温感テープを処方どおりに調剤しても、クレームが起きることがあります。
医療用ロキソプロフェンNaテープには「非温感タイプ」と「温感タイプ」という2種類が存在します。先発品であるロキソニンテープ(第一三共)は非温感タイプのみであり、温感タイプは後発品(ジェネリック)のみに存在するという点が、多くの医療従事者に意外と知られていない事実です。
先発品に温感タイプはありません。これは原則として覚えておくべき重要な情報です。
温感タイプのロキソプロフェンNaテープが後発品として登場した背景には、患者が「温かさ」を好む傾向があること、慢性期の筋肉痛や変形性関節症などで温感を求める症例が多いことなどが挙げられます。テープ剤の基本的な規格としては、50mg(7cm×10cm)と100mg(10cm×14cm)の2種類があります。100mgサイズはハガキ(148mm×100mm)とほぼ同じ大きさをイメージすると分かりやすいでしょう。
非温感タイプと温感タイプの違いは、添加剤の有無にあります。温感タイプには「ノニル酸ワニリルアミド(合成トウガラシエキス)」が含まれており、これが皮膚の感覚神経を刺激してじんわりとした温感を生み出します。有効成分であるロキソプロフェンナトリウム水和物の含量・配合量に変わりはなく、消炎鎮痛効果そのものは温感・非温感で差はないとされています。
つまり「温めるか冷やすか」ではなく、あくまでも「感覚的な温かさを付加するかどうか」の差です。
| 項目 | 非温感タイプ | 温感タイプ |
|---|---|---|
| 先発品(ロキソニンテープ) | ✅ あり | ❌ なし |
| 後発品 | ✅ あり(複数社) | ✅ あり(三友のみ・2026年現在) |
| 温感成分 | なし | ノニル酸ワニリルアミド |
| 消炎鎮痛効果 | 同等 | |
| 入浴時の注意 | 特になし | 入浴前30分は剥がすこと |
参考:ロキソプロフェンNaテープの温感・非温感の分類、後発品情報についての解説
旭川薬剤師会 医療安全通信 第48号「温感タイプのロキソプロフェンNaテープについて」
2025年以前、医療用ロキソプロフェンNaテープの温感タイプを供給していたメーカーは以下の2社でした。
この2社4製品が温感タイプの医療用製品として薬価収載されていましたが、2025年9月に大鵬薬品工業が在庫枯渇をもって「タイホウ」の販売中止を発表しました。その後、同年10月にはラクール薬品販売の「三友」も出荷停止の状況が確認されており、温感タイプの供給が非常に逼迫した状態となっています。
これは深刻な状況です。
販売中止の背景には、2025年4月1日の薬価改定が大きく関係しています。この改定により、ロキソプロフェンNaテープ後発品の薬価が先発品の薬価と同額、もしくは高くなるという逆転現象が生じました。その結果、一般名処方マスタからロキソプロフェンNaテープが削除され、一般名処方加算等の算定対象からも外れることになりました。加算が取れなくなった後発品を製造・供給し続けるメリットが薄れ、複数のメーカーが撤退・縮小に向かったと考えられます。
医療機関や薬局の担当者としては、温感タイプを処方・調剤するにあたり、供給状況のリアルタイムな確認が不可欠です。現時点での在庫状況は三友製品の出荷状況を必ず確認してください。
参考:タイホウ販売中止の経緯と代替品に関する情報
大鵬薬品工業「販売中止のご案内」(2025年10月版)
温感タイプのロキソプロフェンテープが存在することで、一般名処方の調剤においては判断が必要になる場面が増えます。処方箋の記載によって調剤できる製品が決まるため、以下のルールを正確に理解することが大切です。
注目すべき点は、「温感・非温の指定がない一般名処方」のケースです。制度上はどちらを調剤してもよいとされていますが、患者が以前に非温感タイプを使っていた場合、突然温感タイプに変わることでトラブルが発生することがあります。
特に温感タイプには入浴前30分に剥がす必要があるという使用上の制限があります。温感成分のノニル酸ワニリルアミドはお湯で活性化されるため、貼ったまま入浴すると灼熱感や皮膚炎を起こすリスクがあります。指定なし処方に対して温感タイプを調剤する場合は、処方意図を確認するか、少なくとも患者への丁寧な説明が求められます。
服薬指導の場面では、患者に「温かい感じのするタイプです」「お風呂の前に剥がしてください」と一言添えるだけで、クレームや副作用報告を大幅に減らすことができます。これは使えそうです。
全国の薬局ヒヤリハット事例でも「温感・非温の取り違え」は繰り返し報告されており、日本医療機能評価機構が2018年に「共有すべき事例」として特集しました。一般名処方箋の末尾は最後まで丁寧に読むことが原則です。
参考:一般名処方における温感・非温感の調剤ルールについて
日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリハット事例 共有すべき事例2018年No.1」
温感テープが「温かく感じる」仕組みについて、患者からよく質問を受ける場面があります。正確に理解しておくと服薬指導の質が上がります。
温感テープに配合されているノニル酸ワニリルアミドは、トウガラシの辛味成分カプサイシンの誘導体(合成カプサイシン)です。カプサイシンはTRPV1受容体(熱に反応するイオンチャネル)に結合して「熱い」という感覚を生み出します。つまり実際に体温が上がっているのではなく、「熱い」と感じる神経を刺激しているのです。
体温計で測っても差はありません。
このノニル酸ワニリルアミドが局所の血管を拡張させることで血行を促す補助的な作用はあるものの、あくまでもロキソプロフェンナトリウム水和物がNSAIDsとして主体的に消炎・鎮痛を担っています。温感成分は補助的な役割に過ぎず、それが消炎効果の強さに直結するわけではないことを患者に伝えることが重要です。
一方、「温かい感覚」が患者の心理的満足度を高め、コンプライアンス向上につながるという側面も無視できません。特に冬場に患部がこわばる慢性期の腰痛・肩こり・変形性関節症の患者には、温感タイプを好むケースが多い傾向があります。
ただし、カプサイシン誘導体は皮膚への刺激性が高い成分でもあります。敏感肌の患者や皮膚に炎症がある部位への使用は避けるべきです。また入浴前30分は剥がす必要があるという使用制限は、この成分がお湯によって溶出・活性化されることで生じる灼熱感や炎症を防ぐためです。これが非温感タイプには存在しない制限事項である点を認識しておきましょう。
参考:温感刺激剤の薬理作用と医療用貼付剤への応用について
2025年以降、温感タイプのロキソプロフェンNaテープの供給不安定が続く中、医療現場では代替品の検討が必要な状況になっています。ここでは具体的な代替対応の考え方を整理します。
まず、非温感タイプへの変更を検討する場合は、必ず医師への疑義照会または処方変更の確認が必要です。処方箋に「温感」と明記されている場合、薬局の判断のみで非温感タイプに変更することはできません。これが原則です。
代替品を選ぶ際には、患者の使用歴や症状の急性・慢性の別、皮膚状態を総合的に判断する必要があります。
温感タイプを求める患者の多くは「温かい感覚が好き」という理由で継続しているケースが多いため、非温感への変更時には心理的なフォローも重要です。「消炎・鎮痛の効果は変わりません」と丁寧に説明することで、治療の継続性を担保できます。
また、急性期の炎症が強い時期(打撲直後・捻挫直後など)には、そもそも温感タイプの貼付剤は推奨されません。急性期は冷却が基本であり、温感テープは慢性期の血行改善補助として位置づけられるべきです。適切な使い分けを患者・医師・薬剤師で共有しておくことが、処方・調剤の精度を高めます。
参考:外用鎮痛消炎薬の選び方・急性期と慢性期の使い分けについて
第一三共ヘルスケア「湿布など外用鎮痛消炎薬の上手な使い方・選び方」
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