ワンデュロパッチ出荷停止で今すぐ代替薬への切り替えが必要な理由

ワンデュロパッチの出荷停止・自主回収が相次ぐ中、医療従事者はどう対応すべきか?代替薬への切り替え手順や注意点、フェントステープ使用時のeラーニング受講義務まで、現場で役立つ情報をまとめました。

ワンデュロパッチ出荷停止の全経緯と代替薬への切り替え対応

出荷停止が終わっても、在庫の使用期限が36か月から15か月に短縮されているため、手元の製品が使えなくなるケースがあります。


📋 この記事のポイント3つ
⚠️
出荷停止+自主回収が同時進行

2024年10月から始まった出荷停止は2025年3月に「供給停止(再開未定)」へと拡大。2025年2月には一部ロットのクラスII自主回収も発生し、現場の混乱が続いています。

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代替薬への切り替えには条件がある

フェントステープへ切り替える場合、慢性疼痛で使用するにはe-learningの受講修了が処方医師に義務付けられています。受講なしでは調剤不可です。

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用量換算を正確に行うことが不可欠

ワンデュロパッチからフェントステープへの換算は1対1ではありません。規格の対応を誤ると過量投与・過少投与のリスクにつながります。


ワンデュロパッチ出荷停止の経緯と現在の供給状況



ワンデュロ®パッチ(一般名:フェンタニル、製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社)の出荷停止は、2024年8月に最初の「供給停止」が通知されたことに端を発します。その後、同年12月23日に「限定出荷」として一時的に再開されましたが、2025年3月にヤンセンファーマから再度「諸般の事情により現在の弊社在庫をもって供給停止となる」との通知が発出されました。現時点では再開時期は明示されていません。


出荷停止の背景には、製品の安定性試験に関わる問題がありました。2021年12月に実施した一次包装資材の材質変更が引き金となり、フェンタニル有効成分の酸化物由来の分解物が増加傾向にあることが年次安定性モニタリングで確認されました。この事象はロット特有のものではなく、変更後の包装材を使用している全製品に影響するとされており、元の資材への変更も不可能な状況です。


出荷を再開した際には、有効期間を従来の36か月から15か月に短縮することで対応が図られましたが、2025年3月には再び供給停止に至っています。在庫消尽の予定時期は以下のとおりです。







規格 在庫消尽予定時期
0.84mg・1.7mg・5mg・6.7mg 2025年4月下旬
3.4mg 2025年5月下旬


重要なのは、分解物の増加自体は「人の健康に影響を与えるものではない」と安全性評価で確認されている点です。現在までに本件に起因する健康被害の報告はありません。ただし、品質管理上の規格逸脱リスクから供給停止という判断が下された点は、医療従事者として正確に把握しておく必要があります。


なお、問い合わせ先として、ヤンセンファーマ株式会社 規制医品流通情報特別窓口(フリーダイヤル:0120-302-368)が設置されています。


参考:ヤンセンファーマ発表のワンデュロパッチ供給停止通知(日本麻酔科学会掲載)
ワンデュロ®パッチ 供給停止のお知らせとお詫び(PDF)


ワンデュロパッチ自主回収(クラスII)の対象ロットと対応手順

2025年2月10日、ヤンセンファーマは一部製造番号のワンデュロ®パッチについて自主回収(クラスII)を開始しました。出荷停止とは別の問題です。自主回収の理由は、有効成分の純度試験において分解物が承認規格値付近にあり、「使用期限内に承認規格値を超える可能性が否定できない」と判断されたためです。


クラスIIとは、厚生労働省の分類基準において「一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性があるか、または重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況」を指します。つまり、直ちに重篤な危険があるわけではありません。それでも、規格外となる可能性がある製品を患者に使い続けることは適切ではなく、速やかな確認と対応が求められます。


回収対象の製造番号は以下のとおりです。









販売名 製造番号 製品番号
ワンデュロ®パッチ 0.84mg A0026 J3-004959〜J3-008947
ワンデュロ®パッチ 0.84mg A0027 J3-008950〜J3-012935
ワンデュロ®パッチ 1.7mg A0025 J3-003426〜J3-007421
ワンデュロ®パッチ 6.7mg A0023 J3-000608〜J3-001459


対象製品が患者・家族の手元にある場合は、使用を中止し、製品を受け取った医療機関またはヤンセンファーマ(患者・家族向け問い合わせ先:0120-183-279)に連絡するよう案内が出ています。


薬局・医療機関では、調剤済み・交付済みの製造番号を確認し、該当ロットが使われている患者への連絡体制を速やかに整えることが求められます。在庫品の製造番号は個装函(外箱)に記載されているため、まず手持ち在庫の確認から始めることが基本です。


参考:ヤンセンファーマ公式発表(J&Jジャパン)
「ワンデュロ®パッチ」自主回収(クラスII)のお知らせ(ヤンセンファーマ)


ワンデュロパッチ出荷停止時の代替薬と切り替えの基本的な考え方

ヤンセンファーマ自身がワンデュロパッチの参考代替品として挙げているのが、フェントス®テープ(製造販売元:久光製薬株式会社、発売元:協和キリン株式会社)です。どちらも「1日1回(24時間)貼り替え型」のフェンタニル経皮吸収型製剤であり、剤形・投与経路の面では同一カテゴリに属します。これが切り替えの起点となります。


ただし、規格ごとの換算を正確に行うことが不可欠です。ワンデュロパッチとフェントステープの規格は以下のように対応しています。










ワンデュロパッチ(フェンタニル含量) フェントステープ(換算目安)
0.84mg 0.5mg相当
1.7mg 1mg相当
3.4mg 2mg相当
5mg 4mg相当(厳密には確認が必要)
6.7mg 4〜6mg(添付文書・換算表を参照)


⚠️ なお、この換算は目安であり、各施設の換算表や最新の添付文書に基づいて個別に確認することが原則です。


切り替えに際してもう一点注意が必要です。フェントステープを慢性疼痛(非がん性)に使用する場合、処方医師がe-learning(適正使用講習)を受講済みであることが条件となっています。がん性疼痛への処方時は不要ですが、慢性疼痛の場合は調剤前に薬剤師が処方医師の受講状況を確認しなければなりません。受講状況は適正使用管理窓口またはWebサイトで確認できます。この点を確認せずに調剤することは規定違反となるため、現場での運用フローを今一度確認しておきましょう。


参考:フェントステープ適正使用ガイド(PMDA掲載)
フェントス®テープ 適正使用ガイド(PDF)


ワンデュロパッチ出荷停止が慢性疼痛患者の管理に与える現場影響

今回の出荷停止が特に影響を与えるのは、非がん性慢性疼痛の患者を担当する現場です。現時点で本邦において非がん性慢性疼痛への適応が承認されている医療用麻薬は、オキシコンチン®TR錠・デュロテップ®MTパッチ・ワンデュロ®パッチ・フェントス®テープの4製剤のみに限られています。選択肢が少ない分野です。


しかもデュロテップ®MTパッチも同時期に供給停止の状態にあったため、フェンタニル系経皮吸収型製剤の実質的な選択肢がフェントステープ1剤に絞られるという状況が生じていました。フェントステープへの需要が集中することで、同剤の供給にも影響が波及するリスクが現場では懸念されています。


痛みの管理が途切れると、患者のQOL(生活の質)が著しく低下するだけでなく、オピオイドの突然の中断による離脱症状も起こりえます。離脱症状の一般的な目安として、長期使用後に突然の中断が行われた場合、24〜48時間以内に不安・発汗・筋肉痛・下痢などが出現することが知られています。早めに代替薬を探し始めることが基本です。


日本麻酔科学会も、この状況を受けて「早期に他の治療オプションをご検討いただく」よう求める声明を複数回発出しています。フェントステープへの切り替えだけでなく、オキシコドン徐放製剤やトラマドール、場合によってはブプレノルフィン貼付剤なども視野に入れた包括的な見直しが、今後の疼痛管理の安定化につながります。


参考:日本緩和医療学会によるワンデュロパッチ関連情報まとめ
経皮吸収型 持続性疼痛治療剤に関するお知らせ(日本緩和医療学会)


ワンデュロパッチ出荷停止で薬剤師・医師が今すぐ確認すべき実務チェックリスト

出荷停止・自主回収という状況下で、医療従事者が現場で速やかに実行できる確認事項を整理します。「とりあえず代替薬に切り替えればいい」という理解では不十分です。それが一番注意が必要なところです。


医師が確認すべき事項:


- 現在ワンデュロパッチを処方中の患者リストを抽出する
- 各患者の適応(がん性疼痛 or 慢性疼痛)を分類する
- 慢性疼痛の患者に対してフェントステープへ切り替える場合、e-learning受講の修了状況を確認する
- 未受講の場合、適正使用管理窓口を通じて受講手続きを行う(受講が完了するまで慢性疼痛への処方は不可)
- 用量換算は添付文書または各施設の換算表をもとに個別に行う


薬剤師が確認すべき事項:


- 手持ち在庫のワンデュロパッチ製造番号を確認し、自主回収対象ロットの有無を確認する
- 調剤済みで既に交付した患者への連絡対応を検討する
- フェントステープが慢性疼痛の処方として持ち込まれた際、処方医師の受講確認を調剤前に実施する
- 代替薬処方箋の用量に誤りがないか、換算ミスが生じていないか確認する


患者への説明における注意点:


- 「薬が変わっても痛みの管理は継続できる」という安心感を伝えることが優先です
- 新しいパッチの貼り方・貼る場所・交換タイミングを再度丁寧に説明する(剤形が同じでも製品が変わると患者が混乱しやすい)
- 家族にも同様の情報を共有しておくと、在宅でのトラブルを防げます


参考:日本薬剤師学会による非がん性慢性疼痛の麻薬使用に関する留意事項






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