週に1回だけ打てばよいと思い込んでいると、患者の血糖コントロールが破綻するケースがあります。

トルリシティ(一般名:デュラグルチド)は、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬に分類される2型糖尿病治療薬です。GLP-1は食事摂取に伴って小腸L細胞から分泌されるインクレチンの一種であり、膵β細胞に作用して血糖依存的にインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制します。
デュラグルチドはネイティブなGLP-1に比べて半減期が大幅に延長されており、週1回の皮下注射で安定した血糖コントロールが得られるよう設計されています。具体的には、ヒトIgG4-Fcフラグメントに連結することで半減期は約90〜100時間に達しており、1日1〜2回投与が必要なリラグルチドやエキセナチドと比較して投与負担が小さい点が大きな特徴です。
つまり週1回投与が原則です。
承認用量は0.75mg/週(1回0.75mg)であり、日本における承認用量はこの1用量のみとなっています。米国や欧州では1.5mgへの増量が認められていますが、日本では現時点で0.75mgが唯一の承認用量であることを、医療従事者は必ず把握しておく必要があります。用量の誤認は投薬エラーに直結するリスクがあるため、特に注意が必要です。
HbA1cの低下幅については、国内第III相試験(AWARD-J試験等)において、プラセボ比でおよそ1.0〜1.4%程度の低下が確認されています。体重への影響も軽微な減少傾向があり、低血糖リスクが低い点も臨床上メリットとして評価されています。
低血糖リスクが低いという点は使いやすさにつながります。
GLP-1受容体作動薬のクラス全体として、SGLT2阻害薬と並び「心血管アウトカム試験でのエビデンスが豊富なクラス」として位置づけられており、トルリシティもREWIND試験において心血管イベント抑制効果が示されています。心血管リスクの高い2型糖尿病患者への選択肢として、ガイドラインでも推奨度が高まっています。
アテオス(Ateos)とは、トルリシティに採用されている専用の使い捨て自動注射デバイスの名称です。このデバイスはペン型ではなく、オートインジェクター方式を採用しており、針が外から見えない構造になっています。患者の注射に対する心理的抵抗を減らすよう設計されていますが、医療従事者が操作手順を正確に理解した上で患者指導を行うことが不可欠です。
操作の基本ステップは以下の通りです。
これが基本的な使用の流れです。
なお、アテオスデバイスは使用直前まで冷蔵保管が原則ですが、最大14日間であれば室温(30℃以下、遮光)での保管も可能とされています。旅行や外出時の保管方法について、患者から質問を受けることも多いため、この点は積極的に情報提供しましょう。
注射部位は腹部・大腿部・上腕部が推奨されており、毎回同じ部位への連続投与は硬結(脂肪萎縮や局所反応)の原因となるため、部位のローテーションが必要です。特に自己注射を行う患者では、ローテーションの記録票を活用するなどの工夫が有効です。
部位管理は見落とされがちです。週1回という投与頻度から「毎日打つインスリンほど気にしなくてよい」と思われがちですが、同一部位への繰り返し投与は薬物吸収のムラにもつながるため、丁寧な指導が求められます。
GLP-1受容体作動薬クラス全体に共通する最も頻度の高い副作用は消化器症状であり、トルリシティも例外ではありません。悪心・嘔吐・下痢・食欲低下などが投与開始初期に現れやすく、国内臨床試験では悪心の発現頻度がおよそ10〜15%程度と報告されています。多くは投与開始後数週間以内に自然軽快しますが、患者が副作用と認識せず内服を中断してしまうリスクがあります。
投与開始前に「最初の1〜2か月は吐き気が出ることがある」と事前に説明しておくことで、患者のアドヒアランス低下を防ぐことができます。これは見落としやすい指導の機会です。
重大な副作用として添付文書で注意喚起されているのは以下の事項です。
禁忌は把握が必須です。とりわけMEN2や甲状腺髄様癌の家族歴については、問診票や電子カルテでの確認が漏れやすいため、処方前チェックリストへの組み込みを推奨します。
慎重投与が求められるケースとして、重度の消化器疾患(胃不全麻痺など)を有する患者が挙げられます。GLP-1受容体作動薬は胃排泄を遅延させる作用があるため、既存の胃不全麻痺がある患者では症状悪化につながる恐れがあります。また、重篤な腎機能障害・肝機能障害を有する患者では、慎重に経過観察することが推奨されています。
腎機能への配慮も原則です。
他の糖尿病治療薬からトルリシティへの切り替え、あるいはトルリシティから他剤への切り替えは臨床現場で頻繁に発生するシナリオです。特に注意が必要なのは、インスリンとの切り替えおよびGLP-1受容体作動薬間の切り替えです。
インスリンからトルリシティへ切り替える場合、GLP-1受容体作動薬は血糖依存的な作用を持つためインスリンとは作用機序が異なります。特にインスリンを急激に中断すると高血糖が起こるリスクがあります。添付文書および各学会ガイドラインでは、インスリンの漸減または段階的な切り替えが推奨されており、切り替え直後の血糖モニタリングを強化することが重要です。
切り替え直後のモニタリングは必須です。
別のGLP-1受容体作動薬(例:リラグルチド、セマグルチド等)からトルリシティへ切り替える場合、同一クラス内の切り替えであっても薬物動態や用量が異なるため、重複投与にならないよう切り替えのタイミングを明確に決定する必要があります。週1回製剤同士の切り替えは翌週の投与日から新薬を開始するのが一般的ですが、患者に投与日を書面で明確に伝えることが混乱防止につながります。
SU薬やインスリンとの併用時は低血糖リスクが高まります。SU薬の用量を事前に減量するか、低血糖発症時の対応について患者に十分な指導を行っておくことが求められます。特に高齢患者や腎機能低下患者では低血糖が遷延するリスクがあるため、注意深い経過観察が必要です。
また、トルリシティは他の注射薬と混合してはならない点も注意が必要です。基礎インスリンとの「混合注射」を患者が誤って実施することがないよう、使用方法を書面で明記することが推奨されます。
製品の保管条件として、トルリシティ皮下注0.75mgアテオスは冷蔵保管(2〜8℃)が基本です。凍結させると薬液が変性するため、冷蔵庫の冷気が直接あたる場所(ドア付近の霜取り装置近く、冷気吹き出し口の真正面など)への保管は避けるよう患者指導が必要です。
凍結した薬液は使用禁止です。万が一凍結した場合は、解凍後も使用せず廃棄する必要があることを患者に周知しましょう。外観上は透明に戻っても薬効への影響が否定できないためです。
廃棄については、使用済みのアテオスデバイスは針が収納される設計になっていますが、針刺し事故防止の観点から医療機関では専用の廃棄容器(シャープスコンテナ等)への廃棄を徹底する必要があります。在宅自己注射の患者には、使用済みデバイスをキャップした状態で容器に入れ、処方薬局または医療機関へ持参して廃棄するよう指導することが一般的です。自治体によってルールが異なる場合があるため、地域の廃棄ルールを確認することも重要です。
地域ルールの確認が条件です。
患者指導における盲点として見落とされやすいのが「投与日の管理」です。週1回投与は利便性が高い反面、「先週打ったかどうか覚えていない」という患者が一定数存在します。スマートフォンのカレンダーアプリへの登録や、服薬管理アプリの活用を勧めることで、二重投与・投与忘れの防止に役立てることができます。投与忘れに気づいた場合は、次回予定日まで3日以上ある場合に限り、気づいた時点でできるだけ早く投与し、次回からは元の曜日に戻すよう指導します。
なお投与忘れへの対応は添付文書にも記載されているため、患者用の説明資料と合わせて確認を促すことが実践的です。日本イーライリリー株式会社の患者向け情報ページや医療従事者向けの製品情報サイトでは、指導用資材のダウンロードが可能なため、積極的に活用することを推奨します。
トルリシティ皮下注0.75mgアテオス 添付文書(最新版)– PMDA(医薬品医療機器総合機構)
上記のPMDA添付文書では、禁忌・慎重投与・副作用の詳細・薬物動態・臨床成績が網羅されており、本記事の各項目の根拠として参照できます。
糖尿病診療ガイドライン2024 – 日本糖尿病学会(GLP-1受容体作動薬の使用指針についての記載を確認できます)
日本糖尿病学会のガイドラインでは、GLP-1受容体作動薬全般の位置づけ・併用禁忌・心血管エビデンスの評価が記載されており、トルリシティの適正使用を考える上での参考として有用です。

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