テノーミン錠添付文書を正しく読む医療従事者のための完全ガイド

テノーミン錠(アテノロール)の添付文書を正確に理解していますか?禁忌・慎重投与・相互作用・腎機能別用量など、医療従事者が実務で直面するポイントをわかりやすく解説します。見落としやすい注意事項とは?

テノーミン錠の添付文書を正しく理解し適正使用につなげる

β遮断薬だからと安心して単独投与すると、逆に血圧が急上昇することがあります。


この記事の3つのポイント
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禁忌・慎重投与を正確に把握する

テノーミン錠には9項目の禁忌があり、褐色細胞腫への単独投与は「急激な血圧上昇」を招く危険があります。禁忌リストの暗記だけでなく、その機序を理解することが重要です。

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腎機能に応じた用量調節が必須

アテノロールは腎排泄型薬物であり、CCr 35mL/分以下では投与間隔延長や減量が必要です。肝代謝に頼らないため、肝疾患より腎疾患患者での注意が先決です。

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急な休薬・薬剤相互作用に注意する

狭心症患者では急な投与中止が心筋梗塞を誘発することがあります。また、カルシウム拮抗薬(特にベラパミル・ジルチアゼム)との併用では心停止に至る危険性があります。


テノーミン錠添付文書の基本情報:効能・用法・剤形の要点



テノーミン錠(一般名:アテノロール)は、英国ICI社(現アストラゼネカ社)が1968年に合成した心臓選択性β1遮断剤です。世界80カ国以上で上市され、WHOのエッセンシャルドラッグにも指定されている、長い実績を持つ薬剤です。


現在、国内では太陽ファルマ株式会社が製造販売を行っており、添付文書は2025年11月に第3版へ改訂されています。医療従事者として、最新版の添付文書を確認しておくことが基本です。


効能・効果(添付文書 第4項)


添付文書に記載されている適応は以下の3つです。


適応疾患 臨床試験での有効率(国内)
本態性高血圧症(軽症〜中等症) 59.9%(598例中358例)
狭心症 61.7%(227例中140例)
頻脈性不整脈(洞性頻脈・期外収縮) 洞性頻脈:84.9%、期外収縮:58.4%


洞性頻脈に対する有効率84.9%は、他の適応と比較しても高い数字です。頻脈コントロールを主目的とした使用場面での期待値として把握しておくとよいでしょう。


用法・用量(添付文書 第6項)


テノーミン錠50の場合、通常成人は1錠(アテノロール50mg)を1日1回経口投与します。最高用量は1日1回2錠(100mg)です。テノーミン錠25の場合は2錠(50mg)を1日1回投与が標準で、最高量は4錠(100mg)までとなっています。


1日1回投与で24時間にわたり血圧・心拍数をコントロールできる点が特徴です。これは、T/P(trough/peak)比が良好であることを示しています。


実際の降圧効果として、国内臨床試験では収縮期血圧が15〜27mmHg低下、拡張期血圧が10〜13mmHg低下したことが報告されています。


つまり、1日1回の投与設計が基本です。


分割投与への変更を検討したい場合は、血中動態の観点から慎重に判断する必要があります。最新の添付文書および製品インタビューフォームも参照してください。


テノーミン錠50/テノーミン錠25 添付文書(最新版)|JAPIC(日本医薬情報センター)


テノーミン錠添付文書の禁忌:見落とせない9項目の詳細

テノーミン錠の添付文書(第2項)には、9項目の禁忌が列挙されています。これらを機序とともに理解することが、処方チェックや服薬指導の精度を高めます。


禁忌一覧(添付文書 2.1〜2.9)


番号 禁忌対象 禁忌の理由
2.1 本剤成分への過敏症既往 アレルギー反応の再燃リスク
2.2 糖尿病性ケトアシドーシス・代謝性アシドーシス アシドーシスによる心筋収縮力抑制の増強
2.3 高度徐脈・房室ブロック(Ⅱ・Ⅲ度)・洞房ブロック・洞不全症候群 伝導障害の悪化
2.4 心原性ショック 心機能抑制による症状悪化
2.5 肺高血圧による右心不全 心機能抑制による症状悪化
2.6 うっ血性心不全 心機能抑制による症状悪化
2.7 低血圧症 心機能抑制による血圧のさらなる低下
2.8 重度の末梢循環障害(壊疽等) 末梢循環の悪化
2.9 未治療の褐色細胞腫またはパラガングリオーマ 単独投与で急激な血圧上昇


ここで特に注意が必要なのが2.9です。β遮断薬は「降圧薬」として知られていますが、褐色細胞腫の患者に単独投与した場合、逆に「急激な血圧上昇」を招くことがあります。


これは驚きですね。


機序としては、通常は拮抗関係にあるα刺激とβ刺激のうち、β遮断によりα刺激作用が相対的に優位となり、強力な血管収縮が引き起こされるためです。


この場合、投与前にα遮断剤で初期治療を行い、その後にテノーミン錠を投与しながら常にα遮断剤を併用することが必須です(添付文書 第7項)。


うっ血性心不全(2.6)は禁忌です。一方、「うっ血性心不全のおそれのある患者」(9.1.2)は慎重投与です。この「確定診断」と「おそれ」の違いに注意する必要があります。心機能に不安のある患者では、禁忌か慎重投与かを明確に判断することが求められます。


テノーミン錠50/テノーミン錠25 医療用医薬品情報(医療関係者向け)|PMDA(医薬品医療機器総合機構)


テノーミン錠添付文書の腎機能別用量:アテノロールが腎排泄型である理由

β1選択性β遮断薬の中でも、アテノロールは際立った薬物動態特性を持っています。それが「腎排泄型」であるという点です。


添付文書(第16項)に明記されているデータを整理すると以下の通りです。


薬物動態パラメータ データ
消化管からの吸収率(バイオアベイラビリティ) 約50%
肝臓での初回通過効果 ほぼ受けない
肝臓での代謝 ほとんど代謝を受けない
尿中回収率 約50%(うち約90%が未変化体)
糞中回収率 約50%(うち約90%が未変化体)


これらのデータから尿中未変化体排泄率を計算すると「(50%÷50%)×90%=90%」となり、いわゆる腎排泄型薬物に分類されます。


腎排泄型が条件です。


つまり、プロプラノロール(インデラル)やカルベジロール(アーチスト)のような肝代謝型の薬剤と違い、肝機能障害よりも腎機能障害の方が薬物蓄積リスクに直結します。


添付文書(9.2.1)では「クレアチニン・クリアランス値が35mL/分、糸球体ろ過値が35mL/分以下の場合は投与間隔をのばすなど、慎重に投与すること」と明記されています。


実際の腎機能別の目安は、日本腎臓病薬物療法学会(JSNP)の資料を参照するとより具体的です。


CCr(mL/分) 推奨用量の目安
60以上 常用量(1日1回50mg、最大100mg)
35〜60未満 1日1回25〜50mg
15〜35未満 1日1回25mg
15未満 1日1回12.5mg
HD(血液透析)・PD(腹膜透析) 1回25mgを週3回HD後(PDでも週3回25mg)


透析患者では透析後に投与する点も、実務上の重要ポイントです。


また、分布特性として、アテノロールはプロプラノロールやメトプロロールと比較して脳内移行が少ないことが脳手術が必要だった患者の研究で示されています。中枢神経系副作用(悪夢・不眠・抑うつ等)が比較的少ない背景の一つです。これは使えそうです。


腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧|日本腎臓病薬物療法学会(JSNP)


テノーミン錠添付文書の相互作用と重要な基本的注意:見逃しやすいリスク

テノーミン錠の添付文書(第8項・第10項)には、実臨床で見落とされやすい重要な注意事項が複数記載されています。


急な投与中止が心筋梗塞を引き起こすリスク(8.2)


添付文書には「類似化合物(プロプラノロール塩酸塩)使用中の狭心症患者で急に投与を中止したとき、症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されている」と記載されています。


つまり、急な中止は禁止です。


休薬が必要な場合は「徐々に減量し、観察を十分に行うこと」が求められます。これは狭心症以外の適応(不整脈等)でも、特に高齢者において同様の注意が必要です(8.2参照)。


手術前48時間は投与しないことが望ましい(8.3)


β遮断薬を服用している患者が全身麻酔を受ける際、麻酔剤との相互作用で過度の心機能抑制が生じるリスクがあります。手術前に薬剤の継続・中止を確認する業務では、この48時間ルールを意識してください。


厳しいところですね。


カルシウム拮抗薬との併用(10.2)


ベラパミル・ジルチアゼムとの併用は特に危険です。いずれも房室結節伝導時間を延長する作用を持つため、低血圧・徐脈・房室ブロック等の重篤な伝導障害が生じ、心停止・洞停止に至る可能性があります。


また、テノーミン錠からカルシウム拮抗薬の静脈投与へ変更する場合には、48時間以上あけることが必要です(10.2参照)。これを知らないまま変更すると、重篤なリスクが発生します。


アドレナリンによる治療への抵抗性(15.1)


添付文書(15.1)には重要な記載があります。「アナフィラキシーの既往歴のある患者で、本剤または他のβ遮断剤投与中に発生したアナフィラキシー反応の増悪を示し、またアドレナリンによる治療に抵抗性を示したとの報告がある」というものです。


通常、アナフィラキシーショック時にはアドレナリン筋注(エピペン等)が第一選択です。しかしβ遮断薬服用患者では、このアドレナリン投与が効果不十分となることがあります。救急・アレルギー対応の場面で患者のβ遮断薬服薬歴を確認しておくことは、医療従事者として非常に重要です。


その一方で、血糖降下剤との併用についても注意が必要です。β1受容体遮断により、低血糖時の頻脈などの前駆症状がマスクされやすくなります(9.1.3・10.2参照)。血糖コントロール中の患者への指導でも添付文書の内容を踏まえた説明が求められます。


医療用医薬品:テノーミン(アテノロール)添付文書情報一覧|KEGG MEDICUS


テノーミン錠添付文書の特定背景患者への注意:慎重投与・妊婦・授乳婦のポイント

添付文書第9項には、特定の背景を持つ患者への注意事項が詳しく記載されています。実際の処方チェックや服薬指導で活用できる内容を整理します。


気管支喘息・気管支痙攣のおそれがある患者(9.1.1)


テノーミン錠はβ1選択性が高い薬剤ですが、添付文書の解説では「β2受容体に対する作用は極めて弱い」と記載されており、「慎重投与」の位置付けです。気管支喘息は禁忌ではありませんが、喘息症状が誘発または悪化するおそれがあるため、観察を十分に行いながら慎重に投与することが求められます。


「禁忌でないなら問題ない」と油断は禁物です。


インタビューフォームでは「非選択性β遮断剤に比べ気管支への影響が少ない」と記されていますが、影響がゼロではありません。β1:β2選択比は35:1(ビソプロロールは75:1)であることを念頭に、患者の呼吸機能を定期的に確認する姿勢が大切です。


糖尿病・低血糖症患者(9.1.3)


低血糖の前駆症状である頻脈(交感神経反応)をマスクしやすい点が問題です。インスリンや経口血糖降下薬を使用中の患者では、「低血糖に気づかない」まま重症化するリスクがあります。血糖値のモニタリング強化と、患者への低血糖時の自覚症状(冷汗・倦怠感など、頻脈以外のサイン)の指導が不可欠です。


甲状腺中毒症患者(9.1.4)


甲状腺機能亢進症の患者への使用時は2点の注意があります。1つ目は「急な中止で症状が悪化する」こと、2つ目は「中毒症状をマスクするおそれがある」ことです。これも前述の低血糖マスクと同様のメカニズムで、交感神経亢進症状(頻脈・動悸等)がβ遮断により隠れてしまうため、病状評価が困難になることがあります。


妊婦・授乳婦への投与(9.5・9.6)


妊婦への投与は「治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ」とされています。アテノロールは胎盤を通過し、臍帯血にあらわれます。高血圧症の妊婦への投与で胎児の発育遅延が認められたとの報告もあります(16.3参照)。


授乳婦への投与に関しては「避けること」が原則です。やむを得ず投与する場合は授乳中止が求められます。理由は「母乳中へ高濃度に移行する」ためです。


これは知らないと損する情報です。


他の多くのβ遮断薬では「母乳への移行は少量」という記載が多い中、アテノロールは親水性が高いため、脂溶性の薬剤と異なり母乳中に高濃度で移行するという特性があります。同じβ遮断薬カテゴリーでも授乳への影響が大きく異なる点は、薬剤選択の際に意識すべき重要なポイントです。


授乳中の投与により、新生児に低血糖・徐脈があらわれたとの報告もあり(9.6)、リスクは新生児に及びます。


高齢者への投与(9.8)


高齢者では過度の降圧が脳梗塞等のリスクになるため、少量から開始し患者の状態を観察しながら慎重に投与することが求められます。過度の血圧低下や心機能抑制(徐脈・心停止・心不全等)に注意が必要です。


腎機能低下が基本です。高齢者は一般的に腎機能が低下していることが多いため、前述の腎機能別用量の調整と合わせて管理することが適正使用の前提となります。


テノーミン錠25 添付文書詳細|QLifePro 医薬情報


テノーミン錠添付文書の副作用:重大な副作用と発現頻度の正確な把握

添付文書(第11項)に記載されている副作用を、重大副作用とその他の副作用に分けて整理します。副作用モニタリングの基準として活用してください。


重大な副作用(11.1)


🔴 心・循環器系(11.1.1):徐脈、心不全、心胸比増大、房室ブロック、洞房ブロック、失神を伴う起立性低血圧(いずれも頻度不明)


🔴 呼吸器系(11.1.2):呼吸困難・喘鳴(0.1〜5%未満)、気管支痙攣(0.1%未満)


🔴 血液系(11.1.3):血小板減少症・紫斑病(いずれも頻度不明)


重大副作用は頻度不明が多いです。「頻度不明」とは市販後調査では頻度が確認できなかったことを意味しますが、リスクがないわけではありません。患者の訴えや観察に基づくモニタリングが重要です。


その他の副作用(11.2)の主な内容


使用成績調査14,883例中、副作用報告は657例(4.4%)でした。頻度が高い主な副作用を以下にまとめます。


分類 0.1〜5%未満 0.1%未満 頻度不明
循環器 低血圧 胸部圧迫感・動悸・四肢冷感・レイノー症状・間欠性跛行
精神神経系 頭痛・めまい 眩暈・不眠・眠気・錯乱・悪夢・気分の変化・精神変調 うつ状態(神経病性うつ病)・耳鳴・耳痛
消化器 悪心・嘔気 口渇・嘔吐・食欲不振・下痢・軟便・腹部不快感・便秘・腹痛
肝臓 AST・ALT上昇、胆汁うっ滞性肝炎
その他 倦怠 CK(CPK)上昇 脱力感・しびれ感・浮腫・末梢性浮腫・高脂血症・脱毛・高血糖・高尿酸血症・乾癬様皮疹・勃起障害


「うつ状態(神経病性うつ病)」が頻度不明として記載されている点は注目です。脂溶性が低く脳内移行が少ないアテノロールですが、精神神経系への影響がゼロではないことを示しています。長期使用患者で気分変化や意欲低下が見られる場合は、薬剤性うつの可能性も念頭に置いてください。


過量投与時の対処(第13項)


過度の徐脈が生じた場合。
1. まずアトロピン硫酸塩水和物(1〜2mgを静注)
2. 次にドブタミン(毎分2.5〜10μg/kgを静注)
3. グルカゴン(10mgを静注)が有効であった報告あり


アトロピンが第一です。この対応手順は、救急・ICU対応を担う医療従事者が特に確認しておくべき内容です。


長期投与の場合は、心機能検査(脈拍・血圧・心電図・X線等)を定期的に実施することが添付文書(8.1)に明記されています。また、必要に応じて肝機能・腎機能・血液像にも注意することとされています。


テノーミン錠50・他 効能・用量・副作用詳細|今日の臨床サポート(ケアネット)




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