内圧成形CFRPの基礎と金型・積層構成の選び方

内圧成形CFRPは複雑形状の成形に強い工法ですが、積層方法や内圧条件を誤ると強度が6%以上低下することも。金属加工従事者が知っておくべき工程・設備・品質管理のポイントとは?

内圧成形CFRPの基礎知識と現場で役立つ実践ポイント

積層を1層ずつ行うだけで強度発現率が6%以上下がります。


この記事の3ポイントまとめ
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内圧成形とは何か

プリプレグの内側からシリコンチューブや内圧バッグで圧力をかけ、外型に押し付けて硬化させる成形法。複雑な中空形状を高精度に仕上げられる点が最大の強みです。

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積層方法で強度は変わる

日本大学の研究では、連続積層(Type B)は1層ずつ積層(Type A)より強度発現率が約6%高く、重ね部の空隙発生を抑制できることが確認されています。

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オートクレーブとの成形時間比較

プリプレグオートクレーブ成形の約300分に対し、コミングル組紐を用いた内圧成形(CFRTP)では約15分での脱型が実証されており、量産対応力の差は歴然です。


内圧成形CFRPとは何か—基本原理と他の成形法との違い



内圧成形(インターナルプレッシャー成形)とは、金型の内部にセットしたプリプレグの内側から空気圧または流体圧を与え、外型の形状に沿わせながらCFRPを硬化させる工法です。シリコンチューブや内圧バッグと呼ばれる弾性袋体をプリプレグ内側に挿入し、圧縮空気を圧入することで内側から均一な圧力を加えます。これにより、金型面に密着した綺麗な外表面が形成されます。


金属加工に携わる方が最初に疑問に思うのは「他の成形法と何が違うのか」という点でしょう。代表的なCFRP成形法であるオートクレーブ成形は、圧力釜全体から均一に加圧するため品質は高いものの、設備費が非常に高額で成形サイクルに1〜8時間を要します。プレス成形は生産サイクルが短い反面、抜きテーパを考慮する必要があり、中空形状には対応できません。


内圧成形が特に優れているのは、テニスラケットや自転車のカーボンホイールのような「閉じた中空形状」の成形です。こうした形状は内圧成形でしか成形できません。これが基本です。外表面は金型面で精度良く仕上がる一方、内径側には金型が当たらないため、内径寸法精度は低くなる点はデメリットとして押さえておく必要があります。


実際の成形手順を整理すると、次のような工程になります。


  • プリプレグを所定形状に裁断し、設計された繊維配向で積層する
  • 積層体を外型(上型・下型)の内部に設置し、内側にシリコンチューブや内圧バッグを挿入する
  • バッグ端部をシールし、注入孔から圧縮空気を導入(一般的に0.5〜0.7 MPa程度)
  • ラバーヒーターまたはオーブンで加熱し、エポキシ樹脂を硬化させる(例:70℃到達後に内圧負荷→140℃で2時間保持)
  • 冷却後に脱型し、バリ取りや二次加工を行う


金属加工の現場で馴染み深い「型を押し当てて成形する」感覚に近い部分もありつつ、圧力媒体が内側から作用する点が根本的に異なります。意外ですね。この発想の転換が、複雑形状への対応力を生み出しています。


参考:ミズノテクニクス株式会社 カーボン事業技術情報(内圧成形の特長と設備紹介)
https://corp.mizuno.com/jp/mizuno-technics/cfrp/technology


内圧成形CFRPの積層方法が強度に与える影響—研究データから学ぶ

内圧成形で品質を安定させる上で、最も軽視されがちなのが「積層方法」の選択です。同じプリプレグ材料を使っても、積層のやり方次第で最終的な強度発現率が大きく変わります。これは使えそうです。


日本大学生産工学部の研究(2024年)では、外径56.5mmのCFRP円筒を内圧成形で製作し、積層方法の違いによる強度への影響を実験的に調査しています。比較した積層方法は2種類です。


  • Type A(1層ずつ積層):プリプレグを1層ごとに積層し、都度形状を整えながら積み重ねる方法
  • Type B(連続積層):6層を一気に連続して積層する方法


リングバースト試験による結果は明確でした。Type Aの強度発現率が62.3%に対し、Type Bは68.4%となり、連続積層の方が約6%高い強度を発現しました。断面写真を確認すると、Type Aでは重ね部の両側に「空隙(くうげき)」が生じており、これが強度低下の原因と考えられています。一方Type Bには空隙が観察されませんでした。


6%という数字をイメージしやすく言い換えると、1トンの荷重に耐えられる設計の部品が、積層方法を変えるだけで実際には940kgしか持たない計算になります。強度発現率が原則です。


この知見は、現場での積層作業に直接応用できます。手間がかかるからと1層ずつ丁寧に形を整えながら重ねると、かえって層間に空気が入り込みやすくなる場合があります。連続積層によって樹脂の流動性を保ちながら積み重ねる方が、層間の密着性を高め空隙の発生を抑えられます。


また、繊維体積含有率(Vf)についても確認が必要です。同研究では燃焼法により、Type Aが57.2%、Type BがVf55.7%と測定されており、Vfが高ければ良いわけではなく積層状態の均一性との兼ね合いが重要です。Vf60%を基準とした設計では、実測値のズレが強度計算に影響するため、試作段階での燃焼法またはマトリックス溶解法によるVf測定は必須です。


参考:日本大学生産工学部「内圧成形法によるCFRP円筒の成形と強度特性」(2024年)
https://www.cit.nihon-u.ac.jp/laboratorydata/kenkyu/kouennkai/reference/No.57/pdf/1-25.pdf


内圧成形CFRPの金型設計と3Dプリンタ活用による低コスト化

従来、内圧成形用の金型はアルミニウム合金や鉄鋼材料を切削加工して製作するのが一般的で、形状が複雑になるほど加工費・納期・ノウハウが大きな壁になっていました。厳しいところですね。しかし近年、この課題を覆す取り組みが公設試験研究機関レベルで実用化されています。


徳島県立工業技術センターの研究(平成30年度)では、FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンタを使用してCFRP内圧成形用の樹脂型を試作し、実際のCFRPパイプ成形に適用しました。材料にはポリエーテルイミド(PEI)を採用し、内圧成形の圧力に耐える強度と剛性を有限要素解析で確認した上で樹脂型を造形。直管および曲がりパイプの成形試験を実施しています。


結果として、一般的な金属製金型と比べて強度・表面粗さ・離型性は劣るものの、「金型製作に係る時間や手間を大幅に削減できた」と報告されています。具体的には、金属加工が必要な従来型に対して、設計から造形まで3Dプリンタを用いることで数日〜1週間単位での短縮が可能です。


この情報を得て、どう活用するかが重要です。試作・少量生産フェーズでは3Dプリンタ製樹脂型を活用し、量産が確定してから金属製金型に移行するという二段階アプローチは、金属加工業者にとって受注判断のリスクを大きく下げる戦略になります。試作型の材料費は金属型の1/10以下になるケースも少なくないため、開発初期の投資を抑えながら形状検証を進められます。


なお、曲がり管では湾曲部にしわや座屈等の成形不良が発生しやすいという課題も報告されています。この対策として、プリプレグの積層構成(繊維角度の組み合わせ)と内圧の付加タイミングの最適化が有効とされています。加圧は樹脂が軟化し始めた段階(前掲の研究では70℃到達時)で行うことで、プリプレグが型形状に追従しやすくなります。


参考:徳島県立工業技術センター「3Dプリンタを用いたCFRP内圧成形技術の開発」
https://www.aist.go.jp/Portals/0/shikoku/images/collabo/sangiren/syoukai-pdf/t1.pdf


内圧成形CFRPの成形時間とCFRTP内圧成形の量産可能性

金属加工業者がCFRP内圧成形への参入を検討するとき、最も現実的な壁となるのが「サイクルタイム」と「量産性」です。結論は明確です。従来のプリプレグ+オートクレーブ成形では、材料カットから脱型まで約300分(5時間)を要します。これはクルマのルーフ1枚を1日に2〜3枚しか作れない計算で、量産ラインとしては成立しにくい数字です。


これに対し、コミングル組紐を用いた熱可塑性CFRP(CFRTP)の内圧成形では、材料カットから脱型まで約15分での成形が実証されています(JHI株式会社、コンポジットハイウェイ・アワード2024発表データ)。さらに同社は「成形時間5分を目指す」という目標を掲げており、熱可塑性樹脂の急速加熱・急速冷却特性を活かした高速成形が現実の射程に入っています。


300分と15分の差は20倍です。単純計算で、1台の設備で1日に作れる部品数は1〜2個から最大96個に跳ね上がります(1日8時間稼働として)。量産が条件です。


コミングル組紐とは、炭素繊維と熱可塑性樹脂の繊維を撚り合わせた材料で、金型内でそのまま加熱すれば別途樹脂注入が不要な点が特徴です。また筒状の連続繊維であるため、軸方向・径方向への繊維配向を設計しやすく、繊維の切断による強度低下もありません。


ただし、熱可塑性CFRPはエポキシ系CFRPと比べて成形温度が高くなる傾向があり、金型材料の耐熱仕様や加圧設備の温度管理が新たな課題となります。現場で内圧成形を検討する場合は、使用樹脂の成形温度(例:芳香族PA系で200〜280℃、熱可塑性PI系でさらに高温)と、保有プレス設備の仕様を照合することが最初のステップです。


参考:JHI株式会社「量産軽量部品へのCFRTPハイサイクル製法適用について」(コンポジットハイウェイ・アワード2024)
https://www.jhi.co.jp/download/img/docs/量産軽量部品へのCFRTPハイサイクル製法適用について.pdf


内圧成形CFRPの品質管理—成形不良の種類と現場での対策

内圧成形で量産品の品質を安定させるには、発生しやすい成形不良のパターンと対策を体系的に把握しておくことが欠かせません。金属加工で言えばバリや寸法ズレに相当する不良が、CFRP内圧成形でも複数存在します。


まず代表的な不良として「しわ(リンクル)」があります。曲がり管や複雑形状の湾曲部では、プリプレグが型に追従しきれずに繊維方向にしわが入るケースです。徳島県立工業技術センターの試験でも、直管部では良好な仕上がりが得られた一方、曲げ管の湾曲部ではしわや座屈が報告されています。対策としては、プリプレグの目付(単位面積当たりの重量)を小さくして追従性を上げる、または成形前に段階的な賦形(予備賦形)を行う方法が有効です。


次に「ボイド(空隙)」の問題です。これは前述の積層方法のセクションで触れた、重ね部への空気残留による空隙と、樹脂硬化時のガス抜け不足によるボイドの2種類があります。内圧成形では外型への密着を圧力で補えるため、オートクレーブ成形ほどの真空引きは不要な場合がありますが、積層時の脱気作業(ロールで押し当てながら気泡を除去する作業)を怠ると内部ボイドが増加します。


「内径側の表面荒れ」も内圧成形固有の課題です。これはシリコンチューブや内圧バッグの表面粗さがそのまま内径に転写されるためです。内面平滑性が要求される配管部品では、バギングフィルムからゴムチューブへの変更が有効であることが実用データとして報告されています(JHI株式会社、冷却配管適用事例)。


品質確認の手段として、以下の検査方法が内圧成形CFRPに対応しています。


  • X線透過試験:非破壊でリアルタイムに内部状態を観察。積層状態・空隙・接合状況の確認に有効
  • 超音波探傷検査:積層間はく離の検出に有効。内圧成形品の曲げ管部分の検査にも対応可能
  • 燃焼法・マトリックス溶解法:繊維体積含有率(Vf)の実測に使用。設計値との乖離確認に必須
  • マイクロスコープ観察:断面を切り出して積層状態・ボイド率・繊維配向を直接確認


量産段階に入る前に、初品サンプルのX線透過試験と断面観察で成形条件を検証しておくことが、後工程でのクレームや手直しコストを防ぐ最短ルートです。現場で導入しやすいのは超音波探傷です。非接触型のフェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)は、複雑形状の内圧成形品にも追従性が高く、医療・航空分野で実績のある検査手法です。


参考:CFRPの成形方法について概要や工程を詳しく解説(東レ・カーボンマジック株式会社)
https://www.carbonmagic.com/cfrp/molding.html






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