「ジクアスはソフトコンタクト装用のまま点眼してOKです」と患者に伝えると、角膜障害を引き起こすリスクがあります。

ジクアス点眼液は、2015年以前と以後とで、コンタクトレンズ装用時の使用可否がまったく異なります。この事実を把握していない医療従事者が患者指導を行うと、誤った情報を伝えるリスクがあります。
2015年以前のジクアス点眼液には、防腐剤としてベンザルコニウム塩化物(BAK)が配合されていました。BAKはソフトコンタクトレンズに吸着しやすい性質があり、コンタクトに蓄積した防腐剤が角膜上皮に接触し続けることで、角膜障害を引き起こす可能性があることが知られていました。そのため、当時のジクアスはソフトコンタクト装用中の点眼を避けるよう添付文書に記載されていました。
ところが2015年、参天製薬はジクアス点眼液の防腐剤をクロルヘキシジングルコン酸塩液に変更しました。この成分はBAKに比べてソフトコンタクトへの吸着性が低く、添付文書の使用上の注意も改訂されています。これが重要な転換点です。
改訂後のジクアス先発品は、通常のソフトコンタクトレンズを装用したまま点眼できます。ただし例外も存在します。
以下に、コンタクト種別ごとの点眼可否をまとめます。
| コンタクトの種類 | ジクアス先発品 | ジクアスLX | ジェネリック(BAK含有) |
|---|---|---|---|
| 通常ソフトCL | ✅ 装用のまま可 | ❌ 外して点眼 | |
| カラーコンタクト | ❌ 装用中は不可 | ❌ 外して点眼 | |
| ハードCL | ✅ 装用のまま可 | ⚠️ 一般的には可だが要確認 |
改訂は2015年という点を覚えておけばOKです。それ以前の情報を根拠にした患者指導は、現状と乖離している可能性があります。
医療従事者向けの正確な情報源として、製造元である参天製薬のメディカルチャンネルを確認することをお勧めします。
参天製薬 医療従事者向け情報(ジクアス/ジクアスLXのQ&A掲載)。
https://www.santen.co.jp/medical-channel/di/faq/DK008_faq.html
医薬品費用適正化の流れで後発品への切り替えが進む中、ジクアスのジェネリックに関してはコンタクト使用者への指導内容が大きく変わるという落とし穴があります。
代表的なジェネリックである「ジクアホソルNa点眼液3%ニットー(日東メディック)」には、防腐剤としてBAK(ベンザルコニウム塩化物)が含まれています。BAKはソフトコンタクトレンズに吸着しやすい特性があり、コンタクト装用中に点眼すると防腐剤が蓄積し続け、角膜障害リスクが生じます。つまり同じ有効成分「ジクアホソルナトリウム」でも、添加物の違いによって装用中の点眼可否が180度変わるわけです。
注意が必要な点は、患者が「以前と同じ薬だと思っている」という思い込みです。先発品のジクアスで「コンタクトのままでいいよ」と指導を受けた患者が、ジェネリックに変更になっても同じ使い方を継続してしまうケースがあります。
これは指導上の重大な落とし穴です。
薬局・病院での切り替え時には以下のフローで確認することが大切です。
BAK含有のジェネリックを使用する場合は、点眼後5〜10分の間隔をあけてからコンタクトを再装用するよう指導することが原則です。
「通常のソフトコンタクトは装用のまま点眼OKなのに、なぜカラーコンタクトだけ禁止なのか?」という疑問は、患者からも医療従事者自身も持ちやすい点です。
答えはシンプルです。カラーコンタクトへの影響が「検討されていない」からです。
参天製薬の公式FAQには次のように明記されています。「ジクアス点眼液およびジクアスLX点眼液のカラーコンタクトレンズへの影響は検討していないため、装用中の点眼は避けてください。」これは安全性を証明するデータが存在しないため、使用を推奨できないという判断です。影響が証明されているわけではありませんが、データがない以上は「不可」とするのが医薬品の原則です。
カラーコンタクトには着色剤や特殊なポリマーコーティングが使用されており、透明なソフトコンタクトと素材・構造が異なります。点眼薬の成分がカラーレンズ特有の素材にどのような影響を与えるか、現時点では十分なデータが揃っていません。
カラコンは例外です。
このことを患者に伝える際のポイントとして、「通常の透明ソフトレンズは大丈夫ですが、カラーコンタクトは素材が違うので外してから点眼してください」と具体的に伝えることで、患者の理解が格段に向上します。
なお、カラーコンタクトは装飾用も含めて高度管理医療機器として厚生労働省の規制対象であり、使用上の注意については医療機器としての適正使用が求められます。
カラーコンタクトレンズの規制に関する厚生労働省の公式ページ(適正使用の根拠として参照可能)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/colorcontact/index.html
コンタクトユーザーにとって、点眼回数の多さは治療継続の大きな障壁となります。これがアドヒアランスに直結する問題です。
従来のジクアス点眼液3%は、承認時の臨床試験に基づき1日6回(2〜3時間ごと)の点眼が必要です。コンタクト装用中の患者がジクアスを処方された場合、理屈の上では「外す必要はない」とはいえ、朝から夜まで2〜3時間おきに点眼するのはかなりの負担です。特に仕事中や外出中に1日6回の点眼を守ることは難しく、点眼忘れによるアドヒアランス低下が臨床上の課題として指摘されていました。
一方で、ジクアスLX点眼液3%は1日3回(4〜6時間ごと)の点眼で同等の有効性が確認されています。これはジクアスLXにポビドン(PVP:ポリビニルピロリドン)が添加されており、ムチンや水分との静電相互作用によって眼表面への滞留時間が延長されたためです。動物試験では、ジクアスLXはジクアス先発品と比較して、点眼後45〜90分においても有意に高い涙液量の増加が確認されています。
点眼回数が半分になることの実際的なメリットは大きいです。たとえば昼食後・夕食後・就寝前の3回に設定するだけで、ほとんどの患者にとって日常生活に組み込みやすくなります。
ジクアスLXもコンタクト装用可です。ただしカラーコンタクトは不可という条件はジクアスLXでも同様に適用されます。
ドライアイ診療におけるアドヒアランスの重要性について詳細が掲載された専門情報。
ここまでの情報をふまえた上で、実際の服薬指導・患者説明の場面でどう使うかを整理します。指導の質が患者の角膜リスクに直結するテーマです。
まず確認すべきは「処方されたのが先発品か後発品か」です。患者の薬袋・お薬手帳を確認し、「ジクアス点眼液3%(参天製薬)」であればBAK未含有、「ジクアホソルNa点眼液3%○○」のようなジェネリックであればBAK含有の可能性が高いため、添付文書で成分を必ず確認します。
次に確認するのは、コンタクトの種類です。
これが服薬指導の基本です。
また、他の点眼薬を併用している場合、点眼順序にも注意が必要です。参天製薬の情報によれば、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン等)との併用時はジクアス先に点眼し、5分以上あけてからヒアレインを点眼することが推奨されています(ただしジクアホソルナトリウムの刺激が強い場合は逆順も可)。
指導時間が限られる調剤薬局・外来の現場では、患者ごとに「コンタクトの種類」と「先発品かジェネリックか」の2点だけ確認することを習慣化するだけで、誤指導リスクを大きく減らすことができます。
以下のサイトでは、コンタクトレンズ装用中に使用可能な点眼薬について詳細な一覧が管理薬剤師向けにまとめられており、現場での参照に役立ちます。
点眼薬とコンタクトレンズ対応一覧(管理薬剤師.com、BAK含有・非含有一覧)。
https://kanri.nkdesk.com/drags/tengan.php