ケシンプタ副作用を医療従事者が正しく把握し患者を守る方法

ケシンプタ(オファツムマブ)の副作用として注射に伴う全身反応や感染症リスクが知られていますが、投与中止後も長期間リスクが続くことはご存知ですか?

ケシンプタの副作用を正確に理解し適切に管理する

投与を中止しても、副作用リスクは9カ月以上続くことがあります。


ケシンプタ副作用の3つのポイント
💉
注射に伴う全身反応(発現率20.6%)

初回投与後24時間以内に発熱・頭痛・悪寒などが出現。前投薬(ステロイド等)で発現率を18.2%→10.6%に低下できます。

🦠
感染症リスク(重篤例2.5%)

B細胞除去によりIgMが約3.5年で徐々に低下。投与中止後もB細胞数が回復するまで(36週時点で55〜70%)感染リスクが継続します。

⚠️
B型肝炎ウイルス再活性化(警告事項)

過去に感染歴があるHBs抗原陰性・HBc抗体陽性の患者にも再活性化リスクがあります。投与前のスクリーニングと定期モニタリングが必須です。


ケシンプタの副作用:注射に伴う全身反応の特徴と前投薬戦略



ケシンプタ(一般名:オファツムマブ)を投与する際に最初に遭遇する副作用が、「注射に伴う全身反応」です。添付文書における発現率は20.6%(海外第III相試験)と記載されており、5人に1人の患者に何らかの全身反応が生じうる計算になります。主な症状は発熱・頭痛・筋肉痛・悪寒・疲労であり、皮下投与後24時間以内に発現することがほとんどです。


この反応は初回投与時に最も頻度が高く、継続投与とともに減少する傾向がありますが、2回目以降の投与でも生じうることを患者に事前に伝えておくことが重要です。


前投の効果は数値で明確に示されています。PMDA公開の適正使用ガイドによれば、ステロイド等の前投与を実施した症例の注射全身反応発現率は10.6%、前投与なしの症例では18.2%でした。つまり前投薬により発現率をおよそ40%抑制できる可能性があります。


前投与の有無 注射に伴う全身反応の発現率
前投与あり(ステロイド等) 10.6%
前投与なし 18.2%


添付文書上は「注射に伴う全身反応を軽減させるために、必要に応じて副腎皮質ステロイド等の前投与を考慮すること」とされており、強制ではありませんが、特に初回投与時は積極的に考慮することが勧められます。海外第III相試験では、アセトアミノフェンや抗ヒスタミン剤、さらに初回のみメチルプレドニゾロン100mg静注が推奨されていました(本邦は未承認用途)。


前投薬戦略が重要なのはこの理由です。患者が初回投与後の強い発熱・悪寒を経験すると、治療継続への意欲が著しく低下する可能性があります。開始前の段階から適切な前処置と患者説明を組み合わせることで、安全で継続しやすい治療導入が実現します。


医療施設で初回投与を行い、投与後24時間は反応の発現に注意するよう患者に指導しておく点も忘れずに確認してください。患者が自己投与に移行した後も、2回目以降の投与時に全身反応が生じた場合は速やかに医療機関に連絡するよう事前に伝えておくことが条件です。


参考:ケシンプタ適正使用ガイド(PMDA公開版、2026年3月改訂)
ケシンプタ適正使用ガイド(PMDA) — 投与前後の注意事項、前投薬の考え方、自己投与指導の詳細が掲載されています


ケシンプタの副作用:投与中止後も続く感染症リスクとB細胞モニタリング

医療従事者が見落としがちな事実があります。ケシンプタを中止しても、B細胞数は「すぐに」回復しません。


添付文書(電子添文8.3)では「本剤投与によりB細胞数が減少し、本剤投与中止後も長期間にわたりB細胞数の低下が持続する」と明記されています。海外第III相試験のデータでは、投与中止後36週時点でB細胞数がベースラインまたは基準値下限(40 cells/μL)まで回復した患者の割合はASCLEPIOS I試験で55.6%(15/27例)、ASCLEPIOS II試験で70.3%(26/37例)でした。つまり投与を止めてから約9カ月が経過しても、3〜4割の患者はまだB細胞が十分に回復していないことになります。


これは感染症対策において大きな意味を持ちます。投与中止後であっても、感染症リスクは続いているのです。


重篤な感染症の発現割合は、海外第III相試験(ASCLEPIOS I・II試験)の併合データで本剤投与群2.5%(24/946例)でした。主な有害事象として上咽頭炎(18.0%)・上気道感染(10.3%)・尿路感染(10.3%)・インフルエンザ(6.6%)が報告されています。これらは比較的「軽症」に見えますが、免疫グロブリン濃度が低下している患者では遷延や重症化のリスクがある点に注意が必要です。


感染症の種類 発現割合(本剤投与群)
上咽頭炎 18.0%
上気道感染・尿路感染 各10.3%
インフルエンザ 6.6%
重篤な感染症(全体) 2.5%


IgMに関しては、長期試験で約3.5年の間に徐々に低下するという報告があります。一方でIgGについては96週後平均値のベースラインからの変化量は+2.2%とほぼ変化なく、IgMおよびIgGの低下と感染症発症の間に有意な相関はみられなかったという報告(九州大学・渡邉充先生の講演データ)も存在します。つまり数値の変化だけで安心・不安を判断するのではなく、総合的な患者状態の観察が基本です。


感染症リスクの管理として、治療期間中および治療終了後は定期的に血液検査を行うことが添付文書で求められています。具体的な検査間隔の規定はなく、患者の状態に応じた医師判断に委ねられています。投与終了後も継続的なフォローが必要という意識を、患者と医療チーム全体で共有しておくことが、感染症を早期に対処するための重要な条件になります。


参考:ノバルティス ファーマ 医療関係者向けFAQページ
ケシンプタ FAQ(医療関係者向け)— 免疫グロブリン低下の基準値、B細胞数の推移データ、投与中止後の管理に関する詳細な情報が掲載されています


ケシンプタの副作用:B型肝炎ウイルス再活性化とHBV検査の重要性

ケシンプタの添付文書で【警告】として位置づけられている唯一の事項が、B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化です。これは見過ごされやすいリスクです。


具体的には、慢性リンパ性白血病の治療にオファツムマブ点滴静注製剤を用いたHBVキャリアの患者で、HBV再活性化による肝不全に至り死亡した症例が報告されています。MSを対象としたケシンプタ皮下注での死亡例の報告はありませんが、同一成分であることから電子添文の警告として継続的に注意喚起されています。


注意が必要なのは「HBs抗原陽性(現在の感染)」の患者だけではない点です。HBs抗原が陰性であっても、HBc抗体またはHBs抗体が陽性の既往感染者においても、HBV再活性化により肝炎があらわれるおそれがあります。


投与前には必ずHBs抗原・HBc抗体・HBs抗体の3つを確認し、既往感染者と判断された場合は肝機能検査値やHBV DNAのモニタリングを治療期間中および治療終了後も継続して実施することが求められています。適正使用ガイドでは、事前に肝臓内科への紹介も望ましいとされています。


🔍 HBV検査で確認する項目:
- HBs抗原(陰性でも油断禁物)
- HBc抗体(既往感染の確認)
- HBs抗体(ワクチン接種歴との鑑別も含む)


現在の日本人のHBV既往感染率は概ね1〜3%台とされていますが、高齢者層では10%超の報告もあります。MSの患者は必ずしも若年者だけではないため、高齢のMS患者への対応でも油断は禁物です。


投与開始前の確認作業を忘れると、後に深刻な肝障害が発生するリスクがあります。患者管理の漏れを防ぐためにも、チェックリスト形式での確認体制を医療施設で整備しておくことが実践的です。添付文書やケシンプタ適正使用ガイドには確認すべき項目が詳細にまとめられており、施設内の教育資材として活用できます。


参考:医薬品情報データベース(KEGG MEDICUS)ケシンプタ添付文書
ケシンプタ電子添文(KEGG MEDICUS)— 警告・禁忌・副作用の全文、B型肝炎ウイルスに関する注意事項を確認できます


ケシンプタの副作用:PMLリスクと進行性多巣性白質脳症への対応

ケシンプタの多発性硬化症を対象とした臨床試験では、PML(進行性多巣性白質脳症)の報告はゼロです。これは正確な情報です。


ただし、専門家の見解では「ゼロではなく、注意は必要」とされています。同じB細胞除去作用を持つリツキシマブやオクレリズマブ(いずれもMSへの国内未承認)では、JCウイルス(JCV)感染によるPMLが報告されています。ケシンプタにおいても、作用機序が類似することから一定のリスクが否定できないと位置付けられています。


PMLは有効な治療法がなく、発症すると重篤な障害や死亡に至る可能性がある疾患です。初期症状は認知機能低下・精神状態の変化・片麻痺・構音障害・失語など、MSの再発や増悪と鑑別が困難なものが多いため、見逃しリスクが高いのが現実です。


🧠 PML疑い時の対応フロー:
- 意識障害・認知機能障害・麻痺症状・構音障害・失語などが出現
- 速やかにMRI撮影(点状信号病変の増加、皮質・皮質下病変に注意)
- 脳脊髄液中のJCV DNA検査を実施
- 疑いが濃厚な場合は投与を中止し、適切な処置へ移行


MSそのものの再発と非常に似た症状を呈するため、PMLを念頭に置いた観察が重要です。特に長期投与中の患者で新たな神経症状が出現した際には、MRIの画像所見とあわせて積極的に鑑別を検討してください。


ケシンプタのような抗CD20抗体薬は、他のMS疾患修飾薬と比較してPMLリスクが高くないとする報告もあります。しかしリスクが「報告ゼロ」であることと「リスクがない」ことは別の意味を持ちます。意識的なモニタリングを怠らないことが原則です。


参考:第35回日本神経免疫学会学術集会 シンポジウム5 ハイライト集(多発性硬化症・生物学的製剤の使いこなし)
日本神経免疫学会 学術集会ハイライト集 — ケシンプタを含む生物学的製剤の安全性管理、PMLリスクの専門家による詳細な解説が掲載されています


ケシンプタの副作用:ワクチン接種タイミングと生ワクチン禁忌の実務対応

ケシンプタ投与患者へのワクチン接種は、タイミングを誤ると健康被害につながる可能性があります。


最も重要なルールは生ワクチン・弱毒生ワクチンの取り扱いです。麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜ(MMRワクチン含む)などの生ワクチンは、ケシンプタ投与開始の少なくとも4週間前までに接種を完了する必要があります。投与中はもちろん、投与中止後もB細胞数が回復するまでは接種を避けることが望ましいとされています。


接種可能な不活化ワクチン(インフルエンザ・COVID-19など)については、ケシンプタ投与開始の少なくとも2週間前までに接種することが推奨されています。投与中でも不活化ワクチンの接種自体は禁止されていませんが、免疫応答の減弱(効果が十分に得られない可能性)があるため、注意が必要です。


ワクチン種類 接種可否と推奨タイミング
生ワクチン(麻疹・風疹・水痘等) 投与開始の4週間前までに接種。投与中・中止後B細胞回復まで禁忌
弱毒生ワクチン(帯状疱疹Zostavax等) 同上
不活化ワクチン(インフル・コロナ等) 投与開始2週間前までが望ましい。投与中も接種可能だが効果減弱に注意


現実的な問題として、MS患者が急にケシンプタ導入を決定した場合、4週間のウィンドウを確保できないケースがあります。また、既にケシンプタを使用中の患者が帯状疱疹ワクチン(生ワクチン)の接種を希望してくる場面も少なくありません。


こうした場面では「投与を止めてから何週間後なら接種できるか」という判断が求められます。前述のB細胞回復データによれば、36週後でも3〜4割の患者はまだ回復していないため、個別のB細胞数モニタリングによる判断が実務上の安全策になります。


ワクチン接種の可否については、患者が自己判断で接種機関を訪れてしまうケースがあります。患者への事前教育の一環として、ワクチン接種前には必ず主治医に相談するよう明確に伝えておくことが、予防接種による感染症リスクを回避するための基本的な対応になります。


参考:MSキャビン「ケシンプタ® 詳細解説ページ」(神経内科専門医監修)
MSキャビン ケシンプタ詳細解説 — 専門医11名が監修した患者・医療者向けの詳細ページ。ワクチン接種の可否、保管方法、投与忘れ時の対応など実務的な情報が網羅されています






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