残薬確認を丁寧にやればやるほど、算定できない場合がある。
残薬確認が「義務化」されたという話は、医療現場でよく耳にするようになりました。しかし、その具体的な根拠やどの場面で何が求められるのかを正確に理解している薬剤師は、意外に少ないのが実情です。
2016年度の診療報酬改定において、薬剤師が患者に対して残薬の確認を行い、その結果を処方医にフィードバックするという流れが、服薬管理指導料の算定要件に組み込まれました。つまり、「残薬確認をしなければ算定できない」という形で、実質的な義務化が進んだのです。これが基本です。
さらに2022年・2024年の改定でも要件は段階的に強化されており、単に「残薬があるかどうか聞いた」だけでは不十分とされるようになっています。具体的には、残薬が確認された場合は①その量や理由を記録し、②必要に応じて処方医に情報提供し、③患者への服薬指導を行うという三つのステップが求められます。
記録が残っていないと、監査や個別指導の際に「確認していない」と見なされるリスクがあります。口頭だけの確認では不十分ということですね。
実際に、2023年度の厚生局による個別指導事例の中には、残薬確認の記録が不十分として指摘を受けた薬局が複数存在したことが報告されています。保険薬局として算定した報酬の返還を求められるケースもあり、1件あたり数万円単位の影響になることも珍しくありません。
厚生労働省:調剤報酬改定の概要(服薬管理指導料・残薬確認関連)
残薬確認を行った際に「どう記録するか」は、現場での運用を左右する非常に重要なポイントです。意外と見落とされがちですが、算定要件の充足は「行為そのもの」ではなく「記録の内容」によって判断されます。
服薬管理指導料(旧:薬剤服用歴管理指導料)の算定においては、薬剤服用歴(薬歴)への記載が必須です。具体的には以下の内容が求められます。
これだけ書けばOKです。
処方医への情報提供については、FAXや電話、トレーシングレポートなどの手段が認められています。ただし、情報提供を行ったこと自体も薬歴に記録する必要があります。「連絡した」という事実の記録がなければ、したことにならないのが実務の厳しい現実です。
トレーシングレポート(服薬情報提供書)は、この情報提供をスムーズに行うためのツールとして多くの薬局で導入されています。厳しいところですね。日本薬剤師会のホームページには書式例が公開されており、各薬局での導入を後押しする資料として活用できます。
日本薬剤師会:薬局業務・服薬情報提供に関する資料(トレーシングレポート書式例)
なお、残薬調整に基づいて処方日数や剤数の変更が行われた場合は、その旨も記録に残す必要があります。処方箋の変更に至った経緯が明確でないと、後日のトラブルにつながりかねません。記録は「読んだ人が状況を再現できる」水準を目指すことが原則です。
残薬確認の義務化が進む背景には、日本における残薬問題の深刻さがあります。厚生労働省の推計によれば、年間に生じる残薬による医療費の無駄は約500億円にのぼるとされています。これは全国の薬局が扱う薬剤費の一部が、患者宅の引き出しに眠ったままになっているということです。
残薬が発生する主な原因としては、以下のものが挙げられます。
つまり残薬は患者側の問題だけでなく、処方設計や服薬指導の質にも関係するということです。
薬剤師としての対応策は、単に「余っている薬を次回持ってきてください」と伝えることではありません。残薬の原因を聞き出し、その背景に服薬アドヒアランスの問題がある場合は、服薬補助ツール(一包化、お薬カレンダー、服薬管理アプリなど)の提案が有効です。
特に高齢患者では、一包化調剤が飲み忘れ防止に高い効果を発揮することが複数の研究で示されています。一包化を行っている患者の残薬発生率が、そうでない患者と比べて約40%低下したという報告もあります。これは使えそうです。
残薬が多い患者には、処方医と連携して処方日数の短縮や剤形変更を提案することも重要な役割です。服薬指導の場で患者の状態を正確に把握し、それを処方医にフィードバックすることが薬剤師の専門性を活かした対応につながります。
残薬確認の義務化は、外来の保険薬局だけの話ではありません。在宅医療や訪問薬剤管理指導においては、残薬確認がさらに重要な意味を持ちます。
訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導・在宅患者訪問薬剤管理指導料)を算定する場合、訪問時の残薬確認とその記録は算定要件の根幹を成します。外来以上に患者の服薬状況を直接確認できる機会であるため、残薬の有無・その量・保管状況をすべて記録することが求められます。
在宅患者の場合、薬の管理能力が低下していることが多く、冷蔵が必要な薬が常温で保管されていたり、有効期限切れの薬が大量に残っていたりするケースも珍しくありません。これは健康リスクにも直結します。
さらに、在宅患者の残薬問題は医療費の無駄に加えて、誤服薬・過剰服薬のリスクにもつながります。残薬が多い環境では、患者や家族が「余っているから」と自己判断で服薬を調整してしまうことがあります。注意が必要ですね。
在宅での残薬確認では、訪問ごとに残薬の棚卸しを行い、処方医やケアマネジャーとも情報を共有することが理想的な対応です。薬局の電子薬歴システムには、訪問時の残薬記録を入力・管理できる機能を持つものも増えており、記録の効率化に役立てることができます。在宅患者を多く担当する薬局であれば、こうしたシステムの活用を検討する価値があります。
厚生労働省:在宅医療における薬剤師の役割と訪問薬剤管理指導の概要(PDF)
残薬確認の重要性は理解していても、「業務が増えるだけ」「時間がない」と感じている薬剤師や薬局スタッフは少なくありません。これは現場の正直な声です。
実際に、調剤薬局の薬剤師を対象にした調査では、残薬確認を含む服薬指導業務に1件あたり平均10〜15分を要しているというデータがあります。1日30〜50件の処方を受ける薬局では、全件に丁寧に対応することが物理的に困難な状況も生まれています。
ただ、業務負担を減らすための工夫も各所で進んでいます。その一つが「残薬確認シート」の活用です。患者が来局前に自宅で残薬を確認・記入してくるよう促すことで、窓口での確認時間を短縮できます。薬局によっては、お薬手帳アプリ(例:eparkお薬手帳、CARADA)と連携して、来局前に残薬情報を薬局側が把握できる仕組みを導入しているところもあります。
効率化が鍵です。
また、薬局業務の効率化という観点では、服薬フォローアップ(調剤後のフォロー)と残薬確認を組み合わせることで、来局時の指導時間を圧縮しながら質を維持する方法も注目されています。2020年以降、服薬フォローアップが義務化されたことで、電話やアプリを通じた事前情報収集が正規の業務フローとして認められるようになりました。これが条件です。
残薬確認を「コスト」ではなく「算定につながるプロセス」として捉え直すことが、業務改善の第一歩になります。正確な記録と丁寧な指導を積み重ねることが、長期的な薬局経営の安定にもつながるという視点を持つことが、これからの薬剤師には求められています。
日本薬剤師会:地域薬局・服薬フォローアップ・業務効率化に関する情報
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