抗てんかん薬として使い慣れているはずのゾニサミドで、夏場に患者が意識障害を起こすことがあります。

ゾニサミド錠100mg「アメル」は、共和薬品工業株式会社が製造販売するゾニサミドのジェネリック医薬品(後発品)です。先発品はエクセグラン錠100mg(大日本住友製薬)であり、有効成分・用量はまったく同一です。
本剤の効能・効果は「部分てんかんおよび全般てんかんの下記発作型」と定められています。具体的には、単純部分発作(焦点発作・自律神経発作・精神運動発作)、複雑部分発作、二次性全般化強直間代けいれん、強直間代発作(全般けいれん発作・大発作)、強直発作、非定型欠神発作(異型小発作)、そして混合発作が対象となります。広い発作型をカバーしているのが特徴です。
ジェネリックとして気になる「先発品との同等性」については、生物学的同等性試験でクロスオーバー法により検証されており、AUC・CmaxいずれもエクセグランとのLog比が0.80~1.25の範囲内と確認されています。つまり同等性は問題ありません。
識別コードは「KW095」、白色フィルムコーティング錠で、直径約8.1mm・厚さ約3.8mmと小型です。PTPシート10錠×10の100錠包装と1,000錠の瓶(バラ)包装があります。なお、1歳未満の乳児を対象とした臨床試験は実施されていないため、乳児への投与は特段の慎重な判断が必要です。
ゾニサミド錠100mg「アメル」添付文書(JAPIC)- 効能・効果、用法・用量、禁忌などの全情報を確認できる公式文書
成人への投与は、まず1日100〜200mgを1〜3回に分割して経口投与することから始めます。その後、1〜2週ごとに増量し、通常1日量200〜400mgまで漸増して1〜3回に分割投与します。最高1日量は600mgまでとされています。
漸増が原則です。
初回から高用量を投与するのではなく、段階的に増量することで、眠気・運動失調など精神神経系副作用の出現を最小化する意図があります。添付文書上の有効血中濃度の目安は「20μg/mL前後」とされており、参考値として10〜30μg/mLという目標範囲も示されています。
小児では体重あたりで計算します。通常、最初は1日2〜4mg/kgを1〜3回に分割経口投与し、1〜2週ごとに増量して通常1日量4〜8mg/kgまで漸増します。最高1日量は12mg/kgまでです。
用量調整が難しい症例では血中濃度測定の実施が推奨されています(添付文書8.4項)。抗てんかん薬では個人差が大きいことが知られており、目標血中濃度内でも発作が抑制されない患者がいる一方、目標範囲を超えても副作用が出ない患者もいます。血中濃度モニタリングは「望ましい」とされていますが、実施を強く検討すべき状況として、多剤併用開始・終了時、副作用疑い時、効果不十分時などが挙げられます。
抗てんかん薬血中濃度が有効性と安全性に及ぼす影響(日本医療学会誌)- 血中濃度モニタリングの臨床的意義について詳しく解説
これは多くの医療従事者が見落としがちなポイントです。ゾニサミドとトピラマートには、他の抗てんかん薬にはほぼ見られない「発汗減少」という特有の副作用があります。
なぜ発汗が減るのかは、まだ十分に解明されていません。ある調査では、ゾニサミド服用患者の約24.8%に発汗障害が認められ、その患者の平均年齢は11.8歳と報告されています。小児での報告が圧倒的に多い点が特徴です。
発汗ができないということは、体温調節機能が失われるということです。夏場に外出するだけで体温が上昇し続け、顔面潮紅・意識障害を経て熱中症へと至ったケースが実際に報告されています。添付文書8.5項では「特に夏季に体温が上昇することがあるので、高温環境下をできるだけ避けるよう」と明示しています。
重要なのは、発汗減少と血中濃度の間に相関が認められていない点です。血中濃度が有効範囲内に収まっていても発症し得るため、「血中濃度が正常だから大丈夫」とはなりません。外来診察の際には夏前に患者・家族へ積極的な生活指導(室内での活動推奨、こまめな体温確認など)を行っておくことが求められます。
エクセグラン:小児では発汗減少による熱中症に要注意(日経DI)- 発汗減少のメカニズムと臨床対応が詳しく解説されている記事
ゾニサミドは主として薬物代謝酵素CYP3Aで代謝されます。この点が多剤併用時に大きな意味を持ちます。
特に注意が必要な相互作用を以下に示します。
| 併用薬 | ゾニサミドへの影響 | 対応策 |
|---|---|---|
| フェニトイン・カルバマゼピン・フェノバルビタール | CYP誘導によりゾニサミドの血中濃度が低下する可能性 | 血中濃度モニタリング、必要に応じて増量検討 |
| 上記薬剤の中止・減量時 | CYP誘導解除でゾニサミド血中濃度が上昇 | ゾニサミドの用量を再評価、副作用モニタリング強化 |
| フェニトイン(ゾニサミドからフェニトインへの影響) | ゾニサミドがフェニトインの代謝を抑制→フェニトイン血中濃度上昇 | 眼振・構音障害・運動失調などのフェニトイン中毒症状に注意。可能な限りフェニトイン血中濃度測定を行い減量を検討 |
| 三環系・四環系抗うつ剤(MAO-B阻害作用を有するセレギリンとの関連) | 高血圧・失神・てんかん・死亡例の報告あり | セレギリン(パーキンソン病治療薬)と三環系抗うつ剤の重複使用に特段の注意 |
CYP3A誘導薬であるフェニトインやカルバマゼピンが長期に処方されているてんかん患者に、ゾニサミドを追加投与する場合、想定より高い用量が必要になることがあります。これが原則です。
逆に、フェニトインやカルバマゼピンが何らかの理由で中止された際には、ゾニサミドの血中濃度が急激に上昇して副作用が出る可能性があります。「他科の医師が抗てんかん薬を変更した」という状況でも、ゾニサミドの用量再評価を忘れずに行いましょう。
てんかん診療ガイドライン2018(日本神経学会)- 抗てんかん薬の相互作用と単剤療法推奨の根拠が詳述されている権威ある資料
添付文書で明示された重大な副作用は11項目にわたります。頻度不明のものが多い点に注意が必要です。
主なものを整理します。皮膚障害系では中毒性表皮壊死融解症(TEN)・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)・紅皮症(剥脱性皮膚炎)があり、発熱・紅斑・水疱などの兆候が出た時点で直ちに投与を中止して副腎皮質ホルモン剤投与などを行います。血液系では再生不良性貧血・無顆粒球症・赤芽球癆(すべて頻度不明)、血小板減少(1%未満)が挙げられています。
「原因不明の突然死」の報告もあります。
添付文書15.1.1項に「ゾニサミド製剤による治療中、原因不明の突然死が報告されている」という記載があります。これは重く受け止めるべき情報です。特に夜間・就寝中の発作と関連する可能性が示唆されており、患者への情報提供や定期的なフォローアップが欠かせません。
また、自殺念慮・自殺企図のリスクも明記されています。海外で行われた抗てんかん薬11種・199試験のプラセボ対照臨床試験の分析において、抗てんかん薬服用群の自殺念慮・自殺企図の発現リスクはプラセボ群の約2倍(服用群0.43% vs プラセボ群0.24%)と計算されました。1,000人あたり約1.9人多い計算になります。この数字が条件です。
腎・尿路結石(頻度不明)も要注意です。腎疝痛・排尿痛・血尿・結晶尿・頻尿・残尿感・乏尿などの症状を定期確認する必要があります。ゾニサミドは水に極めて溶けにくい性質(添付文書より)を持つため、尿中で結晶化しやすいと考えられています。十分な水分摂取を患者に指導することが重要です。
よく知られている精神神経系副作用のうち、眠気(頻度24.3%)と運動失調(12.7%)は5%以上の頻度で発現しており、自動車の運転や危険な機械操作に従事させないよう指導する義務があります(添付文書8.3項)。
厚生労働省:抗てんかん薬使用上の注意改訂(自殺念慮リスク)- 199試験に基づく自殺リスクの科学的根拠が記載された厚生労働省通知
ここは臨床現場でもっとも判断を迷う領域です。「催奇形性があるから絶対禁忌」と思われがちなゾニサミドですが、実際の添付文書上の記載は「禁忌」ではなく「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」です。
動物実験(マウス・ラット・イヌ・サル)で流産・催奇形作用(口蓋裂・心室中隔欠損等)が報告されており、ヒトでも心室中隔欠損・心房中隔欠損を有する児の出産報告があります。さらに、妊娠中投与を受けた患者の児に呼吸障害があらわれたとの報告も存在します。これだけリスクがあるのに禁忌ではない理由は、「難治性てんかん発作そのものが母体・胎児双方にとってより大きなリスクになる場合がある」という判断に基づくからです。
授乳については「授乳しないことが望ましい」とされています。ヒト母乳中への移行が確認されているためです。ただし、絶対禁忌ではなく「望ましくない」という表現にとどまっている点は認識しておく必要があります。
高齢者への投与では、肝機能・腎機能の低下を考慮して少量からの開始が原則です。高齢者は連用中に投与量を急激に減量・中止するとてんかん重積状態に移行する可能性があるため、中止する際は「徐々に減量するなど慎重に行うこと」(添付文書9.8.2項)とされています。
独自の視点としてひとつ挙げると、近年のポリファーマシー是正の流れの中で「多剤処方見直し」の一環としてゾニサミドを中止するケースが増えています。しかし、長年服用しているてんかん患者のゾニサミドを医師の指示なく突然中止すると、てんかん重積状態を引き起こす危険があります。入院患者の薬剤整理の際には、抗てんかん薬を他の薬剤と同様に扱わず、必ず処方医・神経内科医の確認を経てから変更・中止することが求められます。
ゾニサミド錠100mg「アメル」(今日の臨床サポート)- 特定の背景を有する患者への投与注意・禁忌の詳細が一覧できる