プロゲスチン製剤一覧|種類・適応・使い分けの要点

プロゲスチン製剤は世代や成分によって適応・副作用が大きく異なります。黄体ホルモン活性・アンドロゲン活性・乳がんリスクの違いまで、医療従事者が押さえるべきポイントを網羅的に解説。あなたの患者に最適な選択ができていますか?

プロゲスチン製剤一覧|種類・適応・副作用・使い分けの要点

「プロゲスチン製剤はどれを使っても似たようなもの」と思っていると、乳がんリスクを1.69倍に引き上げる成分を選んでいるかもしれません。


この記事の3つのポイント
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プロゲスチン製剤は「世代」と「活性プロファイル」で選択が変わる

第1〜4世代の違い、アンドロゲン活性・黄体ホルモン活性のバランスが適応や副作用を左右します。

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同じ「黄体ホルモン製剤」でも乳がんリスクは成分ごとに異なる

天然型プロゲステロン(エフメノ)はリスク比1.0。一方、一部の合成プロゲスチンはリスク比1.69という研究報告があります。

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2025年、国内初のプロゲスチン単剤避妊薬(POP)が承認

スリンダ錠28(ドロスピレノン4mg)が2025年6月に発売。血栓リスクの高い患者への選択肢が大きく広がりました。


プロゲスチン製剤の基本:プロゲステロンとの違いと分類の考え方



黄体ホルモンを剤として整理するとき、まず「プロゲステロン」と「プロゲスチン」の区別から押さえておく必要があります。体内で卵巣(黄体)から天然に産生されるものがプロゲステロン、人工的に合成されたものをプロゲスチンといいます。これらを合わせてプロゲストーゲン(またはゲスターゲン)と総称するのが正確な用語です。


プロゲスチン製剤は大きく「単剤製剤」と「エストロゲンとの配合製剤」の2種類に分かれます。単剤製剤の代表は、ジエノゲスト(ディナゲスト®)・MPA(プロベラ®・ヒスロン®)・天然型プロゲステロン(エフメノ®)など。配合製剤には低用量経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が含まれます。


日常臨床での適応は実に幅広く、無月経・機能性子宮出血・黄体機能不全・月経困難症・子宮内膜症・子宮腺筋症・ホルモン補充療法(HRT)・経口避妊など多岐にわたります。つまり「婦人科疾患全般」で関わる薬剤群といえます。


「どれも黄体ホルモン」と一まとめに考えるのは危険です。成分ごとにアンドロゲン活性・黄体ホルモン活性・エストロゲン活性・抗アンドロゲン活性・抗ミネラルコルチコイド活性が異なり、それが副作用プロファイルと適応の使い分けに直結するからです。


以下の表は、主なプロゲスチン製剤の活性プロファイルを整理したものです。


成分名 世代 黄体ホルモン活性 アンドロゲン活性 抗アンドロゲン活性 抗MR活性
ノルエチステロン(NET) 第1世代 中〜強 あり(弱〜中) なし なし
レボノルゲストレル(LNG) 第2世代 あり(中) なし なし
デソゲストレル(DSG) 第3世代 あり(弱) なし なし
ジエノゲスト(DNG) なし あり(中程度) なし
ドロスピレノン(DRSP) 第4世代 なし あり(強) あり(強)
メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA) あり(弱) なし なし
ジドロゲステロン(DDG) なし なし なし
プロゲステロン(天然型) なし なし あり(弱)


活性プロファイルが基本です。この視点を持つことで、患者背景に合わせた選択が自然にできるようになります。


参考文献:性ステロイドホルモン製剤の種類と特徴(医学と薬学)


プロゲスチン製剤一覧:主な製品と適応症のまとめ

ここでは、国内で実際に使用されている主なプロゲスチン製剤を「単剤」「配合剤」に分けて整理します。実臨床でよく処方される製品名と保険適応を押さえておくことは、薬剤選択のスピードに直結します。


まず単剤製剤から見ていきましょう。


  • 🔹 ジエノゲスト(ディナゲスト® 0.5mg・1mg、ジエノゲスト錠各社後発品):子宮内膜症・子宮腺筋症の疼痛改善(1mg)、月経困難症の治療(0.5mg)。2008年発売の国産プロゲスチン製剤で、アンドロゲン活性がなく長期使用にも比較的適しています。
  • 🔹 メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA):プロベラ® 2.5mg・5mg、ヒスロン® 5mg:機能性子宮出血・無月経・黄体機能不全・子宮内膜症などに適応。また高用量のヒスロンH® 200mgは子宮体がんや乳がんへの抗腫瘍療法に使用されます。
  • 🔹 天然型プロゲステロン(エフメノ® カプセル100mg):HRTにおけるエストロゲン補充療法の子宮内膜保護目的で用いられます。2021年発売で、天然型ゆえに乳がんリスクを上昇させないとする研究データが注目されています。
  • 🔹 プロゲステロン注射製剤(プロゲホルモン® 筋注10mg・25mg):習慣性流産・切迫流産・黄体機能不全への適応。腟用製剤(ルティナス® 腟錠100mg、ウトロゲスタン® 腟用カプセル200mg)は体外受精・胚移植時の黄体補充として広く用いられます。
  • 🔹 レボノルゲストレル子宮内システム(ミレーナ® 52mg):子宮内腔に5年間留置し、局所的に低用量のLNGを放出。過多月経・月経困難症・子宮腺筋症に対する選択肢です。全身への血中濃度はきわめて低く抑えられるため、全身性副作用が少ない点が特徴です。
  • 🔹 レボノルゲストレル錠(ノルレボ® 1.5mg):性交後72時間以内に服用する緊急避妊薬です。
  • 🔹 ドロスピレノン(スリンダ® 錠28):2025年5月に国内で初めて承認されたプロゲスチン単剤経口避妊薬(POP)。ドロスピレノン4mgを24日間、プラセボ4日間の周期投与です。


配合製剤(OC・LEP)については、含有するプロゲスチンの世代によって以下のように分類できます。


世代 プロゲスチン成分 代表製品名 主な特徴
第1世代 ノルエチステロン(NET) ルナベルLD®・ULD、ノリニール® 不正出血抑制作用が比較的強い。アンドロゲン作用がやや残存
第2世代 レボノルゲストレル(LNG) トリキュラー®、ラベルフィーユ® 黄体ホルモン活性・アンドロゲン活性ともに中〜強。古典的なタイプ
第3世代 デソゲストレル(DSG) マーベロン®、ファボワール® アンドロゲン活性が相対的に低い。ニキビに有利
第4世代 ドロスピレノン(DRSP) ヤーズ®、ヤーズフレックス®、ドロエチ® 抗アンドロゲン・抗MR活性あり。むくみ・PMS・ニキビへのアドバンテージ


これが基本の一覧です。製品名だけでなく「含有プロゲスチン成分+活性プロファイル」をセットで覚えておくと、処方選択の根拠が明確になります。


プロゲスチン製剤の使い分け:適応別に考える選択の軸

製剤の一覧を把握したうえで、次に重要なのが「どの状況でどれを選ぶか」という臨床的な使い分けです。目的別に整理すると、選択の軸が見えやすくなります。


🔵 子宮内膜症・子宮腺筋症の疼痛コントロール


第一選択として位置づけられるのがジエノゲスト(ディナゲスト® 1mg 1日2回)です。865人を対象にした研究では、投与6カ月時点で78.4%に疼痛の改善が認められています(Techatraisak K, et al. BMC Women's Health. 2019)。ジエノゲストは子宮内膜組織への直接的な抗増殖作用を持ちながら、全身のエストロゲン環境をあまり低下させないため、偽閉経療法(GnRHアゴニスト)のような強い低エストロゲン症状・骨密度低下が起こりにくい点が臨床的に評価されています。


ただし、チョコレート嚢胞が5cm以上と大きい場合や、手術後の術後補助療法を必要とする場面では、GnRHアゴニストとの使い分けを考慮します。


🔵 月経困難症


LEP製剤(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)が保険適応の中心となります。ルナベルLD®・ULD®(ノルエチステロン含有)、ヤーズ®・ドロエチ®(ドロスピレノン含有)、フリウェル®(ノルエチステロン含有)などが使われています。LEP製剤はディナゲスト0.5mgとともに、月経困難症への保険収載製品として処方可能です。血栓リスクがある患者や、エストロゲン禁忌(前兆のある片頭痛、35歳以上で1日15本以上の喫煙、手術前4週間以内など)にはLEPではなくプロゲスチン単剤を検討します。


🔵 過多月経


ミレーナ®(LNG-IUS 52mg)が有力な選択肢です。局所放出型なので全身の血中LNG濃度は低く、5年間の長期効果が期待できます。過多月経に対する出血量の減少効果は臨床試験でも確立されており、挿入後1年程度で多くの患者が無月経ないし少量出血へ移行します。


🔵 HRT(ホルモン補充療法)への黄体ホルモン追加


子宮を有する更年期女性にエストロゲンを単独投与すると、子宮内膜増殖症・子宮体がんリスクが上昇します。このリスクを抑制するために黄体ホルモン製剤を併用します。製剤の選択は乳がんリスクの観点から変化しつつあり、現在は天然型プロゲステロン(エフメノ®)またはジドロゲステロン(デュファストン®)が推奨されることが増えています。乳がんリスクが原則です。


  • ✅ 天然型プロゲステロン(エフメノ®):乳がんリスク比 1.0(上昇なし)
  • ✅ ジドロゲステロン(デュファストン®):天然型に近い構造で低リスク
  • ⚠️ 合成プロゲスチン(MPA等):HRTへの使用でリスク比が1.69に上昇したとする報告あり


参考:冬城産婦人科医院「HRTで用いる黄体ホルモン製剤は天然型がおすすめ」
HRTに用いる黄体ホルモン製剤の選択(冬城産婦人科医院)


プロゲスチン製剤と乳がんリスク:成分によって異なるエビデンス

「黄体ホルモン製剤は乳がんリスクに関係ない」という認識は現在では修正が必要です。これは多くの医療従事者が見落としがちな点です。


2025年にJAMA Oncologyに掲載されたスウェーデンの大規模コホート研究(対象:209万5,130人、追跡:2,102万人年)では、OC/LEP使用者全体で乳がんリスクのHRは1.24(95%CI: 1.20–1.28)と有意な上昇を示しました(Hadizadeh F, et al. JAMA Oncol. 2025;11(12):1497-1506)。特に注目すべきは成分による差異で、以下のように整理されます。


製剤・成分 乳がんリスク(HR) 95%CI
デソゲストレル単独経口製剤(POP) 1.18 1.13–1.23
デソゲストレル配合OC 1.19 1.08–1.31
エトノゲストレルインプラント 1.22 1.11–1.35
レボノルゲストレル配合OC 1.09 1.03–1.15
LNG-IUS(ミレーナ) 1.13 1.09–1.18
ドロスピレノン配合OC 1.04(有意差なし) 0.96–1.12
MPA注射製剤 有意差なし


ドロスピレノン含有製剤(ヤーズ®・ドロエチ®など)では統計的に有意なリスク上昇が認められなかった点が注目されます。これはデンマークの先行研究とも一致する結果です。これは重要な知見です。


ただし、HRが1.09〜1.22の上昇は一般女性の10年間の乳がん発症リスク(約1.5〜2%)に対してわずかな絶対リスク増加にとどまります。望まない妊娠を防ぐ利益・卵巣がん・子宮体がんに対する保護作用も同時に確立されているため、リスク・ベネフィットを総合して個別に判断することが前提です。


HRTの文脈では、別のエビデンスがあります。フランスのE3N研究では、天然型プロゲステロン(プロゲステロンそのもの)をHRTに使用した場合のリスク比は1.0と上昇しなかった一方、合成プロゲスチン(MPA等)では1.69という数値が示されています。


つまり「黄体ホルモンなら何でも同じ」ではありません。患者のリスク因子・使用目的に応じて成分を選ぶことが、医療の質に直結します。


参考:OC/LEP種類と乳がんリスク(JAMA Oncol. 2025)解説
プロゲスチン種類別の乳がんリスク研究(WFCグループ)


プロゲスチン製剤の副作用と注意点:見落とされがちな3つの落とし穴

プロゲスチン製剤の処方では、よく知られている副作用(不正出血・頭痛・消化器症状など)に加え、臨床現場で見落とされやすい点が3つあります。


⚠️ 落とし穴①:ジエノゲストの長期投与と骨密度


ジエノゲストは「全身のエストロゲンをあまり下げない」とされますが、18歳未満の思春期患者に52週間投与した研究では、骨密度が−1.2%低下したことが確認されています(Ebert AD, et al. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2017)。最大骨塩量に達していない年齢(概ね25歳以下)への1年以上の長期投与には注意が必要です。骨密度が条件です。特に月経困難症で思春期女性に処方する際は、定期的な骨密度評価を検討しましょう。


⚠️ 落とし穴②:プロゲスチン単剤製剤は避妊効果がない場合がある


ジエノゲスト(ディナゲスト®)は「排卵を抑制することがある」製剤ですが、避妊薬として承認されていません。低用量ピル(OC)と異なり、避妊効果は保証されていません。患者への説明なしに「ピルみたいなもの」と伝えると避妊失敗につながります。コンドームの使用等を患者に明確に伝えることが必須です。


低用量ピルと同じ認識で処方説明をしているケースは少なくありません。それは避妊の失敗につながります。


⚠️ 落とし穴③:プロゲスチン単剤製剤で子宮頸がんが見逃されるリスク


ジエノゲストをはじめとするプロゲスチン単剤製剤は不正出血が生じやすく、これが子宮頸がんや子宮体がんの症状(不正出血)を「薬の副作用」として見逃すリスクにつながります。日本医事新報(2020)での推奨では、プロゲスチン単剤処方時には子宮頸がん検診(2年に1回の対策型検診)の定期受診を患者に指導することが明記されています。検診の継続が前提です。


また、LEP製剤を含む配合製剤では血栓症が最重要副作用として位置づけられます。特に手術前4週間以内・前兆のある片頭痛・35歳以上で1日15本以上喫煙する患者への投与は「禁忌」であり、40歳以上・高血圧症患者は「慎重投与」の対象です。こうした禁忌・慎重投与の確認は、処方前の問診票で漏れなく行う体制を整えることが望まれます。


参考:プロゲスチン製剤処方の実際(日本医事新報)
血栓リスク患者へのプロゲスチン単剤療法の使い方(日本医事新報)


2025年以降のプロゲスチン製剤:新承認・新潮流と今後の選択肢

2025年は国内のプロゲスチン製剤をめぐる環境が大きく変化した年として記憶されるでしょう。この変化は使えそうです。


🆕 スリンダ®錠28(ドロスピレノン4mg)の国内承認・発売


2025年5月に製造販売が承認、同年6月30日に発売されたスリンダ®錠28は、国内初のプロゲスチン単剤経口避妊薬(Progestin-Only Pill:POP)です。海外では2025年1月時点ですでに62か国で承認済みであり、日本は世界水準から大きく遅れていた状況でした。


スリンダ®の最大の臨床的意義は、エストロゲンを含まないため血栓リスクを大幅に低減できる点にあります。WHOガイドラインでも、POPはCOC(合剤)に比べて静脈血栓塞栓症リスクが有意に低く、喫煙者・肥満・高血圧・弁膜症・DVT/PE既往の女性でも使用可能とされています。これまで「エストロゲン禁忌」の患者に対して経口避妊薬の選択肢がほぼなかった状況が、大きく改善されました。


投与法は、ドロスピレノン4mgを24日間服用したのち4日間プラセボを服用する周期投与法です。ドロスピレノンは第4世代プロゲスチンで抗アンドロゲン作用・抗ミネラルコルチコイド作用を持ちます。また2025年のJAMA Oncol研究でも、ドロスピレノン配合製剤は乳がんリスクの有意な上昇が認められなかった成分の一つです(HR 1.04, 95%CI: 0.96-1.12)。


📌 HRT領域でのエフメノ®定着と天然型プロゲステロン志向


2021年発売のエフメノ®カプセル(天然型プロゲステロン)はHRT領域で急速に普及が進んでいます。天然型プロゲステロンが経口で使いにくかった理由は、初回通過効果による生体内利用率の低さでした。エフメノ®はマイクロナイズド化(微粒子化)技術によってこの問題を解決し、1日1回就寝前服用で十分な子宮内膜保護効果を発揮します。


なお、就寝前投与が推奨される理由として「服用後の眠気」という副作用があります。これを利点として捉え、HRT中の睡眠改善効果を期待して使われるケースもあります。意外な利点ですね。


今後の注目点としては、OC/LEP・POP・HRTいずれの領域においても「プロゲスチンの種類によるリスク層別化」が処方判断の軸になっていくことが予想されます。「黄体ホルモンはどれも同じ」という考え方から脱却し、成分ごとの特性と患者リスクを照合したうえで選択する精度の高い処方が、標準となっていくでしょう。


参考:国内初のプロゲスチン単剤経口避妊薬承認情報
国内初のプロゲスチン単剤避妊薬スリンダ承認情報(日本家族計画協会)






【第2類医薬品】アレジオン20 48錠