インドメタシンクリームを代替薬なしで処方し続けると、患者への疼痛管理が遅れて責任問題に発展します。
インドメタシンクリームは、変形性関節症・肩関節周囲炎・腱鞘炎・筋肉痛など幅広い疼痛疾患に使われてきた、代表的な外用NSAIDsのひとつです。有効成分のインドメタシンはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジンの生成を抑えることで、炎症と痛みを局所から和らげます。長年にわたり整形外科・リハビリ科・一般内科で広く使われてきました。
それがなぜ今、販売中止になっているのでしょうか。一言でいえば「複合的な構造問題」です。
まず挙げられるのが、後発品(ジェネリック)市場における採算の悪化です。インドメタシン外用剤は先発品が成熟した市場であり、後発品も多数参入した結果、薬価が押し下げられてきました。1g当たり3.30〜3.50円という薬価水準では、製造コストや品質管理コストをまかなうことが難しくなっています。厚生労働省の資料でも「採算割れの品目が増えるとジェネリックメーカーの撤退が起こり、医薬品供給の不安定化につながる」と明記されています。これは今まさに起きていることです。
次に、製造委託工場の閉鎖という物理的な理由もあります。2018年には帝國製薬のインドメタシン内服薬「インテバンSP」が、製造委託先工場の閉鎖により販売中止となりました。外用薬も同様で、製造を担っていた工場や設備の廃止が引き金になるケースがあります。
そして2023年3月、日医工グループは経営再建の一環として「インドメタシンクリーム1%「日医工」」を含む217品目の販売中止を一括で発表しました。これは医療現場に少なからず衝撃を与えた出来事です。さらに2025年7月には興和がイドメシンコーワゲル1%・ゾル1%・クリーム1%の販売中止を発表。在庫は2026年4〜5月頃に終了、経過措置期間は2027年3月末日までとされています。
つまり状況は単発ではなく、業界全体の動向です。医療従事者としては、今後もインドメタシンクリームを含む旧来型の外用NSAIDsの撤退が続く可能性を念頭に置く必要があります。
参考:日本医師会「医療用医薬品不足の現状と問題点」(2023年)
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20231006_1.pdf
インドメタシンはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の中でも、特に強力なCOX阻害作用を持つ成分として知られています。COX-1・COX-2の両方を非選択的に阻害し、炎症メディエーターであるプロスタグランジン(PG)の産生を抑えることで鎮痛・消炎効果を発揮します。これが基本です。
外用剤として塗布された場合、インドメタシンは皮膚から経皮吸収されて角質層に多く貯留し、さらに筋肉など皮下組織にまで浸透することが確認されています。クリーム剤を患部に塗擦すると、経皮吸収量が増加するうえ、マッサージ効果も加わって鎮痛効果が高まります。
インドメタシンクリームの効能・効果は、変形性関節症・肩関節周囲炎・腱および腱鞘炎・腱周囲炎・上腕骨上顆炎(テニス肘など)・筋肉痛・外傷後の腫脹・疼痛です。処方頻度が高いのは当然で、整形外科の外来では複数の適応をカバーできる使い勝手のよい薬剤でした。
剤形にはクリーム・ゲル(ゾル)・軟膏の3種類があります。意外ですね。これらは基剤が異なるだけで有効成分は同一ですが、使用感や患者の好みに大きく差が出ます。クリームは伸びがよく肌なじみが良い反面、ゲルはべたつきが少なくサラサラとした使用感です。軟膏は保湿性が高く皮膚が荒れた患者にも使いやすい特徴があります。
なお、1日の使用回数は用法として「1日数回」と定められており、1日4回を目安に塗布するケースが多いです。ただし、アスピリン喘息の患者への使用は禁忌です。外用でも微量のインドメタシンが経皮吸収されて気管支収縮を引き起こすリスクがあるため、既往歴の確認は必須条件です。
参考:インドメタシンクリーム添付文書(JAPIC)
https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00002283.pdf
インドメタシンクリームが手に入らなくなった場合の代替薬は、大きく2つのカテゴリに分けて考えることができます。同じインドメタシンを含む製品に乗り換えるか、別の有効成分を持つ外用NSAIDsに変更するかです。
まず、インドメタシンクリームからの代替として公式に案内されている製品を以下に整理します。
| 販売中止品目 | 代替品(同成分) | 代替品(別成分) |
|---|---|---|
| イドメシンコーワクリーム1%(興和) | インテバンクリーム1%(帝國製薬) | ナパゲルンクリーム3%(フェルビナク) |
| インドメタシンクリーム1%「日医工」 | インテバンクリーム1%(帝國製薬) | ナパゲルン軟膏3%(フェルビナク) |
| イドメシンコーワゲル1%(興和) | インテバンクリーム1%(帝國製薬) | ナパゲルン軟膏3%(フェルビナク) |
インテバンクリーム1%は帝國製薬の先発品で、有効成分はインドメタシン10mg/gと同一です。薬価は1g当たり3.30円。同じ適応疾患をカバーしており、処方切り替えの際に患者説明の負担が少ないという利点があります。これは使えそうです。
一方のナパゲルン軟膏・クリーム・ローション(帝國製薬)は有効成分がフェルビナク30mg/gです。フェルビナクはインドメタシンの代謝産物に近い構造を持つNSAIDsで、COX阻害作用を持ちます。適応疾患は筋・筋膜性腰痛症も含まれており、インドメタシンクリームよりやや広い適応になっています。薬価は1g当たり4.40円と若干高めです。
別成分の外用NSAIDsとしては、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンゲル等)やロキソプロフェンナトリウム含有外用剤なども選択肢に入ります。ただし薬価・適応・禁忌が異なるため、安易な代替は避けてください。患者の既往歴や現在使用中の内服薬との兼ね合いを踏まえた上で選択することが原則です。
参考:興和「イドメシンコーワゲル1%・ゾル1%・クリーム1%販売中止のご案内」(2025年7月)
https://medical.kowa.co.jp/asset/pdf/info/2507stop_id3.pdf
外用のクリームだけではなく、インドメタシン内服薬の販売中止も医療現場に深刻な影響を与えています。この点を見落としている医療従事者は少なくありません。
2018年、帝國製薬の徐放性インドメタシンカプセル「インテバンSP」(25mg・37.5mg)が製造委託工場の閉鎖を理由に販売中止となりました。これによりインドメタシン内服剤が市場から消滅したのです。
日本皮膚科学会が特に懸念を示したのが、好酸球性膿疱性毛包炎(EPF)の治療への影響です。EPFは適応外ではあるものの、保険審査上の使用が認められてきた疾患で、インテバンSPの奏効率は文献上87%と報告されていました。これは大きな数字です。
代替品として挙げられたのはインドメタシンのプロドラッグである「インドメタシンファルネシル(インフリーカプセル)」と「アセメタシン(ランツジール錠)」です。文献上の奏効率は、インフリーカプセルが38%、アセメタシンが100%と報告されています。しかし症例数が限られており、一概に比較はできません。
つまり、インドメタシンクリームの販売中止は「外用剤の話」だけに収まりません。内服から外用まで、インドメタシン系薬剤全体が医療現場から退場しつつあるという流れの一環として理解することが重要です。特に皮膚科・整形外科・リウマチ科の医師や薬剤師は、この流れを早期に把握し、患者ごとの適切な代替薬を事前に検討しておく必要があります。
参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「インドメタシン内服剤の製造中止およびその代替品について」(2018年11月15日)
https://www.dermatol.or.jp/medical/news/2537/
インドメタシンクリームから別製品への処方切り替えを行う際、現場では想定外のトラブルが起きやすいです。厳しいところですね。ここでは実務上の注意点を整理します。
① 包装規格の変化に注意する
過去には包装規格の変更でヒヤリ・ハット事例が発生しています。イドメシンコーワクリームは2012年8月に従来の25g・50g(金属チューブ)が販売中止となり、35g・70gに移行しました。後発品と先発品で包装規格が異なることへの認識不足が、調剤エラーの原因になったケースが報告されています。単純に「同じ薬」と思い込まず、規格・チューブ容量まで確認することが必須です。
② 添加物の違いが皮膚トラブルを起こすことがある
インテバンクリーム1%とイドメシンコーワクリーム1%は、有効成分こそ同じインドメタシン10mg/gですが、添加物の構成は異なります。防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル類)の有無や、香料の含有量が製品によって差があります。皮膚が敏感な患者や、過去に特定の外用剤でかぶれを経験している患者では、切り替え後の反応に注意が必要です。
③ アスピリン喘息の患者は全NSAIDs外用剤に注意
インドメタシンを含む外用NSAIDsではアスピリン喘息(NSAIDs不耐症)が禁忌です。代替薬のフェルビナク・ジクロフェナク・ロキソプロフェン外用剤においても同様のリスクがあります。「塗り薬だから大丈夫」という患者の思い込みを訂正する服薬指導が、処方変更時には特に重要です。この一点だけは絶対に確認してください。
④ 経過措置期間終了後は保険請求ができなくなる
興和のイドメシンコーワ各製品は2027年3月末日をもって経過措置期間が満了します。在庫があっても期限を過ぎると保険請求ができなくなるため、早めに切り替えの準備を進めることが望ましいです。院内の採用医薬品リストの更新や、電子カルテの処方マスタ変更なども計画的に行う必要があります。
⑤ 患者への説明内容を統一する
「薬が変わった」ことに不安を覚える患者は少なくありません。「同じ成分の薬に変わります」または「成分は少し違いますが、同じ目的で使える薬です」のように、患者にとって分かりやすい言葉で説明する準備を事前にしておくことが、クレームやアドヒアランス低下の防止につながります。説明の質が問われる場面です。
参考:薬局ヒヤリ・ハット事例「後発品と先発品で包装規格に相違があることへの認識不足」
https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/114/

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