入院前の服薬確認で見落としが起きやすい薬剤の一つです。これは禁忌であり、単なる「注意」ではありません。


副作用では呼吸抑制が最大のリスクです。無呼吸・舌根沈下・血圧低下は高頻度に起こりうるため、投与前にパルスオキシメーター・血圧計・人工呼吸器具・昇圧剤を必ず手もとに準備することが義務付けられています。フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)の準備も添付文書上で推奨されています。


呼吸抑制への対処としてフルマゼニルを使用する場合、注意点があります。フルマゼニルの半減期は約50分であるのに対し、ミダゾラムの消失半減期は1.82〜2.68時間と長めです。このため、フルマゼニルで一旦覚醒させても再鎮静が起こるリスクがあり、投与後も継続的な観察が必要です。覚醒させたら安心、ではありません。


長期投与(100時間超)では効果が減弱する場合があり、増量または鎮痛剤の併用を検討する必要があります。また、大量連用による依存性や、急激な投与量の減少・中止に伴う痙攣発作・譫妄・不眠も添付文書に記載されています。


参考リンク:日本麻酔科学会「催眠鎮静薬」ガイドライン(最新版)
https://anesth.or.jp/files/pdf/4_hypnosis_sedative.pdf


ミダゾラム注10mg「サンド」の向精神薬管理と法的義務

ミダゾラムは麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)によって第三種向精神薬に分類されています。麻薬ではないため麻薬管理者の選任は不要ですが、向精神薬としての取り扱いルールへの準拠は医療機関に義務付けられています。


保管については、施設内での保管が必要で、夜間・休日など医療従事者が常駐していない時間帯は鍵をかけた設備内での管理が求められます。病棟の看護師詰め所に保管する場合も、常時看護師が在室している場合以外はロッカー等に施錠することが必要です。


記録義務については、第三種向精神薬には第一種・第二種と異なり法定の記録義務はありません。ただし厚生労働省の取扱い手引きでは「譲受けについて記録し、定期的に在庫確認をすることが望ましい」と明示されています。記録は任意ですが、在庫管理の観点から実施するのが原則です。


事故(紛失・盗難等)が発生した場合は、注射剤で10アンプル(バイアル)以上の場合に都道府県知事への届出が義務付けられます。10アンプル未満の盗難・詐取であっても、届出と警察署への報告が必要です。ここで注意したいのは「10アンプル未満なら報告不要」ではないという点で、盗取・詐取は数量にかかわらず届出対象です。


廃棄については許可・届出は不要ですが、酸・アルカリによる分解、焼却、他の薬剤との混合など「向精神薬の回収が困難な方法」で廃棄する必要があります。そのまま廃棄ボックスに投入するだけでは法令上の要件を満たしていない可能性があります。廃棄方法に注意が必要です。


参考リンク:厚生労働省「病院・診療所における向精神薬取扱いの手引」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/kouseishinyaku_01.pdf


ミダゾラム注10mg「サンド」の薬物相互作用で見落としやすいポイント

ミダゾラムは主としてCYP3A4(薬物代謝酵素)によって代謝されます。このため、CYP3A4に影響を与える薬剤との相互作用が非常に多岐にわたります。添付文書の「10.1 併用禁忌」に列挙されている薬剤との組み合わせは過度の鎮静・呼吸抑制を起こすおそれがあり、禁忌扱いです。


「10.2 併用注意」の中で、現場で特に見落としやすいのがアゾール系抗真菌剤(フルコナゾール・イトラコナゾール等)、マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン・クラリスロマイシン)、カルシウム拮抗剤(ベラパミル・ジルチアゼム)です。これらはCYP3A4を阻害するためミダゾラムの血中濃度が上昇し、中枢神経抑制作用が増強します。


さらに見落としやすい相互作用として「グレープフルーツジュース」があります。グレープフルーツに含まれるフラノクマリンがCYP3A4を阻害するため、術前や処置前にグレープフルーツ製品を摂取していた患者では、同量投与でも鎮静効果が過剰になるリスクがあります。術前の飲食確認でグレープフルーツを確認することは、一見些細なようですが、安全管理上の重要な確認事項です。


また、カルバマゼピン・クロバザム・トピラマートなど、主にCYP3A4で代謝される薬剤との併用では双方向の相互作用が生じる可能性があります。ミダゾラムの効果が増強されるだけでなく、これらの薬剤の効果も変動しうる点を理解しておく必要があります。


中枢神経抑制薬(フェノチアジン誘導体・バルビツール酸誘導体・麻薬性鎮痛剤等)との併用では、鎮静・麻酔作用が相加的に増強し、呼吸数・血圧・心拍出量が低下するリスクがあります。ICUでオピオイドとミダゾラムを同時使用する場面では、この相互作用を常に意識した投与量の設定が求められます。モノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)との組み合わせも同様です。


つまり多剤併用患者でのミダゾラム投与は、必ず相互作用を確認してからが基本です。


ミダゾラム注10mg「サンド」の販売中止と代替品への切り替え対応

サンド株式会社は2025年1月28日付けで「ミダゾラム注10mg『サンド』」の販売中止を正式発表し、2025年9月1日に実施されました。当初の経過措置満了時期は2026年3月とされていましたが、2025年7月に延長が告知され、現在の経過措置満了時期は2027年3月となっています。


経過措置期間中は既存在庫品の使用・保険請求が認められますが、この期間はあくまで猶予期間です。2027年3月以降は請求が認められなくなるため、医療機関・薬局ともに計画的な切り替えが必要です。


代替品として添付文書に記載されている選択肢を整理すると、先発品のドルミカム注射液10mg(丸石製薬、115円/管)、後発品のミダゾラム注射液10mg「NIG」(日医工岐阜工場、115円/管)があります。また、ミダフレッサ静注0.1%(アルフレッサファーマ)はミダゾラムを0.1%濃度の輸液形態に製剤化したもので、薬価は3,184円と高額ですが、集中治療領域での持続鎮静において希釈の手間が省けるという利点があります。


切り替えの際に実務的に確認すべき点は3つです。まず採用薬の院内登録手続き、次に規格・濃度の確認(ドルミカム・NIG品はいずれも10mg/2mL、ミダフレッサは100mL製剤で規格が異なる)、最後に物流経路と発注先の変更手続きです。特にミダフレッサへ切り替える場合は同一mL量を投与すると100倍の過量投与になるため、規格の違いについての院内周知が欠かせません。


🔔 発注担当者は2027年3月の経過措置満了日を採用薬リストに記載しておき、切り替え漏れを防ぐことを推奨します。


参考リンク:サンド株式会社「ミダゾラム注10mg『サンド』経過措置期間延長のご案内」(PDF)
https://sandoz-jp.cms.sandoz.com/sites/default/files/Media%20Documents/news_20250728_005.pdf






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