朝に吸入しているのに、夜間の発作コントロールが不十分な患者さんが一定数いる理由、あなたは説明できますか?

テリルジー100エリプタは、フルチカゾンフランカルボン酸エステル(ICS)・ビランテロールトリフェニル酢酸塩(LABA)・ウメクリジニウム臭化物(LAMA)という、作用点の異なる3成分を1つのエリプタデバイスに収めた吸入薬です。グラクソ・スミスクラインが製造販売し、2019年3月に国内初のLAMA/LABA/ICS 3剤配合吸入薬として承認されました。
3剤が相乗的に働く点が最大の特徴です。LAMAであるウメクリジニウムはアセチルコリンM3受容体を遮断して気管支平滑筋の収縮を抑制し、気道を拡張します。LABAであるビランテロールはアドレナリンβ2受容体を刺激して気管支平滑筋を直接弛緩・拡張させます。ICSであるフルチカゾンは気道の慢性炎症を抑制し、気道過敏性を根本から低下させます。
つまり「収縮シグナルをブロック・筋肉を直接弛緩・炎症そのものを抑制」という、3方向からのアプローチが同時に実現するということですね。いずれの成分も24時間効果が持続するよう設計されており、1日1回の吸入で安定した気道管理が期待できます。
注意すべき点として、テリルジー100エリプタとテリルジー200エリプタでは、ICS成分(フルチカゾン)の用量がそれぞれ100µg・200µgと異なりますが、LAMAおよびLABAの用量は両規格で共通です。COPDへの適応は100エリプタのみで、200エリプタは気管支喘息のみに使用可能なため、処方・指導時の確認が必要です。これは基本です。
参考:テリルジー100エリプタの添付文書・インタビューフォームはPMDAで公開されています。
テリルジー100エリプタのCOPD承認の根拠となったのは、国際共同第Ⅲ相臨床試験「IMPACT試験(CTT116855試験)」です。中等度〜重度の増悪歴を持つCOPD患者さんを対象に、テリルジー・アノーロエリプタ(LAMA+LABA)・レルベアエリプタ(ICS+LABA)を52週間にわたって比較しました。
主要評価項目である「中等度または重度の増悪の年間発生率」では、テリルジーが0.91件、レルベアが1.07件、アノーロが1.21件という結果が示されました。テリルジーはいずれの2剤と比較しても統計学的に有意な差を達成しています(対アノーロ:p<0.001、対レルベア:p<0.001)。数字で言えば、アノーロと比較して増悪を約25%抑制したという計算になります。
エビデンスが明確です。ただし、ICSを含むテリルジー群およびレルベア群では、アノーロ群と比較して肺炎の発生率が有意に高くなることも報告されています。COPD患者への処方時は肺炎リスクの評価を並行して行う必要があります。
また、IMPACT試験の対象が「中等度〜重度の増悪歴を有するCOPD患者」に限定されていることも見落とせない点です。増悪歴が少ない軽症COPDに対してテリルジーのような3剤療法を最初から選択することは、現行のガイドライン(COPDガイドライン第6版)でも推奨されていません。3剤配合だからといって、軽症から使えばよいというわけではない点を患者指導の際に明確にしておく必要があります。
参考:IMPACT試験の詳細はN Engl J Med 2018年に掲載されています。
IMPACT試験原著論文(N Engl J Med 2018; 378:1671-1680)
気管支喘息への適応は2020年11月に追加承認されました。承認根拠となったのは国際共同第Ⅲ相試験「CAPTAIN試験」で、ICS+LABA(レルベア100またはレルベア200)による治療を行っても喘息がコントロール不良な成人患者を対象としています。
主要評価項目はトラフFEV1(投与24時間後の肺機能)のベースラインからの変化量で、テリルジー100はレルベア100との比較で有意なFEV1改善を示しました。ICS+LABA療法を継続しても喘息コントロールが不十分な患者にとって、LAMAを追加した3剤療法が次のステップになるということです。
意外ですね。従来、喘息へのLAMA追加はCOPDほど標準的ではありませんでしたが、CAPTAIN試験の結果はその認識を改めるきっかけになりつつあります。
喘息の治療ステップとして重要なのは、テリルジーはあくまで「ICS+LABA2剤療法でも不十分な患者」に対する選択肢であり、初期から3剤に進むことが推奨されているわけではない点です。喘息予防・管理ガイドライン2024においても、この位置付けは変わりません。気管支喘息の場合は100または200エリプタを症状に応じて使い分けることができ、COPDと異なる点です。
気管支喘息でテリルジーを導入する際の実際の目安として、「ACQ-6スコア1.5点以上かつFEV1予測値85%未満」という患者背景がCAPTAIN試験の組み入れ条件として使われており、臨床での患者選択にも参考になります。これが条件です。
参考:CAPTAIN試験の詳細はLancet Respir Medに掲載されています。
CAPTAIN試験原著論文(Lancet Respir Med. 2021;9(1):69-84)
薬の効果は正しい吸入手技があってはじめて担保されます。エリプタデバイスはドライパウダー吸入器(DPI)の一種であり、粉末薬剤を患者自身の吸気力で肺内に送達する仕組みです。適切な吸気流量が確保されないと薬剤が口腔・咽頭に留まり、肺への到達量が低下するため効果が減弱します。
手技の要点は「強く・深く・一気に」の3ステップです。まず患者にカバーをカチッと音がするまで完全に開けさせ(この段階で1回分が自動セット)、いったん吸入器から口を離してしっかり息を吐き切ります。次にマウスピースを唇でしっかりくわえ、素早く強く最後まで吸い込みます。その後マウスピースを離して3〜5秒の息止めを行い、ゆっくり呼気します。これが基本です。
医療従事者として特に注意すべき点が2つあります。1つ目は「吸入後のうがいの徹底」です。ICS成分のフルチカゾンが口腔・咽頭粘膜に付着すると、口腔カンジダ症(発現頻度2.4%)や嗄声(発現頻度0.6%)の原因となります。吸入後は水で十分にうがいをするよう患者に指導することが副作用予防の第一歩です。うがいが困難な患者には口腔内すすぎを促します。
2つ目は「COPD患者の吸気流量の問題」です。エリプタはDPI型デバイスのため、重度のCOPDで吸気流量が著しく低下している患者では、薬剤を肺末梢まで送り届けられない可能性があります。そのような患者では、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)を用いたビレーズトリ・エアロスフィアへの変更も選択肢の一つとなります。これは使えそうです。
残量カウンターについてもひと言添えておくと、残数が9以下になるとカウンター表示が赤色に変わります。患者が残量を確認して次の処方タイミングを意識できるよう、初回処方時に赤色表示の意味を説明しておくことで、突然の薬切れを防ぐことができます。
参考:エリプタデバイスの正しい使い方はGSK公式サイトで確認できます。
テリルジー100エリプタ 患者向けガイド(GSK、2024年10月版)
医療現場ではあまり意識されていませんが、1日1回吸入の時間帯を朝から午後または夜に変えるだけで、喘息の夜間症状コントロールが改善する可能性が研究から示されています。
喘息には「日内リズム(サーカディアンリズム)」があります。体内時計の影響で、夜間から明け方にかけて気道が最も狭くなり、炎症も強まる傾向があるため、喘息患者の多くが夜間・早朝に症状を訴えます。2025年にThorax誌に掲載された研究(Wang. Thorax. 2025)では、吸入ステロイド薬を「朝1回・午後1回・朝晩2回」の3パターンで比較した結果、午後(15〜16時)の1回投与が夜間の呼吸機能を最も改善し、夜間の好酸球性炎症の抑制効果も最大であったと報告されています。
この視点からすると、1日1回のテリルジー®吸入を朝から午後または就寝前に変更することで、夜間の発作予防効果がさらに高まる可能性があるということですね。ただし、これはあくまで研究段階の知見であり、テリルジーの添付文書上は「毎日一定の時間帯に吸入すること」とされており、特定の時間帯が指定されているわけではありません。
医療従事者としての現実的な対応は、「朝と夜、どちらが忘れにくいか」を患者と一緒に話し合い、アドヒアランスを優先させることです。夜間症状が特に強い患者で、かつ朝吸入と就寝前吸入で生活上の障壁がない場合には、就寝前に切り替えることを検討する価値があります。それで大丈夫でしょうか。現時点では、患者個々の症状パターンと生活リズムを確認した上で担当医と相談する形が現実的な着地点です。
| 吸入時間帯 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 朝(起床時) | 忘れにくい・習慣化しやすい | 夜間〜早朝の気道狭窄ピーク時には薬効が最低水準になる可能性 |
| 午後〜夕方 | 夜間症状の抑制効果が高い可能性(研究示唆) | 昼間の生活で忘れやすい場合がある |
| 就寝前 | 夜間発作への備えとして理にかなう・歯磨き後と合わせやすい | うがいを省略しがちになるため口腔ケアの指導が必要 |
3成分配合であるため、副作用もICS・LABA・LAMAのそれぞれに由来するものが存在します。主な副作用と発現頻度を把握した上で、患者説明と経過観察を行うことが大切です。
ICS(フルチカゾン)に由来する副作用として最も頻度が高いのは口腔カンジダ症(2.4%)と嗄声(0.6%)で、いずれも吸入後のうがいで大部分は予防可能です。うがいは必須です。LABA(ビランテロール)に由来するものとしては、頻脈・動悸・手の震え(振戦)・有痛性筋痙攣(こむら返り)などがあります。LAMA(ウメクリジニウム)に由来するものとしては、口渇・便秘・排尿障害などの抗コリン性副作用があります。
特にCOPDにおいてはテリルジーを含むICS含有吸入薬で肺炎の発生率がICS非含有薬と比較して有意に高いことが示されています(IMPACT試験)。ICSと肺炎リスクの関係は痛いところですね。COPD患者への処方時は肺炎の初期症状(発熱・喀痰増加・呼吸困難の増悪)について患者教育を行い、異変があれば早期受診を促す仕組みが必要です。
禁忌については、閉塞隅角緑内障の患者と前立腺肥大等による排尿障害がある患者はウメクリジニウム(LAMA)の抗コリン作用により症状が悪化するため、投与禁忌です。また有効な治療法がない感染症・深在性真菌症の患者も禁忌となります。
薬物相互作用として注意が必要なのは、CYP3A4阻害薬(一部の抗真菌薬や抗生物質など)との併用で各成分の血中濃度が上昇するリスクです。また、β遮断薬はビランテロールのβ2刺激作用を拮抗し、気管支収縮を引き起こす可能性があります。他院からの処方薬・市販薬・サプリメントも含め、使用中の全薬剤を確認する習慣が求められます。
参考:テリルジーの副作用・禁忌情報は公式添付文書で確認できます。

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