レナリドミド単独では多発性骨髄腫の治療効果が不十分なことがあります。

rd療法は、レナリドミド(商品名:レブラミド)とデキサメタゾンを組み合わせた多発性骨髄腫(MM)に対する代表的な経口レジメンです。
標準的な投与スケジュールは28日を1サイクルとして設定されています。レナリドミドは第1〜21日目に1日25mgを経口投与し、第22〜28日目は休薬します。デキサメタゾンは第1、8、15、22日目に40mgを経口または静脈内投与します。これが基本の骨格です。
高齢者(75歳以上)や虚弱患者に対しては、デキサメタゾンを20mg/日に減量したLd療法(低用量デキサメタゾン)が推奨されるケースも増えています。SWOG S0232試験では、高用量デキサメタゾン群と比較して低用量群で早期死亡率が低かったことが示されており、用量選択は患者背景を慎重に考慮する必要があります。つまり「高用量が効果的」という単純な考え方は通用しません。
投与サイクルの繰り返し回数については、移植非適応患者では疾患進行または許容できない毒性が生じるまで継続するのが現在の標準とされています。一方で移植適応患者では、自家造血幹細胞移植前の導入療法として4〜6サイクルを実施することが多いです。
| 薬剤 | 用量 | 投与日 | 投与経路 |
|---|---|---|---|
| レナリドミド(レブラミド) | 25mg/日 | 第1〜21日 | 経口 |
| デキサメタゾン(高用量) | 40mg/日 | 第1, 8, 15, 22日 | 経口 or 点滴 |
| デキサメタゾン(低用量・高齢者) | 20mg/日 | 第1, 8, 15, 22日 | 経口 or 点滴 |
レジメンの枠組みが理解できたら、次は腎機能との関係が重要です。
レナリドミドは主に腎臓から排泄される薬剤であるため、腎機能低下患者への投与時には用量調整が不可欠です。これが原則です。
日本の添付文書および国内ガイドラインでは、クレアチニンクリアランス(CCr)の値に応じて以下のように用量を段階的に調整することが定められています。CCr 60mL/min以上では標準用量の25mgをそのまま使用できます。CCr 30〜59mL/minでは10mg/日に減量し、透析を必要としない重度腎障害(CCr 30mL/min未満)では15mg/隔日という特殊な設定になります。また、透析患者では透析日に5mgを透析後に投与するという独特のスケジュールが採用されています。
多発性骨髄腫患者の約30〜40%が診断時に何らかの腎機能障害を有していることが報告されており、この用量調整を失念すると骨髄抑制や感染症リスクが著しく上昇します。見落とすと危険です。
実務上のポイントとして、定期的なeGFRまたはCCrのモニタリング体制を事前に構築しておくことが重要です。治療経過中に腎機能が変動する症例も少なくないため、投与開始後も継続的な確認が求められます。腎機能の変化を見逃さないことが、安全な投与管理の前提条件となります。
また、腎機能が改善した場合には増量も検討できる点も覚えておくとよいでしょう。治療効果による腫瘍縮小で腎機能が回復するケースも存在するため、定期的な再評価が臨床上の意義を持ちます。
参考:日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン(多発性骨髄腫)では腎機能別の投与量調整が明記されています。
rd療法に伴う主要な副作用を適切に把握し、先手を打った管理体制を整えることが治療継続率の維持につながります。
最も頻度が高い血液毒性は好中球減少です。グレード3以上の好中球減少はrd療法施行患者の約20〜30%に発生するとされています。これは無視できない数字です。実際の対応としては、好中球数が1,000/μL未満となった場合にはレナリドミドを一時休薬し、回復後(1,500/μL以上)に5mg減量して再開するプロトコールが一般的です。
血栓塞栓症(深部静脈血栓症・肺塞栓症)もrd療法特有の重大リスクです。レナリドミドとデキサメタゾンの組み合わせは血栓リスクを相乗的に高めるとされており、治療開始前にリスク評価を行い、低リスク患者にはアスピリン100mg/日、高リスク患者には低分子量ヘパリンまたはワルファリンの予防的投与が推奨されます。血栓予防は必須です。
末梢神経障害については、サリドマイドと比較するとレナリドミドのリスクは低いとされています。しかし長期投与例ではしびれや疼痛を訴えるケースも報告されており、毎回の診察時に症状確認を行うことが望ましいです。
感染症リスクについても注意が必要です。デキサメタゾンによる免疫抑制とレナリドミドの骨髄抑制が重なる場合、帯状疱疹の発症リスクが上昇します。アシクロビルなどの予防的抗ウイルス薬投与を検討する施設も増えています。
| 副作用 | 発現頻度の目安 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 好中球減少(Gr3以上) | 約20〜30% | 休薬・減量・G-CSF使用 |
| 血小板減少(Gr3以上) | 約10〜15% | 休薬・減量・輸血 |
| 深部静脈血栓症 | 約8〜10% | 抗凝固薬予防投与 |
| 感染症(帯状疱疹含む) | 約5〜15% | 抗ウイルス薬予防投与 |
| 末梢神経障害 | 約5〜10% | 症状モニタリング・減量 |
レナリドミドは催奇形性リスクがあるため、「RevMate®プログラム(レブラミド適正管理手順)」への参加が法的に義務付けられています。これは日本でも例外ではありません。
RevMate®とは、レブラミドを使用するすべての患者・医師・薬剤師・卸売業者が登録し、厳格な管理下で使用することを定めたリスク管理プログラムです。医師は処方前に患者への説明と書面による同意取得、月ごとの妊娠検査確認(女性患者)を行う義務があります。薬剤師は調剤前に処方医・患者の登録状況を確認し、28日分を超える処方を調剤してはならないというルールがあります。28日が上限です。
未登録のまま処方・調剤が行われた場合、製品の供給停止措置が発動されることがあるため、施設全体での管理体制の整備が求められます。
男性患者への対応についても見落としがちな点があります。レナリドミドは精液中にも移行することが確認されており、服用中の男性患者は性交時にコンドームを使用する必要があります。また、精子提供も禁止されています。患者指導の際にこの点が抜け落ちてしまうケースが現場では報告されており、インフォームドコンセントのチェックリストに必ず組み込むことが推奨されます。
RevMate®の登録・管理情報は以下の公式サイトから確認できます。
近年の多発性骨髄腫治療では、rd療法単独ではなく、プロテアソーム阻害剤や抗CD38抗体を加えた3剤・4剤レジメンへの移行が加速しています。これが現在の潮流です。
VRd療法(ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン)は、SWOG S0777試験において、rd療法との比較で無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が示されました(43ヶ月 vs 30ヶ月)。このため移植適応・非適応を問わず、VRdが第一選択となる施設も増えています。ただしボルテゾミブによる末梢神経障害リスクが加わる点で、患者背景に応じた選択が必要です。
DRd療法(ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン)はMaia試験において、再発・難治性患者のみならず移植非適応の初発患者においてもrdと比較して有意なPFS延長が確認されました(ハザード比0.56)。現在は初発移植非適応患者に対するDRdが標準治療の一つとして位置付けられつつあります。意外ですね。
rd療法はこれらの多剤レジメンと比較するとシンプルな経口レジメンである点から、外来通院が困難な患者や全身状態が不良な高齢患者において今でも有効な選択肢です。すべての患者に多剤が適するわけではありません。
| レジメン | 主な適応 | PFS中央値の目安 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| rd療法 | 高齢・虚弱・外来困難例 | 約25〜30ヶ月 | 経口のみ、管理しやすい |
| VRd療法 | 移植適応・非適応初発例 | 約40〜43ヶ月 | 末梢神経障害に注意 |
| DRd療法 | 初発移植非適応・再発例 | 約60ヶ月以上 | 注射追加・感染リスク上昇 |
rd療法を起点として、患者の状態に合わせた段階的なレジメン選択の視点を持つことが、現代の多発性骨髄腫治療には求められています。
参考:MM治療の最新エビデンスについては以下のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインも参照できます。
NCCN Guidelines Multiple Myeloma(英語)