採用を中止した施設こそ、今すぐ再検討しないと患者に損をさせます。

「マーズレン配合顆粒が販売中止になった」という情報が医療現場に広まりましたが、これは正確ではありません。販売中止になったのは、EAファーマ株式会社が取り扱っていた分のみです。製造販売元である寿製薬株式会社は、現在も販売を継続しています。
2025年2月14日、EAファーマは寿製薬との販売提携を2025年3月31日付で終了することを発表しました。対象品目はマーズレンS配合顆粒(顆粒剤)、マーズレン配合錠0.375ES・0.5ES・1.0ES、そしてアズロキサ顆粒・錠です。2025年4月1日以降の販売および情報提供活動は、すべて寿製薬が単独で行う体制に移行しました。
EAファーマ(東京・中央区)とのパートナーシップが終了したことで、一時的に供給窓口が変わりました。これが原因で、現場では混乱が生じたと考えられます。
その後、2025年4月の販売体制変更に伴い需要予測と実需との乖離が発生し、寿製薬は一時的な限定出荷を余儀なくされました。しかし2026年1月に限定出荷が解除され、2026年2月時点では製造設備の増強が完了し、在庫率200%以上・出荷制限なしの状態が確認されています。
つまり「販売中止」ではなく「販売体制の移管」が正確な表現です。
EAファーマ公式:「マーズレン」「アズロキサ」販売提携終了のお知らせ(2025年2月14日)
寿製薬公式:マーズレンS配合顆粒およびマーズレン配合錠の供給安定化に関するご報告(2026年2月)
マーズレンS配合顆粒の主成分は、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物(水溶性アズレン)とL-グルタミンの2成分です。1g中にアズレンスルホン酸ナトリウムが3mg、L-グルタミンが990mgが含まれています。
アズレンスルホン酸ナトリウムは、胃粘膜の炎症組織に直接作用して抗炎症効果を発揮します。ヒスタミン遊離阻止作用、肉芽新生促進、上皮形成促進といった多面的な作用を持ちます。一方、L-グルタミンは胃粘膜の細胞再生を助け、潰瘍組織の保護・修復に寄与するアミノ酸です。細胞分裂が活発な潰瘍部位では、血流からのL-グルタミン供給が不足しやすいため、外部からの補充が有効とされています。
2成分合わせて「防御因子増強薬」として位置づけられており、適応症は胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃炎における自覚症状および他覚所見の改善です。
この薬は1969年に発売開始。以来、50年以上にわたって胃粘膜防御療法の主軸を担ってきた実績があります。ロングセラーとなったのは、副作用の少なさも大きな理由です。再評価試験を含む臨床試験1,516例中、副作用が報告されたのは11例(0.73%)のみで、いずれも便秘・下痢・嘔気などの軽微なものでした。
薬価は9.6円/gと低く、患者の経済的負担が小さい点も現場で重宝されてきた背景にあります。
多くの医療従事者が見落としがちな重要事実があります。マーズレンS配合顆粒は、「先発品」でも「後発品(ジェネリック)」でもなく、「準先発品」という独特の区分に属しています。
準先発品とは、昭和42年(1967年)以前に承認・薬価収載された医薬品のうち、同一剤形・規格の後発医薬品が存在する品目のことを指します。先発品の承認前から市場に存在していたため、「先発医薬品に準じるもの」として扱われている区分です。これが現場での混乱を生む原因の一つになっています。
この分類が実務上問題になるのは、処方変更や変更調剤のルール適用場面です。後発医薬品への変更調剤ルール(患者同意のもと変更可能とするルール)は、あくまで後発医薬品が処方されている場合に適用されます。準先発品であるマーズレンS配合顆粒が処方されているケースでは、単純に他の後発品へ自動切り替えできるわけではない点に注意が必要です。
準先発品という分類を知らずに処方変更を進めると、算定上の誤りや患者説明の不整合につながりかねません。正確な区分を把握しておくことが原則です。
また、ジェネリック成分として「アズレンスルホン酸ナトリウム・L-グルタミン配合顆粒」(皇漢堂製薬製「クニヒロ」など)が薬価6.7円/gで流通していますが、これはマーズレンS配合顆粒(9.6円/g)の後発品に相当します。変更を検討する場合は、患者への説明と算定要件の確認を必ず行ってください。
2025年4月〜2025年末にかけての限定出荷期間中、多くの医療機関や保険薬局でマーズレンS配合顆粒の採用を中止し、代替薬へ切り替えた経緯があります。寿製薬自身も2026年2月付の報告書のなかで「採用中止または代替切替となったご施設様に、改めてご検討いただけますと幸甚」と明記しており、安定供給が確認された現在、再採用の検討を促しています。
代替薬として選ばれることが多かったのは、以下のような胃粘膜保護・防御因子増強薬です。
| 薬剤名 | 一般名 | 主な作用 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| ムコスタ錠100mg | レバミピド | 粘膜保護・PG産生促進 | NSAIDs起因性胃粘膜障害にエビデンスあり |
| セルベックスカプセル50mg | テプレノン | 粘膜防御因子増強 | 空腹時吸収低下に注意 |
| ガストローム顆粒66.7% | エカベトナトリウム | 粘膜保護・H.pylori抑制 | 顆粒剤で剤形が近い |
| マーズレンS配合顆粒(後発) | AZ・L-グルタミン配合 | 同成分(炎症抑制+修復) | 薬価6.7円/g(クニヒロ等) |
ただし、代替切り替えが適切かどうかは、患者ごとの病態・服薬コンプライアンス・剤形の好みによって異なります。特にアズレンスルホン酸とL-グルタミンの2成分配合という組み合わせは代替薬では再現できないため、長期処方患者への説明と同意のプロセスが必要です。
再採用の判断をする際は、現在の供給状況を確認してから動くのが安全です。寿製薬のフリーコール(0120-996-156)や、供給状況を一元確認できるデータベース(DSJPなど)を活用して最新情報を取得してください。
DSJP(医療用医薬品供給状況データベース):マーズレンS配合顆粒の供給履歴
供給体制の混乱が一段落した今こそ、マーズレン配合顆粒に関する実務知識を整理しておく必要があります。
まず剤形の選択については、顆粒剤(マーズレンS配合顆粒)と錠剤(マーズレン配合錠ES)の相互換算を把握しておくと処方変更時に役立ちます。例えば、顆粒0.5g分包1包=配合錠0.375ESの2錠、顆粒0.67g分包1包=配合錠1.0ESの1錠に相当します。嚥下困難な高齢患者では顆粒が選ばれることも多く、剤形間の等量換算は必須知識です。
用法・用量についても確認が必要です。マーズレンS配合顆粒の標準用法は「通常成人1日1.5〜2.0gを3〜4回に分割経口投与」です。1日3〜4回という投与回数は、服薬コンプライアンスに影響しやすい設計といえます。処方変更にあたっては、患者の生活スタイルを踏まえた確認が求められます。
在庫管理の視点では、マーズレンS配合顆粒には分包(0.5g・0.67g・1.0g)とバラ(500g・1kg)の複数包装があります。包装形態ごとに統一商品コードが異なるため、施設内の採用規格を明確にしておかないと誤発注が起きるリスクがあります。過去の限定出荷時には、包装規格の変更による現場の混乱も報告されていました。注意が必要ですね。
最後に、EAファーマから寿製薬への移管に伴い、製品情報の問い合わせ先も変わっています。旧EAファーマのMRに問い合わせても対応を受けられなくなっているため、寿製薬の東京事務所(03-6363-1260)またはフリーコール(0120-996-156)への連絡に切り替えてください。連絡先の更新は、施設内での情報共有を確実に行うことが条件です。
寿製薬:医療関係者向け情報ページ(最新の供給・改訂情報はこちらで確認)