品質試験「不適合」なのに、当該2ロットは承認規格には全て適合していた。

2025年9月、サノフィ株式会社は喘息治療剤「インタール吸入液1%」(一般名:クロモグリク酸ナトリウム)について、自主回収(クラスII)を実施すると発表しました。この知らせは日本呼吸器学会・日本アレルギー学会・日本喘息学会など複数の専門学会を通じて医療関係者へ周知されました。
回収の引き金となったのは、製造工程の適格性を確認するために定期的に実施される「プロセスシミュレーションテスト(PST)」の不適合です。これは製品を使用しない製造デモによって無菌性を担保する工程が正しく機能しているかを検証する試験で、その期間に製造された2ロットが回収対象となりました。
| 製造番号 | 使用期限 | 卸への出荷開始日 |
|---|---|---|
| 5021 | 2028年1月31日 | 2025年6月24日 |
| 5031 | 2028年2月29日 | 2025年8月27日 |
注目すべきは、サノフィが「当該2ロットの製品品質は承認規格に適合しており、追加試験でも適合が確認されている」と明言している点です。つまり製品そのものの品質には問題がなく、現時点で本事象に起因する健康被害の報告もありません。これが原則です。
ただし、製造工程の適格性が確認できなかった期間に製造されたという事実がある以上、予防的観点からの回収判断が下されました。クラスIIとは「使用によって重篤な健康被害が生じる可能性が低いが、問題があると判断された製品」に分類される回収区分です。医療従事者としては回収の重みを正確に把握しておくことが重要です。
医療機関や保険薬局においては、手持ちの在庫に回収対象製造番号(5021・5031)が含まれている場合、至急納入卸へ返品するよう手続きを進めてください。
日本呼吸器学会による公式通知はこちらから確認できます。
日本呼吸器学会:インタール吸入液1% 自主回収(クラスII)及び供給に関するお知らせ(2025年9月11日)
当初、サノフィは2025年9月の自主回収発表の時点で「供給再開の最短時期は2026年4月頃」と案内していました。医療現場ではこれを目安に代替対応を検討してきたはずです。しかし状況は変わりました。
2026年3月17日、サノフィは「インタール吸入液1%」の供給再開時期をさらに延期すると正式に発表しました。理由は「自主回収の原因究明および再発防止措置が十分といえず、さらなる対応が必要と判断した」というものです。これは痛いですね。
新たな目標としては、充分な再発防止措置を講じた上で2026年9月頃の生産再開を予定しているとされています。ただし、この時期もあくまで目標値であり、確定ではない点に注意が必要です。
問い合わせはサノフィのフリーダイヤル(0120-696-036、平日9:00〜17:00)または公式Webサイトから可能です。沢井製薬のジェネリック品「クロモグリク酸Na吸入液1%「サワイ」」についても、2026年4月頃の供給再開を予定としていましたが、現時点で更新情報を確認する必要があります。
医療機関として今後の供給スケジュールをフォローするには、日本喘息学会や日本アレルギー学会の公式サイトを定期的に確認することが有効です。
日本喘息学会による供給再開延期のお知らせはこちらです。
日本喘息学会:インタール吸入液1% 供給再開時期延期に関するお知らせ(2026年3月17日)
今回の回収で医療現場を困惑させたのは、先発品(インタール吸入液1%)とジェネリック品(クロモグリク酸Na吸入液1%「サワイ」)が同時期に回収・供給停止となったことです。代替のジェネリックを探しても、同成分製品が市場から全て消えてしまった状態になりました。
沢井製薬が公表した文書によれば、同社の回収理由も「製造元での定期的な無菌性の管理において不備が認められた」ことによるものです。回収対象は製造番号X24Z01(使用期限2028年1月)の60アンプル包装です。同社も回収着手と同時に出荷を停止しており、供給再開時期は2026年4月頃を予定としていました。
注目すべき背景があります。クロモグリク酸ナトリウム吸入液はそもそも無菌製剤として薬事承認を受けていないにもかかわらず、吸入投与される性質上、無菌製剤と同等の管理が必要な特殊な製剤です。この「承認上の位置づけ」と「実際の使用方法のギャップ」が、製造管理の難しさと今回の問題発生につながっている可能性が指摘できます。意外ですね。
さらに構造的な問題もあります。国内でクロモグリク酸ナトリウム吸入液を製造していた企業が限られており、主要な供給元が同時期に供給停止になると市場全体の供給が瞬時に途絶えるというリスクが今回まさに顕在化しました。
沢井製薬による公式の回収お知らせはこちらです。
沢井製薬:クロモグリク酸Na吸入液1%「サワイ」自主回収(クラスII)に関するお知らせ(2025年9月)
インタール吸入液が使えない状況が半年以上続く中、医療従事者が把握しておくべき代替の考え方を整理します。結論からいえば、「同成分の代替」は現在のところ不可能です。
クロモグリク酸ナトリウム吸入液のジェネリックとしては、クロモグリク酸Na吸入液1%「アメル」(共和薬品)、同「NIG」(日医工グループ)なども存在しますが、いずれも現在は販売終了または出荷停止の状態です。
同成分での代替が困難な以上、薬理学的に異なる治療体系への移行が現実的な選択肢となります。代替として検討される薬剤には以下のものがあります。
特に小児喘息において、クロモグリク酸はかつてステロイドを避けたい家庭向けの「非ステロイド系予防薬」として長く使われてきました。しかし、日本小児アレルギー学会の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023(JPGL2023)」では、クロモグリク酸ナトリウムの名称は長期管理薬のリストから完全に消えています。吸入ステロイド薬とLTRAが治療の二本柱となっているのが現在の標準的な考え方です。
治療変更にあたっては個々の患者の年齢・重症度・吸入デバイスの扱いやすさを考慮し、患者または家族への十分な説明を行うことが条件です。急な処方変更による患者不安にも配慮しながら進めてください。
自主回収と供給停止のニュースは学会を通じて周知されていますが、現場での実務的な影響については十分に語られていない点があります。医療従事者として注意すべきリスクを独自の視点から整理します。
まず問題になるのが、「供給停止を知らないまま処方を継続しようとする患者」への対応です。特に長年インタール吸入液を使用し続けてきた慢性患者・小児患者の保護者は、薬が入手できないことに気づいた時点で強い不安を感じます。この際、「入手できなかった期間に発作が悪化した」というケースが医療機関へのクレームになり得ます。
これは健康リスクと同時に、医療機関としての法的・倫理的説明責任に関わる問題です。早めの能動的な情報提供が必要です。
次に、代替薬への切り替えに伴う「処方変更の記録」の重要性です。特に小児患者では、吸入ステロイド薬へ切り替えた際に「ステロイドを使いたくない」という保護者の懸念が生じることがあります。この際、JGL(ガイドライン)に基づく説明と記録が、後から生じる可能性のあるトラブルを防ぐ根拠になります。
また、回収対象ロットが施設内に残っていた場合の対応についても確認が必要です。在庫に製造番号5021または5031が含まれていた場合は使用を中止し、速やかに納入卸へ返品する手続きをとります。使用済みの当該ロットについても、患者への健康被害が生じている疑いがあれば報告義務が発生します。
つまり、自主回収への対応は「返品して終わり」ではなく、在庫確認・処方変更・患者説明・記録保管という一連のプロセスが求められるということです。
PMDAの自主回収情報(2025年度クラスII)は最新の状況を確認できます。
PMDA:医薬品等の回収に関する情報 2025年度クラスII(医薬品)

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