ドライアイ治療薬ジクアスとコンタクトの正しい使い方

ドライアイ治療薬ジクアス点眼液とコンタクトレンズの正しい使い方を医療従事者向けに解説。先発品とジェネリックで指導内容が真逆になる落とし穴や、カラーコンタクトの禁忌、ヒアレインとの併用順序など、服薬指導に必須の知識を網羅しています。患者への正確な指導ができていますか?

ドライアイ治療薬ジクアスとコンタクト装用の正しい服薬指導

ジェネリックに変えた患者がそのままコンタクトで点眼し、角膜障害を起こすケースが現場で起きています。


この記事の3ポイント要約
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先発品とジェネリックで指導内容が180度変わる

先発品ジクアス点眼液はベンザルコニウム塩化物を含まないためソフトコンタクト装用のまま点眼可能。一方、ジェネリック品(ジクアホソルNa点眼液)はベンザルコニウム塩化物を含有するためコンタクトを必ず外してから点眼する必要があります。

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カラーコンタクトは先発品・ジェネリック問わず使用不可

ジクアス点眼液およびジクアスLX点眼液は、カラーコンタクトレンズへの影響が検討されていないため、装用中の点眼は先発品・後発品を問わず禁止。患者指導では必ず使用コンタクトの種類を確認しましょう。

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ヒアレインとの併用はジクアスを先に点眼するのが原則

ジクアスとヒアレイン(ヒアルロン酸)を併用する場合、ジクアスを先に点眼し5分以上あけてからヒアレインを点眼するのが原則。ただし刺激感が強い患者では逆順も認められており、個別対応が求められます。


ドライアイ治療薬ジクアスの作用機序と特徴



日本のドライアイ患者は約2,200万人と推計されており、コンタクトレンズ使用者やスマートフォンの長時間利用者の増加とともに、その数は右肩上がりで増えています。こうした背景から、ドライアイ治療薬ジクアス点眼液を処方される患者は今後もさらに増えることが予想されます。


ジクアス点眼液(一般名:ジクアホソルナトリウム)は2010年に承認された比較的新しいドライアイ治療薬です。有効成分であるジクアホソルナトリウムは、結膜上皮細胞や杯細胞の表面にあるP2Y2受容体というスイッチを刺激します。このスイッチが入ると、涙の主成分である「水分」と、涙を眼表面に安定させる接着剤の役割を持つ「ムチン」の両方が目の内側から自発的に分泌されます。


ここが重要なポイントです。従来のドライアイ治療の主力だったヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン)は、外から潤いを「補給する」補充型の薬剤です。一方でジクアス点眼液は、患者自身の目が本来持つ涙を産生する力を「内側から引き出す」という根本的に異なるアプローチをとっています。


特に有効性が高いのは、BUT(Tear Break-Up Time:涙液層破壊時間)短縮型ドライアイの患者です。BUTとはまばたき後に涙液層が安定を保てなくなるまでの時間を指し、正常値は10秒以上とされています。ムチンの機能低下によってBUTが短縮している患者では、ジクアス点眼液のムチン分泌促進作用が特に効果的に機能します。ある研究によればヒアレインと比較して3倍もの涙液分泌促進作用が認められたとの報告もあります。


点眼回数の観点からは、2種類が存在します。






















製品名 点眼回数 添加剤の特徴 薬価(1本5mL)
ジクアス点眼液3% 1日6回(2〜3時間ごと) ベンザルコニウム塩化物不使用 約323.90円
ジクアスLX点眼液3% 1日3回(4〜6時間ごと) ポビドン(PVP)配合で滞留時間延長 約770.50円


ジクアスLX点眼液は、添加剤としてポビドン(PVP:ポリビニルピロリドン)が配合されており、ムチンや水分との静電相互作用によって涙液の眼表面滞留時間が延長されます。これにより、同じ有効成分濃度3%でありながら点眼回数を半減できるという設計です。


点眼回数は少ない方が好ましいですね。服薬アドヒアランスの改善という観点からは、1日3回で対応できるジクアスLXは特にコンタクトレンズ装用者にとってメリットが大きいといえます。


参考情報として、ドライアイ患者の多い眼科においてよく参照されるリソースを紹介します。


参天製薬 Santen Medical Channel「ジクアス / ジクアスLX よくあるご質問(医療従事者向け)」:用法・用量・コンタクトレンズ対応・他剤との併用順序など専門的FAQをまとめた公式情報源。


https://www.santen.co.jp/medical-channel/di/faq/DK008_faq.html


ドライアイ治療薬ジクアスのコンタクト装用時の服薬指導:先発品とジェネリックで指導が真逆になる

医療従事者として最も注意が必要なのが、先発品とジェネリック品でコンタクトレンズへの対応が全く異なるという点です。これを把握していないと、患者への指導内容が真逆になってしまいます。処方変更時に必ず確認すべき重要ポイントです。


先発品のジクアス点眼液3%(参天製薬)は、かつてベンザルコニウム塩化物(BAK)を防腐剤として含有していました。しかし2015年に添加物の見直しが行われ、クロルヘキシジングルコン酸塩液に変更されました。この変更によって、現行の先発品ジクアス点眼液はソフトコンタクトレンズを装用したままでも点眼が可能になっています(ただしカラーコンタクトを除く)。


一方、ジェネリック品(例:ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」など)は現在もベンザルコニウム塩化物を防腐剤として含有しています。BAKはマイナスに帯電したソフトコンタクトレンズに吸着しやすく、そのまま装用を続けると角膜上皮への悪影響が生じるリスクがあります。これは先発品とジェネリックで対応が180度変わるということです。


以下に、先発品とジェネリックそれぞれの具体的な点眼手順を整理します。





























項目 先発品(ジクアス / ジクアスLX) ジェネリック品(ジクアホソルNa点眼液)
防腐剤 ベンザルコニウム塩化物不使用 ベンザルコニウム塩化物含有
ソフトコンタクト装用中の点眼 ✅ 可能(カラコン除く) ❌ 不可(外してから点眼)
点眼後の待機時間 特段の制限なし 5〜10分以上あけてから再装用
ハードコンタクト装用中の点眼 ✅ 可能 ✅ 原則可能


現場ではよくある見落としがあります。「ジクアスからジェネリックに変えてもらった」患者が、先発品と同じ感覚でコンタクトのまま点眼し続けるケースです。処方変更があった患者に対しては、「今回からお薬が変わったので、コンタクトは必ず外してから点眼してください」という一言を必ず添える習慣が重要です。


なお、「5〜10分以上」という待機時間は、BAKの濃度が点眼後5分で通常の10分の1以下に低下するという報告に基づいています。「5分待てばいい」という認識は不十分で、継続使用によるレンズへの蓄積リスクを考慮すると、10分待つよう指導する方が安全です。


薬剤師ブログ「ジクアス点眼液のジェネリックはコンタクトに使えない?」:先発品とジェネリックの防腐剤の違いとコンタクト装用時の注意点をまとめた実践的な解説。


https://yakupapa.site/ジクアス点眼液のジェネリックはコンタクトに使えない/


ドライアイ治療薬ジクアスとカラーコンタクト・コンタクト種類別の注意点

コンタクトレンズは種類によってジクアス点眼液との取り扱い方針が異なります。患者指導の際はまず「どのタイプのコンタクトを使用しているか」を確認することが第一歩です。


カラーコンタクトレンズ(カラコン)については特に注意が必要です。 先発品・後発品に関わらず、カラーコンタクト装用中の点眼は避けることが推奨されています。参天製薬の公式FAQにも「ジクアス点眼液およびジクアスLX点眼液のカラーコンタクトレンズへの影響は検討していないため、装用中の点眼は避けてください」と明記されています。カラーコンタクトには着色剤が含まれており、点眼液との相互作用についてのデータが不十分なためです。


この点を患者に伝えていない指導は不完全です。若年層のコンタクトユーザーはカラコンを使用しているケースが多いため、「普通のコンタクトはOKです」という言い方だけでは誤解を招く可能性があります。「カラーコンタクトの場合は先発品でも外してください」という情報を明確に加える必要があります。


レンズ種類別にまとめると以下のようになります。



  • 🔵 ハードコンタクトレンズ:先発品・後発品ともに装用中の点眼は原則として問題なし。BAKが吸着しにくい素材のため。

  • 🟢 ワンデー(1日使い捨て)ソフトコンタクト:先発品であれば装用中の点眼可。後発品はコンタクトを外してから点眼。

  • 🟡 2週間・1ヶ月交換型ソフトコンタクト:先発品であれば装用中の点眼可。後発品は特に注意が必要。繰り返し使用するためBAKが蓄積しやすく、角膜上皮への慢性的なダメージリスクが高まる。

  • 🔴 カラーコンタクトレンズ(カラコン):先発品・後発品問わず装用中の点眼は禁止。必ず外してから点眼。


2週間・1ヶ月交換型のソフトコンタクトは最も注意が必要なタイプです。ここは押さえておく必要があります。繰り返し使用するため、後発品のBAKが少量ずつ積み重なってレンズに蓄積します。その結果、眼表面への慢性的なダメージが時間をかけて進行するリスクがあるのです。


なお、先発品であっても、ドライアイ治療中にコンタクトレンズを継続使用する場合は医師との相談が推奨されています。コンタクトレンズ自体がドライアイ症状を悪化させるリスクファクターであり、治療効果を最大限に発揮するためにコンタクトを一時的に控えた方が望ましいケースもあります。


つつみ眼科クリニック「コンタクトの上から点眼してもいいの?」:ハードコンタクト・ワンデー・2週間交換型それぞれの目薬使用に関する注意点の解説。


https://www.tutumiganka.com/helpful/helpful04/


ドライアイ治療薬ジクアスとヒアレインの違いと最適な選択基準

ドライアイ治療において、ジクアス点眼液とヒアレイン(ヒアルロン酸ナトリウム)点眼液はよく比較される薬剤です。両者の違いを正確に把握しておくことは、適切な薬剤選択と患者への説明に直結します。


最大の違いは作用機序です。ヒアレインは「外から涙を補給する」補充型で、スポンジのように水分を保持しながら角膜を保護します。一方ジクアスは「目の表面の細胞に働きかけて、自分自身の涙を出させる」促進型という根本的な違いがあります。


臨床的な使い分けの目安は次のとおりです。



  • 💧 ヒアレインが適している患者:ドライアイ初期・軽度の症状、刺激感に敏感な患者、コスト面を重視する患者、シェーグレン病や術後など角膜の傷を伴うケース(角膜修復作用も持つため)

  • 👁️ ジクアスが適している患者:BUT短縮型ドライアイ、ヒアレインで改善しない中等度以上のドライアイ、コンタクトレンズ装用者のドライアイ、ムチン機能低下が主因と考えられるケース


薬価についても把握しておきましょう。2026年改訂時の先発医薬品薬価はヒアレイン0.1%が192.90円/瓶、ヒアレイン0.3%が235.20円/瓶であるのに対し、ジクアス3%は323.90円/瓶、ジクアスLX3%は770.50円/瓶です。ジクアスLXはかなり高価な設定といえます。患者にとってのコスト負担は決して小さくありません。3割負担であっても継続使用のコストは考慮すべきポイントです。


また、コンタクトレンズ装用者のドライアイに対しては、「ソフトコンタクト装用中でもそのまま点眼できる」先発品ジクアスの利便性は無視できないメリットです。ヒアレインは先発品でもベンザルコニウム塩化物が含まれていた時期があり(製造番号1HT6679まで)、その後の改訂で削除されています。現在は先発品ヒアレインもソフトコンタクト装用中の使用が可能ですが、この変遷の経緯を把握しておくことも重要です。


ヒアレインとジクアスの違いに関する比較解説(Fizz-DI):両剤の作用機序の違い・コンタクトレンズとの関係・薬のスペック比較を医薬品情報の観点から詳細に解説。


https://www.fizz-di.jp/archives/1065997481.html


ドライアイ治療薬ジクアスの他剤との併用順序と実践的な服薬指導のポイント

ドライアイ患者の多くは複数の点眼薬を使用しています。ジクアス点眼液を他の点眼薬と組み合わせる場合の順序は、単なる利便性の問題ではなく薬効に直接影響するため、正確に把握しておく必要があります。


参天製薬の医療従事者向け情報によれば、ジクアス(ジクアホソル)と他剤を組み合わせる場合の推奨点眼順序は以下の原則に基づきます。
























組み合わせ 推奨される点眼順序 理由
ヒアルロン酸Na点眼液との併用 ジクアス → ヒアルロン酸Na(5分以上あける) ジクアスで涙液分泌を促してからヒアルロン酸で保湿することで涙液の安定性が高まるため
その他の水性点眼液との併用 他の水性点眼液 → ジクアス(5分以上あける) ジクアスを先にすると涙液分泌が促進され他の薬液が希釈されるため
懸濁性・ゲル化製剤との併用 ジクアス → 懸濁性・ゲル化製剤(5分以上あける) 粘度の高い製剤を先に使うと後続の点眼薬が眼表面に到達しにくくなるため


特に重要なのはヒアルロン酸との組み合わせです。ジクアスとヒアレインの併用はドライアイ治療で非常に多いパターンであり、「どちらを先に点眼するか」は患者から頻繁に質問される内容でもあります。原則はジクアスを先に点眼することですが、ジクアスで刺激感が強い患者の場合は逆順も認められていることがドライアイ診療ガイドラインに明記されています。これは例外です。画一的な指導ではなく、患者の症状に応じた柔軟な対応が求められます。


間隔については「5分以上」が基準です。この数字は、ジクアス点眼後5分で有意な涙液量の増加が確認されているデータに裏付けられています。患者への具体的な伝え方として「スマートフォンのタイマーで5分測ってから次の目薬を差す」という方法を提案すると実行されやすいです。


また、点眼忘れへの対処も確認しておきましょう。気づいた時点でできるだけ早く1回分を点眼するのが基本です。ただし次の点眼時間が近い場合は忘れた分は飛ばし、次の時間に通常通り1回分だけ点眼します。2回分をまとめて点眼することは避けるよう指導してください。


副作用についても患者に事前に伝えることが重要です。ジクアス点眼液でよくみられる副作用として、目やにの増加(白い糸状)があります。これはムチンの分泌が増えた証拠であり、薬が効いているサインである場合が多いです。事前に説明しておかないと患者が驚いて自己中断するリスクがあります。また、点眼直後の眼刺激感や結膜充血が現れることもあります。これは軽度で使用中止で改善するケースが大部分です。


ジクアスLX点眼液を選択する際の服薬指導上のポイントもまとめておきましょう。1日3回(4〜6時間ごと)が承認された用法であり、1日3回未満の点眼で十分な効果が得られるかは検討されていないため、勝手に減らさないよう指導する必要があります。同様に、1日3回を超えた点眼についても安全性・有効性は検討されていないことを伝えてください。


ミナカラ「ジクアス点眼液はコンタクトレンズの上から使える?効果や副作用も解説」:薬剤師監修による患者向け情報のうち、医療従事者が指導内容の確認に活用できる内容を収録。






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