インタール点眼液販売中止の理由と代替薬の選び方

インタール点眼液2%・UD2%が2020年末に販売中止となった背景と、代替となるジェネリック製品の選び方を解説。UDタイプのみジェネリックが存在しない事実や、防腐剤・薬価の違いについて知っていますか?

インタール点眼液の販売中止と代替薬への切り替えを徹底解説

インタール点眼液のUD2%だけは、ジェネリックへの単純切り替えで患者にリスクが生じることがあります。


📋 この記事の3ポイント要約
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販売中止の概要

サノフィは2020年12月末でインタール点眼液2%・UD2%の製造を終了。経過措置期間は2021年3月末で完全に終了した。

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代替薬の注意点

通常の点眼液2%はジェネリックが複数あるが、UD2%にはジェネリックが存在しない。防腐剤フリー代替品の選定には患者背景の確認が不可欠。

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薬価と患者負担

先発品(約567円)からジェネリック(約188〜202円)への切り替えで、患者の3割負担は1本あたり約110〜115円軽減できる。


インタール点眼液の販売中止の経緯とサノフィの対応


2020年2月、サノフィ株式会社はインタール細粒10%・インタール点眼液2%・インタール点眼液UD2%・インタール点鼻液2%について、販売を中止すると正式に発表しました。製造終了日は2020年12月末日、経過措置期間の終了は2021年3月末日です。つまり、2021年4月以降は在庫品の払い出しも保険算定の対象外となりました。


販売中止の公式理由として、サノフィは「諸般の事情により」という表現のみを使用しており、具体的な理由は一切公開されていません。医療現場では、後発品の普及による先発品の売上低迷や、製造コストに対して収益が見合わなくなったことが原因と推測されています。


注意が必要な点があります。サノフィは代替についても一切の案内を行いませんでした。これは先発品メーカーとしては異例の対応であり、現場の薬剤師・医師が自ら代替品を調べて患者に案内する必要が生じました。


処方箋にインタール点眼液の記載が残っている場合、薬剤師には医師への疑義照会が求められます。販売中止に伴う後発品への変更は、単なるブランド切り替えではなく、製剤特性(特にUDタイプ)の違いを確認した上で対応することが原則です。


参考:インタール販売中止の経緯・代替薬・経過措置に関するまとめ情報
インタール販売中止の理由とは?経過措置はいつまで?代替薬も紹介 – yakupedia


インタール点眼液が担っていた役割:クロモグリク酸ナトリウムの薬理作用

インタール点眼液の有効成分はクロモグリク酸ナトリウム(Sodium Cromoglicate、略称:DSCG)です。この成分は、英国Fisons社の研究所で開発された「メディエーター遊離抑制薬」に分類される抗アレルギー薬で、1984年から日本でも使用されてきた歴史の長い薬剤です。


作用機序の核心は、マスト細胞(肥満細胞)の安定化です。花粉などの抗原が眼の粘膜に接触すると、マスト細胞からヒスタミンや好酸球走化因子、ロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、かゆみ・充血・流涙といった症状が引き起こされます。クロモグリク酸ナトリウムはこの「脱顆粒」のステップそのものを抑制し、化学伝達物質が放出される前の段階で反応を止めます。


つまり予防特化型の薬剤です。


一方、パタノール(オロパタジン)やアレジオン(エピナスチン)などの抗ヒスタミン系点眼薬は、すでに放出されたヒスタミンをH1受容体でブロックする仕組みです。即効性はありますが、発症後の使用が前提となります。クロモグリク酸ナトリウムは発症前から継続使用してこそ効果が発揮されるため、花粉シーズン開始の1〜2週間前から点眼を始めることが推奨されます。


副作用は非常に少なく、安全性が高いのが特徴です。報告されている副作用は点眼時の一過性眼刺激感・結膜充血・眼瞼炎などで、全身への吸収もほとんどありません。妊娠中・授乳中・小児・高齢者にも比較的使いやすい薬剤として、長年にわたって処方されてきた実績があります。


用法は1回1〜2滴・1日4回(朝・昼・夕・就寝前)です。1日2回製剤が主流となりつつある現在の点眼薬と比べると点眼回数が多く、アドヒアランス面での課題として現場では指摘されています。


参考:クロモグリク酸ナトリウム点眼液の作用機序・副作用・注意点を医師が解説したページ
クロモグリク酸ナトリウム点眼液の効果・副作用を医師が解説 – ウチカラクリニック


インタール点眼液の代替薬:通常タイプとUDタイプで対応が異なる

代替薬の選定は、インタール点眼液2%とUD2%で大きく異なります。これが現場で最も重要なポイントです。


【インタール点眼液2%の代替】


通常の5mL瓶タイプには、複数のジェネリックが存在します。主な選択肢は以下のとおりです。


製品名 メーカー 薬価(5mL/瓶) 防腐剤
クロモグリク酸Na点眼液2%「杏林」 キョーリンリメディオ 187.8円 ベンザルコニウム塩化物含有
クロモグリク酸Na点眼液2%「科研」 科研製薬 187.8円 ベンザルコニウム塩化物含有
クロモグリク酸Na点眼液2%「トーワ」 東和薬品 201.7円 ベンザルコニウム塩化物含有
クロモグリク酸Na点眼液2%「日新」 日新製薬 201.7円 ベンザルコニウム塩化物含有
クロモグリク酸Na・PF点眼液2%「日点」 ロートニッテン 187.8円 防腐剤フリー(PF)


薬価は先発品から大幅に下がります。これは患者にとってメリットです。


先発品インタール点眼液2%の薬価は567.4円(2025年以降の改定値)であったのに対し、ジェネリックは187.8〜201.7円となっています。3割負担の患者であれば、1本あたりの自己負担額は先発品の約170円から後発品の約56〜60円へと、110〜115円ほど軽減されます。年間で複数本処方される患者には、年数百円〜千円以上の節約につながるケースもあります。


【インタール点眼液UD2%の代替】


UDタイプ(Unit Dose:1回使いきり型)には、現在ジェネリックが存在しません。これが見落とされがちな重要事実です。


インタール点眼液UD2%は、防腐剤のベンザルコニウム塩化物を含有しないユニットドーズ製剤として設計されており、保存剤による過敏症が懸念される患者(ベンザルコニウム塩化物アレルギーの疑い症例など)にも使用できました。また、コンタクトレンズ装用下でも対応しやすい設計でした。


UDタイプの代替として推奨されるのは、上記表にある「クロモグリク酸Na・PF点眼液2%『日点』」です。これはロートニッテンが製造する防腐剤フリー(Preservative Free)の5mL瓶製剤で、添加剤はホウ酸・ホウ砂のみです。ただし、1回使いきりではなく5mL瓶での提供となるため、高齢患者や手指機能に問題がある患者では開封操作に注意が必要です。


参考:クロモグリク酸Na・PF点眼液2%「日点」の製品情報
クロモグリク酸Na・PF点眼液2%「日点」 – ロートニッテン株式会社


インタール点眼液の販売中止で知っておくべき防腐剤の問題

クロモグリク酸ナトリウム点眼液には、ほとんどの製品に防腐剤としてベンザルコニウム塩化物(BAK:Benzalkonium Chloride)が含まれています。この成分をめぐる知識は、代替品選定において外せません。


ベンザルコニウム塩化物は、点眼薬の長期保存性確保のために広く使用される防腐剤です。しかし、含水性ソフトコンタクトレンズへの吸着性があることが知られており、装用したまま点眼すると、レンズが成分を蓄積して目にダメージを与えるリスクがあります。このため、BAK含有点眼薬は「コンタクトレンズを外し、点眼後15分以上経過してから再装用する」という使用上の注意が設定されています。


花粉症シーズンに患者から「コンタクトをしたまま使えますか?」という質問は非常に多い場面です。BAK含有製品では、これをそのまま許可するとコンプライアンス違反につながります。


一方で、前述のクロモグリク酸Na・PF点眼液2%「日点」のような防腐剤フリー製剤は、BAKを添加していないため、コンタクトレンズ装用者や、長期にわたって複数の点眼薬を使用する患者(例:緑内障治療薬と抗アレルギー点眼薬を併用するケースなど)への使用で一定のアドバンテージがあります。ただし、開封後の保存期間については各製品の添付文書を確認することが必要で、多くのBAKフリー製品は開封後使用可能期間が短くなっています。


BAK含有の通常製剤は開封後1か月が目安です。


患者の生活背景(コンタクト装用の有無、点眼本数、自己管理能力)を事前に確認した上で、適切な製品を選択・提案することが医療従事者の重要な役割です。インタール点眼液の販売中止を機に、代替品の選定基準として「有効成分の一致」だけでなく「防腐剤の有無」まで確認する習慣を整えておくことが、現場での対応品質を左右します。


参考:点眼剤の防腐剤に関する解説(旭川薬剤師会)
点眼剤の防腐剤について(PDF) – 旭川薬剤師会


インタール点眼液の販売中止が示す先発品依存リスクと今後の処方設計

インタール点眼液の販売中止は、医療現場にとって「先発品が突然なくなるリスク」を再認識させる出来事でした。特に、サノフィが代替薬の案内を一切行わなかったという事実は、特定の先発品に依存した処方設計の脆弱性を浮き彫りにしています。


医療用医薬品の販売中止は、インタールに限らず近年増加傾向にあります。2020年前後だけを見ても、多くの先発品・後発品で供給停止・販売中止の事例が相次ぎ、厚生労働省も医薬品の安定供給に関する緊急対応策を講じています。こうした環境下では、特定製品名に依存した処方パターンは継続性リスクを内包しています。


抗アレルギー点眼薬の領域に目を向けると、現在の処方シェアはオロパタジン(パタノール)やエピナスチン(アレジオン)などの抗ヒスタミン系薬が上位を占めています。これらは1日2回投与製剤も存在し、クロモグリク酸ナトリウムの1日4回投与と比べてアドヒアランス面で優れています。実際に、2026年3月公開の日経メディカルの処方動向調査でも、エピナスチンがシェア拡大を続けていることが報告されています。


クロモグリク酸ナトリウムは安全性の高さと副作用の少なさから、妊婦・小児・高齢者に優先されるケースが今でもあります。完全に置き換えられる薬剤ではありません。


ただし、処方設計の観点からは、特定ブランドへの依存を避けた「一般名処方」の活用が推奨されます。処方箋に「クロモグリク酸ナトリウム点眼液2%」と一般名で記載することで、薬局側が在庫状況に応じた後発品を選択できるようになります。これは患者の薬剤継続性の確保にもつながります。


今回のインタール点眼液の販売中止事例を踏まえ、処方する立場・調剤する立場それぞれが、一般名処方の活用と代替製品リストの事前整備を意識した体制を持つことが、実務上の重要なポイントです。


参考:製造中止となった医薬品の一覧と対応情報(薬剤師向けまとめ)
【販売中止】製造中止となって失われた医薬品たち – yakuzaishi.love


インタール点眼液の販売中止に関する薬剤師・医師の実務対応チェックリスト

インタール点眼液の経過措置は2021年3月末で終了しています。時期が経過した現在でも、過去に処方されていた患者が他院からの処方箋を持参する・電子お薬手帳に記録が残っているなどのケースで、現場での照会対応が発生することがあります。


以下に実務上のチェックポイントを整理します。


  • 処方箋の記載確認:「インタール点眼液」という販売名での処方箋が出た場合、販売中止品であることを確認し、医師に対して代替品への変更を疑義照会する。なお、疑義照会を行わずに代替品を自己判断で交付した場合、薬剤師法上の問題が生じる可能性があります(薬剤師法第23条)。
  • UDタイプか通常タイプかの確認:「インタール点眼液UD2%」と記載がある場合は特に注意が必要。ジェネリックが存在せず、防腐剤フリー製剤への切り替えを含めた代替提案が必要になる。
  • 患者背景の確認:コンタクトレンズ装用者・ベンザルコニウム塩化物への過敏症歴・妊婦や小児の有無を確認した上で、適切な代替品(PF製剤か通常製剤か)を選定する。
  • 薬価差の説明:後発品への切り替えにより1本あたり約110〜115円(3割負担)の自己負担軽減が見込まれる。患者への説明材料として活用できる。
  • 開封後の使用期限の指導:BAK含有製剤は開封後1か月を目安に使い切るよう説明する。特に1日4回使用でも使い切れない場合は、患者の点眼実態を確認する。
  • 他の抗アレルギー点眼薬への切り替え検討:クロモグリク酸ナトリウムの即効性のなさや1日4回投与に不満を持つ患者には、医師と連携してオロパタジン・エピナスチンなどへの変更を提案することも選択肢となる。


販売中止品への対応は、ルーティン業務の中で見落とされやすい案件です。薬局・病院内での情報共有と処方監査フローへの組み込みにより、対応漏れを防ぐ体制づくりが現場での品質向上につながります。


参考:インタール点眼液の同効薬・後発品一覧(薬価・コード付き)
インタール – 同効薬リスト(後発品) & 薬価 – okusuri110.jp




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