スキリージ皮下注添付文書の用法と注意点を徹底解説

スキリージ皮下注の添付文書に基づく用法・用量や副作用、投与前の結核スクリーニングなど、医療従事者が押さえておくべき重要ポイントをわかりやすく解説します。添付文書の意外な落とし穴とは?

スキリージ皮下注の添付文書を医療従事者が正しく理解する

掌蹠膿疱症では、乾癬と同じ16週ではなく28週待たないと効果判定ができません。


📋 この記事の3つのポイント
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用法・用量は疾患ごとに異なる

乾癬系は12週間隔・150mg、クローン病・潰瘍性大腸炎の維持療法は8週間隔と製剤も用量も疾患で大きく異なります。

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投与前の結核スクリーニングは必須

添付文書では、胸部X線に加えてIGRA(インターフェロンγ遊離試験)またはツベルクリン反応検査が投与前に義務付けられています。

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自己注射は現時点で不可(乾癬適応)

ペンタイプの製剤があっても、スキリージは乾癬・掌蹠膿疱症のいずれの適応でも現時点では自己注射が認められておらず、必ず医療従事者が投与します。


スキリージ皮下注の基本情報と適応疾患の全体像



スキリージ(一般名:リサンキズマブ〔遺伝子組換え〕)は、アッヴィ合同会社が製造販売する抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤です。IL-23のp19サブユニットを選択的に阻害することで、Th17細胞を介した炎症シグナルを遮断し、複数の難治性炎症性疾患に幅広い有効性を示します。


皮下注製剤のラインアップは現在4種類です。


製品名 含量 主な適応
スキリージ皮下注75mgシリンジ 0.83mL 75mg 乾癬(低用量選択時)
スキリージ皮下注150mgシリンジ 1mL 150mg 乾癬・掌蹠膿疱症
スキリージ皮下注150mgペン 1mL 150mg 乾癬・掌蹠膿疱症
スキリージ皮下注180mgオートドーザー 180mg 潰瘍性大腸炎の維持療法
スキリージ皮下注360mgオートドーザー 360mg クローン病・潰瘍性大腸炎の維持療法


2019年3月の乾癬適応承認から始まり、2022年9月にクローン病、2023年5月に掌蹠膿疱症、2024年6月に潰瘍性大腸炎と、適応疾患が段階的に拡大されてきた剤です。それぞれの承認時期ごとに電子添文が改訂されているため、手元の添付文書バージョンが最新かどうかを必ず確認してください。


添付文書の最終改訂は2024年2月(第5版)です。日本皮膚科学会の「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)」とあわせて参照することを推奨します。


参考:PMDAにおけるスキリージ皮下注の電子添文(医療関係者向け)
スキリージ皮下注150mgシリンジ 電子添文情報 – PMDA


スキリージ皮下注の用法・用量:疾患別に添付文書を正確に読む

添付文書の「6. 用法及び用量」は、疾患ごとに構成が異なっています。疾患をまたいだ誤読が起こりやすい箇所なので、各適応を個別に確認することが原則です。


① 尋常性乾癬・乾癬性関節炎・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症


通常、成人にはリサンキズマブとして1回150mgを初回・4週後・以降12週間隔で皮下投与します。患者の状態に応じて1回75mgを選択することができます。維持投与の12週間隔は、生物学的製剤の中でも最も投与頻度が少ない部類に入ります。3ヵ月に1回ペースと考えると患者の通院負担が少なく、アドヒアランス向上が期待できる点が大きな特徴です。


② 掌蹠膿疱症


用量・投与間隔は乾癬と同じく1回150mg・12週間隔ですが、添付文書上の注意事項が異なります。乾癬では「16週以内に治療反応が得られない場合は継続を慎重に再考」と記載されているのに対し、掌蹠膿疱症では「28週以内に治療反応が得られない場合」と評価期間が12週長くなっています。この違いを見落とすと、早期に治療を中止してしまうリスクがあります。


③ クローン病(維持療法)


スキリージ点滴静注600mgによる導入療法(0・4・8週)終了の4週後から、360mgを8週間隔で皮下投与します。皮下注360mgオートドーザーが使用されます。なお、「効果減弱時は点滴静注1200mgを単回投与し、その8週後から皮下投与を再開する」という再導入手順も添付文書に明示されています。


④ 潰瘍性大腸炎(維持療法)


スキリージ点滴静注1200mgによる導入療法終了4週後から、180mgを8週間隔で皮下投与します。患者の状態に応じて360mgへの増量も可能です。クローン病の維持療法(固定360mg)と用量が異なる点に注意が必要です。


適応 皮下注量 投与間隔(維持) 効果判定の目安
乾癬(尋常性等) 150mg(最小75mg) 12週 16週以内
掌蹠膿疱症 150mg 12週 28週以内
クローン病(維持) 360mg 8週 3回目投与まで
潰瘍性大腸炎(維持) 180mg or 360mg 8週 3回目投与まで


疾患によって評価期間も製剤も用量も異なります。これが基本です。


参考:スキリージ適正使用ガイド(乾癬・乾癬性関節炎向け、アッヴィ合同会社)
スキリージ適正使用ガイド(乾癬版)– AbbVie A-CONNECT


スキリージ皮下注の添付文書が求める投与前スクリーニング

添付文書の「警告」および「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」には、投与前に必ず実施すべき検査と確認事項が詳細に記載されています。これらを怠った場合、重篤な感染症の見逃しや、結核の活動化という深刻なリスクに直結します。


結核スクリーニングの手順(添付文書記載)


投与に先立って、以下の3点をすべて実施することが求められています。


- 結核に関する十分な問診(既往歴・接触歴・海外渡航歴など)
- 胸部X線検査
- インターフェロンγ遊離試験(IGRA)またはツベルクリン反応検査


さらに「適宜、胸部CT検査等を行うことにより結核感染の有無を確認すること」とされており、X線だけで済ませてよいという解釈は添付文書上正確ではありません。これは重要なポイントです。


以下のいずれかに該当する患者には、原則として抗結核薬を投与した上で本剤を開始する必要があります。


- 胸部画像で陳旧性結核に合致する陰影を有する患者
- 結核の治療歴(肺外結核を含む)がある患者
- IGRAやツベルクリン反応等で既感染が強く疑われる患者
- 結核患者との濃厚接触歴がある患者


生ワクチンは投与中に使用できない


添付文書では「本剤投与中は生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと」と明記されています。麻疹・風疹・水痘・帯状疱疹(生ワクチン)などが対象となります。スキリージ開始前にワクチン接種スケジュールの確認と完了が推奨されます。


他の生物製剤・JAK阻害薬との併用は禁止


クローン病・潰瘍性大腸炎の適応では「本剤と他の生物製剤またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤との併用について安全性及び有効性は確立していないので、併用を避けること」と記載されています。乾癬の適応でも「他の生物製剤の併用」を避けるよう規定されています。生物製剤間のスイッチ時も、感染症の徴候について十分な経過観察が必要です。


参考:くすりのしおり(スキリージ皮下注150mgシリンジ)−医療従事者・患者向け情報
スキリージ皮下注150mgシリンジ くすりのしおり – 日本製薬工業協会


スキリージ皮下注の副作用:添付文書データを正確に読む

添付文書の「11. 副作用」には、重大な副作用とその他の副作用が頻度とともに記載されています。医療従事者として数字を正確に把握しておくことが、早期発見・早期対応につながります。


重大な副作用(150mgシリンジ/75mgシリンジ版)


最も注意が必要なのは以下の2つです。


- 重篤な感染症(0.4%):敗血症・骨髄炎・腎盂腎炎・細菌性髄膜炎などが含まれます。重篤な感染症が発症した場合、感染症が消失するまでスキリージの投与を中止することが添付文書に明示されています。


- 重篤な過敏症(0.1%):アナフィラキシー等が報告されています。頻度は低いものの、初回投与直後の観察が重要です。


その他の副作用(頻度別)


頻度 分類 副作用の内容
1〜5%未満 感染症及び寄生虫症 上気道感染
1%未満 感染症及び寄生虫症 白癬感染、毛包炎
1〜5%未満 全身障害及び投与局所様態 注射部位反応(紅斑・腫脹・そう痒感・疼痛・出血・硬結等)
1%未満 神経系障害 頭痛
1%未満 全身障害及び投与局所様態 疲労


国内の日本人乾癬患者を対象とした試験では、上咽頭炎が4.2%、咽頭炎が1.8%と報告されており、これらも実臨床で頻繁に見られる訴えです。


悪性腫瘍リスクについて


乾癬患者1,672例の長期試験(総曝露期間1,758.5人年)では、悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率は0.6例/100人年でした。一般の乾癬患者で報告されている発現率(1.42例/100人年)と同程度であり、薬剤によるリスクの上乗せは現時点では確認されていません。ただし添付文書では「本剤との因果関係は明確ではないが、悪性腫瘍の発現には注意すること」と記載されており、定期的な観察が必要です。


重篤な副作用を見逃さないことが基本です。特に感染症の初期症状(持続する咳・体重減少・発熱・悪寒など)は患者に事前に説明し、異常があれば速やかに担当医に連絡するよう指導してください。


スキリージ皮下注の適用上の注意:投与手技と保管で押さえておきたいポイント

添付文書の「14. 適用上の注意」には、投与前・投与時それぞれの実践的な注意事項が記載されています。日常業務の中で見落としやすい部分も含まれているため、確認しておく価値があります。


シリンジ・ペン製剤(75mg・150mg)の投与前注意


冷蔵庫(2〜8℃)から取り出した後は、室温(25℃以下)で一定時間静置してから投与することが推奨されています。添付文書には「冷蔵庫から取り出した後は、25℃以下で24時間以内に使用することが望ましい」と記載されています。冷たいまま投与すると注射部位の疼痛や不快感が増すことがあります。


360mgオートドーザー(クローン病・潰瘍性大腸炎の維持)の特有ルール


添付文書では「外箱のまま、投与45〜90分前に冷蔵庫から取り出し、直射日光を避け、室温で静置すること」と規定されています。シリンジ・ペン製剤よりも取り出しのタイミングが細かく指定されている点に注意が必要です。この手順を省略すると、製剤の性状に影響を与える可能性があります。


注射部位の選択と禁忌部位


添付文書は注射部位について以下を指定しています。


- シリンジ・ペン製剤:腹部・大腿部・上腕外側のいずれかを選択し、毎回部位を変える
- オートドーザー:腹部または大腿部(上腕外側は不可)


また、以下の部位には注射しないことが明示されています。


- 皮膚が敏感な部位・圧痛・内出血・傷・紅斑・硬結のある部位
- 乾癬病変が存在する部位(乾癬適応において特に重要)


乾癬の病変部位に誤って注射してしまわないよう、患者への事前説明と、投与当日の皮膚状態の確認が欠かせません。混濁・変色・大きな粒子がある場合は使用しないことも添付文書で規定されています(半透明〜白色が正常)。


自己注射の可否


現時点で、乾癬・掌蹠膿疱症のいずれの適応においても患者による自己注射は認められておらず、必ず医療従事者が投与を行うことが適正使用ガイドに明示されています。ペンタイプの製剤が存在しても同様です。患者から「自宅でできますか?」と質問された際には、現時点では不可であることを明確に伝える必要があります。


参考:スキリージ製品FAQ(自己注射・投与部位等)– アッヴィ A-CONNECT
スキリージ製品FAQ(医療関係者向け)– AbbVie A-CONNECT


スキリージ皮下注の薬価と添付文書が示す独自の位置づけ

スキリージ皮下注の薬価は製剤・用量によって異なります。以下は収載時の薬価です。


製品 収載時薬価(1本)
皮下注75mgシリンジ 0.83mL 239,374円
皮下注150mgシリンジ 1mL 474,616円
皮下注150mgペン 1mL 474,761円
皮下注180mgオートドーザー 259,358円
皮下注360mgオートドーザー 192,321円(※点滴静注600mgと同額)


乾癬で最も多く使用される150mgシリンジは1本約47万円と高額です。患者の医療費の3割負担で約14万円となり、1回の外来受診で発生する費用としては相当の額になります。乾癬患者向けの「スキリージ治療費早見表」には1回の投与にかかる総額として475,700円(3割負担)という案内がアッヴィの患者向けサイトに掲載されており、高額療養費制度の活用案内を併せて行うことが重要です。


添付文書の観点から見た時の大きな特徴は、12週間隔という投与頻度の低さです。同じIL-23阻害薬であるトレムフィア(グセルクマブ)の維持期が8週間隔であるのに対し、スキリージは12週間隔と生物学的製剤の乾癬治療において最も頻度が少ない点が差別化ポイントとなっています。投与頻度が少ないということは、患者の通院回数が年間約4〜5回で済むことを意味します。


また、添付文書に掲載されている有効性データとして、海外第III相試験(ultIMMa-1試験・ultIMMa-2試験)でウステキヌマブ(ステラーラ)との直接比較でPASI90達成率が有意に高かった(スキリージ75.3% vs ウステキヌマブ42.0%、p<0.0001)ことが示されています。この数値は、生物学的製剤をスイッチする際の選択根拠としても重要な情報です。


高額薬剤だからこそ、患者に対して費用・効果・継続の必要性についての十分なインフォームドコンセントが求められます。添付文書はその根拠を提供する最重要文書であることを改めて認識しておきましょう。


参考:スキリージ皮下注(リサンキズマブ)の作用機序と特徴【薬剤師向け解説】
スキリージ(リサンキズマブ)の作用機序と特徴 – PASSMED


参考:日本皮膚科学会 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)
乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)– 日本皮膚科学会






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