ユナシンは点滴するだけで幅広い菌に効く、と思っていませんか?実はMRSAと緑膿菌には全く効かず、見落とすと治療が完全に空振りになります。

ユナシン(ユナシン-Sキット静注用)の正式名称はスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウム(SBT/ABPC)です。2種類の有効成分が異なる役割を担い、単剤では達成できない広域の抗菌活性を実現しています。
アンピシリン(ABPC)はペニシリン系抗生物質であり、細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンの合成を阻害することで殺菌作用を発揮します。一方のスルバクタム(SBT)は、それ単独では抗菌力がほとんどありません。しかしSBTはβ-ラクタマーゼという酵素を不可逆的に阻害します。これが核心です。
β-ラクタマーゼとは、細菌が産生する「抗生物質の核心部分を壊す酵素」であり、アンピシリン単独では効かない菌の多くがこの酵素を武器にしています。SBTがその酵素を封じることで、ABPCが本来の力を存分に発揮できるようになります。ABPC:SBT = 2g:1gという配合比が設計されており、これが製品ラインナップ(1.5g、3g製剤)の基準となっています。
つまり「2成分の役割分担」が本剤の本質です。
アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)の臨床ポイントまとめ(Hokuto – メイヨークリニック感染症科 松尾貴公 監修)
ユナシン点滴の抗菌スペクトルは広いですが、「万能」ではありません。現場で誤解されやすいポイントを含めて整理します。
✅ ユナシンが有効な主な細菌
| カテゴリ | 代表的な菌 | 特記事項 |
|---|---|---|
| グラム陽性球菌 | MSSA(黄色ブドウ球菌)、肺炎球菌、連鎖球菌 | 幅広く有効 |
| グラム陰性桿菌 | インフルエンザ菌(Hib)、大腸菌、クレブシエラ | ESBLなしの場合有効 |
| 嫌気性菌 | Fusobacterium、Prevotella、Peptostreptococcus | 誤嚥性肺炎での価値が高い |
| その他 | Acinetobacter baumannii | SBT自体に抗菌活性あり |
| 腸球菌 | Enterococcus faecalis | E. faeciumには無効 |
❌ ユナシンが無効な主な細菌
- MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌):市中感染・院内感染を問わず無効
- 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa):自然耐性のため全く効かない
- 腸内細菌(E.coli、Klebsiella等)の耐性株:地域によって約30%が耐性を有する
- 非定型菌(マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ):細胞壁を持たないため無効
「β-ラクタマーゼを産生するから耐性」という菌には効く可能性があります。しかし「そもそもβ-ラクタムが届かない」「別機序の耐性を持つ」菌には無効です。これが原則です。
特に緑膿菌への無効という点は実臨床で見落とされやすいです。院内肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)で緑膿菌リスクが高い患者にユナシンを選択するのは危険であり、抗緑膿菌作用を持つ薬剤(ピペラシリン/タゾバクタム、セフェピム、カルバペネムなど)への切り替えを検討する必要があります。
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン(呼吸器感染症):市中・院内肺炎の起炎菌と耐性菌リスク評価に関する記載あり
ユナシン点滴が現場でどのような場面で選ばれるかを整理します。適切な適応を把握することが、治療の質を直接左右します。
🏥 日常臨床での主な適応疾患
| 疾患 | 推奨理由 | 用量の目安 |
|---|---|---|
| 市中肺炎(CAP) | 肺炎球菌・H. influenzaeをカバー | 1回3g、6時間ごと(1日4回)|
| 誤嚥性肺炎 | 嫌気性菌をカバーできる数少ない薬剤の1つ | 1回1.5〜3g、6時間ごと |
| 蜂窩織炎 | MSSAや連鎖球菌に有効 | 1回3g、6時間ごと |
| 動物・ヒト咬傷感染 | Pasteurella、口腔内嫌気性菌に有効 | 1回3g、6時間ごと |
| 感染性心内膜炎(エンピリック) | 腸球菌E. faecalisを含む広域カバー | 高用量を検討 |
| 胆管炎・腹腔内感染 | 感受性確認の上で使用 | 感受性結果を必ず確認 |
添付文書の標準用量は「1日6g(力価)を2回に分けて点滴静注」ですが、実臨床では1日4回投与(1回3g、6時間ごと)が選択されることも多いです。重症感染症では1回3g、1日4回(最大12g/日)まで増量できます。
誤嚥性肺炎については特に注目です。嫌気性菌の関与が疑われる場合、レボフロキサシンなどのキノロン系は嫌気性菌への活性が不十分なため不向きです。ユナシン点滴は口腔内嫌気性菌(FusobacteriumやPrevotella等)をカバーできるため、誤嚥性肺炎・肺膿瘍の初期治療として第一選択薬に挙げられています。高齢者施設からの入院患者に使いやすいのは、この理由からです。
ただし、胆管炎や虫垂炎などの腹腔内感染症では、大腸菌やKlebsiellaへの耐性率が地域によって約30%程度あるため、感受性結果なしでのエンピリック治療には慎重な姿勢が求められます。感受性を確認することが条件です。
亀田総合病院 誤嚥性肺炎 ver.1:ユナシン-S の推奨用量・投与間隔の記載あり(嫌気性菌関与が疑われる場合の選択薬として記載)
ユナシンは腎排泄型の薬剤です。腎機能が低下した患者では通常量を投与し続けると血中濃度が過剰上昇し、副作用リスクが高まります。これは見落とせない点です。
CLcr(クレアチニンクリアランス)に応じた投与間隔の調整が必要です。以下は目安となる調整の例です。
📋 腎機能別 推奨投与間隔(ABPC/SBT 1回3g)
| CLcr(mL/min) | 1回投与量 | 投与間隔 |
|---|---|---|
| ≧50 | 3g | 6時間ごと(1日4回) |
| 30〜50 | 3g | 6〜8時間ごと |
| 15〜30 | 3g | 12時間ごと |
| <15(透析含む) | 3g | 24時間ごと(要個別検討) |
高齢者はCr値が正常に見えても、筋肉量の低下により実際のCLcrが大きく低下していることがあります。Cr 1.0 mg/dLの80歳女性であっても、Cockcroft-Gault式で計算すると30 mL/min台になるケースは珍しくありません。数値だけで判断しないことが大切です。
また、腎排泄型であることは投与後の薬物蓄積リスクとも直結します。投与量・間隔の見直しが遅れると、皮疹、血球減少(無顆粒球症・血小板減少)、急性腎障害といった重篤な副作用の誘因となります。腎機能が変動しやすいICU患者や敗血症患者では、複数回のCr・eGFRモニタリングと用量の随時見直しが原則です。
処方や調剤の段階で腎機能調整が漏れていないか、電子カルテの腎機能データと照合することを日常的な確認習慣にしておくと、インシデントの防止につながります。
Hokuto(ABPC/SBT):腎機能別投与量・投与間隔テーブル(CLcr別の推奨用量一覧あり)
ユナシン点滴の副作用には、軽微なものから生命に関わるものまでの幅があります。早期発見と迅速な対応が患者の転帰を左右します。
🚨 重大な副作用(頻度不明・発現時は即時対応)
- ショック・アナフィラキシー:投与直後から発現の可能性あり。ペニシリンアレルギー既往の有無を必ず事前確認する。
- 急性腎障害・間質性腎炎:尿量・Crの経時変化をモニタリング。
- 偽膜性大腸炎:腹痛・水様下痢・血便が続く場合は要注意。投与中止を検討し、Clostridioides difficile(CD)検査を施行する。
- 血液障害(無顆粒球症・溶血性貧血・血小板減少):長期投与時には血球カウントを定期チェックする。
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)・皮膚粘膜眼症候群(SJS):まれだが皮膚症状の急速な悪化に注意する。
⚠️ 比較的よくみられる副作用(対症対応が基本)
| 副作用 | 症状 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 消化器症状 | 悪心・嘔吐・下痢 | 軽度なら経過観察、重症化時は中止検討 |
| 皮疹 | 薬疹・じんましん | アレルギー性皮疹との鑑別が重要 |
| 肝機能障害 | AST/ALT上昇 | 長期投与時はモニタリング |
| 注射部位反応 | 血管痛・静脈炎 | 十分な希釈と投与速度の調節が有効 |
アナフィラキシーはペニシリン系に共通するリスクです。投与前には必ずアレルギー歴を問診します。「以前ペニシリンを使って発疹が出た」という患者への投与は避けるのが原則です。セフェム系との交差反応性は低いとされていますが、医師の判断が前提となります。
偽膜性大腸炎は抗菌薬投与中・投与後どちらのタイミングでも発症しえます。「抗菌薬を投与中に下痢が出た」で終わらせず、血便や発熱を伴う場合はCDトキシン検査を積極的に行うことが早期診断につながります。
KEGG MEDICUS:ユナシン-Sキット 添付文書全文(副作用・禁忌・相互作用の詳細確認に活用)
ユナシンは「嫌気性菌にも強く幅広い感染症に使える」という印象から、中枢神経感染症にも選択されてしまうことがあります。しかし、これは重大な誤りです。
スルバクタム(SBT)は髄液への移行性が著しく乏しいとされています。細菌性髄膜炎などの中枢神経感染症では、抗菌薬が十分な濃度で髄液に到達することが治療効果の絶対条件となります。SBTの髄液移行不良により、ユナシンは中枢神経感染症において使用できません。これは原則です。
細菌性髄膜炎の治療では髄液移行性に優れた薬剤が選択されます。例えば肺炎球菌性髄膜炎であればバンコマイシン+セフトリアキソン、リステリア菌であればアンピシリン(SBTなしの単剤)+ゲンタマイシンが推奨される代表的な選択肢です。
ここで見落とされやすい独自の視点があります。「アンピシリン(ABPC)単剤ならリステリア菌の髄膜炎に使える」という事実です。ABPCは単独では髄液に一定移行するため中枢神経感染症に使用されることがあります。一方、SBT/ABPC配合のユナシンは使えません。同じアンピシリンを含む薬剤であっても、スルバクタムが配合されているユナシンと、ABPC単独製剤では適応が根本的に異なります。
「同じ成分が入っているから代替できる」という思い込みは危険です。
さらに院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎(VAP)でも注意が必要です。VAPの起炎菌は緑膿菌やMRSAを含む多剤耐性菌が多くなります。ユナシンはこれらに無効であるため、VAP治療においてもエンピリックにユナシンを選択するのは適切でないケースが多いです。PSBやBALによる培養結果が出た後に、感受性に基づいてde-escalationする際に選択することが現実的です。
日本神経学会 細菌性髄膜炎の治療ガイドライン:SBT/ABPC(ユナシン)の髄液移行性の乏しさと中枢神経感染症への使用不可の根拠として参照

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