30mgより成分が倍あるのに、60mgの薬価は30mgとほぼ同じ5.5円しか違いません。

リクシアナ錠60mg(一般名:エドキサバントシル酸塩水和物)の現行薬価は1錠416.80円です。製造販売元は第一三共で、先発品のみが存在しています(2026年3月時点でジェネリックは未収載)。同成分のOD錠(口腔内崩壊錠)も規格ごとに薬価が設定されており、リクシアナOD錠60mgも同じく416.80円です。
ところが、2026年4月1日以降の薬価は大きく変わります。今回の改定では2026年薬価サーチ掲載の新薬価として334.50円が告示されており、現行の416.80円から約19.7%の引き下げとなります。金額にすると1錠あたり82.3円の下落です。これは体感しにくい数字ですが、140錠包装(約4〜5ヶ月分相当)で換算すると、包装薬価が約58,352円から約46,830円へ、約11,522円も変わることになります。1錠の差は小さく見えても、長期処方では薬剤費として無視できない規模です。
以下に規格ごとの薬価をまとめます。
| 販売名 | 現行薬価(〜2026/3/31) | 改定後薬価(2026/4/1〜) |
|---|---|---|
| リクシアナ錠15mg | 224.70円 | 改定あり(確認要) |
| リクシアナ錠30mg | 411.30円 | 改定あり(確認要) |
| リクシアナ錠60mg | 416.80円 | 334.50円(約19.7%↓) |
| リクシアナOD錠60mg | 416.80円 | 改定あり(確認要) |
薬価改定後の数値は告示されたものの、OD錠を含めた全規格の確定値については必ず最新の公式情報を参照してください。規格によって改定幅が異なる場合があります。
参考:しろぼんねっと(薬価・保険診療情報サイト)にて最新薬価を随時確認できます。
リクシアナ錠60mgの薬価・添付文書など詳細情報 | しろぼんねっと
リクシアナ錠60mgの薬価を理解する上で最も重要なのが、「なぜ成分量が2倍の60mgなのに、30mgとの薬価差がたった5.5円しかないのか」という点です。これは薬価算定ルール上の特殊な事情によるものです。
リクシアナ錠は当初2011年に15mg・30mgのみで薬価収載され、60mgは後発規格として2014年11月25日に追加されました。新規格を追加する際には「規格間調整」という方式が使われます。この計算式では、類似薬の規格間比(成分量と薬価の比率関係)を参照します。ここが問題です。
リクシアナ錠60mgと同様に「高用量規格」を持つDOAC(直接経口抗凝固薬)が他に存在しませんでした。他のDOAC、たとえばプラザキサ・イグザレルト・エリキュースは2規格しかなく、参照できる高用量規格がありません。そこで類似適応を持つワーファリン錠1mgと5mgが類似薬として選ばれました。
ところがワーファリン錠1mgと5mgの薬価差は次のとおりです。
この2規格の価格差はたった0.30円。成分量は5倍違うのに、薬価比はほぼフラットです。この比から算出された規格間比は0.0191という極めて低い値です。この値をリクシアナ錠30mgの薬価に適用して計算すると、60mgの薬価は748.10円×(60mg÷30mg)^0.0191=758.10円となり、30mgとの差は10円しか生まれません。現在の薬価に置き換えても、30mgの411.30円に対して60mgが416.80円と、差はわずか5.5円です。
つまり、成分量が倍であるにもかかわらず薬価はほぼ同額という、直感に反する設定になっているのです。これがリクシアナ錠60mg薬価の最大の特徴です。
リクシアナ錠/OD錠60mgの薬価はなぜ安い?算定の仕組みを解説 | 薬剤師の脳みそ
2026年4月1日の薬価改定で、リクシアナは「持続可能性特例価格調整」の対象となりました。これは「市場拡大再算定の特例」の名称が変更されたもので、年間販売額が一定規模を超えた医薬品に対して大幅な薬価引き下げを行う制度です。
リクシアナの場合、年間販売額が1,500億円を超えたことが対象となった理由です。1,500億円というのは東京ドーム4.5個分の年間チケット収入をはるかに凌ぐ規模感で、一医薬品としての販売規模の大きさが伝わります。今回対象となったのは通常錠とOD錠を合わせた全6規格で、引き下げ率は約19.7%です。
中央社会保険医療協議会(中医協)は2026年1月16日の総会においてこの算定を正式に了承しており、2026年3月5日の告示を経て4月1日より新薬価が適用されます。引き下げの水準は制度上最大50%まで可能なところ、19.7%に収まっています。それでも「年間販売額1,500億円超」の品目に適用されるほどリクシアナの使用量が広がった証でもあります。
なお、今回の改革では従来あった「共連れ」(類似薬への連動引き下げ)が廃止されています。リクシアナが再算定を受けても、他のDOACが自動的に引き下げられる仕組みはなくなったという点で、以前とはルールが変わっています。これは後発品メーカーの予見可能性を高める観点からの変更です。
参考:薬価改定に関する中医協の公式資料は、以下の厚労省PDF(市場拡大再算定品目)で確認できます。
薬価算定の仕組み上、リクシアナ錠60mgは30mgとほぼ同額です。この構造は実務上、処方・調剤の現場で重要な判断を迫ります。具体的には「30mgを1錠処方するよりも、60mgを0.5錠で処方した方が患者の薬剤費が安くなる」という状況が生まれるのです。
現行薬価での試算を見てみましょう。
30日分で計算すると、30mg錠処方では12,339円、60mg半錠処方では6,252円になります。差額は約6,087円です。3割負担患者で換算すると、月あたり約1,800円の差が出ます。長期処方の患者にとっては年間で2万円以上変わることもあります。これは大きい負担差ですね。
ただし、安易に60mg半錠に変更することには注意が必要です。適応症の問題があります。リクシアナ錠30mgには「下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制(膝関節全置換術・股関節全置換術・股関節骨折手術)」の適応がありますが、60mgにはこの整形外科領域の適応がありません。
整形外科術後でリクシアナ錠30mgが処方されているケースに対し、「薬価が安くなるから」と60mg半錠に変更すると適応外使用となり、保険請求上の問題が生じる可能性があります。調剤変更の際は適応症を必ず確認することが原則です。
一方、心房細動・VTE(静脈血栓塞栓症)治療・CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)等の適応ではどちらの規格も共通して使用できるため、医師と相談の上での60mg半錠処方は医療費削減の観点で有効な場合があります。
リクシアナ錠60mgの半錠を30mg錠に変えちゃダメ? | 薬剤師のことわり
リクシアナ錠60mgが処方される際の適応症と用量の理解は、薬価を正確に扱う前提として欠かせません。現在承認されている適応症は以下の4つです。
NVAFおよびVTE・CTEPHにおける60mgの使用基準は「体重60kg超」が基本です。ただし以下の条件に該当する場合は30mgへの減量が必要となります。
体重でスクリーニングした後に腎機能と併用薬を確認するという手順が原則です。これらの条件が重なると、体重60kg超であっても60mgを使えないケースが出てきます。薬価算定の観点でいえば、60mgから30mgへの用量変更は薬剤費を増やす(現行薬価では30mgの方が高い)ことを意味します。2026年4月改定後の薬価でも同様の傾向が続くため、減量の判断は治療上の根拠を優先しつつ、費用対効果の視点でも整理しておく価値があります。
なお、2025年2月20日に追加されたCTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)の適応は、経口抗凝固薬の中でリクシアナが国内初の承認取得となりました。これによってリクシアナの使用対象が拡大し、今回の薬価引き下げ(持続可能性特例価格調整)の背景ともなる市場拡大の一因になっています。
リクシアナ錠・OD錠、慢性血栓塞栓性肺高血圧症の適応追加承認 | 医薬通信社
今回の2026年4月1日以降の薬価改定は、単純な価格変更にとどまらず、病院・薬局の現場において複数の実務インパクトを生じさせます。この点は教科書的な情報には出てこない、現場目線の重要な視点です。
まず在庫評価の問題です。薬局・病院の医薬品は薬価を基準に帳簿上評価されています。4月改定以降、旧薬価(416.80円)で仕入れた在庫が残っている場合、実際の購入原価と改定後薬価との間に乖離が生じます。調剤報酬請求は改定後の薬価で行われるため、4月1日をまたいだ在庫については薬価差損が発生するリスクがあります。特にリクシアナ錠60mgの140錠包装(包装薬価が高額)を大量在庫している施設では、影響額が無視できません。
次に処方設計の観点です。2026年4月以降は60mgの薬価が334.50円と大幅に下がる一方、30mgはどの水準になるか(同様に引き下げられる)を確認する必要があります。現行では30mgと60mgの薬価差が5.5円と小さいため「60mg半錠で30mgを代用」することで薬剤費を抑える戦略が意味を持っていましたが、改定後の薬価水準によっては規格間の優位性が変化する可能性があります。改定前後の薬価を比較・再確認することが必要です。
また、医事課・薬剤部間の情報共有も重要です。院内での薬剤費管理において、リクシアナは高額薬剤として注目される場面が増えることが予想されます。2026年4月以降の薬価改定を確認しておけばOKです。
リクシアナは後発品(ジェネリック医薬品)が現時点で収載されておらず、先発品として独占的な状態が続いています。後発品が収載された場合、薬価はさらに大きく変動します。リクシアナのジェネリックが収載された際には選定療養の対象になる可能性も生まれるため、長期的な処方方針の整理も視野に入れておくと現場対応がスムーズです。
薬価改定の最新情報は、厚生労働省の薬価基準改定通知や、以下のような薬事情報サイトを日常的にウォッチする習慣をつけておくと対応が早まります。
リクシアナ錠60mgの同効薬・薬価一覧(新薬価確認可)| 薬価サーチ
リクシアナ錠60mg 製品情報 | 第一三共 Medical Community(医療関係者向け)