シクロスポリンと同時に処方されると、ピタバスタチンの血中濃度が最大6.6倍に跳ね上がります。

ピタバスタチン錠はHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)に分類され、効能・効果は「高コレステロール血症」および「家族性高コレステロール血症」の2つです。日本では先発品リバロ®をはじめ多数のジェネリック製品が流通しており、1mg・2mg・4mgの3規格が利用可能です。いずれも処方箋医薬品に指定されています。
成人への通常用法は、ピタバスタチンカルシウムとして1〜2mgを1日1回経口投与することです。LDL-コレステロール値の低下が不十分な場合には増量が可能ですが、最大投与量は1日4mgまでとされています。この4mgという上限は重要です。海外臨床試験において8mg以上の投与が横紋筋融解症関連有害事象の発現により中止されているという事実があり、投与量の増加と副作用リスクの関係は添付文書に明確に記載されています。
一点、多くの医療従事者が見落としがちなのが食事との関係です。添付文書の薬物動態データ(16.2.1項)によると、食後投与ではTmaxの遅延とCmaxの低下が観察されました。ただし、食後投与と空腹時投与でAUCに大きな差は認められていません。つまり血中への総暴露量はほぼ同等ということですね。服用タイミングに関する添付文書上の制限は特になく、食前・食後を問わず服用できるのが実態です。
投与前の確認事項として、添付文書8.1項には「あらかじめ高コレステロール血症治療の基本である食事療法を行い、更に運動療法や、高血圧・喫煙等のリスクファクターの軽減も十分考慮すること」と明記されています。薬物療法はあくまで非薬物療法との組み合わせで効果を最大化するものです。これが基本です。また8.2項では、投与開始から12週以内に1回以上の肝機能検査実施が義務づけられており、それ以降も半年に1回程度の定期検査が求められています。
【JAPIC】ピタバスタチンカルシウム錠 添付文書PDF(効能・効果、用法・用量、薬物動態データを含む)
添付文書2項に列記された禁忌は、以下の4つです。
| 禁忌項目 | 理由・根拠 |
|---|---|
| 本剤成分への過敏症の既往歴のある患者 | アレルギー反応リスク |
| 重篤な肝障害または胆道閉塞のある患者 | 血漿中濃度上昇・肝障害悪化のおそれ |
| シクロスポリンを投与中の患者 | CmaxとAUCの著明な上昇による重篤有害事象 |
| 妊婦または妊娠している可能性のある女性・授乳婦 | 動物実験での死亡例・胎児への奇形リスク |
中でも臨床現場で特に注意を要するのが、シクロスポリンとの併用禁忌です。シクロスポリンは臓器移植後の拒絶反応予防や自己免疫疾患の治療に使われる薬剤ですが、これとピタバスタチンを同時に投与すると、シクロスポリンがピタバスタチンの肝臓への取り込みトランスポーター(OATP1B1等)を阻害します。その結果、ピタバスタチンの血漿中CmaxがなんとP6.6倍、AUCが4.6倍にまで上昇することが薬物動態試験で確認されています。これは痛いですね。血中濃度がここまで跳ね上がれば、急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症などの重篤な有害事象のリスクが急激に高まります。
肝障害のある患者への投与についても注意が必要です。肝硬変患者(外国人データ)では、Child-Pugh grade Aでは健康成人と比べてCmaxが1.3倍・AUCが1.6倍であるのに対し、Child-Pugh grade Bではなんと Cmaxが2.7倍・AUCが3.9倍にまで上昇します。重篤な肝障害は禁忌ですが、Child-Pugh grade B相当の中等度肝障害でもこれほど暴露量が増加するため、「重篤ではないから問題ない」という判断は危険です。肝障害のある成人に投与する場合は、開始投与量を1日1mgとし、最大投与量は1日2mgまでとすることが添付文書7.1項に明示されています。
妊娠・授乳への禁忌も見過ごせません。動物実験(ラット)での周産期投与で母動物の死亡が認められており、ウサギでは0.3mg/kg以上の器官形成期投与でも母動物の死亡が確認されています。ヒトでは他のHMG-CoA還元酵素阻害剤で妊娠3ヵ月以内の服用により胎児に先天性奇形が報告されています。妊娠の可能性がある女性に処方する場合は、必ず事前確認が必要です。
【KEGG】ピタバスタチンCa 添付文書情報(禁忌・相互作用詳細・薬物動態データ収録)
ピタバスタチンの特徴として、添付文書10項冒頭に「本剤は肝チトクロームP450(CYP)によりほとんど代謝されない(CYP2C9でわずかに代謝される)」と明記されています。これは使えそうです。アトルバスタチン(CYP3A4)のようにCYP代謝への依存度が高い薬剤と比較した場合、CYP阻害剤・誘導剤との相互作用が少ないという臨床上のメリットがあります。
ただし、だからといって相互作用がゼロというわけではありません。これが原則です。以下の併用注意薬には実臨床でも遭遇しやすいものが含まれています。
| 薬剤名 | 主なリスク | 対応 |
|---|---|---|
| フィブラート系薬剤(ベザフィブラートなど) | 横紋筋融解症リスク増大 | 腎機能異常患者ではやむを得ない場合のみ併用、定期的な腎機能・CK検査 |
| ニコチン酸 | 横紋筋融解症リスク増大 | 腎障害がある場合は危険因子として管理 |
| コレスチラミン | ピタバスタチンの血中濃度低下 | コレスチラミン投与後、十分な間隔をあけて投与 |
| エリスロマイシン | 横紋筋融解症のおそれ | 肝臓へのトランスポーター阻害による血中濃度上昇 |
| リファンピシン | Cmaxが2.0倍・AUCが1.3倍上昇 | リファンピシン併用によるトランスポーター阻害 |
エリスロマイシンとの相互作用は、CYPを介した機序ではなく、ピタバスタチンの「肝臓へのトランスポーターを介した取り込み阻害」によるものです。つまり「CYPでほとんど代謝されないから相互作用は問題ない」という思い込みは危険です。トランスポーター(OATP1B1/OATP1B3)を阻害する薬剤との組み合わせには十分な注意が必要です。
リファンピシンは結核や非結核性抗酸菌症の治療に広く使われる抗菌薬ですが、これとの併用でピタバスタチンのCmaxが2倍に上昇するデータがあります。意外ですね。感染症を合併した脂質異常症患者での処方時には特に注意が求められます。
また、コレスチラミンとの同時服用はピタバスタチンの吸収を低下させます。服用間隔をあける対応が必要で、これを知らずに同時服用を指示すると治療効果が十分に得られない可能性があります。現場で処方監査をするときにはこの点も確認しておくとよいでしょう。
添付文書11.1項に列記された重大な副作用は7つあります(横紋筋融解症・ミオパチー・免疫介在性壊死性ミオパチー・肝機能障害/黄疸・血小板減少・間質性肺炎・重症筋無力症)。このうち、現場での混同が多いのが横紋筋融解症と免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)です。
横紋筋融解症は、筋肉痛・脱力感・CK上昇・血中/尿中ミオグロビン上昇を主症状とし、急性腎障害を併発することがあります。発現頻度は「頻度不明」とされていますが、添付文書7.2項に「4mgに増量する場合にはCK上昇・ミオグロビン尿・筋肉痛・脱力感等の前駆症状に注意すること」と明記されています。これが条件です。腎機能障害を有する患者では横紋筋融解症の報告例が多いため、腎機能異常がある場合は特に注意が必要です(添付文書9.2.2項)。
一方、免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)は、近位筋脱力・CK高値・炎症を伴わない筋線維の壊死・抗HMG-CoA還元酵素(HMGCR)抗体陽性を特徴とします。通常の横紋筋融解症との決定的な違いは「投与中止後も症状が持続する例が報告されている」という点です。これは臨床上きわめて重要な情報です。単純にピタバスタチンを中止すれば症状が消えるとは限らず、免疫抑制剤の投与で改善したとの報告例もあります。
重症筋無力症(眼筋型・全身型)の発症または悪化についても添付文書9.1.2項と11.1.7項に記載があります。既往歴のある患者では、投与中に症状の変化を十分モニタリングすることが求められます。意外ですね。スタチンと重症筋無力症の関係はまだ認知度が低い領域ですが、添付文書には明記されています。
肝機能障害については、添付文書11.1.4項に「発現頻度0.1%未満」と記載されており、他の重大副作用が「頻度不明」とされているのとは異なります。AST・ALTの著しい上昇を伴う肝機能障害・黄疸が報告されているため、定期的な肝機能検査が8.2項で義務化されているわけです。つまり副作用モニタリングが条件です。
間質性肺炎については「長期投与であっても、発熱・咳嗽・呼吸困難・胸部X線異常等が認められた場合には投与を中止すること」と添付文書に記載されています。長期使用患者での新規呼吸器症状には注意が必要です。
【PMDA】ピタバスタチンカルシウム錠 添付文書(重大な副作用・免疫介在性壊死性ミオパチーの記載を含む)
添付文書9項では、特定の背景を持つ患者への注意事項が詳細に記述されています。実臨床でよく遭遇するケースに絞って整理します。
腎機能障害患者の場合、薬物動態データ(16.6.1項)によれば、腎機能障害患者(血清クレアチニン基準値上限の1.5〜3倍)へ2mgを7日間反復投与したとき、腎機能正常者と比較してCmaxで1.7倍・AUCで1.9倍の血漿中濃度上昇が観察されました。ただし添付文書上、腎機能による用量制限は明示されていません。腎機能に応じた用量制限が規定されているロスバスタチン(Ccr30mL/min未満で上限5mg)とは対照的です。それでも腎障害患者に投与する際は、フィブラート系薬剤との併用禁止とCK・腎機能の定期チェックを忘れないことが重要です。
肝機能障害患者の場合、前述の通り開始1mg・最大2mgの用量制限があります(7.1項)。脂肪肝患者(肝機能障害患者)については薬物動態への影響が少なかったとのデータ(16.6.2項)がありますが、重篤例は禁忌、軽〜中等度の既往歴があれば肝障害を悪化させるおそれがある点は変わりません。
小児(家族性高コレステロール血症)の場合、10歳以上に投与可能で開始量は1mgです。最大投与量は1日2mgであり、成人の最大量4mgの半分に制限されています。これが条件です。なぜ小児の上限が低いのかというと、小児は成人より運動の頻度・強度が高くなりやすく、筋障害があらわれやすいリスクがあるからです(9.7.1項)。添付文書には「女児に対しては国内臨床試験での使用経験がなく、冠動脈疾患の発症が男性より遅いことも踏まえ特に慎重に判断すること」という記載もあります(5.4項)。
高齢者については、「一般に生理機能が低下しており、横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある」とされており(9.8項)、副作用発現時には減量などの注意が求められます。高齢者では横紋筋融解症を起こしやすい背景因子(甲状腺機能低下症、アルコール中毒、遺伝性筋疾患・家族歴、薬剤性筋障害の既往など)を合わせて確認することが重要です(9.1.1項)。いいことですね、これらのリスク因子を事前に把握しておけば対応できます。
添付文書15.2項には「非臨床試験に基づく情報」としてイヌでの投与試験(3mg/kg以上を3ヵ月間・1mg/kg以上を12ヵ月間)で白内障の発現が認められたとの記述があります。ただし他の動物(ラット・サル)では認められていません。ヒトへの直接影響は明確ではありませんが、長期投与患者には参考情報として知っておく価値があります。
【興和(リバロ製造元)FAQ】ピタバスタチンの腎機能障害患者(透析含む)への投与と薬物動態データ(AUC1.9倍上昇のデータ収録)
【日本ケミファ】小児家族性高コレステロール血症 適正使用のお願い(10歳以上・最大2mg・女児への慎重投与の根拠を詳述)