「プロマック顆粒はジェネリックではないので、後発品として変更調剤できません。」

ポラプレジンク顆粒15%は、亜鉛含有胃潰瘍治療剤として先発品プロマック顆粒15%(ゼリア新薬工業)の後発品として複数のメーカーが製造・販売してきました。しかし、2022年以降、複数のメーカーが相次いで製造販売中止を発表しています。
まず陽進堂(YD)が2022年9月に製造販売中止を案内し、在庫消尽は2022年10月〜11月上旬とされました。経過措置期間終了は2024年3月末日でした。次に日本ジェネリック(長生堂製薬製造)のポラプレジンク顆粒15%「CH」が、出荷停止状態から2024年1月に正式な販売中止を発表しました。経過措置期間は2025年3月31日(予定)です。
日新製薬のポラプレジンク顆粒15%「NS」については、0.5g×700包の包装規格が2023年12月12日に販売中止を告知し、2024年5月1日に実施されました。0.5g×140包の規格については出荷継続の方針が示されていましたが、供給状況は随時変動しています。
つまり、複数の後発品が次々と市場から消えているということですね。
この背景には、2020年以降に表面化した後発品メーカーの品質不正問題や製造体制の問題があります。特定メーカーへの行政処分による生産停止が連鎖的に供給不安を引き起こし、その影響が今もなお継続しています。医療機関や薬局では採用品の確保が困難な状況が続いており、処方変更の対応は急務といえます。
医療用医薬品供給状況データベース(DSJP):ポラプレジンク顆粒15%「NS」の供給状況詳細
日本ジェネリックからの販売中止案内では、代替品としてゼリア新薬工業の「プロマック顆粒15%」が紹介されています。有効成分・含量・剤形はいずれも同一(ポラプレジンク15%顆粒)であり、薬理学的には等価な代替が可能です。
ただし、ここに大きな落とし穴があります。
プロマック顆粒15%は「先発品」です。後発品ではありません。この事実を見落とすと、処方対応で重大なミスが発生します。薬剤師が後発品の処方箋を受け付けた際、在庫の都合で「同成分だから」とプロマック顆粒15%に変更調剤することは、原則として認められません。先発品への変更には医師への疑義照会と処方箋の変更が必要です。
薬価の違いも把握が必要です。
| 製品名 | 分類 | 薬価(1g) |
|---|---|---|
| プロマック顆粒15%(ゼリア新薬) | 先発品 | 38.50円/g |
| ポラプレジンク顆粒15%「NS」(日新製薬) | 後発品 | 29.70円/g |
| ポラプレジンク顆粒15%「CH」(長生堂製薬) | 後発品 | 31.80円/g |
1日投与量は通常2包(1g)ですから、先発品のプロマック顆粒に切り替えると、1日あたりの薬剤費が約9〜17円高くなる計算になります。わずかな差に思えるかもしれませんが、長期投与の患者では年間で患者負担に影響します。
先発品への処方変更が必要な場合は、医師への確認を経て処方箋の銘柄を明示した上で調剤することが基本です。
KEGG Medicus:ポラプレジンク全製品の薬価・先後発品分類一覧
経過措置期間とは、製造販売が中止された医薬品が薬価基準から即座に削除されるのではなく、医療機関や薬局の在庫処理・移行期間として設けられる猶予期間です。この期間内であれば、在庫品を使用して保険請求することが可能です。
長生堂製薬製「ポラプレジンク顆粒15%「CH」」の経過措置期間は2025年3月31日まで(予定)とされています。陽進堂製「YD」は経過措置期間が2024年3月末日でした。これらの期間を過ぎると、同薬を調剤・請求した場合に査定対象となります。
経過措置期間に注意が必要です。
現在(2026年3月)時点では、「CH」の経過措置期間は終了しています。薬局・医療機関で「CH」の在庫が残っていたとしても、すでに保険請求はできない状態です。在庫確認と保険請求可否の確認を今すぐ実施してください。
また、電子処方箋を運用している薬局では、経過措置終了医薬品の調剤結果登録ができないことが確認されています。経過措置期間内に調剤した場合でも、調剤結果の登録日が経過措置期間を過ぎている場合はエラーとなります。これも見落とされがちなポイントです。
経過措置が終了したら代替品への完全移行が条件です。
ポラプレジンク顆粒が入手困難な場合、もうひとつの選択肢として口腔内崩壊錠(OD錠)への変更があります。主な製品は沢井製薬の「ポラプレジンクOD錠75mg「サワイ」」(薬価14.3円/錠)や長生堂製薬の「ポラプレジンクOD錠75mg「JG」」(薬価9.3円/錠)などです。
用量換算の計算式は以下の通りです。
この換算を間違えると、患者への投与量が変わってしまいます。
OD錠への変更で薬価が大幅に下がる点はメリットです。特に「JG」は9.3円/錠と、顆粒後発品の29.7〜31.8円/gと比較してもかなり安価です。患者の経済的負担軽減という観点でも、OD錠への移行は合理的な選択肢といえます。
ただし、OD錠は水なしでも服用できるよう設計されていますが、服薬指導上は「少量の水と一緒に服用することが望ましい」と案内するのが安全です。また、錠剤の剤形変更は医師の指示が必要であるため、薬剤師が独断で変更することは認められていません。剤形変更を伴う代替薬の使用では、必ず処方医に連絡し処方箋の変更を得ることが前提です。
処方変更の際は疑義照会が必須です。
また、OD錠にも「粉砕して経管投与可能か」という問い合わせが現場では出てきます。ポラプレジンクOD錠は通常の錠剤とは異なる製剤設計のため、粉砕・懸濁投与の可否については各メーカーへ個別確認することを推奨します。「顆粒の方が経管投与に使いやすい」と思い込んで顆粒にこだわる前に、OD錠の簡易懸濁の可否を確認する方が選択肢を広げやすい場合があります。
代替品への切り替えに集中していると見落としがちですが、ポラプレジンク(プロマック)の重要な副作用として「銅欠乏症」があります。2016年11月22日に厚生労働省の通達によって添付文書の「重大な副作用」として新たに追記されたものです。
ポラプレジンク1包(0.5g)に含まれる亜鉛量は約16.9mgです。通常1日2回服用では、1日あたりの亜鉛摂取量は33.8mgになります。これは成人男性の亜鉛推奨摂取量(約10mg/日)の3倍以上に相当します。
数字として大きいですね。
亜鉛と銅は腸管で吸収を競合するため、亜鉛の過剰摂取は銅の吸収を阻害します。銅欠乏になると、汎血球減少(白血球・赤血球・血小板すべての減少)や貧血が起こります。特に栄養状態不良の患者では、食事からの銅摂取量がもともと少ないため、ポラプレジンク投与だけで銅のバランスが崩れるリスクがあります。
栄養状態不良の患者が要注意です。
代替品に切り替える際も、長期投与患者では定期的な血液検査で銅・亜鉛値、白血球数・血算を確認することが望ましいです。外来での継続処方では見落とされやすいリスクなので、処方薬が変わるタイミングでこの点を改めて患者情報に反映させることをお勧めします。
また、ポラプレジンクは保険適応が「胃潰瘍」のみですが、社会保険診療報酬支払基金の通達(保医発0928第1号)により「味覚障害」に対する使用も審査上認められています。2019年の調査では、日本の耳鼻科医の約8割が味覚障害に亜鉛製剤を使用し、その多くがポラプレジンクを処方していました。顆粒の供給が安定しない現状では、OD錠や他の亜鉛製剤(ノベルジン等)への切り替えも選択肢に入ります。この適応外使用の継続患者についても、代替薬への切り替えが必要なケースがあることを念頭に置いてください。
厚生労働省:ポラプレジンクの「使用上の注意」改訂の周知について(銅欠乏症に関する通達)
社会保険診療報酬支払基金:ポラプレジンクの味覚障害への使用に関する審査事例
販売中止の情報を正確に把握した上で、医療機関・薬局が具体的に取るべき行動をまとめます。まず確認が必要なのは「現在採用している製品の供給状況と経過措置期間の確認」です。採用品が経過措置期間内かどうか、各メーカーのウェブサイトやDSJP(医療用医薬品供給状況データベース)を使って定期的に確認することが出発点です。
次のステップは処方の整理です。
薬局薬剤師にとっては、在庫管理と患者への事前説明のタイミングも重要です。患者から「いつも飲んでいる薬と見た目が違う」「メーカーが変わった」などの疑問が生じやすいため、変更前に「同じ成分の薬に変わる」という説明を丁寧に行うことがトラブル防止になります。
患者説明を先に行うのが基本です。
さらに、在庫切れによる急な処方変更で薬名を誤認するリスクがあります。「プロマック」と「ポラプレジンク」を別物と混同する患者やスタッフが現場では存在します。処方変更の記録と患者情報の更新を確実に行うことが、ヒヤリ・ハット防止の観点からも重要です。供給不安の続く現状では、こうした変更が重なりやすい環境にあることを組織全体で共有しておく必要があります。
DSJP:ポラプレジンク顆粒15%「NS」の供給停止・販売中止詳細情報