ランタスxr注ソロスター450単位の特徴と使い方

ランタスXR注ソロスター450単位はランタスの3倍濃度の持効型インスリン製剤です。空打ちや保管方法など医療従事者が知っておくべき注意点とは?

ランタスXR注ソロスター450単位の特徴と医療従事者が押さえるべき注意点

ランタスXRに切り替えても、患者が2単位で空打ちし続けて血糖が乱れるケースが約10%あります。


ランタスXR注ソロスター 450単位 3つのポイント
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3倍濃度・450単位入り

ランタス注(100単位/mL)の3倍濃度(300単位/mL)を1.5mLに充填。1本で450単位が確保され、開封後6週間使用可能。

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空打ちは必ず3単位

1単位あたりの液量が従来の1/3のため、空打ちは2単位ではなく3単位が正しい。誤った手技が約9.5%の患者で確認されている。

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切り替え時の単位に注意

ランタス注→ランタスXR注は「同単位」で切り替え可。逆方向(XR→ランタス注)は血糖低下リスクのため「80%用量」が推奨される。


ランタスXR注ソロスター450単位とは:インスリングラルギン300単位/mLの製剤特性



ランタスXR注ソロスター(以下「ランタスXR」)は、サノフィ株式会社が2015年9月に発売した持効型溶解インスリンアナログ製剤です。有効成分はインスリン グラルギン(遺伝子組換え)で、既存のランタス注ソロスターと同一成分ですが、濃度が100単位/mLから300単位/mLへと3倍に引き上げられています。


1.5mLのカートリッジにインスリングラルギンが450単位充填されており、これがすでにペン型注入器(ソロスター)にセットされた使い捨て製剤として提供されます。日本国外では「Toujeo(トウジェオ)」として米国・カナダ・EU諸国で承認されている製剤と同一です。


濃度が3倍に高まることで1単位あたりの注入液量が従来の1/3(0.0033 mL/単位)になります。これにより、同じ単位数でも皮下に注入される液量が大幅に減少します。


項目 ランタス注ソロスター ランタスXR注ソロスター
濃度 100単位/mL 300単位/mL
容量 3mL 1.5mL
総単位数 300単位/本 450単位/本
1単位あたりの液量 0.01 mL 0.0033 mL


この液量の減少こそが、ランタスXR独自の理学的特性を生み出す鍵です。皮下注射後に形成される無晶性沈殿物の表面積が従来の約1/2に縮小し、インスリングラルギン単量体の吸収速度がより緩やかになります。その結果、血中インスリン濃度のピークがランタス注よりも低く抑えられ、より平坦かつ持続的な薬力学プロファイルが得られます。24時間以上にわたる安定した血糖降下作用が期待できるというわけです。


これが基本です。1本あたりの単位数は「450単位」ですが、これは濃縮による増量であり、1本の「使用期間」や「注射回数」に直結する点は後述の保管方法の項で詳しく解説します。


参考:ランタスXR注ソロスターの発売情報と特徴まとめ(岡山大学病院 糖尿病センター)
https://www.ouhp-dmcenter.jp/project/donats/donats1/


ランタスXR注ソロスター450単位の臨床的メリット:低血糖リスクと体重への影響

日本人糖尿病患者を対象に実施されたEDITION JPプログラム(EDITION JP I試験:1型糖尿病、EDITION JP II試験:2型糖尿病)では、ランタスXRとランタス注を6ヵ月間比較した結果、注目すべき差異が確認されています。


まずHbA1cの改善効果はランタスXRとランタス注で同等でした。血糖コントロール力は落とさずに、別の側面で優位性が示された形です。具体的には、EDITION JP II試験(2型糖尿病患者対象)において、ランタスXR群ではランタス群と比較して24時間低血糖が36%減少、夜間低血糖が59%減少したことが報告されています。


夜間低血糖の発現件数(患者あたりの年間発現件数)を見ると、ランタスXR群では2.18件(28.3%)、ランタス群では4.98件(45.8%)という数字が臨床試験データとして示されています。約半分に抑えられているという事実は、臨床現場において非常に重要な情報です。


つまり夜間低血糖に悩む患者さんには選択肢として有力です。


さらに体重への影響も注目されます。EDITION JP IIの52週後データでは、ランタス注群が平均+0.5kg増加したのに対し、ランタスXR群では平均−0.7kgという結果が出ています。差分として約1.2kgの体重増加抑制が見られた計算です。ただしこれはあくまで両群間の比較であり、ランタスXRが体重を積極的に減少させる薬ではないため、患者への説明は慎重に行う必要があります。


  • 血糖コントロール(HbA1c):ランタス注と同等
  • 24時間低血糖:36%減少(EDITION JP II試験)
  • 夜間低血糖:59%減少(EDITION JP II試験)
  • 体重増加:ランタス注比較でやや少ない(52週で約1.2kg差)
  • 注入操作:5秒保持でよい(ランタス注は10秒)


注入精度が向上したことで、患者が針を抜くまで保持する時間が10秒から5秒に短縮されています。これは患者の注射負担を軽減するうえで小さくない改善です。厳しいところですが、その分「空打ちが3単位に増えた」という新たな注意点も生まれました。


参考:ランタスXR注ソロスター承認取得に関するニュース(糖尿病リソースガイド)
https://dm-rg.net/news/2015/07/017035.html


ランタスXR注ソロスター450単位の空打ち3単位:なぜ2単位では不十分なのか

医療従事者が患者指導の際に最も注意すべき操作上のポイントが「空打ちは3単位」という点です。既存のランタス注ソロスターをはじめ、ほとんどのペン型インスリン製剤では空打ちが2単位に設定されています。そのためランタスXRへの切り替え後も、患者が惰性で2単位のまま操作してしまうケースが発生します。


名古屋掖済会病院の薬剤師らが2017年に実施した後方視的調査(対象患者63名)では、空打ち時の単位数を2単位のまま誤って行っていた患者が9.5%(6症例)に上ることが確認されています。この6症例のうち5症例が65歳以上の高齢者であり、以前に2単位で空打ちする注入デバイスを使用した経験のある患者でした。


なぜ3単位でなければならないのか。その理由は製剤の物理的な特性にあります。ランタスXRは300単位/mLの高濃度製剤であるため、1単位あたりの液量は0.0033 mLです。既存のランタス注の1単位あたり0.01 mLと比べると約1/3です。


通常の注入器で2単位の空打ちをする場合、排出される液量は0.02 mLです。一方、ランタスXRで3単位の空打ちをした場合の液量は0.01 mLで、これが「肉眼で排出を確認するために必要な液量の目安」として設定されています。もし2単位のまま空打ちした場合、排出量は0.0067 mLにしかならず、目視での確認が困難になる場合があります。


同研究では、排出量の実測試験を行った結果、3単位での空打ちは2回目で理論値に達するのに対し、2単位での空打ちは3〜4回目で初めて理論値に達することが明らかになっています。これは初回の使用や針の付け替え直後に、2単位では過少排出になるリスクがあることを示します。


意外ですね。同研究の著者らは「2単位の空打ちを完全に否定するものではないが、少なくとも連続して3回(合計6単位以上)行えば空打ちの目的は達せられる」と結論付けています。ただし臨床現場での指導としては3単位での1回の空打ちを推奨するのが妥当です。


患者指導時に役立つ説明の言葉として、「このインスリンは3倍の濃さなので、出る量が1/3。だから空打ちは3単位に増やしています」というフレーズが覚えやすく、患者にも伝わりやすいでしょう。


参考:ランタスXR注ソロスターの空打ちに関する学術論文(J-STAGE)


ランタスXR注ソロスター450単位の切り替え方法:ランタス注との単位換算と注意点

ランタスXRへの切り替えは、どの製剤から切り替えるかによって初期用量の設定が異なります。医療従事者として正確に把握しておくべき重要な内容です。


ランタス注(100単位/mL)からの切り替え


最も多いケースです。切り替え時の初期用量は「同単位」を目安とします。つまりランタス注を10単位使用していた患者は、ランタスXRも10単位で開始するということです。ランタスXRは1単位あたりの液量がランタス注の1/3ですが、注入器のダイアル表示は単位で統一されているため、単位数の再計算は不要です。3倍・1/3などの計算をする必要はありません。これが条件です。


ただし注意点があります。ランタス注→ランタスXRの同単位切り替えでは、切り替え後に血糖値の上昇がみられる場合があると添付文書に記載されています。これはランタスXRがランタス注よりもピーク作用がさらに平坦化されているため、ランタス注でわずかに得られていたピーク分の血糖降下作用が失われることで一時的な血糖上昇として現れると考えられています。切り替え後しばらくは血糖モニタリングを慎重に行うことが求められます。


ランタスXR注から他の基礎インスリンへの切り替え


逆方向の切り替えには特段の注意が必要です。ランタスXR→ランタス注(または他の基礎インスリン)への切り替えでは、低血糖リスクが高まるため、「低用量からの開始を考慮すること」と添付文書の重要な基本的注意に明記されています。


具体的にどの程度低用量にするか。添付文書には数値の記載がありませんが、米国のランタス注添付文書には「80%の用量が推奨される」と記載があるとサノフィの薬相談室が確認しています。たとえばランタスXRを10単位使用していた患者がランタス注に切り替える場合、目安は8単位になります。


1日2回タイプの基礎インスリンからの切り替え


1日2回投与の基礎インスリンからランタスXRへ切り替える際は、1日総量の80%を目安として投与を開始することが添付文書に規定されています。


切り替え元 切り替え先 初期用量の目安
ランタス注(1日1回) ランタスXR注 同単位(血糖上昇に注意)
他の基礎インスリン(1日1回) ランタスXR注 同単位
基礎インスリン(1日2回) ランタスXR注 1日総量の80%
ランタスXR注 ランタス注または他の基礎インスリン 低用量(目安は80%)


参考:ランタスXR注ソロスターとランタス注ソロスターの違い・切り替え方法(pharmacista)
https://pharmacista.jp/contents/skillup/academic_info/diabetes/3811/


ランタスXR注ソロスター450単位の保管方法・使用期限と薬価:医療現場の実務ポイント

保管方法と使用期限


ランタスXRの保管方法には、ランタス注とは異なる点があります。使用開始前(未開封)は2〜8℃で冷蔵保存し、凍結を避けます。外箱開封後は遮光保存が必要です。


使用開始後については、冷蔵庫に保存せずに遮光保存します。これはランタス注でも同様です。使用中のインスリン製剤を冷蔵庫に戻すことは推奨されません。


使用期限については、ランタスXRは安定性試験(25±2℃)に基づき、使用開始後6週間が上限とされています。ランタス注の4週間と比べて2週間延長されています。


「6週間も使えるということは、廃棄量が増えてコスト増になるのでは?」と思う方がいるかもしれません。実態を計算すると、ランタス注は300単位/本を4週間で使い切るのに対し、ランタスXRは450単位/本を6週間で使います。使用期限内に消費できる単位数の上限は同じ水準であり、廃棄発生量は実質的に変わりません。これは使えそうです。


薬価と1単位あたりのコスト


薬価を比較すると、参考として以下のような数字が提示されています(薬価は改定により変動するため、最新情報は添付文書・薬価基準を参照してください)。


製剤 容量 参考薬価(1本) 1単位あたり
ランタス注ソロスター 300単位/本 約1,189〜2,525円 約8.42円
ランタスXR注ソロスター 450単位/本 約2,078〜3,102円 約6.89円


1単位あたりのコストではランタスXRのほうが安価になります。1本の薬価はランタスXRが高くなりますが、1単位で換算するとランタスXRが有利です。高用量が必要な患者では特に、医療経済的なメリットが生まれる場合があります。これが原則です。


シリンジ抜き取りの禁止


もう一点、医療従事者が知っておくべき絶対ルールがあります。カートリッジからシリンジでインスリンを抜き取ることは絶対に行ってはいけません。通常のシリンジは100単位/mL用に設計されているため、ランタスXRの300単位/mLのカートリッジから抜き取ると、表示単位の3倍量が投与されることになり、重篤な過量投与(低血糖)を引き起こします。


  • シリンジによるカートリッジからの抜き取り禁止(3倍の過量投与になる)
  • 使用開始後6週間超のものは使用しない
  • 使用中は冷蔵庫保存しない(遮光して室温保存)
  • 空打ちを2単位で行わない(3単位が正しい)
  • 1本を複数患者に共用しない


参考:ランタスXR注ソロスター取扱説明書(サノフィ株式会社)
https://www.sanofi.co.jp/assets/dot-jp/pages/images/your-health/patient-support/torisetsu/lantus_xr.pdf


参考:インスリングラルギン(ランタス、ランタスXR)解説(神戸岸田クリニック)
https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/insulin-glargine/






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