ビクトーザ皮下注販売中止で代替薬への切り替え対応と注意点

ビクトーザ皮下注18mgが2026年後半に販売終了。経過措置は2027年3月末まで。代替薬オゼンピック・リベルサスへの切り替え時の注意点を医療従事者向けに解説。あなたの患者は安全に移行できていますか?

ビクトーザ皮下注販売中止の背景と対応・切り替えの全知識

ビクトーザを1.8mgまで増量している患者ほど、代替への切り替え後に血糖コントロールが一時的に悪化しやすい。


ビクトーザ皮下注 販売中止 3つのポイント
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販売終了・経過措置の期限

2026年後半に出荷終了(販売終了)予定。薬価基準からの削除は2026年3月に経過措置移行済みで、経過措置期間は2027年3月末まで。

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公式が示す代替薬候補

ノボ ノルディスク ファーマが推奨する代替薬は「オゼンピック皮下注2mg(セマグルチド)」と「リベルサス錠(経口セマグルチド)」の2つ。

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切り替え時の最重要注意事項

代替薬はいずれも「最低用量からの開始」が保険診療上のルール。ビクトーザでのコントロール状態にかかわらず、オゼンピックなら0.25mgから開始する必要がある。


ビクトーザ皮下注販売中止の正式な経緯と現在の状況



2025年10月20日、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は「ビクトーザ皮下注18mg(一般名:リラグルチド)」について、2026年後半を目途に出荷終了(販売終了)とする旨を正式発表しました。同日、日本糖尿病学会もこの案内を公表し、医療関係者へ広く周知されています。


販売終了の理由については「諸般の事情により」とされており、具体的な原因は明示されていません。業界背景として、GLP-1受容体作動薬の中でリラグルチドより半減期が長く、週1回投与で済むセマグルチド(オゼンピック)の普及が進んだことが大きな要因と見られています。患者にとって「毎日注射」と「週1回注射」の差は非常に大きく、臨床現場での選択は徐々に週1回製剤へシフトしてきました。


2026年2月13日には中医協(中央社会保険医療協議会)の総会で、ビクトーザ皮下注18mgを含む54品目が「成分単位での薬価削除」の対象と報告されました。つまり、ジェネリック医薬品も存在しないビクトーザは、成分ごと市場から消えることが決まったということです。


現在のスケジュールを整理すると以下のようになります。




























時期 内容
2025年10月20日 ノボ ノルディスク ファーマが販売終了を正式発表
2026年2月13日 中医協総会で薬価削除品目として報告(54成分の一つ)
2026年3月頃 薬価基準から削除→経過措置へ移行
2026年後半 出荷終了(販売終了)見込み
2027年3月末 経過措置期間の終了=保険請求が不可に


経過措置期間とは、在庫がある間はこれまで通り保険請求できる猶予期間です。ただし2027年3月末が過ぎると、たとえ在庫があっても保険請求はできなくなります。現場での在庫管理と患者への事前説明は急務です。


参考:日本糖尿病学会が公表した販売終了の案内(PDF)


ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 ビクトーザ®皮下注18mg 販売終了に伴うご変更のお願い(日本糖尿病学会掲載PDF)


ビクトーザ皮下注の代替薬と、オゼンピック・リベルサスの違いを理解する

ビクトーザ(リラグルチド)の代替薬としてノボ ノルディスク ファーマが案内しているのは、オゼンピック皮下注2mg(セマグルチド)とリベルサス錠(経口セマグルチド)の2つです。いずれも同じノボ ノルディスク社の製品であり、作用機序はGLP-1受容体作動薬という点で共通しています。それでも、3剤の間にはいくつかの重要な違いがあります。


まず一般名が異なります。ビクトーザはリラグルチド、オゼンピックとリベルサスはどちらもセマグルチドです。これは単なる名前の違いではなく、薬としての性質の差にもなります。


投与頻度について整理すると次の通りです。
































製品名 一般名 投与頻度 投与経路 保険適応
ビクトーザ皮下注18mg リラグルチド 1日1回 皮下注射 2型糖尿病
オゼンピック皮下注2mg セマグルチド 週1回 皮下注射 2型糖尿病
リベルサス錠(3mg/7mg/14mg) セマグルチド 1日1回 経口 2型糖尿病


血糖・体重への効果については、臨床試験の成績から以下の順が目安となっています。


- HbA1c低下 :オゼンピック(約1.5〜1.6%低下)> ビクトーザ(約0.8〜1.1%低下)
- 体重減少:オゼンピック(約4〜5kg)> ビクトーザ(約2〜3kg)


これは使える武器が増えたということですね。ただし、血糖コントロールが既に良好な状態の患者に効果の強い薬へ切り替えると、低血糖リスクに注意が必要です。特にSU薬やインスリンを併用している患者では、切り替えと同時にこれら既存薬の減量も検討するのが原則です。


リベルサス錠については、注射への抵抗感が強い患者には選択肢として有用です。ただし服用条件が厳しく、起床後すぐに空腹の状態で最大120mLの水で服用し、服用後30分は飲食・他の薬の服用を避ける必要があります。この手順が守れない患者では吸収が不安定になり、効果が出にくい場合があります。患者のライフスタイルを確認してから選択することが重要です。


参考:GLP-1受容体作動薬の使い方・考え方(2026年)


Dr.U@糖尿病メモ「GLP-1受容体作動薬の使い方・考え方(2026年)」製剤選択・効果比較の詳細な解説あり


ビクトーザ皮下注から切り替える際の用量と血糖モニタリングの実務

切り替えで最も注意すべき点は用量管理です。保険診療のルール上、他のGLP-1受容体作動薬へ変更する際は必ず最低用量から開始しなければなりません。これが原則です。


たとえばビクトーザを1.8mg(最大用量)で使用していた患者を、オゼンピックへ切り替える場合も、オゼンピックは0.25mgから開始することになります。患者からは「前と同じ効果にならないの?」と疑問を持たれる場面が多いですが、用量を段階的に増やしながら効果を確認していく必要があることを事前に説明しておくことが大切です。


オゼンピックの用量ステップは下記の通りです。


- 開始量:0.25mg 週1回(4週間以上)
- 維持量:0.5mg 週1回
- 追加増量:効果不十分の場合は1.0mgへ


切り替え後の血糖モニタリングについては、日本糖尿病学会も「血糖自己測定または血液検査などで適宜血糖値をモニターし、急激な血糖コントロールの悪化に注意すること」を推奨しています。切り替え直後の4〜8週間は血糖値の変動が起きやすい時期です。


消化器症状にも注意が必要です。ビクトーザを長期使用してGLP-1製剤に身体が慣れている患者でも、セマグルチドへの切り替えで悪心・食欲不振が再発することがあります。「前の薬でも大丈夫だったから」という油断は禁物です。増量スピードを急がないことが、消化器症状の軽減につながります。


また、ビクトーザはリラグルチドとトレシーバ(インスリンデグルデク)の配合剤「ゾルトファイ配合注フレックスタッチ」を使用している患者への対応も考える必要があります。ゾルトファイに含まれるリラグルチド成分はビクトーザと同じであるため、今後のリラグルチド供給状況によっては影響を受ける可能性があります。ゾルトファイ使用患者については特に個別の対応計画が必要です。


参考:日本糖尿病学会によるGLP-1受容体作動薬切り替え時の注意事項


日本糖尿病学会「オゼンピック皮下注SDの出荷停止に伴い類薬に切り替えた際の投与開始量について」切り替え後のモニタリングポイントを具体的に解説(PDF)


ビクトーザ皮下注販売中止が2型糖尿病治療の現場に与える影響と課題

ビクトーザは2010年に日本で発売されて以来、16年間にわたって2型糖尿病治療の現場を支えてきた製剤です。当初は使用患者数が約9,000人規模でスタートし、GLP-1受容体作動薬の先駆けとして日本の糖尿病医療に深く根付いてきました。この販売終了は、単なる1製品の終了ではなく、日本のGLP-1受容体作動薬治療の歴史的な転換点として捉える必要があります。


医療現場への影響として特に考えなければならないのは、長期使用患者への対応です。ビクトーザを5年・10年と使い続け、血糖コントロールが安定している患者にとって、切り替えはストレスを伴います。「薬が変わる=悪化する」という不安を持つ患者も少なくありません。こうした患者には、オゼンピックの方がエビデンスの厚みがある点(SUSTAIN試験における心血管イベント抑制効果、FLOWでの腎保護効果など)を分かりやすく伝え、不安を和らげるアプローチが求められます。


薬剤師の役割も重要です。切り替えに際して薬袋への注記が必要な場面もあります。過去にはビクトーザからオゼンピックへの変更時に、投与頻度(毎日→週1回)の変化を伝えそびれてインシデントになった事例が日本医療機能評価機構のヒヤリハット報告にも掲載されています。投与頻度・デバイスの違い・注射部位ローテーションの指導など、切り替えの際には確認事項が増えます。これは使えそうです。チェックリストを活用した患者指導を検討する価値があります。


また、マンジャロ(チルゼパチド)への変更も臨床上の選択肢のひとつです。チルゼパチドはGIP/GLP-1受容体の二重作動薬であり、HbA1c低下・体重減少ともにセマグルチドを上回る試験データが出ています。特に肥満を伴う2型糖尿病で体重管理を優先したい患者では、ビクトーザの後継としてではなく、この機会に一段強力な薬剤への切り替えを検討する価値があります。ただしマンジャロも週1回製剤であり、消化器症状と用量漸増の管理が重要なのは同様です。


製剤選択の考え方として、2026年後半以降の注射GLP-1受容体作動薬は以下の3製剤のみとなる見込みです。


- 🟦 オゼンピック皮下注(セマグルチド):心血管・腎エビデンスが最も充実
- 🟩 トルリシティ皮下注(デュラグルチド):高齢者・消化器症状を抑えたい場合
- 🟥 マンジャロ皮下注(チルゼパチド):最大の血糖・体重改善効果を期待する場合


結論はシンプルです。この機会を「ただ薬を変える作業」ではなく、患者の治療を一段アップデートするきっかけとして活用できます。


参考:GLP-1製剤の種類と比較


糖尿病リソースガイド「ビクトーザ皮下注18mg 販売終了に伴うご変更のお願い(代替薬一覧付き)」


ビクトーザ皮下注販売中止について医療従事者が知っておくべき、独自の視点:週1回製剤一本化がもたらすリスク

ビクトーザ皮下注の販売終了によって、2026年後半以降の注射用GLP-1受容体作動薬は週1回製剤のみになります。この変化に、見落とされがちなリスクが潜んでいます。


1日1回製剤であったビクトーザは、万一投与を忘れても「翌日に続ければよい」という運用ができました。週1回製剤の場合、1回分の忘れがそのまま7日分の投与遅延につながります。特に認知機能に不安のある高齢患者や、服薬管理が複雑な患者では、週1回製剤の「忘れ」の影響がより大きくなる点に注意が必要です。


また、週1回製剤では注射日の管理が患者にとって難しくなるケースがあります。特定の曜日に設定してもらう運用が標準ですが、「今週は注射したっけ?」という混乱が生じることがあります。週1回という頻度に慣れていなかったビクトーザ長期使用患者では、最初の数週間のフォローアップが特に重要です。厳しいところですね。


週1回製剤への一本化は、患者の利便性を高める面がある一方で、管理が雑になるリスクもあるということです。切り替え後1〜2ヶ月は電話フォローやオンライン診療の活用なども含め、接触頻度を意識的に高めることで、トラブルを未然に防げます。


さらに、「諸般の事情」という説明にとどまっている販売終了の理由は、医療従事者にとってひとつの教訓でもあります。GLP-1受容体作動薬というカテゴリー全体の発展の中で、特定製剤が市場から退場していくサイクルは今後も続く可能性があります。オゼンピックの供給が2022年春に一時的に出荷停止になった事例もあります。「今使っている薬が今後もずっと使える」という前提に立たず、常に代替薬の選択肢を把握しておく姿勢が、現代の糖尿病診療における重要なリテラシーといえます。


参考:ミクスOnlineによる薬価削除品目解説


ミクスOnline「中医協 医療上の需要なく薬価削除予定は387品目 54品目は成分単位で削除」ビクトーザを含む削除品目の背景を解説






【第2類医薬品】アレグラFX 56錠