ソフトコンタクト装用中に点眼すると、角膜障害が起きることがあります。
シアノコバラミン点眼液は、ビタミンB12(シアノコバラミン)を有効成分とする調節機能改善点眼剤です。その成分の色が、あの鮮やかな赤色(紅色澄明)を生み出しています。目薬には着色目的の添加剤使用が認められていないため、あの赤はすべてビタミンB12そのものの色です。
作用機序は「眼における酸素消費量を増し、ATP産生を増大させることによって調節性眼精疲労を改善する」と添付文書に明示されています。毛様体筋の疲労回復を促進し、ピント調節機能を支える仕組みです。
効能・効果は「調節性眼精疲労における微動調節の改善」とされており、適応が明確に絞られています。眼精疲労全般に使えるわけではなく、調節機能の低下が関与するケースに限られます。つまり適応の見極めが重要です。
用法・用量は「通常、1回1〜2滴を1日3〜5回点眼」が標準で、症状により適宜増減できます。国内一般臨床試験では、0.02%シアノコバラミン点眼液の改善率は80.4%と報告されており(プラセボ群13.6%)、有用性判定でも91.3%という高い結果が示されています。これは使えます。
代表的な製品名は参天製薬の「サンコバ点眼液0.02%」で、複数のジェネリック(「ニットー」「センジュ」「杏林」「日点」など)が流通しています。販売開始は2002年7月と歴史があり、眼科外来では広く使用されています。
シアノコバラミン点眼液0.02%「ニットー」添付文書(東亜薬品)
※添付文書の組成・適用上の注意・臨床成績が確認できます。医療従事者向けの一次情報として参照ください。
ソフトコンタクトレンズ装用者への指導は、この薬を処方・調剤する際の最重要ポイントの一つです。
添付文書の「適用上の注意」には次のように明記されています。「本剤に含まれているベンザルコニウム塩化物はソフトコンタクトレンズに吸着されることがあるので、ソフトコンタクトレンズを装用している場合には、点眼前にレンズを外し、点眼後少なくとも5〜10分間の間隔をあけて再装用すること。」
なぜ問題になるのか? ベンザルコニウム塩化物(BAK)はソフトレンズの素材(含水性ポリマー)に吸着・蓄積しやすく、長時間にわたって角膜に接触し続けることで角膜障害を引き起こすリスクがあります。ソフトコンタクトレンズはスポンジのように液体を吸い込む素材なので、防腐剤もそのまま取り込んでしまうイメージです。
とくに注意が必要なのは2週間タイプのレンズを使用している患者さんです。
1日使い捨て(1Day)タイプのレンズであれば、BAKが吸着しても1日で新しいレンズに交換するため蓄積のリスクは相対的に小さくなります。一方、2週間タイプのレンズは同じレンズを使い続けるため、毎回の点眼のたびにBAKが積み重なって蓄積します。レンズ交換まで2週間毎日1日3〜5回点眼し続けることを想像すると、蓄積量がいかに多くなるかが理解できます。
患者さんへの具体的な指導フローは以下の通りです。
「レンズを外すのを忘れやすい」という患者さんには、点眼前にレンズを外す習慣を作るよう伝えることが実践的です。たとえば「薬をつける前にまず外す、というルーティンにしてください」と一言添えるだけで理解が深まります。指導の一言が角膜障害を防ぎます。
シアノコバラミン点眼液0.02%「ニットー」くすりのしおり(くすりの適正使用協議会)
※患者向けの説明資材として、指導票代わりに活用できる情報が掲載されています。
シアノコバラミン点眼液の添付文書には「ソフトコンタクトレンズを装用している場合には…」と明記されています。ここで注目すべき点は、ハードコンタクトレンズについての制限記載が存在しないということです。
これは偶然ではありません。ハードコンタクトレンズ(酸素透過性ハードレンズを含む)は、ソフトレンズとは素材が根本的に異なります。ソフトレンズが含水性ポリマーでできているのに対し、ハードレンズは疎水性の非含水素材です。BAKはこの素材には吸着しにくいため、点眼薬の防腐剤問題がほとんど生じません。
眼科臨床の現場では「ハードコンタクトレンズ装用中は原則すべての点眼薬を上からさしてOK」というスタンスを取る眼科医も少なくありません。ただし、緑内障点眼など確実な薬効を求める薬剤については、ハードレンズ装用下でも外してからの点眼を勧める医師もいます。薬剤ごとの判断が原則です。
ソフトとハードで指導内容がまったく異なることは重要なポイントです。
| コンタクトの種類 | 点眼前の対応 | 点眼後の再装用 | BAK吸着リスク |
|---|---|---|---|
| ソフトコンタクト(1Day) | 外してから点眼(必須) | 5〜10分以上待つ | 低〜中(1日交換のため蓄積少) |
| ソフトコンタクト(2Week) | 外してから点眼(必須) | 5〜10分以上待つ | 高(同一レンズに蓄積しやすい) |
| ハードコンタクト | 原則、装用したまま可 | 制限なし | ほぼなし(非含水素材) |
患者さんが「私はコンタクトをしています」と申告した場合、ソフトかハードかを必ず確認することが重要です。一括りに「コンタクトには使えません」と指導してしまうと、ハードコンタクト使用者に誤った情報を提供することになります。確認の一手間が正確な指導につながります。
眼科外来だけでなく、一般内科や産業医などの現場でも眼精疲労を主訴とした相談は増えています。デジタルデバイスの普及に伴い、VDT作業者(パソコン・スマートフォン等を長時間使用する人)の調節性眼精疲労は増加傾向にあります。そのためシアノコバラミン点眼液を処方・調剤する機会は眼科以外でも増えています。
処方時・調剤時に確認すべき主なチェックポイントを整理します。
調剤時に特に重要なのは、患者さんがコンタクトレンズの種類を正確に把握していないケースへの対応です。「コンタクトを使っているけれど、ソフトかハードか分からない」という患者さんも実際にいます。そのような場合は、「まずレンズを外してから点眼する」という安全側の指導をひとまず徹底することが実践的です。不明な場合はソフトと想定して指導するのが原則です。
また、この薬の赤い液色が衣服に付着すると落ちにくいという点も、患者さんへの事前説明として有用です。OTC品の添付文書にも「点眼の際、衣服などにつけないよう十分にご注意ください」と明記されています。これも患者さんがよく聞く質問のひとつです。日常の服へのシミは意外に深刻なストレスになりえます。
コンタクトレンズしたままの点眼について(Swan Eye Clinic)
※眼科医の立場からソフト・ハード別の点眼方針を詳しく解説した実践的な記事です。
医療従事者が見落としがちな視点として、「コンタクトを外してから点眼する」という指導が、患者さんの服薬アドヒアランス(治療継続率)に影響する可能性があります。
実際のところ、仕事中や外出先でコンタクトを外して点眼するのは現実的に面倒です。「外す場所がない」「鏡がない」「外した後にすぐ再装用できない」といった理由で、患者さんが自己判断で指示を無視して点眼している可能性があります。それが角膜障害につながります。
この問題への対策として、薬剤師・医師が処方・調剤時に伝えるべき実践的なアドバイスがあります。
まず、点眼のタイミングを「朝起きた直後(コンタクト装用前)」「帰宅してコンタクトを外した後」「就寝前」など、自然にコンタクトを外す時間帯に合わせるよう提案することです。1日3〜5回の点眼のうち、少なくともこの3タイミングを活用するだけで、「外す手間」を最小化できます。これは使えそうです。
次に、職場や外出先での点眼については、トイレの個室を活用する、または専用のコンタクトケースを携帯して外しやすい環境を整えるよう伝えることも有効です。
さらに、1日使い捨てコンタクト(1Day)ユーザーであれば、「外してから点眼し、そのまましばらく裸眼で過ごしてから再装用する」という流れも選択肢に入ります。一方、2週間タイプのユーザーは再装用時にケアの問題もあり、より慎重なタイミング管理が求められます。
アドヒアランスと安全性を両立するためには、正しい指導内容を「実行可能な形」に落とし込む工夫が医療従事者の腕の見せ所です。添付文書に書いてある通りを読み上げるだけでなく、患者さんの生活スタイルに合わせたアドバイスが薬の効果を最大限に引き出します。指導の質が治療結果を左右します。
「なぜ外す必要があるのか(BAKの吸着・角膜障害リスク)」をかみ砕いて説明することで、患者さんの納得感が高まり、指示通りに行動してもらいやすくなります。理由を知ると人は動きます。
コンタクトレンズの上からつけてもいい目薬(新宿東口眼科医院)
※「なぜコンタクト装用中に点眼してはいけないか」をBAKの仕組みから分かりやすく解説しています。患者説明の参考になります。
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