夏季に発汗できなくなり体温が40℃超で搬送された患者が、実はゾニサミド服用中だったケースが報告されています。

ゾニサミド錠100mg「アメル」は、共和薬品工業株式会社が製造販売するゾニサミドを主成分とした抗てんかん剤の後発品(ジェネリック医薬品)です。先発品であるエクセグラン錠100mg(住友ファーマ)と生物学的同等性が確認されており、有効成分・効能・効果・副作用はほぼ同一です。
薬価は1錠あたり11.7円(2013年12月薬価収載)で、先発品エクセグランの16.8円と比較して約30%低く設定されています。医療費適正化の観点から後発品への切り替えが推進される中、実臨床においても広く使用されています。これは費用面のメリットが大きいです。
製剤は白色フィルムコーティング錠で、直径約8.1mm・厚さ約3.8mm、識別コードは「KW095」です。ちょうどグリーン豆1粒ほどのサイズです。劇薬指定・処方箋医薬品であることは先発品と変わりません。室温保存で有効期間は3年です。
生物学的同等性試験では、AUC(0→72)および Cmax のいずれにおいても90%信頼区間がlog(0.80)〜log(1.25)の範囲内に収まることが確認されており、先発品と同等の血中動態が保証されています。つまり効果は変わりません。
参考:ゾニサミド錠100mg「アメル」の製品情報・添付文書(PMDA)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/02/1139005F1040?user=1
ゾニサミド錠100mg「アメル」の効能・効果は、部分てんかんおよび全般てんかんの下記発作型に対応しています。具体的には、単純部分発作(焦点発作・自律神経発作・精神運動発作)、複雑部分発作、二次性全般化強直間代けいれん、強直間代発作、強直発作、非定型欠神発作(異型小発作)、そして混合発作です。欠神発作(小発作)の典型型は適応外である点に注意が必要です。
| 対象 | 開始用量 | 維持用量 | 最高用量 | 増量間隔 |
|---|---|---|---|---|
| 成人 | 1日100〜200mg(1〜3回分割) | 1日200〜400mg(1〜3回分割) | 1日600mg | 1〜2週ごと |
| 小児 | 1日2〜4mg/kg(1〜3回分割) | 1日4〜8mg/kg(1〜3回分割) | 1日12mg/kg | 1〜2週ごと |
漸増が基本です。増量が速すぎると副作用リスクが高まるため、1〜2週ごとという増量間隔を必ず守る必要があります。1日3回投与とする場合でも、血漿中半減期が62.9〜93時間と非常に長いため、定常状態到達には通常2〜3週間を要します。
半減期の長さは薬の特性として理解しておくべき重要なポイントです。定常状態に達する前に副作用が判断しにくい状況が生じることがあるため、忍耐強く経過を追う姿勢が求められます。投与量調整をより適切に行うためには、TDM(血中薬物濃度モニタリング)の実施が推奨されており、有効血中濃度の目安は一般に10〜30μg/mL(添付文書では「20μg/mL前後」)とされています。
参考:抗てんかん薬の血中濃度測定(日本神経学会てんかん診療ガイドライン2018)
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/tenkan_2018_12.pdf
ゾニサミド錠100mg「アメル」には、頻度不明ながら複数の重大な副作用が報告されています。医療従事者として把握しておくべき重大副作用の一覧を以下に示します。
このうち「発汗減少に伴う熱中症」は、実際に医療現場で見落とされやすい副作用の1つです。ゾニサミドは炭酸脱水素酵素阻害作用を持ち、汗腺機能を抑制することで発汗が減少します。その結果、体温調節が困難になり、特に夏季の高温環境下で熱中症が重篤化するリスクがあります。
添付文書の「9.7.2」に明記されているように、発汗減少は特に小児での報告が多い副作用です。小児患者を担当する際には、保護者への「夏場は体温測定を習慣にする」「運動時・外出時には特に注意する」という具体的な指導が求められます。成人患者でも同様に、高温環境への暴露を避けるよう患者へ伝えておくことが重要です。これは見落としやすいポイントです。
また、頻度は低いものの、精神神経系副作用として眠気(24.3%)と運動失調(12.7%)は比較的高頻度に出現します。この2つの副作用は自動車の運転や高所作業などに直結するため、患者への指導においては必ず確認と説明が必要になります。
参考:ゾニサミド錠100mg「アメル」添付文書(今日の臨床サポート)
https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=62484
ゾニサミドは主として薬物代謝酵素CYP3Aで代謝されます。この性質から、CYP3Aを誘導または阻害する薬剤との相互作用が臨床上重要な問題となります。
フェニトイン・カルバマゼピン・フェノバルビタールはいずれもCYPを誘導する酵素誘導型の抗てんかん薬です。これらと併用するとゾニサミドの血中濃度が低下し、効果が不十分になる可能性があります。逆に、これらの薬を中止または減量した場合には、ゾニサミドの血中濃度が上昇するため、過量投与と同様の副作用が出現しやすくなります。用量変更時のTDMは必須です。
さらに重要なのが、フェニトインとの双方向の相互作用です。ゾニサミドはフェニトインの代謝を抑制し、フェニトインの血中濃度を上昇させることが示唆されています。結果として眼振・構音障害・運動失調などのフェニトイン中毒症状が出現するリスクがあります。フェニトインを併用中の患者では、定期的な血中濃度測定が特に必要です。
| 併用薬 | 起こりうる変化 | 対応 |
|---|---|---|
| フェニトイン・カルバマゼピン・フェノバルビタール | ゾニサミド血中濃度が低下 | 用量調整、TDM実施 |
| 上記薬の中止・減量時 | ゾニサミド血中濃度が上昇 | ゾニサミドの減量検討 |
| フェニトイン(双方向) | フェニトイン血中濃度が上昇→中毒症状のリスク | フェニトインTDM、必要に応じ減量 |
| 三環系・四環系抗うつ剤(セレギリン併用時) | 高血圧、失神、けいれん、死亡例あり | 原則回避、十分な注意 |
| バルプロ酸 | 相互に血中濃度へ影響する可能性 | TDMで経過観察 |
なお、三環系・四環系抗うつ剤との相互作用に関しては、セレギリン(パーキンソン病治療薬、MAO-B阻害薬)が介在する形で非常に重篤な副作用(死亡例含む)が報告されています。このような多剤処方が行われている場面では特段の注意が求められます。多剤併用は要注意です。
参考:抗てんかん薬の体内動態に影響を及ぼす薬物相互作用(信州医学雑誌)
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/4542/files/Shinshu_med41-2-04.pdf
ゾニサミド錠100mg「アメル」を特定の背景を持つ患者へ使用する際には、それぞれ異なる注意事項があります。
妊婦への投与については、添付文書上「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されています。妊娠中に本剤を投与された患者において、心室中隔欠損・心房中隔欠損等を有する児を出産したとの臨床報告があります。また動物実験(マウス・ラット・イヌ・サル)では流産および催奇形作用(口蓋裂、心室中隔欠損等)が確認されています。妊娠初期での使用が特にリスクが高いとされており、妊娠の可能性のある女性患者への処方時には十分なインフォームドコンセントが不可欠です。授乳婦については、ヒト母乳中への移行が報告されており「授乳しないことが望ましい」と明記されています。
小児への投与においては、1歳未満の乳児を対象とした臨床試験が実施されていない点を踏まえ、特に慎重な経過観察が必要です。また、発汗減少は小児での報告が多く、成人と比べて体温調節機能の未熟さが相まって、熱中症への進行が速いことが知られています。夏季前には必ず保護者への指導を行うことが推奨されます。これは忘れがちですね。
高齢者への投与では、生理機能(肝機能・腎機能)の低下を踏まえて少量から開始することが原則です。特に中止時には、急激な減量がてんかん重積状態を引き起こすリスクがあるため、必ず段階的な漸減が求められます。重要な注意事項として、連用中における投与量の急激な減量は成人・高齢者を問わず禁忌に準じる行為です。これは慎重に行うことが条件です。
また、重篤な肝機能障害またはその既往歴がある患者では、ゾニサミドの血中濃度が上昇するおそれがあり、定期的な肝機能検査が必要です。連用中は肝機能・腎機能・血液検査を定期的に実施することが添付文書でも推奨されています。なお、腎機能障害患者では腎クリアランスが低下するため、蓄積性にも注意が必要です(外国人データでは、クレアチニンクリアランス<20mL/minの群ではCmaxが健常者より高い傾向が示されています)。
さらに、海外で実施された199のプラセボ対照臨床試験の解析において、抗てんかん薬服用群では自殺念慮・自殺企図のリスクがプラセボ群の約2倍(0.43% vs 0.24%、1,000人あたり1.9人多い)と計算されています。ゾニサミド自身の試験でも服用群0.45%・プラセボ群0.23%と同様の傾向があります。投与中・投与中止後の患者状態を注意深く観察することが、重要な安全管理上の義務となっています。
参考:抗てんかん薬による自殺関連行為についての情報(PMDA)
https://www.info.pmda.go.jp/kaitei/kaitei20090703.html
ゾニサミドはもともと住友ファーマが1974年に合成し、1989年にてんかん治療薬として発売したのが始まりです。長らくてんかん専用薬として使用されてきた同成分ですが、2000年代に入ってパーキンソン病への有効性が示唆され、2015年には「トレリーフ」というパーキンソン病治療薬として承認・発売されました。同じゾニサミドを主成分としながら、用量が大きく異なる点は実臨床で非常に重要な知識です。
てんかん治療では1日100〜400mgを使用する一方で、パーキンソン病治療では1日わずか25mgという約1/10〜1/16の用量で使用されます。「ゾニサミド錠100mg『アメル』」はてんかん用の100mg錠であり、パーキンソン病治療薬として誤用されることのないよう、処方・調剤の各段階でダブルチェックが求められます。規格の取り違えに注意が必要です。
さらにゾニサミドの薬理的特徴として、以下の複数の作用機序が知られています。
炭酸脱水素酵素阻害作用は、腎・尿路結石のリスクとも関連します。これはあまり知られていない事実で、アセタゾラミドとの薬理的類似性から理解すると把握しやすくなります。実際、添付文書にも「腎・尿路結石」が重大な副作用として記載されており、結石の既往がある患者では特に注意が必要です。
血中濃度測定(TDM)の有効活用という点では、ゾニサミドのユニークな側面があります。半減期が62.9〜94時間と非常に長いため、定常状態に達するまでに2〜3週間を要します。一方で、その長い半減期のおかげで血中濃度の日内変動が小さく、1日1回投与でも理論上は安定した血中濃度が維持できる点は臨床上のメリットとなります。ただし、実際の用法用量は「1〜3回分割」であり、患者の生活リズムや服薬コンプライアンスを踏まえた選択が重要です。服薬のしやすさが継続治療の鍵となります。
参考:ゾニサミド(エクセグラン)の先発薬・後発品と薬価まとめ
https://oksr-net.com/co/963/