先発品のアザルフィジンEN錠より後発品の方が薬価が高い規格が存在します。

サラゾスルファピリジン腸溶錠の先発品は、あゆみ製薬が製造販売する「アザルフィジンEN錠」です。250mgと500mgの2規格があり、現在の薬価(令和7年4月改定後)はそれぞれ250mgが17.1円/錠、500mgが25.9円/錠となっています。
「EN」という名称が示すとおり、Enteric(腸溶性)を意味します。これは胃では溶けず、小腸に到達してから吸収される製剤設計になっていることを意味します。この設計は、スルファピリジンによる消化器系の副作用(悪心・嘔吐・胃部不快感など)を軽減する目的で開発されたものです。
適応症は「関節リウマチ」に限定されます。これは同じ有効成分を含む普通錠のサラゾピリン錠(適応:潰瘍性大腸炎・限局性腸炎・非特異性大腸炎)とは根本的に異なる点です。つまり同一成分で2種の先発品が存在するという、やや特殊な状況にあります。
用法・用量は、成人1日投与量1g(500mg錠×2錠または250mg錠×4錠)を朝食および夕食後の2回に分割経口投与が標準です。
| 規格 | 薬価(R7.4改定後) | メーカー | 先後発区分 |
|---|---|---|---|
| アザルフィジンEN錠250mg | 17.1円/錠 | あゆみ製薬 | 先発品(☆) |
| アザルフィジンEN錠500mg | 25.9円/錠 | あゆみ製薬 | 先発品(2) |
| サラゾスルファピリジン腸溶錠250mg「NIG」 | 17.7円/錠 | 日医工岐阜工場 | 後発品(★) |
| サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg「NIG」 | 24.2円/錠 | 日医工ファーマ | 後発品(3) |
| サラゾスルファピリジン腸溶錠250mg「CH」 | 12.6円/錠 | 長生堂製薬 | 後発品(3) |
| サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg「CH」 | 14.0円/錠 | 長生堂製薬 | 後発品(3) |
| サラゾスルファピリジン腸溶錠250mg「SN」 | (後発品) | シオノケミカル | 後発品(3) |
先発品と同等の生物学的利用能は生物学的同等性試験で確認されており、後発品への変更は科学的に裏付けられています。ただし250mg規格においては特殊な事情があります。それについては次のセクションで詳しく解説します。
参考情報:定期的な副作用モニタリングと添付文書の内容については下記PMDAのリンクからも確認できます。
PMDAからの医薬品適正使用のお願い「サラゾスルファピリジンの投与開始前後の臨床検査実施の遵守について」(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
後発品の方が先発品より高い、という事態が実際に起きています。令和7年度薬価改定(2025年4月1日適用)において、先発品のアザルフィジンEN錠250mgが薬価引き下げを受けた一方、「サラゾスルファピリジン腸溶錠250mg『NIG』」は不採算品再算定の対象外となり薬価が据え置かれました。
その結果、先発品(17.1円/錠)よりも後発品NIG(17.7円/錠)の方が0.6円高いという「薬価逆転」現象が発生しました。後発品はすなわち「先発品と同額または先発品より高い後発品(★)」に分類され、算定上の後発品からも除外される事態となっています。
これは単なる数字の話ではありません。後発品調剤体制加算の施設基準において、★に分類された品目は後発品の使用割合の分母・分子の計算に不利な影響を及ぼすことがあります。薬局・病院薬剤部の担当者は、各施設の後発品使用率の計算において、アザルフィジンEN錠250mgと対応する後発品の薬価動向を継続的に確認する必要があります。
また、この薬価逆転はアザルフィジンEN錠250mgの「選定療養」対象品目としての扱いにも影響しています。後発品が先発品と同額または高い状況では、患者に「先発品を希望する場合の追加負担」が発生しないか、または非常に低い金額(価格差の1/4)になるため、実務上の運用が複雑になります。
後発品への切り替えを検討する際は、最新の薬価情報を厚生労働省の薬価基準収載品目リストで確認することが原則です。
参考:後発品の薬価逆転に関する詳細情報は下記サイトで確認できます。
令和7年度薬価改定で算定から除外された後発品一覧とその理由(薬剤師が解説するブログ)
医療安全上、最も深刻なリスクの一つが「腸溶錠」と「普通錠(非腸溶錠)」の取り違えです。
サラゾスルファピリジンには、成分名が同一でありながら適応症が全く異なる2種類の剤形が存在します。
薬局ヒヤリハット事例収集・分析事業(2017年4月分)では、アザルフィジンEN錠500mgの処方箋に対し、卸へ電話注文した際に「腸溶錠」と伝えたにもかかわらず普通錠(サラゾスルファピリジン錠500mg)が納品され、在庫の腸溶錠と混合した状態で患者に渡してしまった事例が報告されています。PTPシートの外観が非常に類似していたことが取り違えを招いた主因です。
事例のポイントをまとめると次のとおりです。
対策として、薬品棚のラベルに「類似名称有」「適応:関節リウマチ(腸溶錠)」「適応:潰瘍性大腸炎(普通錠)」など病名を付記すること、またシステムの処方入力画面に病名と剤形を紐づけた注意表示を設定することが推奨されています。また、愛媛大学病院の医薬品安全使用ニュース(2024年10月)では「薬剤の検索名称に病名をそれぞれ追加」する対応が有効だと報告されています。
一般名処方が定着した現在では、処方箋上で「サラゾスルファピリジン」とだけ記載されていると、どちらを意図しているかが不明確になるケースも生じます。疑義照会の基準を事前に施設内で取り決めておくことが業務上の安全管理につながります。
参考:医療安全事例の詳細と背景については下記で確認できます。
旭川薬剤師会「Pharma Bridge 医療安全通信第35号:間違えやすい後発品の腸溶錠と非腸溶錠について」
アザルフィジンEN錠(先発品)を含むサラゾスルファピリジン腸溶錠は、血液障害や肝機能障害などの重篤な副作用のリスクがあるため、定期的な臨床検査が添付文書上で義務付けられています。定期検査が不十分なまま投与を継続した結果、重篤化した症例がPMDAによって複数報告されています。
臨床検査の実施タイミング(血液学的検査・肝機能検査)
PMDAの副作用報告データ(2007〜2009年度)では、血液障害64例のうち48例(約75%)が投与開始2カ月以内に発現しており、肝機能障害も16例中16例がすべて投与開始2カ月以内に集中していました。投与開始直後の2カ月がいかに危険な時期であるかが分かります。
典型的な重篤事例として以下のようなものが報告されています。50代の関節リウマチ女性患者に本剤250mgを投与開始後わずか9日目に500mgへ増量、投与開始36日目に発赤を伴う発疹と白血球数900/mm³(投与前7,600/mm³)への急激な低下が確認されています。薬剤性無顆粒球症が疑われ無菌室管理の入院となりましたが、この期間中に1度も臨床検査は実施されていませんでした。
「投与してから2週間後にまず検査すればいい」という程度の認識では不十分です。
重大な副作用として添付文書に記載されているのは以下のとおりです。
葉酸の吸収低下による大赤血球症・汎血球減少(葉酸欠乏症)のリスクも知られており、葉酸欠乏が疑われる場合は葉酸を補給することが添付文書で推奨されています。なお、2025年9月には「ANCA関連血管炎」が重大な副作用として追記されており、発熱・倦怠感・関節痛・筋痛・皮膚症状(紫斑・壊死)などの全身症状が出た場合には速やかに対応する必要があります。これは比較的新しい知見です。
2024年10月より施行された長期収載品の選定療養制度により、アザルフィジンEN錠(先発品)は選定療養の対象医薬品となっています。この制度では、医療上の必要性がなく患者が単に先発品を希望する場合、後発品との薬価差の1/4が患者の追加自己負担となります。
制度が始まって以降、外来患者への説明義務がより明確になりました。薬剤師・医師ともに「なぜ先発品を希望するのか」「後発品への変更は可能か」の確認と記録が実務上求められます。
ただし、アザルフィジンEN錠250mgは令和7年4月改定後に「☆」区分(先発品のうち後発品と同額または薬価が低いもの)に該当しています。価格差がほぼないか、逆転しているため、実際の追加負担額は非常に小さい、あるいはゼロに近い状況です。500mg規格については依然として「2」区分のため通常の選定療養の対象として運用されます。
患者への説明で有用なポイントを以下に整理します。
持参薬から院内処方に切り替える際にも注意が必要です。愛媛大学病院の安全情報にあるように「当院採用は先発品」という施設では、後発品の腸溶錠名称で持参していた患者がそのまま先発品(アザルフィジンEN錠)に切り替えられるはずのところ、誤って普通錠のサラゾピリン錠(適応:潰瘍性大腸炎)が処方されてしまう事例が報告されています。病名確認と剤形確認は持参薬鑑別時に必ず行うべき対応です。
先発品・後発品のどちらを使用するにしても、定期的な臨床検査の遵守が最重要事項です。
参考:選定療養の対象医薬品リストは定期更新されています。
厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」(最新リスト)