めまいが出ても「副作用では問題ない」と処方継続すると、急性腎障害を見逃して患者が入院するケースがあります。

ザクラス配合錠HDは、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)であるアジルサルタン20mgと、カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)であるアムロジピン5mgを1錠に配合した降圧薬です。製造・販売は武田薬品工業であり、薬価は1錠78円(2025年9月改訂の添付文書第4版時点)とされています。
この薬が「配合剤」である点は副作用の理解において非常に重要です。つまり、アジルサルタン単独で起こりうる副作用と、アムロジピン単独で起こりうる副作用、両方が重複して出現しうる構造を持っています。添付文書(8.1項)にも「アジルサルタンとアムロジピンベシル酸塩双方の副作用が発現するおそれがあるため、適切に本剤の使用を検討すること」と明記されています。
2つの有効成分を含むということですね。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | アジルサルタン/アムロジピンベシル酸塩 |
| 薬効分類 | 持続性AT₁レセプターブロッカー/持続性Ca拮抗薬配合剤 |
| 用量(HD) | アジルサルタン20mg + アムロジピン5mg |
| 用法 | 成人1日1回1錠 経口投与 |
| 第一選択薬 | ❌ 高血圧治療の第一選択薬として用いない |
| 薬価 | 78円/錠(劇薬・処方箋医薬品) |
注意が必要な点として、本剤は「高血圧治療の第一選択薬として用いない」という制限が添付文書5.1項に明記されています。原則として、アジルサルタン20mgとアムロジピン2.5〜5mgをすでに併用している場合、または一方の単剤で血圧コントロールが不十分な場合に切り替えを検討するものです(5.2項)。これは配合剤の強力な降圧作用による過度な血圧低下リスクを考慮したものであり、処方時の適応評価が欠かせません。
参考:添付文書(KEGG)ザクラス配合錠LD・HD 2025年9月改訂版
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062719
副作用に関する添付文書の記載は、重大なものと「その他」に分類されます。まず医療従事者が最優先で把握すべきは、重大な副作用です。ザクラス配合錠HDでは以下の8項目が列挙されており、いずれも「頻度不明」とされています。
頻度不明、というのが実は最大のポイントです。
「頻度不明」とは、発生頻度が非常に低いか、自発報告ベースでの把握のため統計的な頻度算出が困難なことを意味します。少ないから安全、という解釈は危険です。むしろ「いつ誰に起きてもおかしくない」という意識で観察することが求められます。
| 番号 | 重大な副作用 | 頻度 | 主な症状・観察ポイント |
|---|---|---|---|
| ① | 血管性浮腫 | 頻度不明 | 顔面・口唇・舌・咽喉頭の腫脹、腸管浮腫(腹痛・嘔気・下痢) |
| ② | ショック・失神・意識消失 | 頻度不明 | 冷感、嘔吐、意識消失。厳重な減塩療法中や透析患者で特にリスク高 |
| ③ | 急性腎障害 | 頻度不明 | クレアチニン・BUN上昇。両側腎動脈狭窄患者で使用原則回避 |
| ④ | 高カリウム血症 | 頻度不明 | 腎機能障害・糖尿病患者では血清K値の定期モニタリングが必要 |
| ⑤ | 劇症肝炎・肝機能障害・黄疸 | 頻度不明 | AST・ALT・γ-GTP上昇。2016年に厚労省が追記指示 |
| ⑥ | 横紋筋融解症 | 頻度不明 | 筋肉痛・脱力感・CK上昇・ミオグロビン尿。急性腎障害に移行しうる |
| ⑦ | 無顆粒球症・白血球減少・血小板減少 | 頻度不明 | 血液像変化の定期確認が必要 |
| ⑧ | 房室ブロック | 頻度不明 | 初期症状は徐脈・めまい。心電図での確認が有効 |
2016年1月、厚生労働省はアジルサルタン・アムロジピン配合剤(ザクラス配合錠HDほか)に対して、「劇症肝炎」「無顆粒球症」「横紋筋融解症およびそれによる急性腎不全」を重大な副作用として添付文書へ追記するよう、メーカーに指示しました。これらは当初の添付文書には記載のなかった項目であり、市販後の使用実績の中で明らかになったリスクです。
つまり添付文書は「生きている文書」だということですね。
参考:厚生労働省による重大な副作用追記指示(GeMed記事・2016年1月)
https://gemmed.ghc-j.com/?p=7262
重大な副作用に注目が集まりがちですが、日常診療において実際に患者が訴えやすいのはむしろ「その他の副作用」です。発現頻度は添付文書上「0.1〜5%未満」と「頻度不明」に分類されており、主な内容は以下の通りです。
- 🫀 循環器系:めまい・ふらつき・浮腫・徐脈・動悸・血圧低下・ほてり(熱感・顔面潮紅)・心房細動・期外収縮
- 🧠 精神神経系:頭痛(0.1〜5%未満)・頭重・眠気・振戦・末梢神経障害
- 🧪 代謝異常:血中尿酸上昇(0.1〜5%未満)・糖尿病・高血糖
- 🦷 その他:連用による歯肉肥厚・口内炎・脱毛・女性化乳房・血中CK上昇
このなかで特に意外性が高いのが「歯肉肥厚」です。アムロジピン成分によって引き起こされるカルシウム拮抗薬性歯肉増殖症は、連用によって生じます。アムロジピン(ノルバスク・アムロジン等)による歯肉肥厚の発症率は0.1%未満と比較的低いとされていますが、長期服用患者での口腔内観察は医師・歯科医師・薬剤師間の連携が欠かせません。
これは使えそうな情報ですね。
歯肉肥厚が悪化すると咀嚼機能の低下・審美的問題だけでなく、歯周ポケットの深化による感染リスクまで広がります。患者自身が「薬のせい」と気づきにくい副作用のひとつでもあります。長期処方患者には「歯茎の腫れや変形」がないか定期的に確認するよう指導することが望ましいです。
もうひとつ注目したいのが「血中尿酸上昇」です。長期投与試験(368例)での副作用発現頻度15.2%のうち、血中尿酸増加は1.4%(5/368例)で確認されています。高尿酸血症や痛風の既往がある患者に使用する際は、尿酸値のフォローが必要です。
血中尿酸モニタリングも忘れずにということですね。
参考:カルシウム拮抗薬による歯肉肥厚(日本薬剤師会)
https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/22.pdf
ザクラス配合錠HDは、患者の背景によって副作用リスクが大きく変わります。添付文書の「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」には、具体的なリスク群が示されています。
まず絶対に押さえておくべきは「両側性腎動脈狭窄」または「片腎で腎動脈狭窄」のある患者です。アジルサルタンが腎血流量の低下と糸球体ろ過圧の低下をもたらし、急速な腎機能悪化を招くおそれがあるため、治療上やむを得ないと判断される場合を除き使用を避けるとされています。
重篤な腎機能障害(eGFR 15mL/min/1.73m²未満)でもアジルサルタンの血中濃度上昇が報告されています。腎機能低下患者への投与は慎重の上にも慎重な判断が必要です。
高齢者も要注意です。アムロジピン成分は高齢者において血中濃度が高くなり、血中濃度半減期が延長する傾向があります。そのため「低用量から開始」が原則です。アムロジピンの血中濃度半減期はもともと約35〜50時間と非常に長く、投与中止後も緩徐な降圧効果が続く点も、他剤への切り替え時に注意が必要です(8.4項)。
次に相互作用についてです。特に重要な組み合わせを整理します。
| 併用薬・飲食物 | リスク | 機序 |
|---|---|---|
| アリスキレン(糖尿病患者) | 併用禁忌:脳卒中・腎障害・高K血症・低血圧 | RA系阻害作用の増強 |
| グレープフルーツジュース | アムロジピンの降圧作用増強 | CYP3A4阻害によるアムロジピン血中濃度上昇 |
| シンバスタチン80mg(国内未承認高用量) | シンバスタチンのAUCが77%上昇 | 機序不明 |
| タクロリムス | タクロリムス血中濃度上昇・腎障害リスク | CYP3A4での代謝競合 |
| エリスロマイシン・ジルチアゼム | アムロジピン血中濃度上昇 | CYP3A4阻害 |
| カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトン等) | 高カリウム血症 | アジルサルタンのアルドステロン分泌抑制との相加 |
| NSAIDs(インドメタシン等) | 降圧効果減弱+腎機能悪化 | プロスタグランジン合成阻害 |
グレープフルーツジュースは患者が日常的に摂取しうる食品です。入院患者や外来患者に対して食事指導として明確に伝えることが副作用予防につながります。
食事との相互作用も見逃せません。
高血圧患者の多くは脂質異常症を合併しており、スタチン系薬との併用頻度は高いです。シンバスタチン高用量との組み合わせはAUCが77%上昇するとの報告があり、横紋筋融解症リスクの観点からも注意が必要です。スタチン変更が可能であればロスバスタチンなど相互作用の少ない薬剤を考慮する選択肢があります。
参考:ザクラス配合錠HD 添付文書(医薬情報QLifePro)
https://meds.qlifepro.com/detail/2149121F2028/ザクラス配合錠HD
医療現場で特に見落とされやすいのが、周術期のザクラス配合錠HD管理です。添付文書8.3項に「手術前24時間は投与しないことが望ましい」と明記されています。これはアジルサルタン(ARB)成分によるRA系抑制が、麻酔中の高度な血圧低下を引き起こすリスクのためです。
実は「手術当日の朝薬」として何気なく飲んでしまうケースが後を絶ちません。
鳥取大学医学部附属病院・茨城県立中央病院など複数の施設が術前中止薬一覧を公開しており、ザクラス配合錠HD(アジルサルタン含有)は「手術当日中止」として明確に分類されています。入院前の外来時から、休薬のタイミングと再開時期を患者に具体的に説明しておくことが重要です。
妊婦への投与は禁忌(2.2項)です。これはアジルサルタン成分のARB作用が、妊娠中期・末期において胎児・新生児に以下の重大なリスクをもたらすためです。
- 羊水過少症
- 胎児・新生児の腎不全・死亡
- 頭蓋の形成不全
- 四肢の拘縮・肺の低形成
妊娠が判明した場合は直ちに投与を中止することが必須です。妊娠の可能性がある女性に処方する際は、投与開始前の妊娠確認と投与中の定期的な妊娠確認が求められます(9.4.1項)。
妊娠確認が前提条件です。
授乳婦への投与も「授乳しないことが望ましい」とされています。動物試験でアジルサルタンの強制経口投与により出生児に腎盂拡張が認められており、また、アムロジピン成分はヒト母乳中への移行が報告されています。患者が授乳中か否かの確認を処方時のルーティンに組み込むことが、医療安全の観点から重要です。
小児等への投与については、臨床試験が実施されていないため、安全性は確立されていません。この点も処方前確認の対象になります。
参考:鳥取大学医学部附属病院 術前中止薬一覧(2026年1月改訂版)
https://pharmaceutical.med.tottori-u.ac.jp/wp-content/uploads/2026/01/術前中止薬一覧
副作用を早期に発見するためには、体系的なモニタリングが欠かせません。以下に、現場で活用できるチェックポイントを整理します。
🔍 定期的にモニタリングすべき検査項目
| 項目 | 理由 | 推奨タイミング |
|---|---|---|
| 血清クレアチニン・eGFR | 急性腎障害・腎機能悪化の早期発見 | 投与開始後1〜3ヵ月、以降定期的 |
| 血清カリウム | 高カリウム血症(特に腎機能障害・糖尿病合併患者) | 定期的(頻度は患者背景による) |
| AST・ALT・γ-GTP | 肝機能障害・劇症肝炎の早期把握 | 定期的 |
| CK(クレアチンキナーゼ) | 横紋筋融解症の早期発見 | 筋肉痛・脱力感出現時 |
| 血圧(立位・座位) | 体位性低血圧・過度の降圧チェック | 毎受診時 |
| 血中尿酸 | 高尿酸血症・痛風リスク評価 | 定期的 |
| 心電図 | 房室ブロック・不整脈の確認 | 症状(徐脈・めまい)出現時 |
体位性めまいは発現頻度3.0%と最も多い副作用です。立ちくらみが起きたら「血圧が下がりすぎているサイン」として対処することが原則です。
次に、患者への指導ポイントも整理しておきます。患者が副作用を「あたりまえの症状」として見逃さないようにするための説明が、医療従事者の重要な役割です。
- 🚗 運転・高所作業の注意:めまい・ふらつきが生じた場合は自動車の運転等を避けるよう指導(8.2項)
- 🍊 グレープフルーツの摂取禁止:アムロジピンの血中濃度を高めるため、果実・ジュースともに禁止
- 🦷 口腔内の変化に注意:歯茎の腫れや硬さを感じたら歯科受診を検討
- 💊 他の薬・OTC薬との確認:NSAIDs(市販の痛み止め)がザクラスの降圧効果を弱め、腎機能も悪化させる可能性
- 🤰 妊娠の可能性がある場合は必ず医師へ報告:投与中に妊娠が判明したら直ちに受診
副作用のうち、連用によって生じる「歯肉肥厚」は、患者が自覚しにくい副作用の代表例です。薬局での服薬指導時に「長く飲んでいると、まれに歯茎が硬くなってくることがある。変化があれば歯科にも相談を」と伝えるだけで、早期発見につながります。これは処方医・薬剤師の両方が意識すべきポイントです。
また、本剤投与中止後に他の降圧剤へ切り替える際は、アムロジピンの長い半減期(約35〜50時間)を考慮し、投与量や投与間隔を慎重に調整する必要があります(8.4項)。「止めたら即日血圧が戻る」わけではなく、降圧効果はしばらく持続します。
切り替え時の過降圧にも要注意です。
参考:ザクラス配合錠 医薬品リスク管理計画書(PMDA)
https://www.pmda.go.jp/files/000241840.pdf

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