強直間代発作にラコサミドを単独で使うと、添付文書違反になります。

ラコサミド錠50mg「サワイ」は、沢井製薬が製造・販売する抗てんかん剤の後発医薬品(ジェネリック)です。先発品はUCBジャパンの「ビムパット錠50mg」であり、2025年12月5日に薬価収載が行われました。一般名はラコサミド(Lacosamide)、薬効分類は抗てんかん剤(日本標準商品分類番号:871139)です。
薬価については、先発品ビムパット錠50mgが1錠217.80円であるのに対し、ラコサミド錠50mg「サワイ」は1錠76.30円と、先発品の約35%の水準です。1日200mg(4錠)を継続服用する場合を想定すると、1日あたりの薬剤費は先発品で871.20円、後発品で305.20円となります。年間に換算すると差額は約20万円規模になり、患者の経済的負担の軽減に直結します。
製剤の性状についても沢井製薬は差別化しています。まず、50mg錠でも両面割線が入っている点は、後発品各社のなかでサワイのみの特徴です。他社の50mg錠には割線がなく、腎機能障害や肝機能障害で用量調節が必要な患者への柔軟な対応が可能になっています。
外形は以下のとおりです。
| 項目 | ラコサミド錠50mg「サワイ」 |
|---|---|
| 色調 | ピンク色 |
| 剤形 | 割線入りフィルムコーティング錠 |
| 識別コード | ラコサミド 50 サワイ |
| サイズ | 9.2×4.3mm、厚さ3.0mm |
| 包装 | PTP100T/バラ200T |
| 有効期間 | 3年 |
半錠に割った後も成分名と含量が識別できる印字がされており、調剤現場でのミスリスクを下げる工夫がされています。バラ包装(200T)もラインナップされているため、施設・在宅問わず使いやすい包装形態が揃っています。
先発品との効能・用法については「同じ」と記載されており、生物学的同等性試験(100mg錠)ではAUCおよびCmaxの90%信頼区間がlog(0.80)〜log(1.25)の範囲内に収まり、同等性が確認されています。これが基本です。
参考リンク(沢井製薬 公式:ラコサミド錠「サワイ」製品情報ページ、製品ポイント・薬価・包装の詳細が確認できます)。
ラコサミド錠「サワイ」(ビムパットのジェネリック医薬品)|沢井製薬 医療関係者向けサイト
効能・効果は2つに分類されています。ひとつは「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」、もうひとつは「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」です。
部分発作については、単剤療法と併用療法の両方が認められています。一方、強直間代発作については、必ず他の抗てんかん薬との併用療法のみが適応であり、添付文書7.4項には「臨床試験において、強直間代発作に対する本剤単独投与での使用経験はない」と明記されています。つまり、強直間代発作に単独で処方することは添付文書違反です。
用法・用量については、成人・小児で異なります。
【成人】
- 開始用量:1日100mg(1日2回に分けて経口投与)
- 維持用量:1日200mg
- 最大用量:1日400mg
- 増量ペース:1週間以上の間隔をあけて、1日用量として100mg以下ずつ増量
【小児(4歳以上)】
- 開始用量:1日2mg/kg(1日2回に分けて)
- 維持用量:体重30kg未満は1日6mg/kg、30〜50kg未満は1日4mg/kg
- 最大用量:体重30kg未満は1日12mg/kg、30〜50kg未満は1日8mg/kg
- 体重50kg以上は成人と同じ用法・用量
増量は必ず1週間以上の間隔をあけることが原則です。急速な増量は副作用リスクを高めます。また、4歳未満の小児・低出生体重児・新生児・乳児に対する臨床試験は実施されていないため、これらへの投与には慎重な判断が求められます。
投与開始時に「まず1日100mgから」という点を読み飛ばし、いきなり維持量の200mgから開始してしまうケースは実臨床でも起こりやすいミスです。開始用量が原則です。
参考リンク(JAPIC収載の電子添文PDF:用法・用量・用量に関連する注意事項の全文が確認できます)。
抗てんかん剤 ラコサミド錠「サワイ」添付文書(JAPIC)
ラコサミドの作用機序は、既存のナトリウムチャネルブロッカーとは明確に異なります。これは使えそうな情報です。
既存のナトリウムチャネルブロッカー(カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギンなど)は、主にナトリウムチャネルの急速な不活性化を促進することで抗てんかん作用を発揮します。これに対してラコサミドは、電位依存性ナトリウムチャネルの緩徐な(スロー)不活性化を選択的に促進します。
この違いが臨床上重要なのは、2つの作用機序が異なるため、カルバマゼピン耐性の部分発作にも有効性を発揮しやすいからです。ラコサミドの緩徐不活性化は、持続的に脱分極しているてんかん病巣内の異常興奮した神経細胞を選択的に抑制します。正常な神経の活動は相対的に保たれやすく、これが既存薬との差別化ポイントのひとつとなっています。
さらに、ラコサミドにはCRMP-2(コラプシン応答メディエータタンパク質-2)への結合という、ナトリウムチャネル非依存の作用機序も存在することが報告されていました。ただし、現在の添付文書では主たる作用機序として前面に記載されているのはナトリウムチャネルの緩徐不活性化です。
薬物動態面でも特筆すべき特性があります。経口投与時の絶対バイオアベイラビリティはほぼ100%と非常に高く、食事の影響もほとんど受けません。食前・食後のどちらでも服用できます。血漿蛋白結合率は15%未満と低く、相互作用リスクが小さい点も他の抗てんかん薬と比べた優位性といえます。半減期は約14時間であり、1日2回投与で定常状態は3日後に達します。
また、代謝に関与する主なCYP分子種はCYP3A4・CYP2C9・CYP2C19です。これらのCYPを強く誘導・阻害する薬との併用時には血中濃度変動への注意が必要ですが、既存のナトリウムチャネルブロッカーと比べるとCYP関連相互作用の影響は比較的小さいとされています。
参考リンク(日経メディカル:ラコサミドの作用機序と臨床的位置づけに関する解説記事)。
Naチャネルを緩徐に不活性化する抗てんかん薬に点滴静注製剤が登場|日経メディカル
ラコサミドには「てんかん薬らしい副作用」以外に、心臓への作用という特徴的なリスクがあります。厳しいところですね。
重大な副作用(添付文書 11.1項) は以下のとおりです。
- 房室ブロック、徐脈、失神(いずれも1%未満)
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも頻度不明)
- 薬剤性過敏症症候群(頻度不明)
- 無顆粒球症(頻度不明)
このうち房室ブロック・徐脈・失神は、ラコサミドのPR間隔延長作用に起因します。心伝導障害や重度の心疾患(心筋梗塞・心不全等)の既往患者、ナトリウムチャネル異常(ブルガダ症候群等)のある患者、またはPR間隔延長を起こしやすい薬を併用している患者に対しては、投与開始時および投与中の心電図検査が必須です。
頭痛や脈拍不整、めまいなどを訴えた際に「てんかん薬の一般的な副作用」として見過ごすと、房室ブロックの見落としにつながる危険があります。PR間隔延長作用を持つ薬剤(一部の抗不整脈薬、β遮断薬など)との併用には特段の注意が必要です。
頻度の高い副作用(その他) を以下に整理します。
| 頻度 | 主な副作用 |
|---|---|
| 3%以上 | 浮動性めまい(17.8%)、頭痛、傾眠 |
| 1〜3%未満 | 記憶障害、振戦、運動失調 |
| 1%未満 | うつ病、幻覚、攻撃性、激越、眼振、不眠症など |
浮動性めまいは17.8%という高頻度で発現します。投与開始時・増量後に患者から「ふらつく」「酔ったような感じがする」と訴えられた場合、まず本剤の影響を考慮することが大切です。
もうひとつ見落とされやすいのが精神症状です。易刺激性、興奮、攻撃性等が現れ、自殺企図に至ることもあります。199のプラセボ対照臨床試験のデータ分析では、抗てんかん薬服用群の自殺念慮・自殺企図の発現リスクはプラセボ群の約2倍(服用群0.43%、プラセボ群0.24%)と算出されており、1,000人あたり約1.9人多いとされています。患者および家族に対して、精神症状発現の可能性を十分に説明し、緊密に連絡を取り合うよう指導することが必要です。精神症状への説明は必須です。
また、複視・霧視などの眼障害も無視できません。400mg/日投与群では眼に関する副作用発現率が12.2%に達するデータがあり、診察時に眼障害の問診を行うことが求められています。
ラコサミドは腎排泄型と代謝型の両方をもつ薬剤であり、特定の患者背景では用量上限の引き下げが必要になります。これを誤ると過量投与リスクが生じます。
腎機能障害患者への対応(添付文書7.1・9.2項)
クレアチニンクリアランス(CCr)が30mL/min以下の重度・末期腎機能障害患者では、成人の1日最高用量を300mgに設定し、慎重に投与します。通常の最高用量400mgより1段階引き下げるということです。
さらに、血液透析を受けている末期腎機能障害患者では、1日用量に加えて、血液透析後に最大で1回用量の半量の追加投与を考慮することが記されています。これは、ラコサミドが血液透析によって除去可能であるためです(過量投与時の処置にも血液透析が活用できます)。透析患者で「なぜ透析後に追加投与?」と疑問を持った場合、透析による除去を補うための措置だと理解できます。
薬物動態データによると、CCr<30mL/minの重度腎機能低下者ではAUC0-tが腎機能正常者と比べ約59%高くなることが確認されています。代謝物O-脱メチル体の蓄積も重度では正常者の4.6倍に達するため、用量管理は慎重に行う必要があります。
肝機能障害患者への対応(添付文書2.2・7.2・9.3項)
重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者は禁忌です。これが原則です。軽度・中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類AおよびB)の患者については投与可能ですが、成人の1日最高用量を300mgとし、慎重に投与することが求められています。
外来患者であっても、腎機能・肝機能の定期的なモニタリングを行い、数値の変化に合わせて用量を再評価するフローを組んでおくことが適切な管理につながります。
なお、妊婦・授乳婦への対応については、動物実験でラットへの胎児移行性とヒト乳汁中への移行が報告されているため、治療上の有益性と危険性を慎重に評価した上での投与判断が求められます。
参考リンク(薬物治療塾 ラコサミドPK特徴づけシート:腎機能障害・肝機能障害時の薬物動態変化と用量調整の根拠が整理されています)。
ラコサミド PK特徴づけシート|薬物治療塾(UMIN)
ラコサミドの投与管理において、開始時の漸増ルールと同様に見落とされやすいのが、中止時の漸減ルールです。意外ですね。
添付文書8.1項には「連用中における投与量の急激な減量ないし投与中止により、てんかん発作の増悪又はてんかん重積状態があらわれることがある」と明記されており、投与を中止する場合には少なくとも1週間以上かけて徐々に減量するよう求められています。
他の抗てんかん薬から切り替える場合や、副作用対応で中断を検討する場合にも、この「1週間以上の漸減」を守らずに急に中止してしまうと、重篤なてんかん重積状態を引き起こすリスクがあります。外来での電話処方や病棟での指示変更時にも、必ず漸減計画を明確に記載することが大切です。
患者指導の場面で特に強調すべき点も整理しておきましょう。
服薬指導で伝えるべき主なポイント:
- 飲み忘れた場合は気づいた時に服用するが、次の服用時間が6時間以内なら1回スキップする(2回分を一度に飲まない)
- めまい・霧視・眠気・注意力の低下が生じることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械操作には医師の判断が必要であること
- 気分の落ち込み、攻撃性・易刺激性など精神症状が現れた場合はすぐに医師へ報告すること
- 自分の判断で服用を中止しないこと
「めまいは慣れるから大丈夫」と患者が自己判断で対処しているケースも珍しくありません。しかし、添付文書では自動車運転の適否は「関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断」するとされています。患者任せにするのではなく、医師が明確に指示することが求められています。
また、ラコサミドには欠神発作モデル動物で発作増悪が報告されています(非臨床試験)。欠神発作のある患者への投与は適応外であるだけでなく、発作を悪化させる可能性がある点も頭に入れておく必要があります。欠神発作との混在が疑われる患者では、発作タイプの精査なしに処方しないことが原則です。
参考リンク(PMDA:ラコサミド錠「サワイ」リスク管理計画(RMP)。患者向け医薬品ガイドと安全性検討事項の全容を確認できます)。
ラコサミド錠「サワイ」リスク管理計画(RMP)|PMDA