市販薬やサプリメントを「薬ではない」と判断して持参薬から除外すると、重篤な薬物相互作用を見落とし医療事故につながるリスクがあります。

持参薬確認と聞くと、病院から処方された「処方薬」だけを対象にすればよいと考えがちです。しかし実際には、患者が自宅から持ち込む薬は処方薬にとどまりません。市販薬(OTC医薬品)・漢方薬・健康食品・サプリメント・点眼薬・外用薬・貼付剤なども、すべて持参薬確認の対象として扱う必要があります。
これが基本です。
厚生労働省が公表している「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアルにおいても、持参薬には「患者が自ら購入したOTC薬・健康食品を含む」と明記されています。特にサプリメントに含まれるビタミンK(納豆・クロレラなども同様)はワルファリンの効果を著しく減弱させることが広く知られており、これを「薬ではない」と判断して見落とすと、抗凝固療法の効果不足から血栓症を引き起こすリスクが生じます。
市販薬も要注意です。
NSAIDs系の市販鎮痛薬(イブプロフェン等)は、アスピリンや抗凝固薬との併用で消化管出血リスクが上昇します。また、かぜ薬に含まれる成分(抗ヒスタミン薬、エフェドリンなど)が、MAO阻害薬や降圧薬との相互作用を引き起こすことも報告されています。「市販薬くらいは大丈夫」という思い込みを、まず排除することが大切です。
実際の確認では、以下の区分を念頭に置いて確認範囲を明確にしておくと、見落としを防ぐことができます。
確認漏れゼロが原則です。入院・外来・手術前・転科のいずれの場面でも、このリストを網羅的に確認する習慣が、医療安全の土台となります。
参考:厚生労働省「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(持参薬確認の対象範囲・手順に関する公式指針)
厚生労働省 医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル
お薬手帳を確認すれば持参薬の全貌がわかる、と考えている医療従事者は少なくありません。しかし、お薬手帳の記録は必ずしも最新ではありません。複数の医療機関にかかっている患者では、それぞれの処方が別々のお薬手帳に記録されているケースがあり、1冊だけ確認しても全処方を把握できないことがあります。
複数冊の確認が必要です。
日本薬剤師会の調査では、患者がお薬手帳を複数冊持ち歩いているケースが一定数存在することが指摘されています。また、お薬手帳に記録されているのは調剤薬局を通じた処方薬のみであり、院内処方や自費処方、OTC薬は記録されていないことがほとんどです。つまり、お薬手帳だけに頼ると、院内投与薬やOTC薬との相互作用を見逃すリスクが生じます。
薬歴照会には複数ルートが有効です。具体的には以下の情報源を組み合わせて確認することが推奨されます。
電子処方箋の活用は今後さらに重要になります。2023年1月から本格運用が始まった電子処方箋管理サービスでは、患者の同意のもと、過去に処方された薬剤の履歴を医師・薬剤師が閲覧できるようになっています。重複投薬・相互作用のチェック機能もあり、情報収集の精度向上が期待されています。
これは使えそうです。
ただし、患者のICT リテラシーや施設の対応状況によっては、まだ活用できていないケースも多いのが現状です。電子的な手段が使えない場合は、問診をより丁寧に行うことが求められます。「お薬は飲んでいますか?」という単純な一問ではなく、「飲み薬・貼り薬・目薬・注射薬・市販薬・サプリは何かありますか?」と具体的に列挙して聞くことで、情報の引き出し精度が高まります。
参考:日本薬剤師会「電子処方箋に関する取組みと薬歴管理の実際」(複数医療機関の処方情報一元化に関する解説)
日本薬剤師会 電子処方箋への対応について
持参薬確認の最大の目的は、薬物相互作用による有害事象を予防することです。しかし、「有名な相互作用は知っている」という自信が、かえって盲点を生むことがあります。教科書的に知られた相互作用だけでなく、現場で頻繁に見落とされる組み合わせを押さえておくことが重要です。
見落としが事故につながります。
日本医療機能評価機構(JCAHO相当)が公表している医療事故情報収集等事業の報告では、持参薬に関連したインシデント・アクシデントの中でも、「情報収集不足による相互作用の見落とし」が繰り返し報告されています。特に注意が必要な薬剤の組み合わせとして、現場で確認精度を高めるべき代表例を以下に示します。
| 持参薬 | 院内使用薬・食品等 | リスク |
|---|---|---|
| ワルファリン | NSAIDs(市販鎮痛薬を含む) | 出血リスク上昇(消化管出血・脳出血) |
| ワルファリン | ビタミンKサプリ・青汁・クロレラ | 抗凝固効果の著明な減弱・血栓症リスク |
| SSRI(抗うつ薬) | トリプタン系薬(片頭痛治療薬) | セロトニン症候群(重篤な場合は死亡リスク) |
| St. John's Wort(セイヨウオトギリソウ) | 免疫抑制薬・抗HIV薬・経口避妊薬 | 血中濃度低下による治療効果消失 |
| ACE阻害薬・ARB | NSAIDs・COX-2阻害薬 | 腎機能悪化・高カリウム血症 |
| スタチン系薬 | フィブラート系薬・ニコチン酸製剤 | 横紋筋融解症リスク上昇 |
| メトホルミン | ヨード造影剤使用前後 | 乳酸アシドーシス(致死リスクあり) |
特にSt. John's Wort(セイヨウオトギリソウ)は、市販のハーブサプリに含まれていても患者が「薬ではない」と認識しているため、問診で見落とされやすい代表例です。免疫抑制薬(タクロリムス・シクロスポリンなど)の血中濃度を著明に低下させ、臓器移植患者では拒絶反応を引き起こした事例が複数報告されています。
深刻な事例です。
メトホルミンとヨード造影剤の組み合わせも、入院時に見落とすと手術・検査時に重大なリスクをもたらします。日本糖尿病学会は「メトホルミン服用中の患者に対するヨード造影剤使用の注意」として、検査前後のメトホルミン休薬を推奨しています。持参薬確認のタイミングに「検査・手術前」も必ず加えることが不可欠です。
参考:日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業(持参薬に関連したインシデント事例の収集・分析)
公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 報告書
持参薬確認を「担当者の経験と勘」に頼っている施設では、担当者が変わるたびに確認精度がばらつきます。これが、インシデント発生の温床になります。つまり標準化が最重要です。
確認フローを標準化するとは、「誰がやっても、同水準の確認ができる手順を文書化すること」を意味します。日本病院薬剤師会が公表しているガイドラインでは、入院患者に対する持参薬確認は「薬剤師が関与するべき」とされており、医師・看護師・薬剤師の3職種が情報を共有する体制が推奨されています。
場面別にチェックポイントを整理します。
入院時(緊急・予定入院共通)
外来・定期受診時
手術前・侵襲的処置前
転科・転棟・転院時
標準化のツールとして、院内独自の「持参薬確認チェックシート」を作成している施設も増えています。日本病院薬剤師会のガイドラインにはひな型例が掲載されており、施設の規模や運用に合わせてカスタマイズして使うことが可能です。チェックシートを電子カルテと連動させることで、記録漏れや引き継ぎ時の情報断絶を防ぐ効果が高まります。
参考:日本病院薬剤師会「持参薬の取り扱いに関するガイドライン」(入院・外来・手術前の確認フローと薬剤師の役割)
日本病院薬剤師会 ガイドライン・指針一覧
持参薬確認の現場で繰り返し発生する失敗には、いくつかの共通パターンがあります。これらを知っておくだけで、自施設のリスクを客観的に評価できるようになります。
失敗のパターンを知ることが対策の第一歩です。
よくある失敗例①:「飲めていない薬」を「飲んでいる薬」として扱う
患者が処方薬を「もらっているが飲んでいない」ケースは珍しくありません。特に服薬アドヒアランスが低い患者では、残薬が大量に自宅にあることも。入院時に「処方通り服用している前提」で確認を進めると、実際の体内薬物濃度との乖離が生じ、追加投与や相互作用チェックに誤りが生まれます。「実際に飲めていましたか?」の一言が重要です。
よくある失敗例②:薬の「一時中断歴」を見落とす
「前回受診時に一時中断を指示された薬」が再開されているかどうか、確認されないことがあります。特に抗生剤・ステロイド・免疫抑制薬・ビスホスホネート製剤などは、中断・再開のタイミング管理が重要で、見落とすと治療の継続性が損なわれます。
よくある失敗例③:施設外受診で処方された薬の未申告
患者が「関係ないと思って」他の科の処方薬を申告しないケースがあります。歯科・眼科・皮膚科などの処方薬は、特に主科への申告が抜けやすい傾向があります。問診では「最近、どこかほかの病院やクリニックにかかりましたか?」と明示的に聞くことがポイントです。
ポリファーマシー対策の視点も重要です。
厚生労働省は2021年に「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編・各論編)」を改訂・公表しており、65歳以上の患者では6種類以上の薬剤服用でポリファーマシーのリスクが高まるとしています。6種類という数字を目安に、持参薬が一定数を超えた場合には薬剤師によるポリファーマシー評価を依頼する院内ルールを設けると、見直しの機会を定期的に作れます。
特に退院後の高齢患者では、入院中に追加された薬剤がそのまま継続処方になり、退院時点で10種類以上になるケースも報告されています。退院時の持参薬確認・処方見直しも、入院時と同様に重要な場面として位置付けることが求められます。
これが条件です。
持参薬確認は「入院時一回限り」のルーティン作業ではなく、患者の状態変化に合わせて継続的に行うべきプロセスです。現場で「確認した」という記録が残っているかどうかも、医療安全の観点から重要です。記録なき確認は、確認していないのと同じリスクをはらんでいます。チェックシートの活用と電子カルテへの記録習慣が、事後検証においても施設と個人を守る手段になります。
参考:厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編:療養環境別)」(ポリファーマシーの定義・判断基準・対策の詳細)
厚生労働省 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編・各論編)

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