ナフトピジルOD錠を服用中の患者が白内障手術を受けると、休薬しても術中IFISリスクはゼロにならず合併症につながる可能性があります。

ナフトピジルOD錠50mgは前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬として広く使われているα1遮断薬です。作用機序はα1受容体を遮断することで尿道平滑筋の緊張をゆるめ、尿道内圧を低下させるというものです。この受容体遮断作用は排尿改善に有効な反面、全身の血管にも影響を与えるため、さまざまな副作用が生じる可能性があります。
添付文書(2024年7月改訂)に基づくと、副作用は大きく「重大な副作用」と「その他の副作用」の2段階に整理されています。
重大な副作用として明記されているのは、①肝機能障害・黄疸(頻度不明)と②失神・意識喪失(頻度不明)の2項目です。いずれも発現頻度は「頻度不明」とされていますが、重大と分類されている以上、観察を十分に行うことが求められます。
その他の副作用については、以下の表のように頻度別に整理されています。
| 系統 | 0.1〜1%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
|---|---|---|---|
| 過敏症 | 発疹 | そう痒感、蕁麻疹 | 多形紅斑 |
| 精神神経系 | めまい・ふらつき、頭痛・頭重 | 倦怠感、眠気、耳鳴、しびれ感、振戦、味覚異常 | 頭がボーッとする |
| 循環器 | 立ちくらみ、低血圧 | 動悸、ほてり、不整脈(期外収縮・心房細動等) | 頻脈 |
| 消化器 | 胃部不快感、下痢 | 便秘、口渇、嘔気、嘔吐、膨満感、腹痛 | — |
| 肝臓 | AST・ALT上昇 | LDH・Al-P上昇 | — |
| 眼 | — | 霧視 | 術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)、色視症 |
| その他 | — | 浮腫、尿失禁、勃起障害、鼻閉など | 女性化乳房、胸痛 |
頻度不明とは「市販後の自発報告などで因果関係を否定できないが、正確な発現頻度が不明なもの」を指します。つまり稀ではあっても起こり得ると認識しておくことが基本です。
臨床でよく遭遇するのはめまい・ふらつき、立ちくらみ、胃部不快感といった症状で、これらは投与初期や用量増量時に出やすい傾向があります。患者への服薬指導時にも、「飲み始めや量が変わったばかりの時期はとくに注意が必要」と伝えておくのが有効です。
KEGG医薬品情報:ナフトピジルOD錠添付文書全文(副作用・相互作用・薬物動態を網羅)
起立性低血圧は、ナフトピジルOD錠50mgにおいて特に注意すべき副作用のひとつです。α1遮断作用によって末梢血管の収縮が阻害されるため、急に立ち上がったときに十分な血圧維持ができなくなることがあります。これがめまい・立ちくらみとして現れ、最悪の場合には失神・意識喪失へと発展します。
高齢患者ではこのリスクがさらに高まります。理由は薬物動態にあります。
ナフトピジルは主として肝臓で代謝・排泄される薬剤ですが、肝機能障害患者では健常人と比較して最高血漿中濃度(Cmax)が約2倍、血漿中濃度曲線下面積(AUC)が約4倍まで上昇するとの報告があります。高齢者は加齢に伴い肝機能が低下していることが多く、排泄が遅延して血中濃度が高く維持されやすい状態にあります。
これが条件です。高齢患者への投与を開始する場合は、添付文書に明記されているとおり「12.5mg/日等の低用量から開始する」ことが推奨されています。通常の成人用量である25mg/日スタートをそのまま高齢者に適用するのは望ましくありません。
起立性低血圧を背景とした転倒は、高齢者にとって骨折・入院・廃用症候群という深刻な二次被害に連鎖します。日本神経学会のガイドラインデータでは、起立性低血圧のある患者はない患者と比べ転倒率がハザード比2.13と有意に高いことが示されています。
投与初期および増量時には体位変換に伴う血圧変化を意識し、患者には以下のような生活上のアドバイスを行っておくとよいでしょう。
- 急に立ち上がらず、ゆっくり体位を変える
- 起床後はベッドのふちに数秒腰掛けてから立つ
- 浴槽からの立ち上がりにも注意する
- 高所作業や自動車の運転については医師に相談する
これは使えそうです。服薬指導のチェックリストに組み込んでおくことで、患者への安全な使用指導が効率化されます。
厚生労働省:高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)|α遮断薬の起立性低血圧リスクと高齢者への投与に関する記述あり
ナフトピジルOD錠50mgを服用している患者が白内障手術を予定している場合、あるいは手術後に処方を開始する場合に知っておくべき重要な副作用があります。それが術中虹彩緊張低下症候群(IFIS:Intraoperative Floppy Iris Syndrome)です。
IFISとは、白内障手術中に①虹彩が水流によってうねり・膨張する、②手術中に進行性の縮瞳が起こる、③虹彩が切開部へ脱出する傾向がある、という3つの徴候を特徴とする術中合併症です。これらが重なると手術の進行が著しく妨げられ、術後合併症のリスクも高まります。
ナフトピジルは添付文書(15.1.2)にも「α1遮断薬を服用中または過去に服用経験のある患者においてIFISが出現するとの報告がある」と明記されています。つまり、現在服用していなくてもIFISリスクが存在する点が重要です。
α1遮断薬服用者の白内障手術中に、3〜4割程度の患者でIFISが生じるというデータも報告されており(徳山医師会病院の情報資料より)、決して稀なケースではありません。
医療現場においては以下の点が実務上のポイントになります。
- 白内障手術の術前問診では、排尿障害治療薬の服用歴を必ず確認する
- ナフトピジル、タムスロシン、シロドシンなどのα1遮断薬は特にIFISリスクが高いとされる
- 術前に服用中・服用歴ありと判明した場合、眼科医は瞳孔散大を助ける点眼薬の使用や虹彩フックなどの器具準備を行う
- 休薬だけでIFISを完全に防げるわけではないため、眼科医への情報共有が最優先となる
泌尿器科・内科・調剤薬局など、ナフトピジルを扱う医療従事者が眼科手術予定患者に対して術前に積極的に情報提供を行うことが、患者の安全につながります。これが原則です。
お薬手帳に服用薬の記載を徹底し、患者自身が眼科受診時に自己申告できるよう指導することも実践的な対策といえます。
徳山医師会病院:術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)についての解説資料|発生頻度データ・対策器具の情報を含む
ナフトピジルOD錠50mgは単剤での副作用だけでなく、他剤との組み合わせによって副作用リスクが大きく上昇することがあります。医療従事者が特に意識すべき相互作用を整理しておきましょう。
降圧薬・利尿薬との併用は、添付文書(10.2)で「降圧作用が増強するおそれがある」として注意喚起されています。前立腺肥大症を持つ高齢男性には高血圧を合併しているケースが非常に多く、降圧薬との重複投与が起きやすい状況にあります。降圧薬を服用中の患者に対してはとくに投与初期の血圧変化に目を向け、必要に応じて用量の見直しを行います。
PDE5阻害薬(シルデナフィル・バルデナフィルなど)との併用は、症候性低血圧が現れるリスクがあるとして注意が求められます。前立腺肥大症と勃起障害は同じ患者層に重なりやすい疾患であり、患者が自己判断でシルデナフィルなどを入手して服用しているケースも現実には存在します。問診の際に「市販薬を含め何か飲んでいないか」を確認することが重要です。
その他、見落とされやすい副作用として女性化乳房(頻度不明)があります。これは長期服用患者で報告されており、患者から恥ずかしくて言い出せないことも多い症状です。定期的な問診で確認しておくとよいでしょう。
また、不整脈(期外収縮・心房細動)も0.1%未満ながら報告されています。動悸の訴えがあった場合には、不整脈の可能性を念頭に置いた評価が必要です。重篤な心疾患のある患者では使用経験が乏しいとされており、心機能への配慮も求められます。
不整脈の可能性には注意が必要です。
第一三共エスファ:ナフトピジルOD錠インタビューフォーム(薬物相互作用・副作用の詳細情報を含む)
副作用を早期に発見し、適切に対処することは患者の安全を守る上で欠かせません。ここでは投与中の観察ポイントと副作用発現時の対応を、実務的な視点から整理します。
重大な副作用「肝機能障害」の発見については、全身倦怠感・食欲不振・皮膚や白目の黄変(黄疸)が初期サインとなります。投与開始後のAST・ALT値のモニタリングが基本です。添付文書では0.1〜1%未満の頻度でAST・ALT上昇が認められるとされており、定期的な採血による肝機能チェックを患者に説明しておきましょう。肝機能障害が疑われた場合は投与を中止し、適切な処置を行います。
重大な副作用「失神・意識喪失」は血圧低下に伴う一過性のもので、とくに投与初期や増量後に注意が必要です。失神が起きた場合、転倒による外傷リスクが生じます。患者が「急にふらついた」「目の前が暗くなった」と訴えるようであれば、立位での血圧測定(起立後1・3・5分での測定)が有用です。
副作用への対応フローとして覚えておきたいのが下記の3ステップです。
服薬継続中の患者には定期的なフォローアップ面談を設けておくことが望まれます。患者から「先生に言いにくい」と感じられている症状(女性化乳房・勃起障害・尿失禁など)も、薬剤師や看護師が丁寧に聞き取ることで早期に発見できます。
OD錠の特性上、口の中で崩壊するため服用が容易ですが、「寝たままの状態では水なしで服用させないこと」という注意点も指導内容に組み込んでおくことが必要です。
また、外箱開封後は遮光保存が求められ、変色した錠剤は使用しないよう患者へ指導することも忘れないようにしましょう。これだけ覚えておけばOKです。
副作用モニタリングを組織的に行うために、病院薬剤部や保険薬局で作成している「副作用チェックシート」などのツールを活用することも一つの選択肢です。日本医薬品安全性研究所(JAPIC)のPDFや添付文書情報を定期的に確認し、最新の改訂情報を把握しておく姿勢も医療従事者に求められます。
JAPIC:ナフトピジル口腔内崩壊錠 添付文書PDF(最新版)|副作用・使用上の注意の全文確認に活用

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