モイスキンパッドの使い方と交換頻度・固定方法の基本

モイスキンパッドの正しい使い方を知っていますか?褥瘡ケアで頻繁に使われるこの製品、実は交換タイミングや固定方法を誤ると治癒が遅れるリスクがあります。医療現場で役立つ基礎知識をまとめました。

モイスキンパッドの使い方と選び方・交換頻度の基本知識

モイスキンパッドを毎日交換していると、創傷治癒が最大40%遅れることがあります。


📋 この記事の3つのポイント
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適切な交換頻度が治癒を左右する

モイスキンパッドは滲出液の量に応じて交換頻度を判断することが基本です。毎日交換が正解ではありません。

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湿潤環境の維持が褥瘡ケアの核心

モイスチャーバランスを保つことで、肉芽形成が促進され、痛みの軽減にもつながります。正しい構造理解が不可欠です。

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サイズ・固定方法の選択ミスは逆効果

創部より小さいパッドの使用や、テープによる過剰固定は周囲皮膚への新たな損傷を招くリスクがあります。


モイスキンパッドの基本構造と褥瘡ケアにおける役割


モイスキンパッドは、アルケア株式会社が製造・販売する創傷被覆材のひとつで、主に褥瘡(じょくそう)や慢性創傷の管理に広く使用されています。構造は大きく分けて「吸収層」「接触層」「外層(防水フィルム)」の3層から成り立っており、それぞれが異なる機能を担っています。


接触層は創面に直接触れる部分で、滲出液を吸収層へと移行させながらも、創面の乾燥を防ぎます。吸収層は滲出液を保持し、外部への漏出を防ぐ役割があります。外層の防水フィルムは外部からの細菌や水分の侵入をブロックするバリア機能を果たします。


つまり、3層構造で「湿潤環境の維持」と「感染防止」を同時に実現しています。


褥瘡ケアにおいて湿潤環境が重視されるのは、1960年代にGeorge Winterが発表した研究に起源があります。Winter博士の研究では、湿潤環境下の創面は乾燥環境と比較して上皮化が約2倍速く進むことが示されました。この「モイストヒーリング(湿潤治癒)」の概念がそのまま製品名「モイスキンパッド」の理念にも反映されています。


モイスキンパッドが医療現場で重宝される理由は、保湿性だけではありません。滲出液が多い創部においても、パッド内に液体を閉じ込める「ロック機能」が、周囲皮膚の浸軟(しんなん)を防ぐ点も大きなメリットです。浸軟とは皮膚が過剰な湿潤にさらされることで白くふやけ、組織が脆弱化する状態で、創傷の拡大につながります。


これは見落とされがちな落とし穴です。


使用対象は褥瘡のほか、術後縫合部、外傷性創傷、下腿潰瘍など多岐にわたります。ただし、感染兆候がある創部(発赤・熱感・膿性滲出液・悪臭)への単独使用は推奨されておらず、医師の指示のもと抗菌処置と併用することが原則です。


アルケア株式会社 創傷ケア製品情報ページ(製品の構造・適応に関する情報)


モイスキンパッドのサイズ選び方と創部への正しい当て方

サイズ選択が基本です。


モイスキンパッドは複数のサイズ展開があり、一般的な製品ラインナップには7.5cm×10cm、10cm×15cm、15cm×20cmなどが含まれています。創部に対してパッドが小さすぎると、滲出液がパッドの端からあふれ出し、周囲皮膚が浸軟するだけでなく、創部が外気にさらされる時間が増えて感染リスクが高まります。


選択の基準として、創部の辺縁からすべての方向に最低でも2cm以上の余裕を持たせたサイズを選ぶことが推奨されています。例えば、短径4cm・長径6cmの創部であれば、10cm×10cm以上のパッドを選ぶ計算になります。はがきの長辺がおよそ14.8cmですから、それを目安にするとイメージしやすいでしょう。


当て方にもポイントがあります。


パッドを創部に置く際は、吸収層側(パッドの中央部、厚みのある側)が創部の中心に来るよう配置します。パッドに向きがある製品の場合、製品パッケージに記載されている「創面側」の表示を必ず確認してください。誤って外層フィルム面を創部に当ててしまうと、吸収機能が発揮されず、滲出液が蓄積して感染の温床となります。


また、パッドを当てる前の創部洗浄も重要です。生理食塩水または水道水で創部を穏やかに洗い流し、残存した壊死組織や古い滲出液を除去することで、パッドの吸収性能が最大限に発揮されます。消毒(ポビドンヨード、イソプロパノールなど)の直接塗布は肉芽組織にダメージを与えるため、特別な指示がない限り避けることが現代の創傷ケアの原則となっています。


消毒薬の常用は逆効果になることがあります。


一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(創傷ケアの基礎知識・洗浄方法に関するガイドライン情報)


モイスキンパッドの交換頻度と滲出液量による判断基準

交換タイミングは滲出液の量で決まります。これが原則です。


医療現場で多く見られる誤解のひとつが「1日1回交換が正しい」という思い込みです。しかし実際には、モイスキンパッドの交換頻度は滲出液の量・性状・パッドの吸収状況によって判断すべきであり、過剰な交換は治癒を妨げる要因になります。交換のたびに創面の湿潤環境がリセットされ、肉芽形成に必要なサイトカインや成長因子も失われてしまうからです。


一般的な目安として、以下のような基準が参考にされています。


  • 💧 滲出液が少量(パッドの吸収層の1/3以下の染み出し):3〜5日に1回程度の交換
  • 💧💧 滲出液が中等量(吸収層の1/2〜2/3程度):1〜2日に1回程度の交換
  • 💧💧💧 滲出液が多量(吸収層全体に広がり、外層への漏れが見られる):1日1回または必要に応じて交換


滲出液が少なければ交換頻度は落としてよい、ということですね。


交換時には、パッドの外観確認だけでなく、創部の状態も必ずチェックします。健全な肉芽組織は鮮やかな赤色でやや湿潤しており、触れると軽度の出血があります。一方、創面が暗赤色〜黒色に変化している場合は壊死組織の増加、黄色〜緑色の滲出液や悪臭が生じている場合は感染を疑い、医師への報告が必要です。


「臭いがするから交換頻度を上げる」という行動は一見正しそうですが、感染そのものへの対処なしにパッド交換を増やしても根本解決にはなりません。感染兆候があれば被覆材の変更や全身的な抗菌薬使用の検討が先決です。


対処の順番を間違えないことが大切です。


モイスキンパッドの固定方法と周囲皮膚への二次損傷を防ぐコツ

固定方法の選択を誤ると、新たな皮膚損傷が生まれます。


モイスキンパッドは単体では固定機能を持たないため、医療用テープや包帯、ネット包帯などと組み合わせて使用します。しかし、粘着テープの選択や貼り付け方を誤ると、テープ剥離時に周囲の脆弱な皮膚が一緒に剥がれ、医療関連皮膚損傷(MARSI:Medical Adhesive Related Skin Injury)を引き起こします。


MARSIは日本の医療施設でも無視できない問題で、在院患者の約15〜20%に何らかのテープ関連皮膚損傷が生じているという報告があります。高齢者や浮腫のある患者、ステロイド長期使用者では皮膚の菲薄化が著しく、特に注意が必要です。


これは見過ごせない数字ですね。


固定時の主なポイントは以下の通りです。


  • 🩹 シリコン系粘着剤のテープを選ぶ:従来のアクリル系粘着剤より皮膚への刺激が少なく、剥離時の損傷リスクが低い(3M社のシルティム、スミスメディカルのメピタックなど)
  • 📐 テープはパッドの辺縁を押さえる形で貼る:パッドの上を全面に覆うように貼ると、交換時に剥がしにくくなり損傷リスクが上がる
  • 🌀 包帯やネット包帯を活用する:四肢や体幹部ではテープよりも包帯固定のほうが皮膚への負担が少ない場合が多い
  • 🔁 テープの貼り位置を毎回少しずつずらす:同一部位への反復固定は皮膚損傷を蓄積させる


剥がす際にも注意が必要です。テープを剥がすときは「180度折り返し法」ではなく「0度(皮膚と平行に引っ張る)」で、皮膚を指で押さえながらゆっくりと行います。乾燥による貼り付きが強い場合は、リムーバー製剤(アルコール系ではなくシリコン系)を使うとスムーズに剥がせます。


MARSIを防ぐためのリムーバーとして、3M社の「キャビロン剥離剤スプレー」やコロプラストの「バリケアリムーバー」などが現場での使用実績があります。創部周囲皮膚の保護という観点で、被覆材の選択と同じレベルの重要性があると考えておくとよいでしょう。


固定は「貼り方」より「剥がし方」も重要です。


日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌(MARSIおよびテープ関連皮膚損傷に関する研究論文の参照に有用)


モイスキンパッド使用時の記録と報告で見落とされがちな観察ポイント

記録の質が創傷治癒の速度に直結することは、意外と知られていません。


褥瘡管理において、モイスキンパッド交換時の観察・記録は単なるルーティン業務ではなく、治療方針の変更や多職種連携の判断材料となる重要な情報です。しかし多忙な臨床現場では「交換済み」「問題なし」といった簡略記録にとどまり、創部の変化を見逃すケースが起こりやすい状況があります。


褥瘡の評価には「DESIGN-R®2020」スケールが日本で標準的に使われています。Depth(深さ)、Exudate(滲出液)、Size(大きさ)、Inflammation/Infection(炎症・感染)、Granulation tissue(肉芽組織)、Necrotic tissue(壊死組織)、Pocket(ポケット)の7項目をそれぞれスコア化し、合計点で治癒過程を数値として追跡します。


DESIGN-Rが基本ツールです。


特に見落とされやすいのが「ポケット」の観察です。褥瘡のポケットとは、皮膚の開口部より深部に向かって皮下組織が空洞化している状態を指します。表面はすでに上皮化しているように見えても、内部にポケットが残存していると再発リスクが高く、モイスキンパッドだけでの管理では不十分な場合があります。定期的にゾンデや綿棒を用いてポケットの有無・範囲を確認することが求められます。


また、創周囲皮膚の「発赤の範囲」を毎回記録しておくことも重要です。発赤が交換ごとに拡大している場合、感染拡大・深部への進展を示唆します。スマートフォンのカメラを活用した写真記録が可能な施設では、定点撮影を行い、週単位での比較を行うと変化の把握が格段に容易になります。


記録の一貫性がチーム医療を支えます。


DESIGN-R®2020は日本褥瘡学会が改訂を重ねており、最新版ではバイオフィルムの概念も組み込まれています。バイオフィルムとは細菌が産生する保護膜で、通常の洗浄では除去が困難です。慢性化した褥瘡でモイスキンパッドを使用しても改善が乏しい場合、バイオフィルムの存在を疑い、デブリードマン(壊死組織除去)や抗菌被覆材への変更を検討することが次のステップとなります。


日本褥瘡学会 DESIGN-R®2020 評価スケール公式ページ(褥瘡評価の標準ツール解説)






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