薬価の下がった品目だけ確認すれば十分だと思っていると、算定ミスで返還請求を受けるリスクがあります。

2026年の薬価改定は、診療報酬改定と同時に行われる「6年に一度の大改定」です。前回2024年は薬価のみの中間年改定でしたが、今回は診療報酬本体の点数改定とセットになるため、現場への影響範囲がひと桁違うと考えてください。
厚生労働省の方針では、薬価調査の結果に基づく乖離率の是正が中心となります。市場実勢価格と薬価の乖離が大きい品目は引き下げ幅も大きくなる仕組みで、乖離率の平均は例年7〜9%程度で推移してきました。2026年改定の最終的な乖離率・引き下げ率は2025年秋の薬価調査結果をもとに決定されます。
収載品目の内訳について大まかな規模感を示すと、薬価基準収載医薬品は現在約1万5,000品目以上が存在しています。これはA4用紙に印刷すると厚さ数センチに達する分量で、全品目を目視で確認する作業は現実的ではありません。つまり電子薬価マスタの活用が原則です。
改定ごとに新規収載、削除(薬価削除)、規格追加が発生します。2026年改定でも後発医薬品の新規収載と先発品の薬価削除が並行して行われる見込みで、採用薬の棚卸しは必須の作業になります。
厚生労働省が公表する「薬価基準収載品目一覧表」は、改定告示後に電子ファイル形式で入手可能です。医薬品の成分名・規格・薬価・製造販売業者の情報がまとめて掲載されており、院内マスタ更新の一次ソースになります。
厚生労働省|薬価基準収載品目一覧(参考:2024年改定版・改定告示後に2026年版が同形式で公表される)
後発医薬品(ジェネリック)の薬価ルールは、毎改定のたびに細かな変更が加わります。これが実務上のつまずきポいントになりやすいところです。
2026年改定でも引き続き注目されるのが「後発品の価格帯集約」です。同一成分・同一規格の後発品が多数存在する場合、価格帯を集約して段階的に薬価を統一していく方向が続いています。品目によっては先発品の薬価の20〜30%程度まで引き下げられるケースもあり、採用コストの試算は改定前後で大きく変わります。
バイオ後続品(バイオシミラー)については、政府が普及促進の目標を掲げており、2030年までに医療費適正化の観点からバイオ後続品のシェアを一定割合まで高める方針を継続しています。加算の要件や算定上限なども改定ごとに見直されるため、投与している生物学的製剤のバイオ後続品が新たに収載されていないかを改定告示後に必ず確認してください。
意外なのは、後発品への切り替えを進めるほど薬剤費が下がる一方で、在庫管理の手間が増加して業務コストが実質的に上昇するケースがある点です。後発品の品目数が多くなると棚卸しや期限管理の対象が増え、人件費換算で数十万円単位のコストが見えにくい形で発生することがあります。これは対策が必要なポイントですね。
品目の整理と業務効率化を両立するために、医薬品マスタ管理システムや薬局向けの在庫管理ソフトウェアとの連携を検討する施設も増えています。改定をきっかけに採用品目の絞り込みを行うことが、在庫コスト削減の現実的な手段のひとつです。
「薬価は改定のたびに下がる一方」というイメージを持っている方は多いかもしれません。しかし実際には、条件を満たせば薬価が引き上げられる制度が存在します。
不採算品再算定は、製造コストの上昇や原材料費の高騰などにより採算が取れなくなった品目について、薬価を引き上げる仕組みです。2024年改定では約1,300品目以上が不採算品再算定の対象となり、これは過去最大規模でした。医薬品の安定供給問題が社会的に注目されたことも背景にあります。
2026年改定でも引き続き、後発品メーカーの経営環境や原薬の調達コスト上昇を踏まえた不採算品再算定が行われる可能性があります。引き上げ対象になった品目は算定単価が変わるため、採用していた場合は薬剤費の試算を修正する必要があります。
新薬の収載については、薬価算定組織による審議を経て年4回の薬価収載が行われています。2026年6月の改定時には既存品の改定と新規収載が同時に告示されるため、新薬の薬価一覧もあわせて確認する必要があります。これは見落としがちな作業です。
特に注目度が高いのは、革新的新薬への「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(新薬創出加算)の適用状況です。加算が付いた品目は薬価の維持・引き上げが認められるため、後発品参入前の先発品採用施設では予算への影響が変わります。
厚生労働省|薬価算定組織(中医協)関連資料・新薬算定や不採算品再算定の審議内容を確認できる)
改定告示から施行日(例年4月または6月)まで、実務担当者に与えられる準備期間は1〜2ヶ月程度しかありません。短い期間のうちに確実に対応するためには、作業を段階的に分解することが重要です。
まず改定告示直後に行うべき作業は、厚生労働省が公表する「薬価基準収載品目一覧」の最新版をダウンロードして現在の院内採用品目リストと照合することです。差分を自動で検出できるシステムを利用している施設は作業時間を大幅に短縮できますが、Excelでの手動照合を行っている施設も少なくありません。品目数が多い病院では照合作業だけで数日を要することもあります。
次に確認するのは削除品目(薬価削除)の有無です。施行日以降は薬価削除品目を算定できなくなるため、代替品の選定と採用申請、在庫消化のスケジュールを早急に組む必要があります。削除品目の在庫が残った場合の処理方法は施設ごとのルールに沿って対応してください。
院内マスタの更新タイミングも重要です。システムベンダーによって更新作業のリードタイムが異なるため、改定告示後すぐにベンダーへ連絡してスケジュールを確認するのが原則です。施行日当日にマスタが未更新のまま処方が出ると、算定エラーや査定の原因になります。
患者への説明準備も忘れないでください。後発品への切り替えや採用品目の変更があった場合、窓口での患者説明が必要になるケースがあります。変更理由と代替品の情報をまとめた簡易資料を事前に準備しておくと、施行後の混乱を減らすことができます。
| 作業フェーズ | 具体的な内容 | 目安のタイミング |
|---|---|---|
| ①告示内容の確認 | 厚労省サイトから収載品目一覧をDL・照合 | 告示翌日〜3日以内 |
| ②削除品目の対応 | 代替品選定・採用申請・在庫消化計画 | 告示後1週間以内 |
| ③マスタ更新依頼 | ベンダーへ連絡・更新スケジュール確認 | 告示後即時〜2週間以内 |
| ④患者説明準備 | 変更品目の案内資料・窓口トーク整備 | 施行2週間前まで |
| ⑤施行後の確認 | 算定エラー・レセプト査定の有無を確認 | 施行日から1週間以内 |
薬価改定の情報は「確認するもの」として受け身で扱われがちですが、実は施設経営の観点から積極的に活用できる場面があります。ここでは検索上位の記事ではあまり触れられていない視点を紹介します。
注目したいのが「後発品調剤体制加算」との連動です。保険薬局では後発品の調剤数量シェアが一定割合を超えると加算が算定できますが、薬価改定で新たに後発品が収載された成分が増えると、切り替えによってシェアが向上し加算の要件を達成しやすくなります。改定による品目変動をポジティブな機会として捉えることができます。
病院薬剤部の立場では、採用品目の整理によるトータルコスト削減が経営貢献として可視化されやすいタイミングです。薬価改定前後で採用薬剤の薬価単価の差分を集計し、年間薬剤費への影響額を試算・報告することで、薬剤師の業務価値を示す材料になります。
また、薬価改定は患者への服薬指導の切り口にもなります。採用後発品が変わった場合、「見た目が変わりましたが同じ成分です」という説明が必要になるケースがあります。この説明を丁寧に行うことでアドヒアランスの低下を防ぎ、臨床的なアウトカムの維持につながります。
薬価改定への対応を「コスト」ではなく「情報資産の更新」と位置づけると、現場のモチベーション維持にも効果があります。改定ごとに薬剤師・医師・事務スタッフが連携して対応フローを整備することで、次の改定への対応スピードも上がっていきます。継続的な体制づくりが大切です。
薬価情報の最新動向を追い続けるためには、厚生労働省の「医薬品の薬価収載に関するページ」や中医協(中央社会保険医療協議会)の議事録を定期的にチェックするのが確実です。メールマガジンやRSSフィードで通知を受け取る設定にしておくと、見逃しが減ります。
厚生労働省|後発医薬品の使用促進に関するページ(後発品の政策動向・加算要件の確認に活用)
厚生労働省|中央社会保険医療協議会(中医協)総会議事録(薬価算定ルールの最新審議内容を確認できる)